第3節 経済社会システムを変える環境技術・環境産業

 これまで見てきたように、環境産業や循環産業は、環境保全と経済成長の両面からの貢献が期待されるとともに、長期的には経済社会システムを変える力があると考えられます。第2章で述べたように、例えば、スマートグリッドが実現すると、再生可能エネルギーの導入が拡大するとともに、電力需給バランスの調整のために据え置き型の大型蓄電池に蓄電されるようになったり、スマートグリッドに警備システムや家電を操作する機能を付加した新たなサービスが展開されることも考えられます。

 本節では、このスマートグリッドのように経済社会システムを変える可能性がある環境技術やサービスを紹介するとともに、環境産業や経済活動のグリーン化を資金面で支える金融の取組について、現状と今後の見通しについて概観します。

1 わが国のすぐれた環境技術

 わが国のすぐれた技術から生み出される素材や製品は、軽量化による省エネ効果をもたらし、環境負荷の軽減に大きく貢献しています。こうした技術の一つに、炭素繊維が挙げられます。世界の高性能炭素繊維市場において日本は約80%と圧倒的なシェアを誇っています(図5-3-1)。日本企業は、長期間にわたり研究開発投資を継続し、国からの研究開発プロジェクトの支援なども受けて研究を行った結果、欧米企業と比較して技術上の優位性を保っています。


図5-3-1 日本メーカーの高性能炭素繊維市場の占有率

 炭素繊維は、軽くて丈夫で錆びないという特性から、飛行機や自動車の構造材に適し、かつ省エネ性能を向上させます。例えば、現在生産が進んでいる中型航空機では、胴体、主翼、垂直・水平尾翼など主要な機体構造の50%に炭素繊維であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)が用いられており、従来機に比べ約20%軽量化されています。この機体について「原料・素材製造」、「組立」、「走行・運航」、「廃棄」という10年間のライフサイクルの二酸化炭素排出量を見ると、従来機に比べて1機当たり年間2,700トンの二酸化炭素削減効果が見込まれます(図5-3-2)。現在、世界で稼働中の100席以上のジェット旅客機1万5千機が炭素繊維を使った航空機に置き換わったと仮定すると、年間約4,050万トンの二酸化炭素が削減されます。これは、世界の1人当たりの二酸化炭素排出量が年平均で約4トンであることから、約1,000万人分に相当する排出削減効果となります。炭素繊維は、環境に配慮した製品の需要が高まる中、航空機の機体や自動車の車体などへの利用がさらに拡大し、運輸部門の二酸化炭素削減に貢献することが見込まれるほか、炭素繊維のもつ軽量性や高剛性から、風力発電用風車ブレードの大型化や、燃料電池自動車に搭載される高圧水素タンク、燃料電池など幅広い活用が期待されます。


図5-3-2 炭素繊維利用によるCO2削減効果(LCA)[炭素繊維協会モデル]

 また、炭素繊維のほかにも、日本が世界的にシェアを大きく占める技術で、環境負荷低減に対して高い効果が期待される技術があります。白色LEDは、1996年にわが国で開発された、小型軽量、省電力で寿命の長い光源で、白熱電球などを代替する照明用点光源として急速に広がっています(図5-3-3)。すでに、小型液晶バックライト、信号機、テレビ用大型ディスプレーなどへの実用化が進んでいますが、特に近年は、低コスト化が進み、白熱電球に代わるダウンライトなどとして企業や家庭に普及してきています。


図5-3-3 白色LED のポジショニングイメージ

 LED電球は、従来の白熱電球と比べて、消費電力が約8分の1に減少します。LED電球の利用コストを白熱電球のそれと比較した場合、約1.3年間で白熱電球の代わりにLED電球を利用するメリットがもたらされると計算されます(表5-3-1)。


表5-3-1 60W タイプ白熱電球をLED 電球に置換した場合の比較

 これまで、白色LEDに係る日本企業の世界シェアは高いとされてきましたが、近年、台湾のシェアが高まり、韓国がこれを猛追しています。このように国際競争が激化する中、発光効率向上と低コスト化において、まだ開発途上ともいわれており、日本が現在の世界シェアを維持し、拡大していくためには、民間の技術開発の推進と、普及を後押しする政府の取組が必要です。

