第9節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保

 ア 多国間の枠組みによる連携

 (ア)国連を通じた取組

 [1]ヨハネスブルグ・サミット後の持続可能な開発に向けた取組

 ヨハネスブルグ・サミットにおいて採択された「実施計画」が着実に実施され、持続可能な開発に向けた全世界的な取組が強化されるよう国連持続可能な開発委員会CSD)等を通じて、最大限貢献していきます。

 [2]国連環境計画UNEP)における活動

 環境基金への財政的な支援を引き続き行うとともに、管理理事会で決定された重点分野のさらなる推進のため、日本の環境分野での多くの経験と豊富な知見を生かし、今後とも積極的に貢献します。また、UNEP親善大使を通じて草の根環境保全活動を推進します。

 UNEP国際環境技術センターIETC)が実施する開発途上国等への環境上適正な技術(EST)の移転に関する支援及び環境保全技術に関する情報の収集・整備及び発信への協力等を継続するとともに、関係府県市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を引き続き支援します。

 また、UNEPアジア太平洋地域事務所(ROAP)が実施する、アジア太平洋地域における持続可能な開発のためのショーケースプロジェクトを支援します。

 [3]国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)

 平成22年9月末に開催予定のMCED6に向けて、アジア太平洋地域における環境と開発に関する日本の経験と知見を生かし、積極的に貢献します。

 (イ)世界気象機関WMO)における取組

 WMOが実施する地球環境保全のための取組について、アジア太平洋地域をはじめとする各国の気象機関等と協力して推進します。

 (ウ)経済協力開発機構OECD)における取り組み

 平成22年1月に就任した環境政策委員会の議長や、同委員会の下でのわが国に対する3度目の環境保全成果レビュー等の着実な実施を通じ、今後ともOECDの環境分野における活動に積極的に参画・貢献します。

 (エ)世界貿易機関(WTO)等における取組

 自由貿易の推進と環境保全の両立を図っていくよう、WTOにおける議論に積極的に参加します。またWTOにおける多国間の貿易自由化に加え、最近取組が進んでいる二国間の経済連携協定等の推進に当たっても、貿易をはじめとする国際経済活動と環境保全との相互支持性を向上させるための具体的取組をさらに進めます。

 (オ)アジア太平洋地域における取組

 平成20年に開催された第1回東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合の結果を受けて、東アジアにおける「環境的に持続可能な都市」の実現に向けた協力を積極的に進めるとともに、第2回EAS環境大臣会合及び第9回ASEAN+3(日中韓)環境大臣会合の成功に向けて、引き続きアジア地域の環境協力において主導的役割を果たします。また、環境と共生しつつ経済発展を図り、持続可能な社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブを引き続き推進していきます。

 平成22年度に第12回を迎える日中韓三カ国環境大臣会合TEMM)は、わが国で開催されることが予定されており、わが国のリーダーシップによって、三カ国共同行動計画の策定等、会合の成功に貢献していきます。また、北東アジア準地域環境協力プログラム(NEASPEC)等への積極的な参加を通じ、北東アジア地域、さらには地球規模の環境保全に関する政策対話の強化に努めます。

 地球温暖化アジア太平洋地域セミナーを今後とも開催するとともに、東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANET)を推進します。

 黄砂については、中国、韓国、モンゴル等の関係各国や国際機関との連携を強化しつつ、国際的なプロジェクト等を推進していきます。

 アジア水環境パートナーシップ(WEPA)事業を推進するため、関係各国と連携し、水環境ガバナンス向上に向けた人材育成、ネットワークの拡充を行います。また、その過程で得られた有益な情報等を収集・整理し、WEPAデータベースを充実させます。

 アジア諸国における石綿対策技術支援については、過去の3年間の実績を踏まえ、石綿対策のプライオリティの高い国を対象として、大気環境中の石綿濃度の実態把握の第一段階である石綿の発生源情報の把握及び整理について協力を行います。

 一方、石綿対策のプライオリティの低い国に対しては、石綿に関する基礎的な研修を行います。

 アジアEST地域フォーラムの枠組みを通じて、今後ともほかの参加国と協働しながら、国際連合地域開発センター(UNCRD)とともに、アジア地域における環境にやさしい交通の実現を目指す取組を進めます。

