第3章 循環型社会の形成

第1節 循環型社会の形成に向けた法制度の施行について

(1)循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)

 循環型社会の形成に関する施策を総合的、計画的に推進するため、平成20年3月に循環型社会基本法第15条に基づいて循環型社会基本計画を策定しました。当該計画において示された、物質フロー指標に関する目標及び取組指標に関する目標の達成や、持続可能な社会の実現に向け循環型社会・低炭素社会や自然共生社会と統合して、循環型社会の形成を国内外問わず実現すること、地域循環圏の構築、充実させた指標のフォローアップ、国際的な循環型社会の構築へ向けた取組を総合的に進めます。

 また、廃棄物の焼却や埋立てに伴う温室効果ガスについては、平成20年3月28日に改定された京都議定書目標達成計画に基づき、その排出量の抑制を図ります。


(2)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

 平成13年5月に環境大臣は「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を決定し公表しています。その中では、まず、できる限り廃棄物の排出を抑制し、次に、廃棄物となったものについては不適正処理の防止その他の環境への負荷の低減に配慮しつつ、再使用、再生利用熱回収の順にできる限り循環的な利用を行い、こうした排出抑制及び適正な循環的利用を徹底した上で、なお適正な循環的利用が行われないものについては、適正な処分を確保することを基本とすること等を定めています。これにより一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分量を平成22年度までに平成9年度のおおむね半分に削減することとしています。

 また、廃棄物・リサイクル行政の目的が、これまでの公衆衛生の向上や公害問題の解決に加えて循環型社会の形成をも目指していることを踏まえ、今後、我が国全体として、3Rに重点を置いた最適なリサイクル・処理システムを構築していくこととし、平成17年5月に廃棄物処理法に基づく基本方針を改正しました。一般廃棄物の処理については、この基本方針において、一般廃棄物の処理に関する事業のコスト分析手法や有料化の進め方並びに標準的な分別収集区分及び適正な循環的利用や適正処分の考え方を示すことなどを通じた技術的支援を国が行うべきとされています。そこで、国全体として3Rに重点を置いた最適なリサイクル・処理システムを構築していくための施策の一つとして、平成19年6月に一般廃棄物処理事業に係るコスト分析の標準的手法を示す「一般廃棄物会計基準」、有料化の進め方を示す「一般廃棄物処理有料化の手引き」、一般廃棄物の標準的な分別収集区分やエネルギー回収、最終処分等の処理の考え方を示す「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針」を策定し、市町村による活用に向けた市町村に情報提供し、技術的支援を実施しています。

 さらに、改定された「廃棄物処理施設整備計画」に基づき、ごみの排出削減を前提とした施設整備を推進しつつ、一般廃棄物処理における地球温暖化対策やストックマネジメントを実施していきます。

 廃棄物系バイオマスについては、分別手法、収集・運搬を含めた利活用のシステム全体については有効な手法をパターン化するため、有効であると考えられる利活用の手法についてモデル地域における実証を行い、廃棄物系バイオマスの大幅な利活用の促進を図ります。

 また、平成12年度から新たに創設された産業廃棄物処理施設のモデル的整備事業に対する補助制度により、廃棄物処理センター等による産業廃棄物処理施設の整備促進を図ります。

 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図ります。また、首都圏においては、必要な広域処理場の確保に向けて、関係地方公共団体間に働きかけを行います。

 製品が廃棄物となった場合における処理が市町村において困難となっているものとして廃棄物処理法に基づき指定されている廃ゴムタイヤ等の一般廃棄物の処理においては、消費者が新規製品を購入する際等において販売店が廃棄物を引き取り、可能な範囲で市町村以外のシステムで処理するなど、市町村の処理が適正に行われることを補完するために製品の製造事業者等が行う協力を必要に応じて求めるとともに、引き続き、広域認定制度を活用した製造事業者等による広域的なリサイクルを進めます。

 産業廃棄物問題の根本的な解決に向け、国の役割を強化し、産業廃棄物運搬車両への表示等による不法投棄等の不適正処理事案の発生の未然防止や電子マニフェストの普及促進等による廃棄物処理システムの透明性の向上、優良で信頼できる産業廃棄物処理業者の育成を昨年度に引き続き進めてまいります。