 このほかにも、日本が世界的に大きなシェアを有する技術で、環境配慮型の製品に応用が期待されるものとしては、水の浄化に使われる逆浸透膜や電気自動車などに使われるリチウムイオン2次電池セパレータ、自動車のインバータなどに使われるIGBTパワー半導体などがあります。環境産業が発展し、日本が技術上の優位性をもつ製品が国内のみならず世界に広く普及する状況が生まれてきており、日本の得意分野である「ものづくり」の力が世界で発揮されようとしています。その一方で、今後、これらの日本が強みをもつ技術分野においても、白色LED電球の市場に見られるような国際競争の激化が、環境産業の発展と共に高まることが考えられることから、国内における普及の促進等、政府の適切な支援が必要と言えます。


日本の蚊帳とアフリカでのマラリア対策


 人間の住環境をより良いものにしていく製品には日本の伝統的な蚊帳を用いたものもあります。

 マラリアで苦しむアフリカでは、マラリア予防用に防虫剤を練り込んだ蚊帳の普及が進められており、日本企業によって開発された蚊帳が広く配布されています。耐久性にすぐれ、洗濯をしても5年以上防虫効果が持続するこの蚊帳の使用により、マラリアを媒介する蚊から経済的かつ効果的に身を守ることができます。2003年からこの蚊帳の生産が始まった現地では、数千もの雇用が生まれています。また、蚊帳の売上の一部が学校建設などに使用されることで初等教育の充実が図られるなど、アフリカの自立的発展に貢献しています。


アフリカにおける蚊帳の生産工場の様子


2 「モノの販売」から「機能の提供」へ

 環境負荷を減らし、持続可能な社会を構築するためには、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムからの転換を図る必要があります。その方法の一つとして、モノを販売するという消費形態にこだわらず、モノがもつ機能だけを提供するというビジネスが注目されています。

 わが国にすでに定着しているビジネスとして、サービスを提供する事業者が製品をライフサイクルで管理することで環境負荷を削減する「製品のリース・レンタル」、製品の長寿命化を図ることで環境負荷を削減する「製品のリペア・リフォーム」などがあります。最近では、モノの共有化・共同利用を進め、社会全体で使われている製品の量を全体として少なくし、資源消費量や環境負荷を削減するという手法も取られるようになってきました。「カーシェアリング」等の事業がこれに当たります。また、省エネルギー診断や設計・施工、運転・維持管理、資金調達などに係るサービスを包括的に提供して、ビル全体や施設全体を省エネルギー化し、温室効果ガスの排出削減を実現する「ESCO(Energy Service Company)事業」なども市場が拡大しています。

 こうしたモノがもつ機能を提供するビジネスは、例えば、「製品のリース・レンタル」について考えると、製品が廃棄されるまで維持管理が適切に行われることにより製品の有効利用が促進されるとともに、使用済み製品が必ず回収されるためリサイクルが確実に行われるなど、循環型社会の構築に寄与すると言えます。さらには、事業者や消費者が製品の選択・利用する場合に、モノを所有するのではなく機能・サービスを利用するという新しい価値観を定着させることにより、生産・消費行動を持続可能なものに変革していくことが期待されます。


電気自動車のカーシェアリング〜環境技術とシステムの融合〜


 平成21年は、国内メーカーによる電気自動車・プラグインハイブリッド車の本格的な量産・市場投入が開始されました。一方で、電気自動車等は、現在のところ価格が高く、個人が購入しにくい状況にあります。このため、電気自動車等を普及、定着させる方法の一つとして、近年、自動車の所有に比べ安価な費用負担ですみ、買い物や送迎などの利用が多いカーシェアリング用の車両として電気自動車を導入する事例が増えてきています。

 環境省では、平成21年1月から平成21年7月に実施した「次世代自動車等導入促進事業」において、電気自動車を37自治体等の102部署に対してカーシェアリング方式で貸出・管理を行い、公用車として利用するなどの実証利用を行いました。このほか、電気自動車の普及に積極的な神奈川県は、レンタカー企業2社と提携して、平日は県の業務用に、週末は一般ユーザーが両社からそれぞれ電気自動車を借りて使うことができる「EVシェアリングモデル事業」を平成21年9月から実施しています。こうした先進的な取組は、大阪府箕面市、東京都荒川区など多くの地方公共団体に広がりつつあります。また、民間事業者においても、電気自動車を利用したさまざまな取組が始まりつつあります。例えば、あるマンション管理会社においては、マンション居住者に対し電気自動車を共同で使えるシステムを提供するといった事業を展開しています。

