第3節 地球温暖化防止に向けた国内対策

1 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

 京都議定書上の6%削減約束の達成及び温室効果ガスのさらなる長期的・継続的かつ大幅な排出削減に向けて、政府は、平成20年3月に閣議決定した改定京都議定書目標達成計画に基づき、今後、各部門において各主体が、対策及び施策に全力で取り組むことにより、森林吸収量の目標である1,300万炭素トン(4,767万t-CO2、基準年総排出量比3.8%)の確保、京都メカニズムの活用(同比1.6%)と併せて、京都議定書第一約束期間の目標を達成することとしています。

  また、地球温暖化を防止するためには、地球規模での温室効果ガスの更なる長期的・継続的かつ大幅な削減が必要です。そのため、わが国は、1990年比で、2020年までに25%の温室効果ガスの排出削減を目指すとの中期目標を、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として掲げるとともに、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すとの長期目標を掲げ、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減するとの目標をすべての国と共有するよう努めることとしました。また、平成22年6月に策定した新成長戦略において、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提として、2020年に、温室効果ガスを1990年比で25%削減するとの目標を掲げ、あらゆる政策を総動員した「チャレンジ25」の取組を推進することとしました。

 わが国の地球温暖化対策の基本的な方向性を明らかにするために、地球温暖化対策に関しての基本原則や国、地方公共団体、事業者及び国民の責務、温室効果ガス排出量の削減に関する中長期的な目標、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画、基本的施策等を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を平成22年3月に閣議決定し、国会に提出しました。本法案は同年6月に国会閉会に伴って審議未了により一旦廃案となりましたが、同年10月に再度閣議決定し、国会に提出した後、継続審議となっています。法案の成立後には、基本法に基づき基本計画を定めることになります。

 環境省では、中長期目標を実現するための具体的な対策・施策の一つの絵姿、及びその場合の経済効果等を提示するため、平成22年3月31日に「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」を発表しました。その後、中央環境審議会地球環境部会に設置した中長期ロードマップ小委員会において精査を続けており、同年12月には、これまでの検討の内容を取りまとめた「中長期の温室効果ガス削減目標を実現するための対策・施策の具体的な姿(中長期ロードマップ)(中間整理)」を同審議会地球環境部会に報告しています。

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

 ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 環境負荷の小さいまちづくりの実現に向け、公共交通機関の利用促進、未利用エネルギーや自然資本の活用等を面的に実施するため、CO2削減シミュレーションを通じた実効的な計画策定を支援しました。

 都市整備事業の推進、民間活動の規制・誘導などの手法を組み合わせ、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

 交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路網の整備や高度道路交通システムITS)の推進等の交通流対策等を行いました。

 物流体系に関しては、モーダルシフト関連施策の推進を含め、荷主と物流事業者の連携による環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に取り組みました。

 再生可能エネルギー・省エネルギー機器や設備の面的導入に関しては、住宅街区において、太陽光発電や省CO2型戸建住宅等の複合的な導入を行うモデル街区の構築や、地域で連携して、家庭・業務部門における再生可能エネルギー・省エネルギー機器や設備の導入を進める取組を支援し、導入拡大を図りました。また、地域のさまざまなバイオマスを地域の関係者の幅広い連携の下、総合的に利活用するバイオマスタウンについては、構想の策定やその実現に向けた支援を行いました。

 また、高い目標を掲げ先駆的な取組にチャレンジする「環境モデル都市」のフォローアップ、その優れた取組の全国展開等を図るための低炭素都市推進協議会における活動等を通じ、低炭素都市づくりを支援しました。

 イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

 (ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 自主行動計画は、政府による厳格な評価・検証を行いました。2010 年度においては、2009年度実績に基づいた評価、検証を行いましたが、2008年度後半からの急激な景気後退に伴う活動量の低下の影響もあり、排出量が大半の業種で前年度より減少しました。また、電力業から京都メカニズムクレジットの償却が行われたほか、12業種において、目標達成が困難な場合には京都メカニズムクレジットの活用を検討する旨が表明されるなど、自主行動計画の目標達成の蓋然性向上が図られるとともに、一部の業種からは、ポスト京都議定書における自主的取組に関する報告がなされました。中小企業における排出削減対策の強化のため、中小企業の排出削減設備導入における資金面の公的支援の一層の充実や、大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等(いずれの自主行動計画にも参加していない企業として、中堅企業・大企業も含む。)が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する国内クレジット制度、さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、これら建設機械の取得時の融資制度を措置しました。

