第3章 循環型社会の形成 〜循環型社会の構築を通じた経済発展の実現に向けて〜

第1節 3Rを組み込んだ新しい経済の姿

 世界的に資源制約が顕在化しつつある中、国際的に連携をとりながら循環型社会の形成を図っていく必要性がますます高まっています。また、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会活動様式は、化石燃料系資源を中心とした天然資源の枯渇への懸念や温室効果ガスの排出による地球温暖化問題、さらには大規模な資源採取による自然破壊や自然界における適正な物質循環の阻害の原因となっており、それぞれの問題は重層的に、かつ相互に悪循環しながら地球規模で深刻化しています。

 こうした現状を踏まえると、常に持続可能な社会の構築に向けた視点を持ち、低炭素社会に向けた取組や自然共生社会に向けた取組と統合して、天然資源の消費抑制と環境負荷の低減を目指した循環型社会の形成を、国内はもとより国際的にも実現していくことが喫緊の課題となっています。

 一例を挙げると、平成20年1月にわが国が世界に呼びかけた「クールアース推進構想」では、西暦2050年までに世界全体で二酸化炭素の排出量を現在の半分にすることを訴えています。この削減目標を国際的に共有することを目指すに当たり、わが国は、2050年までに現状から60%〜80%を削減するという長期的な削減目標を掲げ、この目標に向かって世界に誇れる低炭素社会の実現を目指すこととしています。このような低炭素社会を構築するに当たっては、既存の社会経済活動を変革し、資源採取、生産、流通、消費、廃棄などの社会経済活動の全段階を通じた廃棄物等の発生抑制循環資源の利用などの取組により、天然資源の枯渇を抑制し、環境負荷をできるだけ減らすという循環型社会の構築に向けた視点も求められます。

1 2015年へ向けて

 わが国では、循環型社会の構築に向け、平成20年に閣議決定された第二次循環型社会形成推進基本計画に基づき、関係する施策が総合的に展開されています。また、同計画では、さまざまな数値目標を設定し進捗状況を毎年評価していますが、その目標年次については2015年度としています(表3-1-1、表3-1-2)。いわば、2015年度は、わが国の循環型社会の構築における「一里塚」と位置付けられます。2015年の目標達成に向けては順調に進捗している指標が多いものの、国内外の経済状況をかんがみると、目標達成は楽観視できない状況です。


表3-1-1 第二次循環型社会形成推進基本計画における2015年度の数値目標(物質フロー指標)


表3-1-2 第二次循環型社会形成推進基本計画における2015年度の数値目標(取組指標)

 また、循環型社会に対する国民の意識は高いにもかかわらず、具体的な行動を起こしている国民の割合は低いというアンケート調査結果があります(表3-1-3循環型社会形成に対する意識・行動に関するアンケート調査結果)。創意工夫や心がけによって、今すぐに取り組めることを各主体が具体的な行動に結びつけるのはもちろんのこと、循環型社会の構築と経済発展とを結び付けることで、循環型社会を拡大・定着させていき、2015年の目標達成をできるだけ確実なものにする必要があります。


表3-1-3 循環型社会形成に対する意識・行動に関するアンケート調査結果

 循環型社会の拡大・定着に当たっては、循環型社会を担う各主体の間で、循環型社会を構築する必要性についての理解がこれまで以上に進むことが不可欠であることから、まず、「循環型社会の意義」について確認します。続いて、各主体に求められる具体的な行動、循環型社会の構築、さらに経済発展を達成するための具体的な取組について、「循環型社会構築と経済成長の統合に向けて」の中で概観します。

2 循環型社会の意義

(1)わが国と世界の持続的な発展

 2008年度後半からの世界景気の減速を受け、短期的な傾向としては、鉄スクラップ、古紙、PETフレークなど多くの循環資源価格が急落しており、今後の推移を注視する必要があります(図3-1-1)。その一方で、長期的には、資源やエネルギーは需要拡大に伴って価格が上昇しており、この傾向は循環資源にも及んでいます。特に、アジアを中心とした国際的な経済成長と人口増加に伴って、世界的に資源採取が増加しており、資源の安定供給に対する懸念が強まっています(図3-1-2)。


