第9節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

 平成19年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」や平成20年7月に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」において示された国際的取組の方針に基づき、地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。


(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保

 ア 多国間の枠組みによる連携

 (ア) 国連を通じた取組

[1] 国連持続可能な開発委員会(CSD)

 国連持続可能な開発委員会CSD)第16会期が、2008年(平成20年)5月にニューヨークの国連本部にて開催され、「農業」、「村落開発」、「土地」、「干ばつ」、「砂漠化」、「アフリカ」をテーマとし、各国・地域の現状と課題や有意義な取組事例等について活発な議論が行われました。

[2] 国連環境計画(UNEP)における活動

 日本は、創設当初から一貫して国連環境計画UNEP)の管理理事国であるとともに、環境基金に対し、2008年(平成20年)は約296万ドルを拠出する等、多大な貢献を行っています。2009年(平成21年)2月には、UNEP第25回管理理事会/グローバル閣僚級環境フォーラムがナイロビで開催され、UNEPの活動計画案や予算案に加え、グリーン経済、国際環境ガバナンス、水銀、生物多様性等について議論が行われました。また、UNEP親善大使である加藤登紀子さんが、2008年(平成20年)8月にオーストラリアのケアンズ、ジロング、シドニーを訪問し、草の根レベルの環境保全活動を視察するとともに関係者と交流し、広報を行うなどの活動を支援・推進しました。

 さらに、日本に事務所を置くUNEP国際環境技術センターIETC)が実施するイラク南部湿原環境管理支援プロジェクトや、低炭素社会の実現に向けた国際シンポジウムの開催等の事業を支援・推進しました。

[3] 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)における活動

 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)では、5年ごとに「アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議(MCED)」を開催し、その中で環境に関する行動計画を採択し、環境に関する様々な活動を進めています。

 2000年(平成12年)に採択された「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ」については、2008年(平成20年)8月に、固形廃棄物の管理をテーマとした国際ワークショップが、アジア太平洋地域の21自治体の代表者等の参加を得て、スラバヤ(インドネシア)で開催されました。会合では、スラバヤ市をはじめとするアジア太平洋地域の各都市における固形廃棄物管理の状況報告、廃棄物管理分野におけるCDM事業の紹介等が行われました。

 (イ) 世界気象機関(WMO)における取組

 我が国は、WMOの全球気象監視計画(WWW)、世界気候計画(WCP)、大気研究・環境計画(AREP)などを通じた地球環境保全のための取組に積極的に参画しました。2007年6月には、第15回WMO総会が開催され、WMOの各部門による全球地球観測システム(GEOSS)や国際極年(IPY)などへの積極的な貢献が確認されました。また、日中連携による地区気候センター(RCC)ネットワークの運営開始を踏まえ、アジア地区内の気候情報の利用促進と能力向上等について議論が行われるとともに、政策決定者のための気候予測をテーマとして第3回世界気候会議(WCC-3)を2009年8~9月にスイス・ジュネーブにおいて開催することなどが決定されました。

 (ウ) 経済協力開発機構(OECD)における取組

 我が国は、OECD環境政策委員会の活動に積極的に参加しました。特に2008年4月に開催されたOECD環境大臣会合においては、G8議長国として我が国が副議長を務め、気候変動政策と経済等について議論を行いました。また、2008年3月に発出された資源生産性についてのOECD理事会勧告については、これまでこの分野で先進的な取組を行ってきた我が国が主導的な役割を果たしました。

 持続可能な開発に関するOECDの横断的な取組としては、2004年(平成16年)の閣僚理事会で設置が承認された「持続可能な開発年次専門家会合」の第5回会合が、2008年(平成20年)10月に開催され、今後OECDで優先的に取り組んでいくべき持続可能な開発関連作業等について、議論がなされました。

 (エ) 世界貿易機関(WTO)等における取組

 WTO貿易と環境に関する委員会CTE)特別会合等では、貿易と環境の相互支持を強化することを目的として、2001年(平成13年)のWTO第4回閣僚会議で採択されたドーハ閣僚宣言に基づき、WTOルールと多国間環境協定(MEAs)が規定する特定の貿易上の義務との関係や、環境関連の物品及びサービスの関税・非関税障壁の削減又は撤廃等について交渉が行われています。

 これに加え、我が国は経済連携協定の締結交渉も精力的に進めてきており、2008年度(平成20年度)には、12月にベトナム、2009年(平成21年)2月にスイスとの間で二国間協定の署名を行ったほか、2008年(平成20年)4月にASEAN全体との経済連携協定の署名が完了しました。こうした協定において、環境保全に関する規定や環境協力の内容を盛り込む等により、貿易を始めとする国際経済活動と環境保全との相互支持性を向上させる取組を進めています。

