第3節 調査研究、監視・観測等の充実、適正な技術の振興等

1 調査研究及び監視・観測等の充実

(1)研究開発の総合的推進

 第3期科学技術基本計画(計画年度:平成18〜22年度)において環境分野は、我が国の研究開発の重点推進4分野の一つとされています。この基本計画の下に策定された分野別推進戦略では、気候変動研究領域、水・物質循環と流域圏研究領域、生態系管理研究領域、化学物質リスク・安全管理研究領域、3R技術研究領域、バイオマス利活用研究領域の6つの研究領域が設定されています。また、それぞれの研究領域において重要な研究開発課題と集中投資すべき戦略重点科学技術が定められています。この推進戦略に基づき、環境分野の研究開発は、総合科学技術会議のリーダーシップの下、環境プロジェクトチームにおいて、府省間で連携をとり、学際的、総合的に推進を図りました。

 また、科学技術連携施策群のテーマとして推進している「バイオマス利活用」、「総合的リスク評価による化学物質の安全管理・活用のための研究開発」では、関係府省における施策の取組・連携状況の把握や、関係府省の連携を深めるための課題の実施などの活動を積極的に推進し、シンポジウムや成果報告会を開催しました。

 さらに、長期戦略指針「イノベーション25」に基づき、社会還元加速プロジェクトのテーマの一つとして、「バイオマス資源の総合利活用」の推進を図りました。

 また、環境研究・環境技術開発の推進戦略(中央環境審議会答申)について、その取組状況をフォローアップし、平成21年度の環境研究・技術開発施策に反映しました。


(2)環境省関連試験研究機関における研究の推進

 ア 独立行政法人国立環境研究所

 国立環境研究所では、環境大臣が定めた5年間の第2期中期目標(平成18〜22年度)と第2期中期計画に基づき、全地球的な環境の健全性を確保し、持続可能な社会を構築するため、10年先に在るべき環境や社会の姿及び課題を見越して、[1]地球温暖化研究プログラム、[2]循環型社会研究プログラム、[3]環境リスク研究プログラム、[4]アジア自然共生研究プログラムの4つの重点研究プログラムを設定しており、中期計画の目標達成に向けて着実に研究を進展させました。

 また、長期的な視点に立って、先見的な環境研究に取り組むとともに、新たに発生する重大な環境問題及び長期的、予見的・予防的に対応すべき環境問題に対応するため、基盤的な調査・研究を推進しました。

 さらに、研究の効率的実施や研究ネットワークの形成に資するため、環境研究基盤技術ラボラトリーにおいて環境標準試料の作製、環境試料の長期保存(スペシメンバンキング)等を実施するとともに、地球環境の戦略的モニタリング等を実施し、知的研究基盤の整備を推進しました。

 また、インターネット等を通じた環境の保全に関する国内外の資料の収集・整理及び提供により、国民等への適切な環境情報の提供を行いました。

 イ 国立水俣病総合研究センター

 国立水俣病総合研究センターでは、水俣病発生の地に在る国の直轄研究機関としての使命を達成するため、平成20年度に[1]水銀研究拠点としての研究の推進、[2]研究成果を活用した情報発信、[3]研究成果を活用した水俣病被害地域への福祉的支援、[4]専門研究機関としての国際貢献の4つの課題を設定して、これらの課題に沿って研究及び業務を推進しました。

 水俣病被害地域への福祉的支援としては、地域の社会福祉協議会等と協力して、「介護予防等在宅支援モデル研究事業」を進め、高齢化する水俣病被害地域住民の日常生活の質の向上に貢献しました。また、主に開発途上国に対し、調査・指導のために研究者の派遣を積極的に行うとともに、研究者を受け入れて、共同研究や分析技術を中心とした研修を実施し、WHO研究協力センターとしての役割を果たしました。

 併せて、これらの施策や研究内容について、施設の一般公開のほか、ホームページ(http://www.nimd.go.jp)上で具体的かつ分かりやすい情報発信を実施しました。


(3)公害防止等に関する調査研究等の推進

 環境省に一括計上した平成20年度の関係行政機関の試験研究機関の地球環境保全等に関する研究のうち、公害の防止等に関する各府省の試験研究費では、8府省25試験研究機関等において、中長期にわたる環境観測、地方公共団体の試験研究機関の環境研究・技術開発ポテンシャル向上に寄与する研究、環境関連施策に寄与する研究等、合計58の試験研究課題を実施しました。