図3-1-1 循環資源価格の推移


図3-1-2 確認可採埋蔵量に対する2015年又は2050年までの予測累計生産量の割合(推計)

 資源の乏しいわが国は、資源を効率的に利用し、資源に依存しない経済成長、すなわち経済成長と天然資源等投入量のデカップリング(天然資源投入量の増加率が経済成長の伸び率を下回っている状況)に向けた取組を進めてきており、これがわが国の国際的な競争力の維持・強化を可能としてきました。アジアを中心とした国際的な経済成長と人口増加に伴い、世界的に廃棄物問題が深刻化しつつあるとともに、資源の安定供給に対する懸念が強まっている今日の状況をかんがみると、わが国がこれまで行ってきた、3Rの推進などの循環型社会に向けた先進的な取組をさらに推進することは、国際的にも喫緊の課題といえます。


(2)廃棄物処理に伴う温室効果ガス及び処理コスト削減

 廃棄物の処理に伴い、各種温室効果ガスが発生します。例えば、廃棄物を焼却すると、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素が発生します。また、有機性廃棄物が埋め立てられた最終処分場ではメタンが発生します。焼却及び埋立てに伴い排出される温室効果ガス排出量は年間約4,500万トン(二酸化炭素換算)であり、わが国の温室効果ガス総排出量の3.3%に相当します。また、廃棄物の収集運搬においては、化石燃料の利用に伴う二酸化炭素が排出されることにも留意が必要です。一方で、ごみ処理事業経費は年間約1兆9,000億円にのぼっています。

 廃棄物の排出量を減らすことは、温室効果ガスと処理コストの削減につながります。例えば、横浜市では、平成17年に分別品目を従来の5分別7品目から10分別15品目へ大幅に拡大し、プラスチック製容器包装や古紙等を焼却せずに資源化することにしました。取組の結果、平成17年度で平成13年度比34%の一般廃棄物排出量の削減を達成しました。これは、75万トンの二酸化炭素排出量の削減となるとともに、予定されていた市内2つの工場の全面建替え費用1,100億円と、年間30億円に及ぶ工場運営費の節減を実現したことによる、大幅なコスト削減効果ももたらしました。


再生利用と熱回収の推進による効果について


 再生利用と熱回収については、仮にこれらを行わずに焼却や埋立てを行った場合、温室効果ガス排出量は6,000万トンから9,000万トン※1、エネルギー消費量は580PJ※2、天然資源消費量は1億8,000万トン※3、埋立処分量は1億2,000万トンから1億5,000万トン※4増加すると試算されます。この結果からも、再生利用と熱回収の推進は温室効果ガス排出量、天然資源消費量、埋立処分量の削減の観点から大きな効果を上げていることが分かります。

※1 平成17年度における我が国の温室効果ガス排出量の4.4〜6.6%に相当

※2 平成17年度における我が国の最終エネルギー消費量の3.7%に相当

※3 平成17年度における我が国の天然資源投入量の11%に相当

※4 平成17年度における我が国の最終処分量の400〜500%に相当

 本試算における再生利用と熱回収が行われなかった場合として、可燃性の循環資源であるバイオマス系循環資源と化石系循環資源について、原則として焼却(ケース1)と埋立て(ケース2)の2つのケースを想定しています。一般廃棄物発電及び一般廃棄物の焼却施設における余熱利用については、再生利用と熱回収がなくとも焼却自体は行われるとし両ケースとも焼却のみを想定しています。また、非金属鉱物と金属については、焼却が考えられないことから両ケースとも埋立てのみを想定しています。