 なお、廃棄物処理法については、中央環境審議会の廃棄物処理制度専門委員会おいて、引き続き施行状況の評価・検討を行っていきます。

 石綿を含む廃棄物等の円滑かつ安全な処理を促進するために、無害化処理認定制度により、石綿を含む廃棄物の無害化処理を促進します。


(3)資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)

 平成13年4月に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)や産業構造審議会廃棄物処理・リサイクルガイドラインにおいては、従来進めてきた取組に加え、産業構造審議会において平成20年1月に取りまとめられた報告書に基づいて、世界最高水準の省資源社会の実現を図るため、一部のレアメタル等各種資源の投入量の更なる低減施策に取り組み、我が国産業の競争力の維持・強化等を図ります。

 具体的には、製品のサプライチェーン全体の資源投入量の低減を図るため、特に部品・最終製品の製造時に発生する工程くず等の副産物のリデュース対策を推進します。川上・川中企業(部品サプライヤー等)では、川下企業(最終製品メーカー)による設計や仕様によって副産物低減の取組の自由度が制限されるなど、個別企業の取組のみでは部分最適に陥り、省資源の効果が期待できないと考えられます。他方、一部の先進的な川下企業では、川上・川中企業と連携し、副産物の正確な原価計算(見える化)を可能とするマテリアルフローコスト会計(MFCA)の活用等により、省資源、省エネ、省CO2、作業量低減を同時に達成し、いわば一石四鳥の効果を手にしています。このように、川下企業と川上・川中企業間のすりあわせを再強化し、副産物の更なるリデュースや製品の環境配慮設計を図る省資源型ものづくりの取組を推進します。また、国においても、モデル事業等を通じた優良事例の創出を進めます。また、再生資源を新たな製品の原材料として利用する高度リサイクルの取組も促進します。

 一方、3R配慮製品の市場拡大に資するよう、事業者による製品設計・製造の取組内容に関する消費者への情報提供を、また、金やレアメタル等の有用な資源が高濃度で含まれている携帯電話等の使用済小型家電の回収が促進されるよう、使用済小型家電の回収モデル事業等を進めます。さらに、パソコン等の製品の排出事業者において、使用済製品の引渡先での処理の実態を把握するための取組等を進めます。


(4)容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)

 改正後の容器包装リサイクル法に基づき、容器包装廃棄物の排出抑制を促進するため、容器包装廃棄物排出抑制推進員(愛称:3R推進マイスター)を活用した消費者への更なる普及啓発や、小売業に属する事業を行う者(指定容器包装利用事業者)に対して義務付けられた容器包装廃棄物の排出抑制促進措置を着実に実施し、容器包装の使用合理化を図ります。このほか、容器包装廃棄物の3Rを推進するため、リデュース(発生抑制)・リユース(再使用)を中心に、地域の先駆的な取組を支援するモデル事業、優れた取組等に対する表彰制度等の各種施策を実施します。


(5)特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)

 同法施行令の改正により追加される対象機器(液晶・プラズマテレビ、衣類乾燥機)も含めて、引き続き、使用済家電の適正なリサイクルを進めていきます。とりわけ、2011年のアナログ放送停波に伴い、ブラウン管テレビの大量排出が見込まれていることから、ブラウン管テレビの円滑な廃棄・リサイクルに向けた調査等を実施します。あわせて、家電リサイクル法ルート以外のルートにおける処理の状況などの使用済家電のフローについて把握し、使用済家電の流通実態・処理実態の透明化を推進します。


(6)建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

 建設リサイクル法については、7回の社会資本整備審議会・中央環境審議会の合同会合において、平成20年12月にまとめられた「建設リサイクル制度の施行状況の評価・検討について とりまとめ」をもとに、必要な措置を講ずる予定です。

 また、建設工事関係者間の連携強化、分別解体、再資源化の促進に向けて建設リサイクルに関する普及啓発等を図っていきます。

 さらに、平成20年度に実施した建設副産物実態調査の結果を公表するとともに、課題解決に向けて平成20年4月に策定した「建設リサイクル推進計画2008」に基づく施策の着実な実施等の必要な措置を講じる予定です。


(7)食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)

 食品リサイクル法に基づき、食品廃棄物等の発生量が一定規模以上の食品関連事業者に対する定期報告の義務付け等指導監督の強化、新たな再生利用事業計画認定制度を通じた再生利用等の円滑な取組等を推進します。