 また、「環境技術開発等推進費」において、広く産学官などの英知を活用した研究開発の提案を募り、優秀な提案のあった応募者が所属する試験研究機関等に当該研究開発を委託し、環境研究・技術開発の推進を図りました。その内容は表6-3-1のとおりです。


表6-3-1 環境技術開発等推進費に関する概要


(4)地球環境研究に関する調査研究等の推進

 関係府省の国立試験研究機関、独立行政法人、大学、民間研究機関等広範な分野の研究機関、研究者の有機的連携の下、「地球環境研究総合推進費」により、学際的、国際的観点を重視しつつ地球環境研究を推進しました。関係行政機関等による中長期的視点から着実に推進すべき研究については、「地球環境保全試験研究費」により、地球温暖化の防止に資する研究を行いました。平成20年度に実施した主な調査研究は表6-3-2のとおりです。


表6-3-2 平成20年度に実施した主な地球環境分野の調査研究


(5)地球環境に関する観測・監視

 大気における気候変動の観測について、気象庁は世界気象機関WMO)の枠組みで地上及び高層の気象観測を継続的に実施するとともに、全球気候観測システム(GCOS)の地上及び高層の気候観測ネットワークの運用に貢献しています。さらに、世界の地上気候データの円滑な国際交換を推進するため、WMOの計画に沿って各国の気象局と連携し地上気候データの入電数向上、品質改善等のための業務を実施しています。

 また、温室効果ガスなど大気環境の観測については、(独)国立環境研究所及び気象庁が、それぞれ沖縄県波照間島や東京都南鳥島等で温室効果ガスの測定を行っています。気象庁ではWMOにおける全球大気監視(GAW)計画の一環として、温室効果ガス、CFCオゾン層破壊物質、オゾン層、有害紫外線等の定常観測、日本周辺海域及び北西太平洋海域における洋上大気・海水中の二酸化炭素等の定期観測、エーロゾルライダーを用いたエーロゾルの高度分布の測定を引き続き実施しました。また、黄砂及び有害紫外線に関する情報を発表しています。

 海洋における観測については、海洋地球研究船「みらい」等を用いた観測研究、観測技術の研究開発を推進しました。第49次南極地域観測隊が昭和基地を中心に、海洋、気象、電離層等の定常的な観測のほか、地球規模での環境変動の解明を目的とする各種のプロジェクト研究観測等を実施しました。地球規模の変動に大きく関わっている海洋における観測について、海洋の観測データを飛躍的に増加させるため、海洋自動観測フロート約3千個を全世界の海洋に展開し、地球規模の高度海洋監視システムを構築する「Argo計画」を推進しました。

 GPS装置を備えた検潮所において、精密型水位計により、地球温暖化に伴う海面水位上昇の監視を行い、海面水位監視情報の提供業務を継続しました。また、国内の影響・リスク評価研究や地球温暖化対策の基礎資料として、温暖化に伴う気候変化に関する予測情報を「地球温暖化予測情報」によって提供しており、情報の高度化のため、大気と海洋の相互関係を更に精緻化させた詳細な気候変化の予測計算を実施しています。

 衛星による地球環境観測については、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による観測を継続し、関係機関と連携して植生把握などに関する利用実証実験を行いました。また、熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載の我が国の降雨レーダ(PR)や米国地球観測衛星(Aqua)搭載の我が国の改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)から取得された観測データを提供し、気候変動や水循環の解明等の研究に貢献しました。さらに、環境省、(独)国立環境研究所及び(独)宇宙航空研究開発機構の共同プロジェクトである温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を平成21年1月に打ち上げ、全球の温室効果ガス濃度分布の高精度かつ均一的な観測を目指して、初期機能確認等を行っています。そのほかにも、気候変動予測精度の向上等への更なる貢献のため、降水、雲・エアロゾル、植生等の地球環境に関する全球の多様なデータの収集及び提供を目指し、地球観測衛星の研究開発を行いました。

 地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、環境省と気象庁が共同で運営する「地球観測連携拠点(温暖化分野)」の活動を推進しました。

 地球環境変動予測研究については、世界最高水準の性能を有するスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を活用して地球温暖化予測モデル開発等を推進しました。

 「地球観測システム構築推進プラン」では、競争的研究資金制度のもと、地球観測システムの構築に貢献する研究開発等に効果的に取り組んでいます。本事業では、地球温暖化・炭素循環分野及びアジアモンスーン地球水循環・気候変動分野、対流圏大気変化分野における研究課題の実施を推進しました。