コラム図1 再生利用と熱回収の推進による各種効果



(3)持続的な社会のための自然環境の保全

 資源採取等の社会経済活動に伴って、使用する資源以外の物質が採取・掘削され又は廃棄物等として排出されていますが、これらは統計には現れず目に見えにくいことから、「隠れたフロー・TMR(Total Material Requirement、関与物質総量)」と呼びます。これらは、ドイツのブッパタール研究所が「エコロジカル・リュックサック」(特定の物質について、その全ライフサイクルを通じて必要となる一次原料及びエネルギーの投入総量。ここでいう「一次原料」には、鉱物の採鉱段階で掘削される表土・岩石も含まれる)と呼んでいたものと同じ考え方によるアプローチです。

 自然界からの新たな資源の採取を少なくし、資源の循環利用を推進していくことは、この隠れたフローなどを減少させることにつながります。

 例えば、電子部品に使われるレアメタル等の金属の採掘に伴い、森林伐採、野生生物の生息地の減少、水質汚濁、塩害、住民の健康被害等が報告されています。一方、国内の電子部品等、いわゆる「都市鉱山」に蓄積された金属の世界の埋蔵量に占める割合は、金属により異なるものの、数%から数十%にも及びます(図3-1-3)。このため、使用済み製品からレアメタル等の金属を回収し利用する取組は、持続的な自然環境及び生活環境の保全のためにも必要な取組であると言えます。


図3-1-3 各種金属の世界の埋蔵量に占める日本の蓄積量

 また、ごみは、最終的には最終処分場に埋めたてることになります。最終処分場の建設方法には、山間や平地での陸上埋立て、干潟や臨海部での海上埋立てなどがありますが、いかなる方法でも、環境への負荷をゼロにすることはできません。このため、廃棄物の最終処分量を減少させることで既存の最終処分場の残余年数を増加させ、可能な限りの最終処分場の新規建設を抑制することが求められています。

 藤前干潟の保護のために最終処分場を造成しないことを選択した名古屋市では、プラスチック・紙製容器包装などの資源回収や指定袋制の導入をはじめとするさまざまな取組を進めてきましたが、近年では、ごみの発生抑制と二酸化炭素の排出量削減のため、市内全域を対象に、参加を希望する店舗において実施するレジ袋有料化の取組や、リユース食器と食器洗浄機などを搭載した車のイベントへの貸し出しなどを行っています。その結果、平成11年度と比較して、平成19年度のごみ処理量は7割にまで減少し、資源回収量は2.8倍に増加、埋立量は4割に減少、という成果を上げています。なお、藤前干潟は、平成14年にラムサール条約湿地として登録されるとともに、平成17年には、「藤前活動センター」(干潟とのふれあい、自然体験型学習の施設)と「稲永ビジターセンター」(一般的・総合的な環境学習の施設)が開設され、年間6万人が訪れる観光や環境教育の場となっています。

3 循環型社会構築と経済成長の統合に向けて

 循環型社会を構築するための各主体の取組により、地域に根ざした産業が発展し雇用の機会が増加すれば、地域において循環型社会の形成を担う人材が育成されるとともに、「地域再生」の原動力となります。わが国が有する世界最先端の3R・廃棄物処理技術には大きな経済効果や雇用効果が潜在的に存在していることを考えると、景気回復・雇用創出と循環型社会の構築を同時に実現し、わが国全体の環境保全と経済発展を結び付け統合させることは十分に可能です。その道筋として、各主体に望まれる活動、地域振興に結び付く地域循環圏の形成、動脈産業と静脈産業をつなぐ産業界の取組について概観するとともに、動脈産業と静脈産業の融合に伴う課題について考察していきます。


(1)各主体に望まれる具体的活動

 循環型社会を構築する各主体の活動は、いずれも我々の社会経済活動による新たな天然資源の消費抑制につながることが必要です。そのためには、「耐久製品を占有しない」、「消耗品を無駄に消費しない」、「ものを長く繰り返し使う」、「生産する製品当たりの資源消費量を削減する」取組の推進が求められます(図3-1-4、表3-1-4)。