 (オ) 主要国首脳会議(G8サミット)における取組

 2008年(平成20年)7月、我が国はG8北海道・洞爺湖・サミットを開催し、気候変動問題を大きく取り上げ、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減するというビジョンについて、G8首脳間での合意に導きました。このほか、同サミットでは、3Rリデュースリユースリサイクル)の推進や生物多様性の保全等を含む首脳宣言を採択しました。

 (カ) アジア・太平洋地域における取組

[1] クリーンアジア・イニシアティブ

 環境と共生しつつ経済発展を図り、持続可能な社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブは、平成19年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」で提唱され、平成20年6月に具体的な目標や政策がとりまとめられました。また、第1回東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合や第10回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM10)の機会を活用して、アジア各国に本イニシアティブの周知を図りました。

[2] 東アジア首脳会議環境大臣会合及びASEAN+3(日中韓)環境大臣会合

 2008年(平成20年)10月に、ASEAN加盟国10か国と日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドの16か国の環境大臣が参加する東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合がハノイ(ベトナム)にてはじめて開催されました。会議において我が国は、ベトナムとともに共同議長を務め、2007年(平成19年)11月の第3回東アジア首脳会議において発出された「気候変動、エネルギー及び環境に関するシンガポール宣言」をフォローアップするための今後の協力の方針を示す閣僚声明の採択に貢献しました。その際、協力の優先分野として「環境的に持続可能な都市(Environmentally Sustainable Cities)」が取り上げられました。同日にハノイ(ベトナム)で、ASEANに日中韓の3か国を加えた第7回ASEAN+3環境大臣会合が開催され、日本のASEANに対する協力や、日中韓三カ国によるASEANへの協力について進捗状況が報告されました。また、東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANET)や気候変動問題への対処について議論を行ったほか、2010年に我が国で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)について紹介し、協力を呼びかけました。

[3] アジア太平洋環境会議(エコアジア)

 2008年(平成20年)9月に、名古屋市において第16回アジア太平洋環境会議エコアジア)を開催しました。同会議には、3名の環境担当大臣を含むアジア太平洋地域の11か国及び16国際機関が参加し、生物多様性をテーマとし、アジア太平洋地域が取るべき行動について活発な議論が行われました。

[4] アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)

 アジア太平洋環境開発フォーラムAPFED)は、2004年(平成16年)に報告書を採択し、アジア太平洋地域で持続可能な社会を構築するための具体的な提言を行いました。平成17年度からは、これらの提言の実施のため、有識者・専門家によるテーマ別の政策対話、地方自治体やNGOによる優れた取組事例の収集・表彰・普及、革新的な取組に対する知的助言・財政支援などの活動を進めています。

 2008年7月にはフィリピンのダバオでAPFEDII第4回全体会合を開催し、各提言の進ちょく状況等の報告・検討を行いました。また、ネパールにおける焼畑農業管理による温室効果ガスの影響低減など、優れた取組事例に対する表彰を行いました。

[5] 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

 2008年(平成20年)12月に、済州島(韓国)において第10回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)が開催され、気候変動問題、特に低炭素社会の構築について議論が行われたほか、光化学オキシダント等の越境大気汚染問題、漂流・漂着ゴミ問題等に関して中国・韓国に現状を説明し、対策に向けた協力を呼びかけました。また、TEMMの下のプロジェクトとして黄砂に関する局長級会議を2008年9月に開催したほか、3か国の環境行政官の合同研修等を韓国において実施しました。なお、2008年11月には、滋賀県彦根市において第8回日中韓環境産業円卓会議を開催しました。

[6] アジア協力対話(ACD)第5回環境教育推進対話

 2008年10月に、滋賀県において、アジア協力対話(ACD)の枠組みにおける協力案件として第5回環境教育推進対話を開催しました。同会議には、ACD参加国より17カ国の関係者が参加し、「水と衛生問題に関する教育」をテーマとし、各国に於ける取組と活動につき報告がなされ、水・衛生問題に関する教育を巡る課題と協力のあり方について意見交換を行いました。

[7] アジアEST地域フォーラム

 2009年2月に韓国・ソウル市において、第4回「アジアEST地域フォーラム」を開催しました。日本を含むアジア地域22か国の環境、交通及び保健担当の政策担当者等が出席し、アジアにおける環境にやさしい交通の実現を目指して各国の先進事例発表と政策対話を行いました。その結果、低炭素グリーン成長等に焦点をあてた「ソウル宣言」を採択し、今後も継続して各国協力のもとに一層ESTを推進すること等を確認しました。

 また、2007年4月の「アジアの市長による環境的に持続可能な交通に関する国際会議」(京都で開催)で採択した「京都宣言」の追加署名式を、2008年11月にタイ王国・バンコクにて開催し、すでに署名された22都市に加え、新たに12都市の市長等がこの宣言に同意しました。

