第3章 循環型社会の構築に向けて

第1節 はじめよう。3R。

1 はじめに

 第1部第4章においては、世界の廃棄物問題の解決に向けて、わが国がどのような貢献をすることができるのかという観点から、アジアを始めとする世界の廃棄物・リサイクル事情を概観し、静脈産業の海外展開の方向性について考えました。本節では、わが国の循環型社会に向けた進捗状況について見ていきたいと思います。

2 循環型社会基本計画の進捗状況

 政府は、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号。以下「循環型社会基本法」という。)第15条に基づき、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画として、第2次循環型社会形成推進基本計画(平成20年3月閣議決定。以下「循環型社会基本計画」という。)を定めています。

 循環型社会とは、「製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分(廃棄物としての処分をいう。)が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」と定義されています(循環型社会基本法第2条第1項)。つまり、循環型社会とは、[1]廃棄物等の発生抑制(リデュース)、[2]循環資源が発生した場合には、再使用(リユース)、リサイクル、熱回収、[3]循環的な利用ができない場合には適正な処分の確保という手段・方法によって実現される、[1]天然資源の消費が抑制され、[2]環境への負荷ができる限り低減される社会です。

 循環型社会基本計画では、発生抑制、再使用、再生利用、熱回収、適正処分等の各対策がバランスよく進展した循環型社会の構築を図るために、モノの流れの異なる断面である、「入口」、「循環」、「出口」に関する指標に目標を設定しています。また、循環型社会の構築に向けた取組の進展度を測るための取組指標の目標を設定しています。さらに、目標を補足する補助的な指標、目標設定は行わないものの推移をモニターしていく指標を設定しています(表3-1-1)。


表3-1-1 循環計画の指標一覧

 循環型社会基本計画は同計画の着実な実行を確保するため、毎年度、施策の進捗状況の点検を行っています。循環型社会の構築に当たっては、私たちがどれだけの資源を採取、生産、消費、廃棄しているかを知ることが第一歩となります。このため、循環型社会基本計画では、わが国の経済社会におけるモノの流れ全体を把握する物質フロー会計を基に、自然界から人間社会に物質が移動する天然資源の採取の段階から、最終的に人間社会から自然界に廃棄される最終処分の段階までを対象としてわが国の物質フローを把握しています(図3-1-1)。


図3-1-1 平成2年度と平成20年度のマテリアルフロー図の比較

 こうした物質フローを基に、循環型社会基本計画で設定されている指標について進捗状況をみてみると、物質フロー指標では、「入口」の指標である資源生産性(GDP/天然資源等投入量。産業や人々の生活がいかにものを有効に利用しているかを総合的に示す指標)は平成20年度で約36.1万円/トンであり、平成12年度比で約38%上昇しました(図3-1-2)。「循環」の指標である循環利用率(循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量)。経済社会に投入される全体量のうち循環利用量の占める割合を示す指標)は平成20年度で約14.1%であり、平成12年度比で約4.1ポイント上昇し、計画の目標値である14〜15%に達しています(図3-1-3)。「出口」の指標である最終処分量は平成20年度で約22百万トンであり、平成12年度比で約60%減少し、計画の目標値である23百万トンに達しています(図3-1-4)。取組指標についても、1人1日当たりのごみ排出量及び事業系ごみの「総量」については、平成20年度時点で目標を達成しています(図3-1-5図3-1-6)。


図3-1-2 資源生産性の推移


図3-1-3 循環利用率の推移


図3-1-4 最終処分量の推移


図3-1-5 一般廃棄物の減量化の推移


図3-1-6 産業廃棄物の減量化の推移

 このようにわが国全体としては循環型社会基本計画の目標達成に向かっていると考えられます。要因としては3Rの取組の浸透や国民の意識の向上等によるところも大きい一方で、平成20年度については世界金融危機の影響による生産量等の減少が影響している可能性が高いと考えられます。循環型社会基本計画では、天然資源等投入量全体に与える影響の大きい土石系資源投入量を除いた資源生産性や、枯渇性資源であり地球温暖化対策の観点からも効率的利用が求められる化石系資源に関する資源生産性を把握していますが、こうした各指標を分析してみると、土石系資源投入量を除いた資源生産性や化石系資源に関する資源生産性については横ばい傾向にあります(図3-1-7)。また、循環型社会に向けた国民の行動(再使用可能な容器の購入、再生原料で作られた製品の購入等)などライフスタイルの変革についても取組率が低いものがある(図3-1-8)など、わが国の循環型社会の構築に向けた取組についてはまだまだ途上段階にあるといえます。