 農林水産分野においては、バイオマスの利活用や食品産業の自主行動計画の取組を推進しました。また、施設園芸、農業機械における二酸化炭素排出削減対策を推進しました。

 (イ)業務その他部門の取組

 エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネルギー法」という。)を改正し、現行の「工場・事業場単位」による規制から「企業単位」での総合的なエネルギー管理へ法体系を改正するとともに、一定の要件を満たすフランチャイズチェーンについてチェーン全体を一体と捉え、本部事業者に対し、事業者単位の規制と同様のエネルギー管理を導入することで、工場・オフィスビル等の実効性のある省エネ取組の強化を行いました。また、住宅・建築物に係る省エネルギー措置の届出等の義務付けの対象について、一定の中小規模の建築物へ拡大しました。また、エネルギー需給構造改革推進投資促進税制により、省エネ効果の高い窓、空調、照明等の設備から構成される高効率ビルシステムの普及の推進を行うとともに、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクトに対する支援等を行いました。トップランナー基準については、さらに個別機器の効率向上を図るため、対象を拡大するとともに、すでに対象となっている機器の対象範囲の拡大及び基準の強化を図ります。

 また、平成19年3月に閣議決定された政府実行計画に基づき、政府の事務及び事業に関し、率先的な取組を実施しました。特に、全国の国の庁舎において、太陽光発電、建物緑化、ESCO等のグリーン化を推進しました。政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施しました。

 (ウ)家庭部門の取組

 省エネルギー法を改正し、住宅・建築物に係る省エネルギー措置の届出の義務付けの対象について、一定の中小規模の住宅へ拡大しました。また、消費者等が省エネルギー性能のすぐれた住宅を選択することを可能とするため、住宅等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)や住宅性能表示制度の充実・普及、「住宅事業建築主の判断の基準」に適合していることを表示する住宅省エネラベルの情報提供を実施しました。また、高い省エネ性能を持つ家電(エアコン、冷蔵庫、地デジ対応テレビ)の購入や、断熱性に優れた住宅の新築・リフォームに対し、様々な商品等と交換できるエコポイントを付与する事業を実施しました。さらに、既存住宅について一定の省エネ改修(高断熱窓への取替え等)を行った場合の固定資産税の特例措置を延長しました。

 加えて、地域で活動するNGO・NPO等支援事業により、各家庭のどこからどれだけCO2が排出されているか「見える化」し、その家庭の実情にあった対策を提案する診断事業を試行的に実施しました。

 (エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策として、自動車燃費の改善、車両・インフラに係る補助制度・税制支援等を通じたクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行うとともに、環状道路等幹線道路網の整備等の推進により、交通流対策を実施しました。また、モーダルシフトを含めた物流効率化の促進については、国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主と物流事業者の連携による取組を支援する等、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に取り組みました。さらに、公共交通機関の利用を促進するために、鉄道等新線整備、既存鉄道・バスの利用促進、エコ通勤等の施策を推進しました。

 海上輸送については、海洋環境イニシアティブとして、国際海事機関IMO)において船舶の燃費規制に係る条約改正案を提案し、基本的合意を得るとともに、規制に対応する、船舶の革新的な省エネ技術22件の開発を支援しました。また、スーパーエコシップの普及促進等に取り組みました。また、航空分野においては、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空交通システムの高度化や環境にやさしい空港(エコエアポート)等を推進しました。

 (オ)エネルギー転換部門の取組

 平成22年度の原子力発電による発電電力量は、約2900億kWh(速報値)となりました。また、原子力等のほかのエネルギー源とのバランスやエネルギーセキュリティを踏まえつつ、天然ガスへの転換等その導入及び利用拡大を推進します。太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策によりその導入を促進しました。また、天然ガスコジェネレーションや燃料電池など、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、廃棄物の最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

 また、下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化を推進しました。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 代替フロン等3ガス(HFCPFCSF6)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象とされています。その排出抑制については、産業用途で削減が進んだこと等から大幅に目標を強化し、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画においては基準年総排出量比1.6%減の目標を設定しました。