 日本モデル環境対策技術等の国際展開については、中国・ベトナム・インドネシアの状況に応じた日本の技術の普及・展開方策の具体化を進めるとともに、関連する各国との協力事業を引き続き推進します。

 東アジア地域の非意図的生成残留性有機汚染物質POPs)削減に関するワークショップを今後とも開催し、わが国に係るダイオキシン類対策に係る経験の発信等を通じて、国際協力の推進を図ります。

 (カ)世界的な問題解決に向けた国際連携の強化

 国連水と衛生に関する諮問委員会等、水に関する国際会議へ積極的に参加し、日本の経験や知恵、すぐれた技術の情報発信などにより、世界的な水問題の解決に向けて貢献します。

 また、日本国政府が作成に協力したUNESCOの「河川流域における総合水資源管理(IWRM)ガイドライン」を活用しつつ、UNESCOやアジア河川流域ネットワーク(NARBO)と連携して、環境も含めた総合水資源管理の促進に貢献します。

 また、下水道システムの海外展開における技術支援や、国内外の関係者をつなぐ国際的なプラットフォームとして設立された「下水道グローバルセンター」や、基礎的な衛生施設、浄化槽等のオンサイトの汚水処理や都市の汚水・雨水対策としての下水道の整備まで幅広いサニテーションを視野に入れアジア太平洋地域のナレッジ・ハブとして設立された「日本サニテーションコンソーシアム」を中心として、わが国のすぐれた下水道技術や、浄化槽等のオンサイト処理システムに関する技術の海外展開により、世界の水と衛生問題の解決に向けた取組を推進します。

 国際熱帯木材機関(ITTO)に関しては、平成22年12月に横浜市で開催予定である第46回理事会に積極的に参加し、熱帯木材の貿易と有効利用、熱帯林の持続可能な経営等に関する議論及び国際協力の推進に貢献します。また、ITTOへの拠出を通じ、熱帯林の持続可能な経営及び違法伐採対策等を推進するための支援を行います。

 イ 二国間の枠組みによる連携

 米国、ロシア、中国、韓国等との環境保護協力協定に基づく協力、米国、ドイツ等との科学技術協力協定に基づく共同研究・調査等、モンゴル、インド等との環境政策対話を進めます。

 特に中国においては、引き続き、環境汚染対策分野における協力を推進します。

 ウ 国際的な連携の確保に資する海外広報の推進

 国際的に要望の高い行政資料の英語版、目的に応じた海外広報用資料などの作成・配布やインターネットを通じ、環境問題に対する取組につき積極的に海外広報を行います。

(2)開発途上地域の環境の保全

 温暖化対策、酸性雨対策、オゾン層保護対策、砂漠化対策、国際河川流域環境管理、生物多様性保全、化学物質管理など、地球規模及び広域的問題の解決に対して、積極的に貢献します。その際、二国間協力と多国間協力の連携を強化し、プロジェクト形成機能の強化を図ります。

 日本の経験や技術をいかしつつ、コベネフィット・アプローチによる協力を進めるなど、途上国の環境分野における主体的な取組強化と対処能力向上を促し、持続可能な開発を支援します。

 また、世界銀行、UNDP、UNEPなどの国際機関を通じた協力やほかのドナー国との連携を進めます。

(3)国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備

 地球環境保全などに関する国際的な連携に資するため、東アジアを中心とした諸外国の環境の状況や国際機関の環境保全戦略に関する情報収集に努めるとともに、国民の理解と支持を得るため、環境省ホームページを活用した広報等を積極的に行います。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

 「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」に基づき、地球観測に関する政府間会合GEO)の専門委員会である構造及びデータ委員会の共同議長国として、GEOSS構築に向けた取組に積極的に貢献します。また、「地球観測の推進戦略」に基づき、関係府省の連携の下、実施方針を策定し、地球観測を行います。

