第5節 国際的な循環型社会の構築

 ア G8における3Rイニシアティブの推進

 2008年(平成20年)5月に、神戸でG8環境大臣会合が開催され、3Rが主要議題の一つとして取り上げられました。参加各国の大臣間での議論を通じ、2004年(平成16年)のG8サミットにおいて、「3Rイニシアティブ」が提案されて以来、3Rの国際的取組が進展していることが確認され、今後G8各国が3Rの一層の推進に向けて取り組む具体的な行動が列挙された「神戸3R行動計画」が合意されました。当計画は、同年7月に北海道洞爺湖で開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおいて、G8各国の首脳間でも支持されました。

 この行動計画に基づき今後G8各国は、レジ袋等の使い捨て製品の削減、資源生産性を考慮した目標の設定、途上国の有害廃棄物の受け入れ、途上国の能力開発の支援などに取り組むこととなりました。特に、レジ袋削減については、日中韓がそろって対策をとることになったことから、3カ国が連携して、アジアや世界の国々に同様の取組を呼びかけることとなりました。

 また、G8環境大臣会合の際には、日本として、アジア等における循環型社会の構築に向けて進めていく国際的取組を列挙した「新・ゴミゼロ国際化行動計画」を発表しました。

 イ アジアにおける取組

 (ア) 3R国別計画・戦略の策定支援

 我が国は、ベトナム、インドネシアなどにおいて、国連地域開発センター(UNCRD)、国連環境計画UNEP)アジア太平洋地域事務所及び地球環境戦略研究機関IGES)と連携して、国別の状況に応じて3Rを国家として推進するための計画・戦略の策定を支援しています。2008年度においては、ベトナム、インドネシア、タイ等において、各国内の幅広い関係者や援助機関等による戦略案の検討を支援しました。

 (イ) 政策対話

 我が国は、3R推進のための国内の制度強化・政策の計画的実施の方向に歩み始めた諸国との間で、廃棄物処理・3R担当部局間の政策対話も積極的に進めています。

 2008年(平成20年)7月に韓国環境部との間で部局長級の「日韓廃棄物・リサイクル政策対話」を実施しました。同年策定された日本の循環型社会形成推進基本計画と、韓国の資源リサイクル基本計画の内容、両国のレジ袋削減対策の状況、廃棄物からのエネルギー回収の取組状況等に関して意見交換を行い、今後アジアにおける循環型社会の構築にむけて連携して行くことが確認されました。(図3-5-1)


図3-5-1 3Rに関するアジア各国との二国間協力

 さらに、東アジアでは、東南アジア10カ国、日本、中国、韓国、モンゴルの14カ国が参加して地域における環境保健に関する問題への対処能力の向上等を目指して2007年に設立された「環境と保健に関する地域フォーラム」のもとに、「固体廃棄物・有害廃棄物」作業部会が設置されています。我が国はこの作業部会の議長国であり、2008年12月には、カンボジアにおいて第2回作業部会が開催され、都市廃棄物に関する各国の課題や優良事例の共有、各国の医療廃棄物管理の状況をまとめた報告書の検討等が行われました。

 また、2006年(平成18年)12月には、日中政府間で日中循環型都市協力の実施について合意しました。本協力は、我が国がエコタウン整備を通じて蓄積した、再生資源を最大限に有効利用するリサイクル設備等の整備に関するノウハウを移転することを目的としています。

 具体的には、地域間交流という枠組みを利用し、我が国自治体・企業の協力も得つつ、実現可能性検証(FS)調査(インフラ整備促進事業)、人材育成を実施しています。現在までに、北九州市と天津市・青島市、兵庫県と広東省の間で協定が結ばれています。

 2008年(平成20年)10月にベトナム・ハノイで開催された東アジア首脳会議環境大臣会合において、「アジア3R推進フォーラム」の発足を日本から提案し、参加各国より賛同を得ました。アジア3R推進フォーラムは、各国政府間の対話を軸に、国際機関、援助機関、研究機関、民間セクター等幅広い関係者が参加し、パイロット事業の形成・実施、研究協力など3R推進のための地域協力のプラットフォームとなることを目指すものであり、2009年に発足を予定しています。

 (ウ) 3Rに関する情報拠点・研究ネットワークの整備

 アジア各国が自国の状況に適応した3Rや廃棄物処理に係る技術の普及・制度づくりを進めていくためには、3Rに関する知識・技術情報の蓄積・提供を効率的に進めることが極めて重要です。このため、環境省では、アジア開発銀行やUNEPアジア太平洋地域事務所等のイニシアティブで構築・運営されている情報拠点「3Rナレッジ・ハブ(3R Knowledge Hub)」のコンテンツ作りを支援しています。また、我が国の廃棄物資源循環学会が中心となって構築を進めている「アジア太平洋廃棄物専門家ネットワーク(SWAPI)」について、アジア地域における廃棄物・3Rに関わる研究者・専門家のネットワークとしての発展を期待して活動の支援を行っています。さらに、東アジアにおける資源循環に関する政策研究を各国の研究機関・大学等と共同で進めるための調査を実施しています。

 (エ) 3R・廃棄物管理に関する技術協力及びインフラ等整備支援

 ODAによる開発途上国支援として、JICAは、中央政府、地方政府、民間セクター等の対処能力の向上と連携強化を主眼とした技術協力を実施しています。中央政府レベルでは、廃棄物管理や3Rを国家レベルで推進するための法制度整備の支援、法令の実行を図るための基本方針及び計画の策定やその実行の支援等を行っています。また、地方政府レベルでは、廃棄物の発生抑制や分別収集等を住民と共同で進めていくための制度づくりや住民の意識啓発などを行っています。さらに、民間セクターの廃棄物の発生抑制や資源の再生利用を進めるため、グリーン購入やエコラベル制度といったリサイクル産業の振興や企業の取組を促進する施策の検討・立案を支援しています。また、廃棄物管理や3Rに関して開発途上国の技術者や行政官を日本に招いて行う研修についても、多様なプログラムによって行われています。2008年度においては、中国において新たに循環型経済推進のための技術協力プロジェクトが開始されたほか、ベトナム・ハノイ市における都市廃棄物の分別収集・堆肥化を進めるプロジェクト等が引き続き実施されています。これらに加えて、無償資金協力及び有償資金協力により、廃棄物管理のための機材や処理施設等の整備に対する支援が行われてきています。

 ウ 有害廃棄物の適正な管理

 有害廃棄物等の輸出入等の規制を適切に実施するため、環境省では「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」を主宰し、参加国間で各国の関係法制度や不適正事案等に関する活発な情報交換を行っています。さらに、アジア太平洋地域のE-wasteを環境上適正に管理するため、バーゼル条約の下で各国が進めるプロジェクトについて、財政的・技術的支援を行っています。

 エ その他の取組

 OECDにおいて進められている物質フロー及び資源生産性のプロジェクトを重視し、積極的に議論をリードしています。国連環境計画(UNEP)が、天然資源の利用による環境への影響の科学的評価などを目的に2007年に設立した「持続可能な資源管理に関する国際パネル」についても、3Rイニシアティブを推進する観点から、これを支援しています。

 なお、OECDが取りまとめた各国の廃棄物の発生量の1998年以降最新のデータは表3-5-1のとおりです。(OECD各国の廃棄物の発生量データ)


表3-5-1 各国の部門別廃棄物発生量



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