 海外に目を向けると、2007年に開始したレンタサイクルシステムである「ヴェリブ(velib)」が交通手段の一つとして定着したパリでは、ヴェリブの自動車版である「オートリブ(autolib)」を2011年9月より運用開始することとなりました。具体的には、パリ市内700か所を含む1,400か所に充電施設を備えた発着ステーションを設置し、4,000台の電気自動車を運用する大規模な事業となる予定です。また、使用した電気自動車の返却は、借りたステーションと別の場所でも可能とするとともに、貸出料金も30分で4〜5ユーロ(約490円〜610円)程度であるなど、多くの市民に使いやすいシステムとなっています。

 こうした電気自動車を用いたカーシェアリングが普及すると、渋滞の緩和、排気ガスや二酸化炭素の排出量削減に大きな効果が見込まれます。さらに、リチウムイオン電池は、まだ量産効果が出ておらず高価ですが、今後、電気自動車の市場投入と普及によって低価格化が進めば、電気自動車を用いたカーシェアリングを導入する地方公共団体や企業がさらに増加するとともに、自動車を所有するのではなく、機能を利用するという新たな価値観が定着することも期待されます。


神奈川県「EVシェアリングモデル事業」


3 環境NPOによる持続可能な社会づくりへの貢献

 少子高齢化の進展、人口の都市部への集中、ライフスタイルの変化等に伴い、高齢者、障害者の介護や福祉、まちづくりやまちおこしなどさまざまな課題が顕在化しつつあります。従来、こうした課題は、行政、市民のボランティアや慈善型のNPOといった主体によって対応されてきました。しかし、近年はNPO自らが、事業活動として得られる収入と提供するサービスのバランスを取りながら、課題の解決に取り組もうとする例が注目されつつあります。この動きは、環境保全に関しても例外ではなく、低炭素で持続可能な社会を実現するためには、地域の未利用のエネルギー資源や自然資源の活用・保全を通じて地域社会を活性化する必要があり、地域の社会変革をもたらす事業型の環境NPOが活躍することが求められるようになってきました。

 そのような事業型の環境NPOの活動を促進していくためには、NPO自身が経営・会計や資金調達のノウハウを習得することや、自らの活動の経済性を向上させるため、地域の中小企業、自治体、金融機関といった関係主体との連携体制を構築することなど、さまざまな観点からの取組を充実させることが必要です。


地域ぐるみの市民共同おひさま発電所〜NPO法人南信州おひさま進歩〜


 NPO法人南信州おひさま進歩は、平成16年、「エネルギーの地産地消で循環型社会を目指して」との理念の下、寄付を募って資金をつくり、地域の幼稚園・保育園などに太陽光発電設備を設置する「市民共同発電所『おひさま発電所』プロジェクト」を開始しました。

 その後、環境省の「環境と経済の好循環のまちモデル事業」として採択された長野県飯田市のプロジェクトを担う民間会社として、NPO法人南信州おひさま進歩が母体となって、同年「おひさま進歩エネルギー有限会社」(後に株式会社)が設立されました。この事業は市民参加型の事業として、市民出資(匿名組合契約)を募り、その資金をおひさま発電所の設置や、市内の事業所などの省エネ事業に投資しようというもので、そこから生まれる電力の販売、省エネサービス料金などの収入から、出資者への返還や損益の分配を行うというものです。その結果、総額7億円を超える出資金が集まり、おひさま発電所は長野県内に162か所、1,280kWにまで拡大しています。併せて、省エネ事業や、南信州に豊富に存在する森林資源(木質バイオマス)を利活用した熱供給事業などを実施しており、その全体の二酸化炭素削減効果は、年間約1,800トンにのぼると推定されます。

 地域には、発電や熱供給としての太陽エネルギーの直接利用をはじめ、豊富な森林資源や絶えることのない水資源と急しゅんな地形を利用した小水力発電といった有力なエネルギー資源が多く存在します。こうした自然エネルギーの利用に対して、NPOがビジネスとして、地元の自治体や市民などと協働して事業を行うことにより、地域が活性化するとともに、持続可能な循環型社会が実現するのではないでしょうか。


