第2節 地球環境の保全のための施策

1 オゾン層保護対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

 オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、日本では、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

 さらに、開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施を支援するため、議定書に基づく多数国間基金を利用した二国間協力事業、開発途上国のオゾン層保護対策に関する研修・専門家の派遣等を実施しました。

 また、国際会議等において、ノンフロン技術やオゾン層破壊物質の破壊に関する日本の技術、フロン回収・破壊に係る日本の制度・取組、土壌用臭化メチル全廃に向けた日本の取組や技術開発の進捗状況を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

 日本では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図2-2-1)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量−輸出量)の段階的削減を行っています。臭化メチルについては、「臭化メチルの不可欠用途を全廃するための国家管理戦略」を改正し、適切な代替手段がないために現在も使用している用途のさらなる削減を図っています。HCFCについては2020年(平成32年)をもって生産・消費が全廃されることとなっています。


図2-2-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理などの適正な管理を進めています。

(3)フロン類の回収・破壊の促進

 主要なオゾン層破壊物質の生産は、日本ではすでに全廃されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFC京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン回収・破壊法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、再利用される分を除き、破壊されることとなっています。平成20年度の各機器からのフロン類の回収量は表2-2-1図2-2-2のとおりです。


表2-2-1 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(平成20年度)


図2-2-2 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(平成20年度)

 平成19年10月に施行された改正フロン回収・破壊法には、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が新たに規定され、これらに基づき、関係省庁・関係業界団体による周知、都道府県の法施行強化等、フロン類回収の一層の徹底を図っています。

2 酸性雨・黄砂に係る対策

(1)酸性雨

 東アジア地域においては、近年の経済成長等に伴い酸性雨原因物質の排出量が増加しており、近い将来、酸性雨による影響の深刻化が懸念されています。

 このため、東アジア地域において、酸性雨の現状やその影響を解明するとともに、酸性雨問題に関する地域の協力体制を確立することを目的として、日本のイニシアティブにより、平成13年から東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANET)が本格稼働しており、現在、東アジア地域の13ヶ国が参加しています。(図2-2-3)2000〜2004年における降雨のpHの年平均値は、4.2〜6.1(一般に5.6以下を酸性雨と呼んでいる。)の範囲に分布しており、中国南西部で強い酸性雨が報告されています。


図2-2-3 EANET 地域の降水中pH(2000-2004年の平均値)

 EANETでは、平成17年に開催されたEANET第7回政府間会合の合意に基づき、参加国がEANETへ拠出金を提供する基盤を明確にする文書について議論が行われてきましたが、現在、文書の採択と署名に向けた調整が行われているところです。また、平成18年の第8回政府間会合では、2006〜2010年にEANETが進めるべき越境大気汚染に関する調査研究等に係る「EANET発展戦略」が採択されました。わが国は、EANETの活動を技術面・資金面から支援しており、こうした活動を積極的に推進しています。

 また、国内では、越境大気汚染及び酸性雨による影響の早期把握、大気汚染原因物質の長距離輸送や長期トレンドの把握、将来影響の予測を目的として、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」に基づき、国内の湿性・乾性沈着モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリングを行っています。平成21年3月には、平成15年度〜19年度のモニタリング結果、及び周辺土壌等の酸性化が認められた伊自良湖集水域での重点調査結果を取りまとめた報告書を公表したほか、大気汚染物質の長距離輸送の監視や生態系への影響監視の強化の観点からモニタリング計画の見直しを行っており、継続的なモニタリングを実施しています。

(2)黄砂

 日中韓三カ国黄砂局長会合等において、北東アジア地域における黄砂対策の地域協力について検討が行われており、平成19年12月に開催された第9回日中韓三カ国環境大臣会合における合意を受けて、平成20年から黄砂共同研究を開始しました。

 また、国内では、黄砂の物理的性質(黄砂の粒径)や化学的性質(黄砂の成分)を解明するため、平成14年度より黄砂実態解明調査を実施しており、平成20年6月に14年度〜19年度の調査結果を取りまとめた報告書を公表しました。また、わが国への黄砂の飛来状況を把握するとともに、国際的なモニタリングネットワークの構築にも資するものとして、(独)国立環境研究所と協力して、高度な黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリングネットワークを整備しています。さらに、平成19年度より、国内外のライダー装置によるモニタリングネットワークの観測データをリアルタイムで提供する環境省黄砂飛来情報ページを環境省のホームページ上で春季に運用しています。(http://soramame.taiki.go.jp/dss/kosa/

3 海洋環境の保全

(1)海洋汚染の防止等

 ロンドン条約1996年議定書の締結に向けた平成16年の海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染防止法」という。)の改正による海洋投入処分の許可制度等の導入を受け、海洋投入処分を行うことができる廃棄物を規定している廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令を平成18年10月に改正、平成19年4月から施行し、許可制度の適切な運用を図っています。