 また、「地球観測の推進戦略」を踏まえ、地球温暖化の原因物質や直接的な影響を的確に把握する包括的な観測態勢整備のため、「地球環境保全試験研究費」において「地球観測モニタリング支援型」を平成18年度より創設し、平成20年度は、海洋表層CO2分圧観測データ利用促進等をテーマとした2つの研究課題を開始しました。

 平成20年度に実施した主な観測・監視は表6-3-3のとおりです。


表6-3-3 平成20年度に実施した主な地球環境分野の観測・監視


(6)廃棄物処理等科学研究の推進

 第3期科学技術基本計画の政策目標「環境と調和する循環型社会の実現」を目的として、競争的研究資金を活用し広く課題を募集し、平成20年度は、74件の研究事業及び6件の技術開発事業を実施しました。

 研究事業については、「3R推進のための研究」、「廃棄物系バイオマス利活用推進のための研究」、「循環型社会構築を目指した社会科学的複合研究」、「アスベスト問題解決をはじめとした安全、安心のための廃棄物管理技術に関する研究」、「漂着ごみ問題解決に関する研究」を重点テーマとし、廃棄物を取り巻く諸問題の解決とともに循環型社会の構築に資する研究を推進しました。特に、「3R推進のための研究」においては、効果的な3R実践のための技術や社会経済システムの設計による脱物質化・低炭素社会の実現に貢献するため、「3R実践のためのシステム分析・評価・設計技術」についてトップダウン方式による研究を行いました。

 技術開発事業については、「廃棄物系バイオマス利活用技術開発」、「アスベスト廃棄物の無害化処理に関する技術開発」を実施し、次世代を担う廃棄物処理等に係る技術の開発を図りました。


(7)環境保全に関するその他の試験研究

 内閣府では、環境施策において、「ハイブリッド型統合勘定」をより活用するための経済分析モデルの検討を行いました。

 警察庁では、よりきめ細かな信号制御を行い交通の円滑化を図るため、プロファイル信号制御方式による信号制御高度化モデル事業を実施しました。

 総務省では、(独)情報通信研究機構等を通じ、電波や光を利用した地球環境観測技術として、人工衛星から地球の降水状態を観測するGPM搭載二周波降水レーダ、同じく人工衛星から地球の雲の状態を観測する雲レーダ、ライダーによる温室効果ガスの高精度観測技術、突発的局所災害の観測及び予測のために必要な次世代ドップラーレーダー技術、風速や大気汚染物質等の環境情報を都市規模で詳細に計測するセンシングネットワーク技術、天候等に左右されずに被災状況把握を可能とするレーダを使用した高精度地表面可視化技術の研究開発等を実施しました。さらに、情報通信ネットワーク設備の大容量化に伴って増大する電力需要を抑制するため、光の属性を極限まで利用するフォトニックネットワーク技術による低消費電力光ネットワークノード技術等、極限光ネットワークシステム技術の研究開発を実施しています。

 農林水産省では、環境保全型農業等の農林水産関連施策を効果的に推進するための生物多様性指標とその評価手法の開発に着手するとともに、国産バイオ燃料の利用促進を図るため、バイオエタノールの生産コストを大幅に削減する技術開発や、地球温暖化が農林水産業に与える影響を、将来予測を含めより高度に評価するための研究開発や、eDNA(土壌より直接抽出したDNA)解析により土壌の生物性を評価する技術の開発を引き続き推進しました。

 経済産業省では、植物機能や微生物機能を活用して工業原料や高機能タンパク質等の高付加価値物質を生産する高度モノ作り技術の開発や微生物群の制御等による産業廃水等の高効率バイオ処理技術の高度化を実施しました。また、バイオテクノロジーの適切な産業利用のための遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律カルタヘナ法)の適切な施行や、海外の遺伝資源の円滑な利用を促進するため関係者との協議を行う等、事業環境の整備を実施しました。

 循環型社会の構築に向け、「下水汚泥資源化・先端技術誘導プロジェクト(LOTUS Project)」等において開発された、下水汚泥の有効利用に係る技術の普及を推進しました。国交省では、地域の実情に見合った最適なヒートアイランド対策の実施に向けて、さまざまな対策の複合的な効果を評価できるシミュレーション技術の実用化や、地球温暖化対策に資するCO2の吸収量算定手法の開発等を実施しました。また、環境への負荷が小さく、新たな海洋空間の創造が可能な超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)の普及促進のための調査を行いました。他の化石燃料と比較して環境負荷が少ない天然ガスの供給拡大に寄与する天然ガスハイドレート輸送船の研究開発の実施を支援しました。また、船舶による大気汚染の防止に関する国際規制強化の動向に対応するため、排出ガスに含まれるNOx等を大幅削減する環境に優しい舶用エンジンの実用化に向けて、排出ガス後処理装置(SCR触媒)及び燃料噴射系の改良等の研究開発を実施しました。

