第2章 地球環境、大気環境、水環境、土壌環境、地盤環境の保全

第1節 地球環境の保全のための施策

1 オゾン層保護対策

 オゾン層保護法に基づき、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)に定められたHCFC等のオゾン層破壊物質の生産規制等を着実に実施するとともに、その排出抑制、使用合理化の一層の促進に努めます。また、オゾン量、オゾン層破壊物質及び有害紫外線の観測・監視等を実施します。

 開発途上国におけるオゾン層保護対策を支援するため、議定書に基づく多数国間基金を利用した研修員の受入れや専門家の派遣を含む二国間協力事業を引き続き推進するなど、開発途上国への技術協力を行います。さらに、アジア地域のオゾン層保護担当官ネットワーク会合等を活用し、アジア地域におけるモントリオール議定書遵守対策の加速化、フロン類の回収・再利用・破壊に係る体制整備の促進を図ります。

 改正フロン回収・破壊法施行の一層の徹底のため、引き続きフロン回収・破壊法の周知を行うとともに、都道府県による法執行強化等を推進します。

2 酸性雨・黄砂に係る対策

(1)酸性雨対策

 東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANET)の活動に対し、資金の拠出や技術的な助言を行う等、引き続き積極的に支援します。また、EANETの今後の発展・拡大に向けて、EANETの活動の基盤強化に係る議論に積極的に参画・支援します。

 国内においても、酸性雨による影響の早期把握、酸性雨原因物質や光化学オキシダント等大気汚染物質の長距離輸送の実態を長期的に把握し、それらによる被害を未然に防止する観点から、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」に基づき、酸性雨測定所等における大気モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリングを着実に実施します。


(2)黄砂対策

 日本、中国及び韓国の三カ国黄砂局長会合や共同研究等を通じて、国際的な黄砂モニタリングネットワークや早期警報システムの構築に向けた技術的な貢献を行う等、関係各国と密接に連携・協力しながら黄砂対策に取り組みます。

 国内においては、黄砂や黄砂とともに輸送される大気汚染物質の我が国への飛来実態を把握するための調査を実施するとともに、黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリング及び情報提供を行います。

3 海洋環境の保全

(1)海洋汚染等の防止に関する国際的枠組みと取組

 ロンドン条約1996年議定書の締結に伴い改正された海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染防止法」という。)に基づき廃棄物の海洋投入処分に係る許可制度の適切な運用を引き続き行います。また、二酸化炭素の海底下への貯留に係る許可制度の適切な運用を図るべく、海洋に関する環境影響評価やモニタリング等の海洋環境の保全上適正な管理手法の高度化に関する開発を行います。

 平成16年に採択されたバラスト水管理条約の早期発効に向けた環境整備を推進します。

 平成18年9月から開始された任意によるIMO加盟国監査制度について、我が国は、同制度の早期定着に向け、監査員研修を実施する等し、国際的な協調・連携を進めていきます。

 平成21年5月に採択されたシップリサイクル(船舶の解撤)に関する新条約について、今後とも、我が国主導の下で同条約に付随するガイドラインの策定作業を進め、条約の早期発効を目指していきます。

 日本近海の開発利用状況等を踏まえ、関係省庁が連携して、海洋環境の総合的な調査の実施等の調査研究、東アジア地域の沿岸国間によって共有される海洋環境に関する情報交換の円滑化等の国際協力の推進等に努めます。

 また、PEMSEAにおいては、「東アジア海域の持続可能な開発戦略(SDS-SEA)」の実施に向けた取組を進めます。

 油、危険物質及び有害物質による汚染事故に対応するため、OPRC条約及びOPRC-HNS議定書といった国際条約並びに国家的な緊急時計画に基づき、汚染事故に対する準備・対応体制の整備を進めるとともに、国際的な連携の強化、技術協力の推進等にも取り組みます。また、環境保全の観点から汚染事故に的確に対応するため、汚染事故により環境上著しい影響を受けやすい海岸等に関する情報を盛り込んだ図面(脆弱沿岸海域図)の更新のための情報収集等を行うとともに油等汚染事故への準備・対応に関する国際的な連携の強化、技術協力の推進等の国際協力に関する業務を推進します。NOWPAPの活動への積極的な参加や支援を通じて、NOWPAPの推進を図ります。


(2)未然防止対策

 海洋汚染の未然防止対策の一環として、日本に寄港する外国船舶に対して立入検査を行い、MARPOL73/78条約等の基準を満たしているか否かを確認するポートステートコントロールPSC)を引き続き的確に行います。船舶によって輸送される化学物質に関しては、海洋汚染防止法に基づき、海洋環境保全の見地からの有害性の確認がなされていない液体物質(未査定液体物質)の査定を行います。

 また、「海洋環境保全推進月間」等において、海洋環境保全講習会等を通じ、海洋環境保全思想の普及啓発に努めるとともに、海事関係者等に対する指導を引き続き実施します。

 船舶の不法投棄については、「廃船指導票」を貼付することにより、投棄者自らによる適正処分の促進を図ります。


(3)排出油等防除体制の整備

 環境保全の観点から油等汚染事件発生に的確に対応するため、OPRC-HNS議定書及び国家的な緊急時計画に基づき、関係地方公共団体、民間団体等に対する研修・訓練の実施、傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、脆弱沿岸海域図の作成等を推進します。大規模石油災害時に油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行います。また、油防除・油回収資機材の整備を推進するとともに、油汚染防除指導者養成のための講習会を実施する民間団体に対して補助を行うとともに、流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を実施します。