図3-1-4 天然資源消費量の削減の考え方


表3-1-4 天然資源消費量を削減するための具体的活動例

 例えば、買い物の際に持参するマイバッグや詰め替え製品の容器については、繰り返し長期間使用することで、新たに製造するレジ袋や容器を生産するための石油等の天然資源の消費抑制が可能です。これは、二酸化炭素排出の削減にもつながります。標準的なレジ袋を1枚断ることで、62gの二酸化炭素の削減が可能であり、これは、車のアイドリングを5分短くしたときの排出削減量に相当します。レジ袋削減については都道府県の8割、市町村の4割が住民や事業者との協働と連携に基づき、何らかの形でレジ袋の削減に取り組んでおり、今後さらに取組が広がる見込みです(図3-1-5)。今後は、コンビニなど個々の店舗や業界の事情を超えた統一的な取組や、仕事帰りの若年層などマイバッグ持参率が低い層に対する取組の浸透などが求められます。そして、レジ袋削減の取組をきっかけとして、ライフスタイルそのものの改革につなげることが重要です。


図3-1-5 都道府県別にみた市町村レベルのレジ袋削減の取組実施状況(平成20年11月1日現在)


(2)地域振興に結び付く地域循環圏の形成

 循環型社会形成に必要な各主体の連携・協働を図る上で基礎となるのが、循環資源の性質と地域の特質に応じた「地域循環圏」の構築です。これは、地域の自立と共生を基本とした「地域再生」の原動力となることも期待できます。

 例えば、福岡県大牟田市や北九州市のエコタウンには、リサイクル産業が集積し、企業や大学でもレアメタルの抽出に関する最先端の研究開発が行われるなどレアメタルのリサイクルを進める上で大きなポテンシャルを有しています。レアメタルは、概して需要が増加傾向にあり、先述したように天然資源としての採掘が自然や生態系に対して深刻な影響を及ぼすことなどから、消費者との連携を強化しつつレアメタルを使用している使用済製品等の回収体制の充実を図ることが喫緊の課題となっています。このような状況を踏まえ、大牟田市内のスーパーや公共施設など、約30か所に回収ボックスが設置され、市民の協力によりゲーム機やデジタルカメラ、携帯電話などの使用済み小型家電を回収するモデル事業が行われています(図3-1-6)。しかしながらレアメタルは我が国の資源確保上極めて重要な資源であるため、地域的な回収のみならず全国的な回収体制の構築も必要です。


図3-1-6 使用済み小型家電回収モデル事業

 また、大阪府エコタウンプランの一つとして誕生したバイオエタノール製造施設では、建設廃木材や紙くず、おからなどの廃棄物を毎年4〜5万トン受け入れ、燃料用エタノールを製造することで、低炭素社会と循環型社会に向けた統合的な取組を進めています。本施設では、エタノールの製造過程で出るリグニンをボイラー燃料として使用するとともに、バイオマス燃料として販売もしています。また、発生した蒸気は工場内で利用し電気に換えて使用するなど、工場から排出される廃棄物や廃熱の有効利用も進めています(図3-1-7)。


図3-1-7 廃木材等によるバイオエタノール製造

 以上の例にみられるように、地域の特性や循環資源の性質に応じた地域循環圏の構築が全国各地で始まっています。今後は、これら先進・優良事例を継続・発展するために、循環型社会形成推進地域計画との連携や地域振興の観点も踏まえつつ、住民、NGO/NPO、大学、事業者、地方公共団体などの関係主体の連携を一層強化するための仕組みづくりや優良事例の情報発信が重要です。