おひさま発電所(飯田市鼎みつば保育園)


4 環境産業へ向かう金融の流れ

 企業の収益力や成長性等の判断基準に加え、環境への取組なども考慮して行われる投資のことを社会的責任投資(SRI)といいます。このSRIに基づく資産運用残高は世界的に見て増加の傾向にあります。

 例えば、アメリカにおけるSRI型投資運用資産残高は、近年増加してきています。2001年〜2003年にかけてはマイナス成長したものの、2003年以降は再びプラス成長を続け、2007年には1995年比で4倍強となる2兆7千億ドルに達しています(図5-3-4)。


図5-3-4 米国におけるSRI 型投資運用資産残高

 また、欧州においても、同様の傾向が見られます。欧州におけるSRI市場の規模の推移を見ると、2002年以降増加を続け、2007年には2002年比で約8倍となる約2兆7千億ユーロにまで拡大しています(図5-3-5)。


図5-3-5 欧州のSRI の市場規模の推移

 SRI投資を行う日本国内のファンドの本数は増加傾向で推移しており、2009年9月では、83本のファンドがSRI投資を行っています。2009年のSRI投資の純資産残高は、世界的な景気の落ち込みに伴い、前年に比べ大きく減少していますが、基本的には2003年以降、増加傾向にあります(図5-3-6)。一方で、欧米と比べると、SRI投資の規模には大きな差があります。2007年時点で、アメリカや欧州の規模は数百兆円であるのに対し日本は数千億円程度となっています。これは、アメリカや欧州では資産運用規模の大きな機関投資家がSRI投資の主体である一方、日本では、比較的資産運用規模が小さい個人投資家向けの投資信託が中心であることが影響しているといわれています。特に欧州では、コアSRI投資の94%が機関投資家により占められています(図5-3-7)。


図5-3-6 日本における公募SRI 投信の純資産残高とファンド本数推移


図5-3-7 EU 各国における機関投資家及び個人投資家によるコアSRI 投資比率

 国や地域によって投資規模や成長率の差があるものの、世界全体で見た場合、環境などに配慮して投資を行うSRI投資は近年増加傾向にあるといえます。

 こうした動きの背景には、単に高い投資利回りだけでなく、環境配慮や社会貢献も積極的に行いたいとする、"投資ニーズの多様化"があるものと考えられます。公募型ファンドは、多数の投資家の参加が必要であり、投資家のニーズを踏まえて作られています。したがって、わが国において、公募型のエコファンドの設定本数が年々着実に増加している状況は、個人の環境意識が高まり、環境配慮型企業へ積極的に投資しようとする「グリーン・インベスター」と呼ばれる投資家のニーズが高まり、グリーンな投資が拡大しているとみることができます。

 SRIの他にも環境と金融に関する動きとして、金融機関が自主的に定めた「赤道原則」と呼ばれるルールに基づく、国際的な融資における取組が挙げられます。赤道原則とは、総コストが1,000万米ドル以上であるなど金融機関が一定の海外プロジェクトに融資を行う際、そのプロジェクトが地域社会や自然環境に与える影響に配慮しているかを確認するための枠組みであり、金融機関のための原則です。赤道原則は2003年6月に欧米金融機関10行によって採択されました。

 赤道原則を採択した銀行は、国際金融公社(IFC)の環境社会配慮スクリーニング基準にしたがって、プロジェクトをA(影響が非常に大きい)、B(限定的であるが影響がある)、C(影響が少ない、全くない)の3つに分類します。A、Bに分類された場合、銀行は、産業別の「チェックリスト」等を用いた詳細な環境レビューを実施するとともに、借り手側でも、環境的及び社会的に実施可能な望ましい代替案の検討などの社会環境アセスメントを行います。その際、借り手とは独立した第三者である社会環境の専門家が、採択銀行の環境影響評価のレビューを行います。採択銀行は、年に1度は、赤道原則の実施プロセスや実績について公表することが義務づけられています。