[8] アジア水環境パートナーシップ(WEPA)

 2008年10月に、マレーシア国プトラジャヤにおいて、アジア・モンスーン諸国の水問題に関係する行政官、研究者、事業者及びNGO等を一堂に会した第2回WEPA国際フォーラムを開催し、参加者による活動発表等を通じた能力向上と、そこで得られた有用な情報の共有化を図りました。

[9] アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)

 アジア太平洋地球変動研究ネットワークAPN)の枠組みを活用し、アジア太平洋地域の、特に開発途上国における地球変動研究の推進を積極的に支援しました。

[10] アジア諸国における石綿対策技術支援

 国際的な取組の重要性にかんがみ、東アジアサミット参加13カ国に対し、日本の石綿対策の概要をまとめた報告書を送付するとともに各国の石綿に関する法規制や使用実態の把握に努めました。また、日本にて石綿対策に関する情報共有のためのワークショップを開催し、ベトナムで現地調査を実施しました。

 (キ) 世界的な水環境問題解決に向けた国際連携の強化

 国連水と衛生に関する諮問委員会や第5回世界水フォーラム等の国際会議への積極的な参加、国際衛生年記念下水道シンポジウムの実施など国際衛生年の着実な実施、サラゴサ国際博覧会での催事の開催などを行い、世界的な水問題の解決に向けた国際連携に努めました。また、2009年3月にイスタンブールで開催された第5回世界水フォーラムに合わせ、WEPA事業など我が国の水環境問題の取組等について情報発信を行いました。

 イ 二国間の枠組みによる連携

 (ア) 中国

 平成19年12月に、両国の環境大臣間で、環境汚染対策と温暖化対策の双方に資するコベネフィット協力に関する意向書を締結し、その意向書に基づき具体的な案件発掘・形成に向けた調査等を実施しました。

 特に水分野については、平成19年4月の日中環境保護協力共同声明を受け、具体的な協力を進めるため平成20年5月に日中双方の環境大臣間で「農村地域等における分散型排水処理モデル事業協力実施に関する覚書」を締結し、江蘇省及び重慶市においてモデル事業に着手しました。また、12月には北京市においてセミナーを開催し、汚染物質総量規制及び分散型排水処理技術等に関する検討の成果を公表するとともに、今後の日中協力の課題等について意見交換を行いました。

 また、平成20年5月には気候変動に関する共同声明を日中共同で公表しました。

 (イ) 韓国

 環境保護協力協定に基づき合同委員会を開催し、気候変動問題、黄砂、越境大気汚染、海洋ゴミ問題等につき意見交換を行うとともに、共同研究等を進めました。

 (ウ) モンゴル

 第3回目の環境政策対話を行い、両国の環境政策と課題、協力の方向性について意見交換を行いました。

 (エ) その他

 米国、カナダ、ロシア等と環境保護協力協定に基づく共同研究や協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施しました。また、平成19年12月にインドネシアの環境大臣とコベネフィット協力に関する合意文書締結し、具体的な案件の発掘・形成に向けた調査等を実施しました。

 ウ 海外広報の推進

 海外に向けた情報発信の充実を図り、報道発表の英語概要を逐次掲載しました。また、「Annual Report on the Environment and Sound Material-Cycle Society in Japan 2008」(英語版環境・循環型社会白書)等海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行いました。


(2)開発途上地域の環境の保全

 日本は政府開発援助(ODA)による開発途上国支援を積極的に行っています。環境問題は、「政府開発援助大綱」において、「重点課題」である「地球的規模の問題への取組」の中で対応を強化しなければならない問題と位置付けられています。

 さらに、ODAを中心とした我が国の国際環境協力については、平成14年に表明した「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(ECOISD)」において、環境対処能力向上や我が国の経験と科学技術の活用等の基本方針の下で、地球温暖化対策、環境汚染対策、「水」問題への取組、自然環境保全を重点分野とする行動計画を掲げています。18年度においては、環境分野のODAとして約4,135億円(ODA全体に占める割合は約35.4%)の支援を行いました。

 ア 技術協力

 技術協力は、独立行政法人国際協力機構JICA)を通じて実施しています。研修員の受け入れ、専門家の派遣、機材供与、また、それらを組み合わせた技術協力プロジェクト(表6-9-1)、さらに開発途上国の環境保全に関する計画策定を支援するための開発調査などが積極的に行われました。


表6-9-1 主な技術協力プロジェクト

 イ 無償資金協力

 無償資金協力は、居住環境改善(都市の廃棄物処理、地方の井戸掘削など)、地球温暖化対策関連(植林、エネルギー効率向上)等の各分野において実施しています。(表6-9-2)


表6-9-2 主な水資源・環境無償の実績(平成16~18年度)