 この目標に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、平成19年10月から施行された特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収・破壊法」という。)の一部改正法に基づくフロン類回収の一層の徹底のため、引き続きフロン回収・破壊法の周知を行うとともに、「見える化」の一環としてのフロン量の二酸化炭素換算表示の導入、都道府県における施行強化を推進しました。特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

 産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

 また、先導的な排出抑制の取組に対する補助の強化、低温室効果冷媒を用いた省エネエアコン、省エネ性能の高いノンフロン型断熱材等の技術開発、冷媒にフロン類を用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等を実施しました。

 さらに、フロン類の更なる排出抑制に向けた対策強化のあり方について、平成22年4月から産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会、同年7月から中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会にて検討を開始しました。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 京都議定書目標達成計画で目標とされた森林による吸収量1,300万炭素トン(基準年度総排出量比約3.8%)の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進、美しい森林(もり)づくり推進国民運動への支援等の総合的な取組を内容とする森林吸収源対策を展開しました。

 また、都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。

 さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査を行いました。

2 横断的施策

(1)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度により、全国の14,842事業所(7,817事業者)及び1,425の輸送事業者から報告された平成20年度の排出量を集計し、平成22年6月3日に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は二酸化炭素換算で6億1,240万トンで、わが国の平成20年度排出量の約5割に相当します。

(2)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法により、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、事業者が、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を行うに当たって、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされており、こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した排出抑制等指針について、この指針の内容を分かりやすく解説した専用のホームページの拡充をしました。

 また、廃棄物処理部門について、排出抑制等指針の策定に向けた検討を行いました。

(3)国民運動の展開 

 地球温暖化防止のために政府が推進する国民運動「チャレンジ25キャンペーン」を引き続き展開しました。

 「チャレンジ25キャンペーン」では、オフィスや家庭などにおいて実践できるCO2削減に向けた具体的な行動を「6つのチャレンジ」として提案し、その行動の実践を広く呼びかけており、趣旨に賛同していただいたすべての個人、企業・団体に対し、「チャレンジ25キャンペーン」への参加・登録を呼びかけました。

 また、キャンペーンの一環として、以下の取組を中心に各主体の協力を得て様々な呼びかけを行いました。

 「COOLBIZ(クールビズ)」:夏期の冷房設定を28℃にして快適に過ごすビジネススタイル「クールビズ」について、「夏のカイテキ、楽しくつくろう」をテーマに、クールビズの実践で楽しく快適なライフスタイルを呼びかけました。

 「WARMBIZ(ウォームビズ)」:冬期の暖房設定を20℃にして快適に過ごすビジネススタイル「ウォームビズ」について、「地球にもっと、やさしい冬を。」をテーマに、"あったか忍者「あった丸」"を新たなキャラクターとして、衣類、食事、室内での過ごし方などを工夫し、暖房に頼らずに暖かく過ごすライフスタイルを提案しました。

 「朝チャレ!(朝型生活にチャレンジ)」:朝から活動して夜には早く休み、夜遅くまで使用していたエアコン、テレビ、照明などの使用時間を減らすとともに、1日を有意義に健康的に過ごし、自分にも地球にとってもプラスの習慣を「朝チャレ!」と名付け、呼びかけを行いました。

 「smart move(スマート・ムーブ)」:"「移動」を「エコ」に。"をテーマに、よりCO2排出量の少ない「移動」にチャレンジする「smart move(スマート・ムーブ)〜地球にやさしい移動にチャレンジ!」を提案し、エコなだけでなく、便利で快適に、しかも健康にもつながるライフスタイルを呼びかけました。

(4)「見える化」の推進

 温室効果ガスの「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言います。政府では、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルにいたるまでのライフサイクル全体を通しての温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、当該商品・サービスに簡易な方法で分かりやすく表示する「カーボンフットプリント制度」の構築・普及等の取組を進めています。また、「見える化」による温室効果ガスの削減効果の把握のため、家庭への「見える化」機器の設置による実測調査を行うとともに、事業者が提供する商品・サービスに係る「見える化」の評価・広報事業を実施しました。また、国民が日常生活においてさまざまな商品やサービスを使用した際に発生する温室効果ガスの排出量や、その削減のための具体的な方法について情報提供するウェブサイト(日常生活CO2情報提供ツール)を公開しました。また、事業者において、原料調達・物流・製造・使用・廃棄などサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の算定方法を検討することによって当該排出量の見える化を促進するための検討を開始しました。