図3-1-7 土石系を除いた資源生産性、化石系資源に関する資源生産性


図3-1-8 循環型社会形成に向けた意識・行動の変化

 こうした状況を踏まえ、平成22年度の循環型社会基本計画の進捗状況の点検報告書では、[1]土石系以外の資源生産性の向上など「質」の面にも着目して循環型社会が構築するよう検討を行うこと、[2]循環型社会と低炭素社会、自然共生社会の統合的取組を進めること、[3]循環利用先の限界や社会のすう勢等を考慮し、長期的な視野に立って新しい循環型社会の姿及び必要な政策の方向性の検討を進めること、[4]発生抑制、再使用や循環資源を活用した製品の利用促進に係る施策についてはさらに取り組むこと、[5]地域循環圏の高度化や更なる発展のための戦略的な方針を検討すること、[6]日系静脈産業メジャーの育成とその海外展開支援、国内静脈産業ビジネスの基盤強化など世界に通用する静脈産業の育成、支援を行うなど、景気変動に左右されない強い循環型社会ビジネスを育成すること、[7]アジア、さらには世界の循環型社会の構築を進めていくこと等について指摘がなされています(図3-1-9)。


図3-1-9 循環基本計画の第3回点検結果概要(今後の方向性部分)

3 まずはできることから。廃棄物等の発生を抑制するために。

 それでは循環型社会の構築に向けて、私たちはどのような行動が可能でしょうか。循環型社会基本法は、廃棄物・リサイクル対策について、その優先順位を法定化しています。すなわち、第1に発生抑制、第2に再使用、第3に再生利用、第4に熱回収、最後に適正処分という基本的な優先順位です。前述のとおり、平成22年度の循環型社会基本計画の進捗状況の点検報告書においては、第1順位の発生抑制については取組が不十分であるとの指摘がなされており、ここでは発生抑制に着目します。

 図3-1-10はわが国の一般廃棄物の種類別発生量の推移です。近年では厨芥(台所ごみ)と紙ごみで全体の約70%となっています。このため、特に厨芥と紙ごみの発生抑制に焦点をあててみます。


図3-1-10 一般廃棄物の種類別発生量(内訳)

(1)厨芥(特に手付かず食品、食べ残し)の発生抑制について

 写真3-1-1は京都市のある地区において、一般廃棄物として廃棄された手付かず食品(まったく手をつけることなく廃棄された食品)です。平成19年度のデータを基にした環境省の推計では、家庭ごみの厨芥のうち、こうした手付かず食品が全国で199万トン(厨芥のうち19%)、食べ残しが全国で209万トン(厨芥のうち20%)と考えられます。


写真3-1-1 一般廃棄物として廃棄された手付かず食品(京都市調査結果より)


図3-1-11 厨芥のうち、手付かず、食べ残し、その他ごみの内訳

 これは明らかに削減可能な廃棄物の発生、環境負荷の発生といえます。また、世界的な人口増加や地球温暖化の進行等世界の食料需給の不安定要因が顕在化する中、食料安全保障の観点からも食べ残しの縮減に取り組むことが必要です。さらに、食料の地産地消を進めることで循環型社会の構築につながります。さらに、途上国を中心に9億人以上の人々が栄養不足の状態にあるなかで、こうした大量の手付かず食品、食べ残しはわが国が世界に誇るべき「もったいない」精神に反するものです。

 環境省の試算では、こうした手付かず食品、食べ残しを75%削減することで、生産段階までさかのぼって考えると、約593万トン/年の廃棄物等発生抑制(日本全体の廃棄物等発生量の約1.0%)、約419万トンCO2/年の温室効果ガス排出削減(一般家庭約83万世帯分)が図られるという結果となっています(図3-1-12)。


図3-1-12 厨芥の発生抑制による環境負荷削減効果(高位・ライフサイクル全体)

 具体的な発生抑制の取組としては、消費者のライフスタイルの変化に応じた販売方法(量り売り、個別売りなど)、期限表示の意味を正しく理解した上での消費、食品を無駄にしない在庫管理、食材を無駄にしない調理方法などがあります。各主体が少しの工夫で改善できる取組ばかりです。


量り売りによる排出抑制の事例


 生鮮食品の量り売り・ばら売りを行っている小売り店もあります。このような販売方法を採用することで、店舗全体で食品トレイの使用量を減らすことにつながります。また、必要な量だけを販売することで、食べ残しの発生を減らし、生ごみの排出量を削減する効果が期待されます。