 また、食品循環資源の再生利用等の推進を図るため、新たな食品リサイクル制度の普及啓発、食品廃棄物を含むバイオマス利活用を図ろうとする地域に対する施設整備の支援等を通じた食品循環資源の再生利用の促進等を実施します。


(8)使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

 自動車リサイクル法については、中央環境審議会・産業構造審議会の合同会合において、引き続き制度の評価・検討を行っていきます。

 また、制度の円滑な施行に向けて、引き続き関係事業者や自動車所有者等に対して制度の周知を図ってまいります。

 さらに、使用済自動車の引取りに支障が生じている離島市町村や、使用済自動車等の不法投棄に対して行政代執行の措置を行う都道府県等に対して、引き続き支援事業を行います。


(9)国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)

 国等の各機関では、グリーン購入法に基づく基本方針に即して毎年度環境物品等の調達方針を作成・公表し、これに基づいて環境物品等の調達の推進を図ります。

 地方公共団体におけるグリーン購入の取組を促すため、地方公共団体を対象としたグリーン購入に関するアンケート調査や、基本方針の変更についての説明会等を行うとともに、地方公共団体向けグリーン購入取組ガイドラインを用いた普及啓発に努めます。

 さらに、幅広い主体による環境物品等の購入を推進するため、購入者が製品やサービスに関連する適切な環境情報を入手できる「商品環境情報提供システム」を継続して運用していくとともに、環境物品等に関する情報提供体制の在り方についてのガイドラインの普及・啓発を行います。

 廃棄物の発生の少ない製品やリサイクル可能な製品など、環境への負荷の少ない製品の積極的な購入を進めるため、グリーン購入に率先して取り組む企業、行政、消費者団体等各主体が連携した組織として発足したグリーン購入ネットワークの活動を積極的に支援し、全国各地において開催するグリーン購入セミナーを通じて、グリーン購入の促進を図っていきます。


(10)ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)

 国が策定したPCB廃棄物処理基本計画に即した、都道府県及び政令市によるPCB廃棄物処理計画の策定を推進します。また、日本環境安全事業株式会社によるPCB廃棄物の拠点的な広域処理施設の整備については、北九州事業、豊田事業、東京事業、大阪事業及び北海道事業の進捗を図ることにより、全国のPCB廃棄物を法律に定める処理期限である平成28年7月までに、一掃できるよう努力することとしています。

 さらに、国は処理費用負担能力の小さい中小企業者が保管しているPCBを使用した高圧トランス・高圧コンデンサの処理に係る負担を軽減するために設置しているPCB廃棄物処理基金を造成するための予算措置を平成20年度に引き続いて行います。

 微量PCB汚染廃電気機器等の処理については、国は引き続き、既存の廃棄物処理施設による実証試験を行い、実証試験結果の検討を行うとともに、中央環境審議会に設置された「微量PCB混入廃重電機器の処理に関する専門委員会」における今後の処理方策についての審議を踏まえ、必要な施策を推進してまいります。


(11)特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)

 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(平成15年6月18日法律第98号。以下「産廃特措法」という。)に基づき、平成9年の改正廃棄物処理法の施行(平成10年6月17日)前に、廃棄物処理法に定める処理基準に違反して不適正に処分された産業廃棄物(特定産業廃棄物)に起因する生活環境保全上の支障の除去等の事業について、すでに大臣同意が済んでいる事案については、引き続き事業の計画的かつ着実な推進を図るとともに、今後同法に基づく支障除去等事業の対象事案については、都道府県等から相談があった場合には、適切に助言等を行っていきます。


(12)農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(農林漁業バイオ燃料法)

 農林漁業に由来するバイオマスのバイオ燃料向け利用の促進を図り、国産バイオ燃料の生産拡大を推進するため、「農林漁業バイオ燃料法」が平成20年10月に新たに施行されました。

 本法に基づき、農林漁業者やバイオ燃料製造業者が連携して原料生産からバイオ燃料(エタノール、木質ペレット等)製造までを行う「生産製造連携事業」及びバイオ燃料の製造の高度化等に向けた研究開発を行う「研究開発事業」に係る計画を国が認定し、新設したバイオ燃料製造施設に係る固定資産税の軽減、農林漁業者に対する改良資金等の償還期間の延長、新品種の育成に対する登録料の減免等の支援措置を実施します。

 また、農林漁業者や事業者等の関係者との意見交換や各種説明会を通じて、本法のより一層の周知を図ります。



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