第5節 地球規模の視点を持って行動する取組

1 SATOYAMAイニシアティブの推進

 世界の自然共生の智慧や伝統等を収集・調査し、日本の取組とあわせて、地球全体での自然共生社会実現のために活用することを「SATOYAMAイニシアティブ」として世界に提案することとしており、このための検討・取組を進めます。また、国際連合大学等と連携し、SATOYAMAイニシアティブを国際的に効果的・効率的に推進していくための取組を検討・推進していきます。

2 生物多様性のモニタリングと総合評価

(1)自然環境調査

 第7回自然環境保全基礎調査(平成17~21年度)の一環として、「植生調査」、「特定哺乳類生息状況調査」等を実施します。「植生調査」では、自然環境の基本情報である縮尺2万5千分の1植生図をGISデータとして整備していきます。「特定哺乳類生息状況調査」では、農林水産業や生態系に大きな影響を及ぼすクマ、シカ等を対象として、モデル地域における現地調査による生息密度等の把握、全国的な生息情報及び生息環境情報の収集整理により、全国的な個体数の推定、分布動向の把握等を行います。

 全国の生態系の変化状況を把握するため、モニタリングサイト1000により、森林、里地里山、陸水域(湖沼及び湿原)、沿岸域(砂浜、干潟、磯、藻場、アマモ場及びサンゴ礁)、小島嶼の各生態系タイプに設置した合計約1000か所の調査サイトにおいて、生態系タイプ毎に決めた調査項目及び調査手法により本格的調査を実施します。また、地球温暖化の影響を受けやすい高山帯に新たに設けた調査サイトにおいて、試行調査を開始します。

 海洋基本法の制定を受け、主にわが国の200海里域内を対象として、海洋の生物多様性保全に関する広域的なデータを収集整理し、GISデータの活用を考慮して統合・解析を行い、生物多様性保全上重要な海域・海洋生物を特定した「海洋自然環境情報図」の作成に着手します。

 加えて、アジア太平洋地域の各国政府、国際機関との連携により、地球規模での生物多様性モニタリング体制の構築を進めるとともに、東・東南アジア地域における生物多様性情報インベントリー作成と、生物分類学キャパシティ・ビルディングの推進のための国際会合を開催します。

 さらに、「いきものみっけ」事業では、2巡目となる平成21年の夏以降、対象の生きもの等を変更して引き続き実施し、身近な地球温暖化問題や生物多様性の保全に関する理解と二酸化炭素排出削減行動に結びつけていきます。


(2)生物多様性総合評価

 平成20年度に開発した指標を用いて生物多様性の総合評価を行い、わが国の生物多様性の全体像を把握します。また、国民に生物多様性の状況とその保全の必要性を分かりやすく伝えるとともに、優先的に保全・回復すべき地域での取組を進展させるため、生物多様性の危機の地図化や、保全上重要な地域の選定作業を開始します。

3 生物多様性関連の条約等に基づく国際的な取組

 生物多様性基本法に基づき、「第三次生物多様性国家戦略」の実施を通じて、引き続き生物多様性条約の国内外での実施促進を図ります。また、生物多様性条約以外にも次のような国際的な取組が進められています。


(1)ワシントン条約

 締約国間の適切な条約運用に向けての取組とともに、関係省庁間の協力の下に国内におけるより効果的な条約の実施を推進します。


(2)ラムサール条約

 アジア地域の重要な湿地の保全のため、引き続きアジア諸国の湿地登録の促進に努めるとともに、湿地システムとしての水田の生物多様性の向上を訴えていきます。


(3)渡り鳥等保護条約

 アメリカ、オーストラリア、中国、ロシア及び韓国との二国間の渡り鳥等保護条約等に基づき、各国との間で渡り鳥等の保護のための共同調査を引き続き推進するとともに、情報や意見の交換を行います。


(4)東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ等

 平成18年11月に発足した「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ」に基づき、同地域における渡り性水鳥とその生息地の保全に向けた取組を推進します。

 また、トキ保護協力に関する基本的な枠組みである「日中共同トキ保護計画」に基づき、双方が進めるトキの野生復帰に係る協力などを積極的に推進します。


(5)国際サンゴ礁イニシアティブ

 平成21年秋頃に「国際サンゴ礁保護区ネットワーク会議/第5回ICRI東アジア地域会合」を開催し、前回会合で作成した作業計画を踏まえて、東アジアを中心とした海域におけるサンゴ礁保護区ネットワーク戦略づくりを推進します。


(6)世界遺産条約

 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約に基づき世界遺産一覧表に記載された屋久島、白神山地及び知床の世界自然遺産について、管理体制と科学的知見に基づく保全管理の充実を図り、引き続き適正な保全を推進します。

 平成15年の「世界遺産候補地に関する検討会」において知床とともに候補地に選定された「小笠原諸島」と「琉球諸島(トカラ列島以南の南西諸島が検討対象)」については、世界自然遺産推薦に向けた取組を進めていきます。特に、世界遺産暫定一覧表に記載されている小笠原諸島については、関係省庁・地方公共団体等が連携し、外来種対策や希少種の保全を一層推進するとともに、推薦に必要な書類の作成など推薦に向けた準備作業を推進します。また、琉球諸島については、世界的に優れた自然環境の価値を保全するため必要な方策を検討します。



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