2 技術の振興

(1)環境技術の開発支援

 地球温暖化対策に関しては、新たな地球温暖化対策技術の開発・実用化・導入普及を進めるため、「地球温暖化対策技術開発事業(競争的資金)」において、省エネ効果の高いLED照明の高効率・低コスト化開発や、パソコンの消費電力量を可視化する技術の開発などを実施しました。平成20年度の重点テーマとしては、バイオエタノール混合ガソリンへの対応促進のための技術実証等の「バイオマス資源総合利活用システム」、「安全な革新的水素貯蔵・輸送技術」等に係る技術開発を実施しました。

 また、製品開発段階に移行した温暖化対策技術の市場投入を促進するための支援も併せて行い、全体で40件の技術開発事業を実施しました。

 省エネルギー、新エネルギー、原子力、クリーンコールテクノロジーの開発を推進するとともに、化石燃料の使用により排出されるCO2を分離回収し、地中等に長期間保留する二酸化炭素回収・貯留(CCS)の技術開発を実施しました。

 先進的な環境技術の普及を図る「環境技術実証事業」では、閉鎖性海域における水環境分野、ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)など6分野で対象技術の環境保全効果などを実証しました。また、これまでに実証した技術について、成果を発表し、技術の普及を図るため、各種展示会への出展を行いました。

 地方公共団体の環境測定分析機関等を対象として、各分析機関における環境測定分析技術の向上を図る契機とし、信頼性の確保に資する観点から、基本精度管理調査(廃棄物(ばいじん)溶出液試料(重金属類)、廃棄物(下水汚泥)試料(重金属類))と高等精度管理調査(模擬水質試料(有機スズ化合物、有機塩素化合物)、廃棄物(ばいじん)試料(ダイオキシン類))を実施しました。


(2)技術開発等に際しての環境配慮及び新たな課題への対応

 バイオレメディエーション事業の健全な発展と利用の拡大を通じた環境保全を図るため、「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」に基づき、制度の適切な運用を行うとともに、同指針に基づき事業者から提出された2件の浄化事業計画につき、同指針に適合している旨の確認を行いました。

3 国における基盤整備等

 大学共同利用機関法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所が実施する人文・社会科学から自然科学までの幅広い学問分野を総合化する研究プロジェクトの推進や科学研究費補助金による研究助成など、大学等における地球環境問題に関連する幅広い学術研究の推進や研究施設・設備の整備・充実への支援を図るとともに、関連分野の研究者の育成を行いました。

 また、戦略的創造研究推進事業等により、環境に関する基礎研究の推進を図りました。

 さらに、大気粉じん等の環境試料や絶滅のおそれのある生物の細胞・遺伝子を長期保存し、環境研究の知的基盤としていくための「環境試料タイムカプセル化事業」を実施しました。

4 地方公共団体、民間団体等における取組の促進

 地域の産学官連携による「環境技術開発基盤整備モデル事業」を創設し、地域で不足する情報交換体制及びネットワークの強化を図り、地域における産学官連携による環境技術開発の基盤整備を推進しました。

 地方公共団体の環境関係試験研究機関は、監視測定、分析、調査、基礎データの収集等を広範に実施するほか、地域固有の環境問題等についての研究活動を推進しました。

5 成果の普及等

 地球環境保全等試験研究費のうち公害防止等試験研究費、環境技術開発等推進費に係る研究成果については、環境保全研究成果発表会、環境保全研究成果集等により公開し、行政機関、民間企業へ普及を図りました。

 廃棄物処理等科学研究成果については、廃棄物処理技術情報ホームページにおいて公開しているほか、「廃棄物対策研究発表会」において発表するとともに、関連する海外情報についても広く普及を図りました。

 地球環境研究についても、地球環境研究総合推進費ホームページにおいて、研究成果及びその評価結果等を公開しているほか、「地球温暖化の日本への影響〜現状と将来予測、その対策と賢い適応へ向けて〜」と題した一般公開シンポジウムを開催し、最新の研究成果を交えながら紹介しました。



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