第7節 地球規模の視点を持って行動する取組

1 SATOYAMAイニシアティブの推進

 世界の自然共生の智慧や伝統等を収集・調査し、日本の取組と合わせて、地球全体での自然共生社会実現のために活用することを「SATOYAMAイニシアティブ」として世界に提案することとしており、生物多様性条約COP9で、環境大臣がその取組の促進を国際社会に表明し、さらに平成20年5月に開催されたG8環境大臣会合でその国際的な推進が合意されるなど、SATOYAMAイニシアティブ推進のための取組を進めました。

2 生物多様性のモニタリングと総合評価

(1)自然環境調査

 わが国では、全国的な観点から植生や野生動物の分布など自然環境の状況を面的に調査する自然環境保全基礎調査緑の国勢調査。以下「基礎調査」という。)や、さまざまな生態系のタイプごとに自然環境の量的・質的な変化を定点で長期的に調査するモニタリングサイト1000等を通じて、全国の自然環境の現状及び変化状況を把握しています。平成20年度は、特に地球温暖化の影響を受けやすい脆弱な生態系である高山帯については、モニタリングサイト1000のサイトの設置、調査方法等の検討を開始し、大雪山、北アルプス、南アルプス、富士山、白山をサイトとして選定しました。

 また、海洋基本法の制定を受け、海洋生物多様性保全のための戦略策定にむけた方針を検討するため、主にわが国の200海里域内を対象として、海洋の生物多様性に関する広域的なデータを収集整理し、海洋生物多様性データベースの構築にむけた検討を行いました。

 加えて、国際協力プロジェクトである東・東南アジア生物多様性インベントリー・イニシアティブの一環として、同地域における生物多様性情報整備と分類学能力の向上に関する現状及びニーズを把握し、この分野における国際連携を深めるため国際シンポジウムを開催しました。

 さらに、地球温暖化等の影響を受けやすい身近な生きものや自然現象(昆虫の分布や植物の開花など)についても、平成20年7月から市民参加による調査(愛称「いきものみっけ」)を開始しました。収集した情報からいきもの地図を作成するとともに、過去の調査結果と比較分析しその結果を分かりやすく情報発信することで、地球温暖化を身近な問題として捉えてもらい、暮らしにおける二酸化炭素排出削減行動に結びつけていきます。


(2)生物多様性総合評価

 わが国の生物多様性の現状と傾向を社会的な側面も含めて把握し、分かりやすく伝えられるようにするため、生物多様性総合評価を開始しました。初年度の平成20年度は、生物多様性の変化の状況や各種施策の効果などを把握するための指標の検討を行いました。

3 生物多様性関連の条約等に基づく国際的な取組

(1)ワシントン条約

 ワシントン条約に基づく輸出入の規制に加え、わが国では、同条約附属書Iに掲げる種については国内での譲渡し等の規制を行い、条約の実施を推進しています。また、関係機関が連携・協力し、インターネットによるものを含む条約規制対象種の違法取引削減に向けた取組等を進めました。


(2)ラムサール条約

 ラムサール条約については、東南アジア諸国に対する国際的に重要な湿地の特定に向けた協力等、ベトナムにおけるアジア湿地シンポジウムの開催支援、第10回締約国会議への水田に関する決議案の韓国との共同提出等を行いました。


(3)渡り鳥等保護条約

 米国、オーストラリア、中国、ロシア及び韓国との二国間の渡り鳥等保護条約等に基づき、各国との間で渡り鳥等の保護のため、アホウドリ、ズグロカモメ等に関する共同調査を引き続き実施するとともに、渡り鳥保護施策や調査研究に関する情報や意見の交換を行いました。


(4)東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ

 日豪政府のイニシアティブにより、平成18年11月に発足した「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」の活動として、アジア太平洋地域におけるツル、ガンカモ、シギ・チドリ類等の渡り性水鳥の保全を進めました。


(5)国際サンゴ礁イニシアティブ

 平成20年11月に、東京で「国際サンゴ礁保護区ネットワーク会議/第4回ICRI東アジア地域会合」を開催し、平成22年度を目途に東アジアを中心とした海域におけるサンゴ礁保護区ネットワーク戦略を策定するための作業計画を作成しました。


(6)世界遺産条約

 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約に基づき、世界遺産一覧表に記載された屋久島、白神山地及び知床の世界自然遺産について、関係省庁・地方公共団体による連絡会議の開催等により適正な保全を推進しました。特に、平成17年に登録された知床については、平成20年7月の第32回世界遺産委員会において保全状況の審査が行われ、地域社会の参画と科学委員会を通じて科学的知見を活用した管理が高く評価されました。あわせて同委員会から勧告された事項に適切に対応するため管理計画の見直しなどを進めました。

 世界遺産暫定一覧表に記載された小笠原諸島においては、関係省庁・地方公共団体等が連携し、外来種対策など推薦に向けた条件整備を行うとともに、推薦に必要な書類の作成を進めました。また、国内候補地である琉球諸島については、関係する地域の人たちの協力を得ながら世界的に優れた自然環境の価値を保全するための方策を検討しました。



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