 また、廃棄物の海底下廃棄を原則禁止し、二酸化炭素の海底下廃棄に係る許可制度を創設するため、海洋汚染防止法の改正等を行い、平成19年11月から施行されており、平成20年4月から二酸化炭素の海底下への貯留に係る許可制度の適切な運用を図ることを目的に、海洋に関する環境影響評価やモニタリング等の海洋環境の保全上適正な管理手法の高度化に関する開発を行っています。

 なお、平成21年10月に、IMO国際海事機関)において、CCSを目的とする二酸化炭素の越境移動に関するロンドン条約1996年議定書改正案が採択され、議定書が改正されました。

 船舶のバラスト水中に混入する水性生物の越境移動を防止するため、平成16年2月にIMOにおいて採択されたバラスト水管理条約について、早期の発効に向けた取組を進めています。

 中国、韓国、ロシアとわが国の4か国による日本海及び黄海の環境保全のための北西太平洋地域海行動計画NOWPAP)に基づき、対象海域の状況を把握するために人工衛星を利用したリモートセンシング技術による海洋環境モニタリング手法の開発等を進めています。また、ウェブページからの解析データ提供を目的とした環日本海海洋環境ウォッチシステムを構築し、水温、植物プランクトン濃度等の観測データを取りまとめました。このデータの活用のための教材の開発や解析トレーニング研修を実施しており、赤潮や青潮など海洋環境に影響を与える現象の原因究明に係る研究に利用されました。

 さらに、NOWPAP富栄養化状況評価手順書を作成し、各国が本手順書に基づいて各海域における富栄養化状況の診断を始める体制を整えました。

 未査定液体物質の査定については、船舶によって輸送される有害液体物質等に関し、MARPOL条約附属書IIが改正され、平成19年1月1日から汚染分類が変更となりました。新基準に基づき、環境大臣が海洋環境保全の見地から有害性の確認がなされていない液体物質(未査定液体物質)の査定を行っています。

(2)排出油等防除体制の整備

 1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約(以下「OPRC条約」という。)及び2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書(以下「OPRC-HNS議定書」という。)に基づき、「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を策定し、環境保全の観点から油等汚染事件に的確に対応するため、脆弱沿岸海域図の公表、関係地方公共団体等に対する傷病鳥獣の救護及び事件発生時対応のあり方に対する研修・訓練を実施しました。

(3)海洋環境保全のための監視・調査

 日本周辺海域の海洋環境の現状を把握するとともに、国連海洋法条約の趣旨を踏まえ、領海・排他的経済水域における生態系の保全を含めた海洋環境の状況の評価・監視のため、水質、底質、水生生物を総合的・系統的に把握するための海洋環境モニタリングを行いました。

 また、東京湾・伊勢湾・大阪湾における海域環境の観測システムを強化するため、各湾でモニタリングポスト(自動連続観測装置)を設置しました。

(4)監視取締りの現状

 海上環境事犯の一掃を図るため、沿岸調査や情報収集の強化、巡視船艇・航空機の効果的な運用等により、日本周辺海域及び沿岸の監視取締りを行っています。また、潜在化している廃棄物・廃船の不法投棄事犯や船舶からの油不法排出事犯に重点をおき、悪質な海上環境事犯の徹底的な取締りを実施しました。最近5か年の海上環境関係法令違反件数は図2-2-4のとおりで、平成21年は739件を送致しています。


図2-2-4 海上環境関係法令違反送致件数の推移

(5)漂流・漂着ゴミ対策

 漂流・漂着ゴミの被害が著しいモデル地域を対象に詳細な調査を実施し、漂流・漂着ゴミの実態を把握するとともに、地域の実情に応じた効率的かつ効果的な回収・処理方法や今後の対策のあり方の検討を行いました。

 また、漂着ゴミのモニタリング実施に当たっての課題等を整理し、地域の関係者との連携による漂着ゴミの状況把握手法について検討整理しました。

 さらに、災害はもとより災害に起因しない漂着ごみを市町村が処理した場合に「災害等廃棄物処理事業費補助金」により支援を行うとともに、広範囲にわたり堆積した海岸漂着ゴミや流木等を処理するため、「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」による支援も行っています。

 また、平成21年7月には、美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)が成立しました。そして、都道府県が設置する地域グリーンニューディール基金への補助により、都道府県又は市町村が海岸管理者等として実施する海岸漂着物等の回収・処理に関する事業や、都道府県や市町村による海岸漂着物等の発生抑制対策に関する事業等に対する支援を行っています。

 漂流ゴミについては、船舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及び有明・八代海の閉鎖性海域において、海面に漂流する流木等のゴミの回収や船舶等から流出した油の防除等を行いました。