(3)動脈産業と静脈産業をつなぐ産業界の取組

 製品の製造等を行う産業を動脈産業と呼ぶのに対し、静脈産業とは製品が廃棄物等となった後にそのリサイクルや適正処分等を行う産業を指します。循環型社会を構築していくためには、廃棄物の適正処理と3Rの各要素での取組を推進することに加え、これまでの動脈産業に静脈産業を組み込ませることで、動脈産業と静脈産業が循環の輪において結合し一体化した新たな循環型の産業へ転換していく必要があります。

 ここでは、既に始まっているさまざまな取組の中でわが国のセメント業と下水道業における動脈産業と静脈産業の融合に向けた取組、並びに動脈産業と静脈産業をつなぐ物流における取組を紹介します。

 セメント産業では、廃タイヤや石炭灰等の他産業で発生した様々な廃棄物・副産物を大量かつ安定的に処理しています。近年では、技術開発により下水汚泥や一般ごみ焼却灰などの生活系廃棄物も受入れを可能としています(図3-1-8)。例えば、下水汚泥は、これまでその多くは焼却後に埋め立てられてきましたが、セメント資源化処理により、埋立処理の割合が少なくなってきています。下水汚泥には、重金属類、塩素、りん等が含まれていますが、セメント品質、工場周辺環境等に影響を及ぼさないよう、品質・環境管理が行なわれています。公共投資の減少に加え、近時の経済情勢によりセメント生産量が減少傾向にある中、循環型社会の形成にも資するため、セメント産業は廃棄物の受入に努めているところです。今後はセメント原燃料に含まれる廃棄物の割合がより高くなる見込みですが、廃棄物の受入れ可能量を拡大するためには、より厳格な品質・環境管理が求められます(図3-1-8)。


図3-1-8 セメント業界の廃棄物・副産物の利用状況(平成19年度)

 近年、中国、インド等の新興国の経済発展や、バイオ燃料ブームによる世界的な穀物増産により、肥料の原料価格が高騰しています。肥料の主成分のりんの全量を輸入に頼るわが国でも、肥料価格の大幅値上げ等の影響が出始めています。このため、りんの廃棄物等からの回収が着目されています。りん鉱石として輸入されるりんの半分が下水道に流入しているとの推計がある一方で、リサイクルされる下水汚泥の大部分は建設資材に使用されているため、今後は、下水や下水汚泥等からのりん回収、活用について、積極的に推進していくことが必要です。例えば、岐阜市では、これまでレンガに加工し利用してきた下水汚泥焼却灰について、無害化すると共にりん肥料として回収するための実験を行い、2008年度から施設建設に着手、試運転後、2010年度に流通販売を予定しています(図3-1-9)。


図3-1-9 下水汚泥焼却灰からのりんの回収

 循環型の産業の発展のためには、消費者と生産者をつなぐ物流の役割が重要です。廃棄物や循環資源の輸送に当たっては、動脈物流と同じく、トラック輸送に環境負荷の低い船舶や鉄道による輸送を組み合わせることで、広域的かつ効率的な静脈物流システムの構築が可能であり、これは低炭素社会づくりにも寄与します。廃プラスチックや下水汚泥、焼却灰のセメント工場への輸送、燃料としてのカットタイヤの製紙会社への輸送、シュレッダーダストの金属リサイクル工場への輸送、PCB廃棄物の処理施設への輸送などの取組が進んでおり、地方公共団体から工場等へ輸送される廃棄物の鉄道輸送量は増加傾向にあります(図3-1-10)。環境負荷の少ない輸送手段として注目される取組です。


図3-1-10 鉄道による地方公共団体からの廃棄物輸送量


循環型社会の形成に向けた産業界の取組事例


 産業界は、日本経済団体連合会の呼びかけに対応し、環境自主行動計画の策定等を通じて、循環型社会の形成に向けて、産業廃棄物処分量の削減をはじめ3Rの一層の推進に自主的かつ積極的に取り組んでいます。