 2003年の採択以後、赤道原則を採用する金融機関は着実に増加し、2009年現在、日本の金融機関3行を含む67の金融機関が同原則を採択しています(図5-3-8)。


図5-3-8 赤道原則採用銀行数の推移

 赤道原則の誕生と発展により、現在では、国際的なプロジェクトファイナンスの約80%以上が同原則を採択した金融機関によって実施されることとなり、民間金融機関が投資を行う際の事実上のルールとして、プロジェクトファイナンス取引に大きな変化をもたらしてきています。

 環境に配慮した投資を促す取組は、公的機関でも動きが出始めています。例えば、ノルウェーでは、国家ファンドの一部を環境投資に回す新たな環境投資プログラムを検討しています。同プログラムでは、環境にやさしいエネルギーの供給やエネルギー効率の改善といった、環境負荷低減の効果が期待される投資を行うことを目的に、およそ5年間で2,800億円(2兆クローネ)を投資していくとしています。

 また、UNEPでは、機関投資家による投資において、短期的な金銭的リターンのみを追求する現在の受託者責任のあり方を見直す動きが出てきています。UNEPが2009年7月に発表したレポート「Fiduciary responsibility」では、機関投資家による投資行動に対して、環境的、社会的、ガバナンス的な配慮事項を組み込むために必要な検討を、法的、実務的な側面から行いました。その結果、環境的、社会的、ガバナンス的な配慮事項が、資産の所有者とその受託者の間の契約に盛り込まれるべきとし、また、資産運用のコンサルタントは助言に当たって環境的、社会的、ガバナンス的な配慮事項を前向きに提起していく義務を負っていると結論づけています。

 わが国でも環境への設備投資を促進するため、金融機関に対する支援を行っています。例えば、環境省では、平成21年度に「京都議定書目標達成特別支援無利子融資制度」を設けました。この制度は、3年間で二酸化炭素排出量6%削減等の目標を誓約した事業者が行う温暖化対策設備投資に対して、環境格付による優遇融資を行う金融機関を通じて3%(ただし無利子を限度)を上限に3年間の利子補給を受けられる制度です(図5-3-9)。また、平成21年度の第2次補正予算では、「地球温暖化対策加速化支援無利子融資制度」と呼ばれる同様の制度が設けられました。これらの制度を設けることで、金利負担を理由に見送られてきたような環境への設備投資が積極的に行われることが期待されます。融資の実績としては、45億円の予算が充てられた「京都議定書目標達成特別支援無利子融資制度」の下、2010年2月現在、800億円強の環境に配慮した融資が行われており、今後、同制度に基づく融資は1,100億円を超えるものと見込まれています。


図5-3-9 京都議定書目標達成特別支援無利子融資制度(利子補給)制度スキーム図

 なお、この制度は、環境格付融資を行う金融機関を通じた融資が対象になります。環境格付融資は、事業者の環境配慮の取組を審査、評価し、その結果に応じて金融機関が金利を優遇して融資を行う制度ですが、国がこれらの無利子融資制度を導入して以降、環境格付融資を行う金融機関は、導入前の4行から2010年2月現在、31行へと大幅に増加しました。このため、環境にやさしい融資がこれらの金融機関を通じて、今後広がることが期待されます。国では、このような制度によって、環境に配慮している企業が評価され、金融資産の流れを環境に向かわせる仕組みづくりを行っています。


金融機関の環境への取組


 金融機関が環境への配慮を主体的に融資業務に取り入れていく取組として「赤道原則」を紹介しましたが、環境問題への取組は、法人としての取組とともに、個人が主体的に意識を変えて行動していくことも重要です。

 例えば、大手の国際金融機関では、環境活動に取り組むNPO法人の活動への参加を「業務出張」として扱い、従業員がボランティア活動に取り組むことを奨励しています。ボランティア活動では、気候変動と沿岸部の生態系との関連を研究するプロジェクトなどを支援しており、例えば、温帯域の沿岸において動植物の生息場所として重要な役割を担っている海草藻場や岩礁潮間帯を対象としたデータ収集・解析等の作業が進みました。

 金融機関の従業員の意識が変わり、環境保全や持続的な発展に資する取組への融資が当たり前になることで、環境に配慮した金融の流れが、今後さらに加速することが期待されます。


金融機関の従業員がボランティア活動に参加する様子



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