(5)公的機関の率先的取組

 政府における取組として、地球温暖化対策推進法及び京都議定書目標達成計画に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」が旧実行計画を引き継ぐ形で平成19年3月に閣議決定されています。この新しい計画は、19年度から24年度までの期間を対象とし、22年度〜24年度の平均の温室効果ガス排出量を、13年度比で8%削減することを目標としています。

 なお、平成20年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は162万トン(平成13年度値の18.9%減)でした。

 都道府県、指定都市、中核市及び特例市(指定都市等)については、平成20年の地球温暖化対策推進法の改正により、地方公共団体実行計画において、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する計画を定めるものとされています。計画策定を推進するため、政府においては、土地利用・交通、地区・街区に関する都市・地域の低炭素化手法の検討を行いました。また、指定都市等以外の市町村における計画策定を推進するための説明会や意見交換会を行いました。また、都道府県に加え指定都市等も、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱できることとされました。さらに、地方公共団体、関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により実行計画協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう措置しました。

(6)税制のグリーン化

 「地球温暖化対策のための税」の導入をはじめ、燃費の良い自動車への転換を促す税制等も地球温暖化対策のための重要な施策です。

 税制のグリーン化の詳細については、第6章第8節1を参照してください。

(7)国内排出量取引制度

 国内排出量取引制度については、2005年度から、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、現在まで357社の企業が参加しています。

 2008年10月からは、「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」を開始しました。本試行実施については、1,000を超える企業等(JVETSへの参加企業を含む)から参加申請があり、2009年度に目標を設定した参加者については、自らの排出削減に加えて排出枠の取引等も活用し、すべての参加者が目標を達成しました。また、国内クレジット制度については、制度開始以降、2011年3月時点で、全国各地から870件の事業計画が提出され、2012年度末までに累計約129万トンCO2の排出削減が見込まれています。

 2010年3月には、国内排出量取引制度の創設を盛り込んだ「地球温暖化対策基本法案」を通常国会に提出しましたが、審議未了で廃案となったため、同年10月に臨時国会に提出し、2011年の通常国会において継続審議とされています。

 この間、環境省では、2010年4月に中央環境審議会地球環境部会国内排出量取引制度小委員会を設置し、関係業界・団体からのヒアリング等の結果も踏まえつつ、国内排出量取引制度のあり方について専門的な検討や論点整理を行い、同年12月に制度のあり方について中間整理を取りまとめました。

 また、経済産業省では、2010年6月に産業構造審議会環境部会地球環境小委員会政策手法ワーキンググループを設置し、関係業界・団体からのヒアリング等の結果も踏まえつつ、国内排出量取引制度を含む温暖化対策に関する各政策手法について検討し、同年9月に議論の中間整理を取りまとめました。

 2010年12月には、地球温暖化問題に関する閣僚委員会において、国内排出量取引制度を含む地球温暖化対策の主要3施策についての政府方針を取りまとめ、国内排出量取引制度については、わが国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行うこととしました。

(8)カーボン・オフセット

 適切なカーボン・オフセット(以下、「オフセット」という。)の普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成20年2月)に基づき、下記の取組を行いました。

・平成21年度に引き続き、オフセットの取組に関する普及啓発・相談支援等を行う「カーボン・オフセットフォーラム」(以下、「J-COF」という。)を運営しました。また、22年度のオフセット関連情報を「平成22年度カーボン・オフセット白書」として取りまとめました。

・昨年度に引き続き、模範的なオフセットの取組を示すことを目的としてモデル事業を実施し、平成22年8月に、10件の取組を採択しました。「カーボン・オフセットEXPO」(計3回)や「カーボン・オフセットリーダー研修」(計5回)を全国各地で開催し、普及・啓蒙活動に努めました。

・平成21年3月に策定した「カーボン・オフセットの取組に対する第三者認証機関による基準」に基づいて、認証を受けた取組にラベルを付与する「カーボン・オフセット認証制度」が、平成21年5月より気候変動対策認証センターにより開始されました。平成23年1月現在までに56件が認証されています。

・平成22年7月に「会議・イベントにおけるカーボン・オフセット検討会」を設置し、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等が会議・イベントを開催する際に、より広くカーボン・オフセットを実施出来るための対応策を検討し、関連するカーボン・オフセットに関する基準類の見直しを行うとともに、カーボン・オフセットを実施する際の手順を示した「会議・イベントにおけるカーボン・オフセットの取組のための手引き」を策定しました。