 国際的な対応としては、長崎県平戸市において、NOWPAPの枠組みの下で、各国間の情報交換や、一般市民への普及啓発を目的としたクリーンアップキャンペーン・ワークショップを実施し、海洋ゴミの回収・収集が行われるとともに、関係者による情報交換が行われました。医療系廃棄物や廃ポリタンク等の大量漂着については、二国間又は多国間の会議において、関係各国に対し原因究明や適正な廃棄物管理の申し入れを行いました。

4 森林保全と持続可能な森林経営の推進

 世界の森林減少は、地球温暖化の進展及び生物多様性の損失に深刻な影響を与えています。この森林減少を抑制するためには、持続可能な森林経営を実現する必要があります。

 平成4年の地球サミットにおいて、森林原則声明及びアジェンダ21が採択され、以降、世界の森林の持続可能な経営に関する国際的な議論が行われています。わが国は、これらの議論に参画・貢献するとともに、関係各国、各国際機関等と連携を図るなどして国際的な取組を推進しています。

 わが国は、持続可能な森林経営の進ちょく状況を客観的に把握・分析・評価するための「基準・指標」を作成・適用する取組として、欧州以外の温帯林等を対象とした「モントリオール・プロセス」に参加しており、平成19年1月より事務局を務めるなど、積極的に取り組んでいます。

 平成21年4月から5月にかけてニューヨークで開催された国連森林フォーラムUNFF)第8回会合では、気候変動、森林減少・劣化、砂漠化、生物多様性の損失等の課題に対処する上での持続可能な森林経営の実施強化や、森林に関連した国際機関・条約における関連戦略への持続可能な森林経営の統合等の決議が採択されました。

 平成21年11月に横浜で開催された第45回国際熱帯木材機関(ITTO)理事会では、熱帯木材貿易の発展や持続可能な熱帯林経営を促進するための事業・活動が承認されました。また、18年1月に採択された「2006年の国際熱帯木材協定」の未締結国に対して早期の締結を呼びかけ、同協定の早期発効を求める決議等が採択されました。

 また、特に持続可能な森林経営の阻害要因の一つとして問題視されている違法伐採については、平成10年のバーミンガム・サミット以降、国際的な議論が行われていますが、わが国では、平成18年4月から、この対策として、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)により、合法性、持続可能性が証明された木材・木材製品を政府調達の対象とする措置を実施しています。

 さらに、IPCC第4次評価報告書では、森林減少及び土地利用の変化に伴う人為的な温室効果ガス排出量が全体の17%を占めるとされており、地球温暖化対策の観点からも森林減少を防止することが極めて重要であるとの認識から、平成19年12月にバリで開催された気候変動枠組み条約第13回締約国会議において、世界銀行による「森林炭素パートナーシップファシリティ(FCPF)」が設立されましたが、わが国からも1千万ドルの資金拠出を行っており、この活動を支援しています。

 上記の取組のほか、ITTO、国連食糧農業機関FAO)等の国際機関への拠出、(独)国際協力機構JICA)等を通じた協力、(独)環境再生保全機構の地球環境基金等を通じた民間団体の植林活動等への支援、熱帯林における生態系管理に関する研究等を行いました。

5 砂漠化への対処

 平成8年に砂漠化対処条約UNCCD)が発効し、加盟している開発途上国は砂漠化対処のための行動計画を作成し、先進国がその支援を行うことで砂漠化対策に取り組んでいます。わが国も平成10年に条約を受諾し、締約国会合に参画・貢献すると共に関係各国、各国際機関等と連携を図りつつ国際的な取組を推進しています。また、米国に次ぐ規模の拠出国としてその活動を支援しています。

 平成21年9月から10月にかけてブエノスアイレス(アルゼンチン)で開催されたUNCCD第9回締約国会合では、UNCCD第8回締約国会合(平成19年、マドリッド(スペイン))で採択された「条約実施推進のための十年戦略計画枠組」の戦略目標・実施目標の進ちょくを評価するために締約国等が提出することになっている報告書の新たな様式・指標の仮採択などが行われました。

 このほか、JICA等を通じ、農業農村開発、森林保全・造成、水資源保全等のプロジェクト等を実施しました。また、砂漠化防止と生態系サービスの回復に関する研究を行いました。さらに、(独)環境再生保全機構の地球環境基金等を通じた民間団体の砂漠化対処活動への支援を行いました。

6 南極地域の環境の保護

 「環境保護に関する南極条約議定書」を適切に実施するため制定された南極地域の環境の保護に関する法律(平成9年法律第61号)に基づき、南極地域における観測、観光、冒険旅行、取材等に対する確認制度等を運用するとともに、ホームページ等を通じて南極地域の環境保護に関する普及啓発、指導等を行いました。

 また、議定書第14条に基づき、南極地域にある各国基地対し査察を実施し、議定書の遵守状況の確認を行いました。



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