 「統合地球観測戦略(IGOS)パートナーシップ」において、8つのテーマ(海洋、大気化学、炭素循環、水循環、陸域災害、沿岸/サンゴ礁、雪氷圏、陸域)の下、全球海洋観測及び全球水循環観測等が実施段階となっており、熱帯降雨観測衛星(TRMM)及び米国地球観測衛星(Aqua)の改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)等による観測データを活用し、積極的に国際的な観測・監視計画に貢献します。なお、IGOSは第4回地球観測サミット(2007年11月)において承認され、GEOSSに統合することとされています。

 地球環境の監視・観測については、GAW計画を含むWMOの各種計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、全球気候観測システム(GCOS)、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加・連携して実施します。

 温室効果ガスなどの観測・監視に関し、WMO温室効果ガス世界資料センターとして全世界の温室効果ガスのデータ収集・管理・提供業務を、WMO品質保証科学センターとしてアジア・南西太平洋地域における観測データの品質向上に関する業務を、さらにWMO全球大気監視較正センターとしてメタン等の観測基準(準器)の維持を図る業務を引き続き実施します。さらに、黄砂に関する情報及び有害紫外線に関する情報の発表を継続します。

 気象の観測・監視に関し、WMOやGCOS等が推進する気候変動の監視等のための総合的な観測システムの運用・構築に積極的に参加するほか、世界各国からの地上気候観測データの入電数状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務やアジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を各国気象局と連携して推進します。また、アジア太平洋気候センターを通じて、アジア太平洋地域各国の気象機関に対し基盤的な気候情報を引き続き提供するとともに、気候情報提供の改善や域内各国の人材育成への協力などを通じて、域内各国の気候情報業務の改善に協力していきます。

 さらに、VLBI(超長基線電波干渉法)やGPSを用いた国際観測に参画するとともに、験潮・絶対重力観測等と組み合わせて地球規模の地殻変動等の観測・研究を行います。

 化学物質についても、東アジア地域における残留性有機汚染物質POPs)の汚染実態の把握を目的としたモニタリングを、引き続き主導的役割を果たしつつ強力に推進します。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実、強化

 アジア太平洋地球変動研究ネットワークAPN)においては、2010年3月に策定された第3次戦略計画に基づいて、神戸市内のAPNセンターを中核として、地域内の研究活動等の支援を積極的に行います。特に、日本がヨハネスブルグ・サミットにおけるパートナーシップ・イニシアティブの一つとして提唱した「持続可能な開発に向けた開発途上国の研究能力開発・向上プログラムCAPaBLE)」を着実に推進します。

 地球地図プロジェクトを主導し、各国と協力して、地球環境の現状を表す地球地図の提供を進めます。また、国際連合アジア太平洋地域地図会議の決議に基づき、アジア太平洋地域の各国と協力しつつ、引き続き基盤的地理空間情報の整備等を推進していきます。

 また、引き続き東アジアをリアルタイムでカバーできる温暖化影響観測ネットワーク網の構築により東アジアの環境影響評価を行うとともに、気候変動影響に対して脆弱なアジア太平洋地域における気候変動への適応について関係機関の能力強化を図るアジア太平洋気候変動適応ネットワークを支援します。

3 国際協力の実施等に当たっての環境配慮

 ODA及びその他公的資金においては、平成22年4月1日に旧JICAと旧JBICの環境社会配慮ガイドラインを一本化した新ガイドラインが策定され平成22年7月1日から、同ガイドラインによる事業を開始します。

4 地方公共団体や民間団体による活動の推進

 開発途上国の自立的取組の促進のため、地方公共団体、民間団体、事業者などの役割を踏まえた多元的パートナーシップを形成しつつ、厚みのあるきめの細かい協力を推進します。

(1)地方公共団体の活動

 環境分野において豊富な経験と人材を有し、また独自に国際環境協力を実施している地方公共団体との連携を一層推進します。また、地方公共団体等が国際協力機構と連携して行う草の根技術協力事業の活用を進めます。

(2)民間の活動

 外務省の草の根・人間の安全保障無償資金協力、日本NGO連携無償資金協力、NGO事業補助金、JICAの草の根技術協力等の既存の支援策を引き続き活用するとともに、支援策の拡充・強化を図ります。



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