コラム写真 量り売りによる排出抑制の事例


富山発の食べきり運動


 食料自給率が低いわが国において食料が大量に廃棄されていることや、発展途上国における飢餓問題を考えると、市民一人ひとりがライフスタイルを変えて、限りある食料を無駄なく大切にして暮らすことが必要です。そこで富山市では、平成21年12月に市民一人ひとりが家庭や外食時など、さまざまな場面で食べ残しを減らす、「おいしいとやま食べきり運動」をスタートさせました。「たべキリン」と命名したマスコットのキリンは、ちいさな子供たちの人気者となっています。市立呉羽小学校では、高学年の児童が「たべキリン」のパペットを使い、各学級で給食を残さず食べきるための呼びかけを行い、食べ残しが減少しています。さらに、平成22年12月からは、飲食店等で食べきれなかった料理を自宅に持ち帰るためのドギーバッグの利用について取り組んでいます。こうした取組を推進するため、同市は市内の飲食店約3,000店舗を訪問し、この運動への協力を依頼しました。その結果平成23年2月末には、協力店が725店舗に増えました。


コラム図 おいしいとやま食べきり運動実施体制


(2)紙ごみの発生抑制(特にオフィスにおけるOA用紙の発生抑制)について

 平成19年度のデータを基にした環境省の推計では、オフィスから事業系ごみとして廃棄された紙ごみのうちOA用紙は141万トンであり、これは事業系紙ごみの26%を占めるという結果となっています。こうしたOA用紙ごみを10%削減することで、製造段階までさかのぼって考えると、約30万トン/年の廃棄物等発生抑制(日本全体の廃棄物等発生量の約0.05%)、17.6万トンCO2/年の温室 効果ガス排出削減(一般家庭約3.5万世帯分)があると推計されます。


オフィスにおけるOA用紙の発生抑制の取組の効果


 オフィスでは対外的に発行する資料、社内の会議用資料、社員自身の確認用資料など、多種多様な目的で多くのOA用紙が消費されています。こうしたOA用紙を発生抑制するための取組としては様々な取組が考えられます(表3-1-2)。


表3-1-2 オフィスにおけるOA用紙の発生抑制の取組

 環境省では、首都圏にある事業者の協力の下、オフィスにおけるOA用紙の発生抑制の取組が、どの程度実践できるかについて2週間の検証を行いました。具体的には、同社の経営会議における決定を行っていただき、従業員約260名を対象に縮小印刷による集約化や両面印刷、ペーパーレス会議など、オフィスで実施できる取組を行い、取組前に対する削減量を把握しました。第1週目に従業員に発生抑制の取組を徹底してもらうとともに、第2週目には見える化として印刷回数(複合機のカウンター数)の変化のグラフを公表しつつ、引き続き発生抑制の取組を行ってもらいました。

 その結果、最終的には複合機のカウンター換算で7%削減することができました。


図3-1-13 OA用紙の削減量(在席者1人1日当たりの複合機カウンター数の変化)

 また、取り組んでいただいた発生抑制行動のいずれについても、実施期間の最後には実施前よりも実施率が高まりました。特に実施率が高まった行動は、ペーパーレス会議の開催(14.0%)、資料等の集約印刷(10.5%)、資料等の両面印刷(7.1%)となっています。


図3-1-14 紙ごみの発生抑制行動の実施率と推移(実施しやすさの変化)

 併せて、実施後において、オフィスにおいて発生抑制の取組を徹底するために何が効果的であるかについてアンケートを行いました。アンケート結果としては、社内ルールになることが最も回答率が高く、続いて周囲が実施していることなっています。職場におけるルール化の徹底や雰囲気づくりといった要素が発生抑制行動に効果があると考えられます。


図3-1-15 環境配慮行動を徹底するための要因


4 3R行動の促進に向けて

 国民一人ひとり、NPO/NGO・大学等、事業者、地方公共団体、国がそれぞれに期待される役割の下で、連携し、協働することで発生抑制を始めとする3R行動の取組を実施することが重要です。

 例えば、地域において関係者が一体となって3R行動の場や3R行動に対する経済的インセンティブ(便益)の提供、3R行動に取り組むことの楽しさを実感する場のための仕組みとして3Rエコポイントシステムを活用している地域もあります。


図3-1-16 3Rエコポイントシステムの仕組み

 また、オフィス、学校、外出先等で自分の水筒、湯飲みなどの飲料容器(マイボトル、マイカップ)の利用を促進するキャンペーンも行われています。


図3-1-17 マイボトル・マイカップキャンペーン

 ここで紹介したものはほんの一例に過ぎません。ごみをなるべく出さない、「もったいない」精神に則り行動するといった、一人ひとりの日々の小さな心がけが循環型社会の構築に向けて大きな効果をもっています。3R行動のきっかけづくりをさらに促進し、循環型社会の構築に取り組んでいきます。



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