・平成20年11月に創設した、国内のプロジェクトによる温室効果ガス排出削減・吸収量をオフセットに用いることのできるクレジットとして「オフセット・クレジット(J-VER)制度」(以下、「J-VER制度」という。)の活用を促進するため、モデル事業の実施等により制度の対象となるプロジェクトを拡充するとともに、J-VER制度を活用する事業者等への支援事業を行いました。

 また、平成21年12月に、温室効果ガスの削減・吸収量をクレジットとして認証・発行する都道府県の制度が、J-VER制度に整合していると認められる場合、当制度により発行されたクレジットをJ-VERと同列に扱う「都道府県J-VERプログラム認証」の仕組みを開始しました。

 平成23年2月現在、J-VER制度の対象となるプロジェクトは28種類で、木質バイオマスの活用や森林の整備に関するプロジェクトを中心に89件が登録されています。J-VER制度の活用により、中小企業や農林業等の地域におけるプロジェクトにカーボン・オフセットの資金が還流するため、地球温暖化対策と地域振興が一体的に図られました。

 さらに、上記のような取組について国と地方自治体との情報・意見交換を行うためのネットワークとして、平成20年6月に設立された日本カーボンアクション・プラットフォーム(JCAP)を運営しています。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定手法の改善等

 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関する条約事務局による審査の結果等を踏まえ、インベントリの算定方法の改善について検討しました。

(2)地球温暖化対策技術開発の推進

 地球温暖化対策の技術開発・実用化は、その普及を通じて環境と経済の両立を図りつつ、将来にわたり大きな温室効果ガス削減効果が期待できる取組であり、第3期科学技術基本計画の分野別推進戦略の下、関係各府省が連携し、産学官で協力しながら総合的な推進を図りました。

 農林水産分野においては、地球温暖化適応策の農業生産現場への普及・指導や、地球温暖化が将来の農林水産業に与える予測研究、適応策に関する技術開発を推進しました。

 また、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を行うとともに、温室効果ガスの排出を削減させる技術、森林や農地土壌などの吸収機能を向上させる技術の開発を推進しました。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化に関する科学的知見を充実させ、一層適切な行政施策を講じるため、引き続き、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。また、環境研究総合推進費では、平成22年度に、温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究の1戦略プロジェクトを開始しました。

 2009年(平成21年)4月に開催されたG8環境大臣会合では、各国の低炭素社会にかかわる研究機関による「低炭素社会国際研究ネットワーク」(LCS-RNet)の発足が了承され、2010年9月には、ドイツにおいて第2回年次会合が開催されました。現在、日本を含む7か国から15機関が参加しています。

 また、わが国における地球温暖化の観測・予測及び影響評価に関する知見を取りまとめた統合レポート「日本の気候変動とその影響」を作成し、2009年10月に公表し、2010年11月には、地方自治体等の適応策実施を支援することを目的として「気候変動適応の方向性」をとりまとめ、公表しました。

 さらに、地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(地球温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。加えて、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を平成21年1月に打ち上げ、10月からは一般へのデータ提供を開始しました。

4 フロン等対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

 オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、日本では、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

 さらに、開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した二国間協力事業、開発途上国のフロン等対策に関する研修・専門家の派遣等を実施しました。

 また、国際会議等において、ノンフロン技術やオゾン層破壊物質の回収・破壊に関する日本の技術・制度・取組を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

 日本では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-1)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量−輸出量)の段階的削減を行っています。臭化メチルについては、「臭化メチルの不可欠用途を全廃するための国家管理戦略」を改正し、適切な代替手段がないために現在も使用している用途のさらなる削減を図っています。HCFCについては2020年(平成32年)をもって生産・消費が全廃されることとなっています。


図1-3-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理などの適正な管理を進めています。

(3)フロン類の回収・破壊の促進

 主要なオゾン層破壊物質の生産は、日本ではすでに全廃されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFC京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン回収・破壊法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、再利用される分を除き、破壊されることとなっています。平成21年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-1図1-3-2のとおりです。


表1-3-1 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(平成21年度)


図1-3-2 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(平成21年度)

 平成19年10月に施行された改正フロン回収・破壊法には、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が新たに規定され、これらに基づき、関係省庁・関係業界団体による周知、都道府県の法施行強化等、フロン類回収の一層の徹底を図っています。



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