この文書の記載事項については、数量、金額等は概数によるものがあり、また、今後変更される場合もあることに注意して下さい。


平成22年度 環境の保全に関する施策

平成22年度 循環型社会の形成に関する施策

平成22年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策

第1章 低炭素社会の構築

第1節 地球温暖化対策に係る国際的枠組みの下での取組

〈気候変動に関する国際的取組〉

 IPCC第4次評価報告書によると、現在、温室効果ガスの排出量は地球の自然吸収量の2倍以上であり、大気中の温室効果ガス濃度の安定化のためには、世界全体の排出量を自然吸収量と同等にすることが必要です。G8北海道洞爺湖サミットで合意した2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも半減する長期目標を、気候変動枠組条約の全締約国で共有し採択することを求めていきます。この実現に向け、世界全体での排出量をできる限り早期にピークアウトさせることを目指し、低炭素社会の構築や革新的技術開発の推進を含む2050年までの世界全体の排出量の削減のあり方を共有するとともに、2050年までに自らの排出量を80%削減することを目指します。さらに、2020年までの中期目標については、地球温暖化を止めるために科学の要請する水準に基づくものとして、すべての主要国による公平かつ実効性のある枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、1990年比でいえば25%の温室効果ガスの排出削減を目指します。わが国を含む先進国が、力強い削減を敏連に実地することにより世界全体の取組を主導し、G8の枠組みを含め、各種二国間会合や多数国間会合における成果を国連の下での議論へ適切に反映させるとともに、2009年のCOP15で取りまとめられたコペンハーゲン合意への賛同国の拡大と削減目標・行動の提出に向け、各国に働きかけを行います。コペンハーゲン合意を基礎として、すべての主要国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みを構築する包括的な一つの法的文書の採択を目指し、引き続き国際的なリーダーシップを発揮します。この中で、COP16の成功に向けて、議長国であるメキシコ等と緊密に連携して積極的に取り組んでいきます。

 また、京都議定書の未締結国に対し、次期枠組みへの参加を働きかけます。

 さらに、地球温暖化防止のため、今後の国際交渉の状況を注視しつつ、気候変動対策に取り組む意欲的な途上国に対して「鳩山イニシアティブ」による支援を実施することに加え、地球環境ファシリティGEF)等の多数国間基金への拠出、コベネフィット・アプローチ等に基づく二国間の技術・資金協力の推進及びアジアにおいてコベネフィット・アプローチを推進するためのネットワークの設立、国際民間航空機関ICAO)及び国際海事機関IMO)における国際航空分野及び国際海運分野からの温室効果ガス排出削減に関する検討等を引き続き実施します。

 クリーン開発メカニズムCDM)や共同実施JI)等の京都メカニズムをさらに活用していく観点から、有望なプロジェクトをCDM/JIプロジェクトとして実施することができるよう、政府が一体となって引き続きさまざまな支援を行います。

 これまで行ってきた開発途上国等におけるプロジェクトの発掘及び事業化をさらに強化するため、プロジェクトの実施可能性調査を引き続き行うとともに、ホスト国の承認体制やホスト国での事業ニーズの調査、CDM/JI事業実施マニュアル等、CDM/JIプロジェクトを実施する民間事業者が必要とする情報を収集し、効果的に提供します。

 また、ホスト国におけるCDM/JIプロジェクトの受入れに係る制度構築、人材育成及び実施計画の策定等に対する支援事業を引き続き実施し、「コベネフィットCDMモデル事業」を拡充するとともに、コベネフィット定量評価マニュアルの普及に努めます。

 京都議定書の目標達成のため、わが国は国内対策に最大限取り組んだとしてもなお目標達成に不足すると見込まれる差分について、京都メカニズムを活用したクレジットの取得によって確実に対応することが必要であり、政府はNEDOを活用し、[1]リスクの低減を図りつつ、費用対効果を考慮して取得すること、[2]地球規模での温暖化の防止、途上国の持続可能な開発への支援を図ること、という観点を踏まえ、クレジットの取得を引き続き行います。

 このような現行の柔軟性メカニズムの改善に加えて、日本が世界に誇るクリーンな技術や製品、インフラ、生産設備などの提供を行った企業の貢献が適切に評価されるよう、また、途上国における森林減少及び劣化への対策なども気候変動対策として適切に評価されるよう検討することを含め、新たなメカニズムを提案していきます。

 IPCCの評価報告書の執筆・審議に参加する専門家をサポートする等、IPCCの活動に対する人的、技術的、資金的な貢献を行います。また、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためにIGESに設立されたインベントリータスクフォースの技術支援組織を引き続き支援します。

 官民が協力して取り組むクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップAPP)では、わが国が議長を務める鉄鋼及びセメントタスクフォースをはじめとする8つのタスクフォースにおいて、セクター別に削減ポテンシャル等の評価、最良の技術の特定や、ベストプラクティスの共有を通じた効率的な技術移転の促進、人材育成、技術開発、技術実証等の活動を引き続き進め、温室効果ガス排出削減等に取り組んでいきます。

 また、地球温暖化アジア太平洋地域セミナーを引き続き開催し、測定・検証・報告可能な(MRV)途上国の削減行動のあり方を含めた同地域における地球温暖化の諸課題について、意見交換やキャパシティ・ビルディング等を通じた途上国支援に努めます。



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