 船舶の衝突事故等により排出された有害液体物質の防除等に係る国内体制を確立するために改正された海洋汚染防止法の施行を受け、油に加え有害液体物質等の排出事故等に的確に対応するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制の確保、防除資機材の配備、関係機関等との連携強化など官民一体となった排出油等防除体制の充実に努めます。また、沿岸域における情報整備として「沿岸海域環境保全情報」の整備を引き続き行い、情報の充実を図ります。さらに、詳細な海潮流データを漂流予測情報に活用していくとともに、油等の海上浮遊物の防除活動に資するため、一週間程度の長期にわたる漂流予測情報の精度向上を図っていきます。


(4)監視等の体制の整備

 海洋環境保全に関しては、日本周辺海域の海洋環境の現状を把握するとともに、国連海洋法条約の趣旨を踏まえ、領海、排他的経済水域における生態系の保全を含めた海洋環境の状況の評価・監視のための総合的・系統的な海洋環境モニタリングを行います。また、日本周辺海域や閉鎖性の高い海域等において海水及び海底堆積物中の油分、PCB、重金属等の海洋汚染調査を実施します。さらに、バックグラウンドレベルの放射能の調査の一環として、日本周辺海域の海水、海底土中に含まれる放射性核種の分析を行います。加えて、東京湾においては、人工衛星による赤潮等の常時監視を行います。日本周辺海域及び西太平洋海域において、海水中の重金属、油分等の海洋汚染物質の定期観測を引き続き実施します。


(5)監視取締りの実施

 海上環境事犯については、沿岸調査や情報収集の強化、巡視船艇・航空機の効率的活用等により日本周辺海域及び沿岸の監視取締りを強化していきます。また、引き続き潜在化している廃棄物・廃船の不法投棄事犯や船舶からの油不法排出事犯に重点を置き、悪質な海上環境事犯の徹底的な取締りを実施します。


(6)漂流・漂着ゴミ対策

 漂流・漂着ゴミの問題については、被害が著しいモデル地域を対象とした詳細な調査を実施し、引き続き実態の把握及び対策の検討を進めます。また、平成19年3月に漂流・漂着ゴミ対策に関する関係省庁会議が取りまとめた当面の施策のフォローアップを行い、国の取組について適切に推進します。

 外国由来の漂流・漂着ゴミ問題へ対応を強化するため、NOWPAPの枠組みを通じて、発生源の究明のための相互の情報交換や政策対話等の協力を推進します。

4 森林環境の保全と持続可能な経営の推進

 森林原則声明アジェンダ21及び気候変動問題における森林の重要性などを踏まえ、世界の森林の保全と持続可能な経営の推進を目指し、[1]国連森林フォーラムUNFF)における国際的な検討に積極的に参加し、「全てのタイプの森林に関する法的拘束力を有さない文書(NLBI)」及び多年度作業計画(MYPOW)の着実な実施を目指すとともに、[2]アジア森林パートナーシップAFP)、森林法の施行及びガバナンス(FLEG)の関係会合等を通じた地域的取組の推進、[3]国際熱帯木材機関ITTO)、国連食糧農業機関FAO)等の国際機関を通じた協力の推進、[4]国際協力機構JICA)、世界銀行の「森林炭素パートナーシップファシリティ(FCPF)」等を通じた二国間・多国間の技術・資金協力の推進、[5]熱帯林の保全等に関する調査・研究の推進、[6]民間団体の活動の支援による国際協力の推進等に努めます。

 特に、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以下「グリーン購入法」という。)に基づく、合法性が証明された木材・木材製品を調達の対象とする方針が、政府機関に限らず、民間調達においても普及されるよう、事業者、木材製品などの最終消費者及び一般国民に対して働きかけていきます。

5 砂漠化への対処

 砂漠化対処条約UNCCD)に関する国際的動向を踏まえつつ、アジア地域を中心として、同条約に基づく取組を推進します。具体的には、同条約への科学技術面からの貢献を念頭に、砂漠化の評価と早期警戒の研究や、砂漠化対処のための技術の活用に関する調査などを進めます。また、二国間協力や、民間団体の活動支援等による国際協力の推進に努めます。

6 南極地域の環境の保護

 南極地域の環境保護の促進を図るため、観測、観光、冒険旅行、取材等に対する確認制度等を運用し、南極地域の環境保護に関する普及啓発を行うなど、「環境保護に関する南極条約議定書(以下「議定書」という。)」及びその国内担保法である南極地域の環境の保護に関する法律の適正な施行を推進します。また、平成17年6月の南極条約協議国会議で採択された環境上の緊急事態に対する責任について定めた議定書附属書について、引き続き対応を検討します。さらに、南極地域の環境の保護に向けた国際的な取り組みに貢献すべく、南極条約及び議定書に基づき、他国基地等の査察を実施します。



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