 また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。

 ウ 有償資金協力

 有償資金協力は経済・社会インフラへの援助等を通じ開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対し、日本は国際協力銀行JBIC)を通じ、積極的に円借款を供与しています。(表6-9-3)


表6-9-3 主な有償資金協力(円借款)プロジェクト

 エ 国際機関を通じた協力

 我が国は、UNEPの環境基金、UNEP国際環境技術センター技術協力信託基金等に対し拠出を行っており、また、我が国が主要拠出国及び出資国となっている国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も環境分野では重要になってきています。

 地球環境ファシリティGEF)は、開発途上国等で行う地球環境保全のためのプロジェクトに対して、主として地球環境益に資する増加コストに対する資金を供与する国際的資金メカニズムです。我が国はアメリカに次ぐ世界第2位の資金拠出国として、実質的な意思決定機関である評議会の場等を通じ、GEFの活動に積極的に参画しました。


(3)国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備

 国際会議における専門的かつ技術的議論の進展と国際世論づくりに一層貢献していくため、政府内の専門家の育成に努めるとともに、政府外の専門家の知見の活用を図るため、NGO、学術研究機関、産業界などとの連携を強化しました。

 また、定年退職を迎える団塊世代の環境管理技術を開発途上国において活用するため、3月にシニア世代向け国際環境協力研修を実施しました。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

 「地球環境研究総合推進費」制度の一環として、海外の研究者を招へいして日本の国立試験研究機関等において共同研究を行う「国際交流研究」の枠組み等を活用し、継続して調査研究等の充実、強化を図りました。

 監視・観測については、UNEPにおける地球環境モニタリングシステム(GEMS)、世界気象機関WMO)における全球大気監視(GAW)計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、全球気候観測システム(GCOS)、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加して実施しました。さらに、「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」を推進するための国際的な枠組みである地球観測に関する政府間会合GEO)において、平成20年11月まで執行委員会国を務めるとともに、GEOの専門委員会である構造及びデータ委員会の共同議長を務めるなど、GEOの活動に積極的に参加しました。全球気候観測システム(GCOS)の地上観測網の推進のため、世界各国からの地上気候観測データの入電状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務や、アジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を、各国気象局と連携して推進しました。

 アジア太平洋気候センターでは、アジア太平洋地域各国の気象機関に対し基盤的な気候情報を引き続き提供するほか、1979年から再計算された地球全体の解析値を利用した気候図の公開を始めました。さらに、アジア太平洋地域の気象機関からの要請に応じて研修を実施するなど、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。

 また、VLBI(超長基線電波干渉法)やGPSを用いた国際観測に参画するとともに、験潮、絶対重力観測等と組み合わせて、地球規模の地殻変動等の観測・研究を推進しています。

 さらに、東アジア地域における残留性有機汚染物質POPs)の汚染実態把握のための環境モニタリングが円滑に実施できるよう、東アジアPOPsモニタリングワークショップを開催しました。


(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実・強化

 APNの枠組みを活用し、アジア太平洋地域における特に開発途上国の地球変動研究の推進を積極的に支援しました。APNでは、神戸市内に開設したAPNセンターを中核として、気候変動や生物多様性に関する国際共同研究などを支援し、地域内諸国の研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。また、開発途上国の地球温暖化に関する科学的能力の強化を図るために、ヨハネスブルグ・サミットにおけるパートナーシップ・イニシアティブのひとつとして提唱した「持続可能な開発に向けた開発途上国の研究能力開発・向上プログラムCAPaBLE)」として、地球温暖化の影響及び緩和策に関する先導的研究や、温室効果ガスの測定手法等に係る開発途上国の研究者の能力向上の支援等を推進しました。

 また、地球環境の現状を把握するための地球全陸域の地理情報を整備する「地球地図プロジェクト」を関係国際機関等と連携して主導しました。本プロジェクトには164ヶ国・16地域が参加しており、70か国・4地域分のデータが公開されています(平成21年3月31日現在)。さらに、東アジアをリアルタイムでカバーできる温暖化影響観測ネットワーク網の構築によりアジアの環境影響評価を行うとともに、アジア太平洋環境経済統合モデル(AIMモデル)を用いて、アジア各国(中国、インド等)が自ら将来の環境変化を予測するための能力開発に協力をしました。

3 国際協力の実施等に当たっての環境配慮

 ODA及び輸出信用等における環境配慮

 JICAは、引き続き「JICA環境社会配慮ガイドライン」に基づき事業を実施しました。国際協力銀行JBIC)は、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」及び「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインに基づく異議申立手続要綱」に基づいて円借款事業と輸出信用等を実施しました。

 輸出信用機関である日本貿易保険(NEXI)は、「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」及び「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン異議申立手続等について」という手続要綱に基づき事業を実施しました。

 無償資金協力については、「無償資金協力審査ガイドライン」に基づき実施しました。



前ページ 目次 次ページ