 その一環として、日本経済団体連合会では、1999年(平成11年)12月、産業界全体の目標として「2010年度(平成22年度)における産業廃棄物最終処分量を1990年度実績の75%削減する」(第一次目標)を掲げました。産業界はさまざまな努力を行った結果、2002年度に第一次目標を前倒しで達成し、その後も連続して目標を達成したことから、2007年3月、「今後、経済情勢等の変化にかかわらず、産業廃棄物最終処分量を増加に転じさせない」との決意の下に、2010年度における目標値を1990年度実績の86%減という目標(第二次目標)に改定しました。

 日本経済団体連合会では、産業界の自主的な取組を推進するとともに取組の透明性を高めるために業種ごとの取組状況を毎年度フォローアップしています。2008年度調査結果によると、2007年度の産業界全体の産業廃棄物最終処分量は862万トンと、1990年度比で約85.3%減を実現しました。


コラム図2 産業界全体からの産業廃棄物最終処分量

(1)鉄鋼業

 鉄鋼業では、鉄鋼の生産に伴う副産物の約99%が再資源化され、セメント原料、土木用材、道路用材などに利用されています。さらに、スチール缶のリサイクル率は、経済産業省の産業構造審議会ガイドラインである「85%以上」の目標値を7年連続で達成しており、約85%と世界トップレベルとなっています。

 2007年度の鉄鋼副産物の最終処分量は75万トンと前年度に対し約6万トンの増加となりました。副産物の大宗を占める鉄鋼スラグについては、JIS化が推進され、グリーン購入法における特定調達品目に指定されるなど、リサイクル利用のための基盤整備が行われており、こうした結果を活用して一層の需要開拓を進めるとともに、ダスト、スラッジについても所内リサイクル等の一層の推進が図られています。また、海域利用等の研究開発も引き続き実施するなど、削減目標達成のため、更なる再資源化努力が推進されています。


コラム図3 鉄鋼業

(2)セメント製造業

 セメント産業では、セメントの製造工程の特色を活かしつつ、鉄鋼業界(各種スラグ類)、電力業界(石炭灰、排脱石こう)、建設業界(建設発生土)、タイヤ業界(廃タイヤ)、鋳造業界(鋳物砂)、地方公共団体(下水汚泥、焼却灰)などから各種の廃棄物・副産物を受け入れており、2007年度には、約3,072万トンの廃棄物・副産物の受入れを実施しました。これらをセメント製造の原料やエネルギー代替として活用することにより、天然資源の節約や最終処分場の延命化、また、日本全体の省エネルギーや二酸化炭素削減に貢献しています。例えば、下水汚泥を専用炉で焼却して埋め立てるよりセメント原料化することで、処理に係る使用エネルギー量を減らすことができます。また、あるセメント工場では、一般家庭から排出される廃棄物をセメント資源化する取組を行っており、焼却に伴う二酸化炭素削減にも寄与しています。


コラム図4 セメント製造業

(3)建設業

 建設業界では、産業廃棄物の排出量や最終処分量に占める建設廃棄物の割合の高さ等から、建設リサイクル法等の制度に基づく取組を積極的に実施しています。

 建設工事は、工事現場が一時的であり、発生品目や発生量が工事現場ごと等で異なるなど、そこから排出される廃棄物は、一般の廃棄物とは異なる特性を有しています。こうしたことから、建設業の特徴に合った共通契約書やマニフェストを建設九団体副産物対策協議会が独自に作成し、利用しています。

 また、資源の有効利用など循環型社会構築に向けて、アスファルト・コンクリート塊、コンクリート塊は、既に再資源化が相当程度進んでいますが、今後は建設発生木材、建設混合廃棄物、建設汚泥、廃石膏ボード、廃プラスチック類などの再資源化をさらに推進することとしています。


コラム図5 建設業

(4)電気事業

 2007年度の廃棄物発生量は1,062万トンで前年度より増加しました。一方、再資源化量は1,030万トンで前年度より増加しました。その結果、再資源化率は97%となり、前年度比に引き続き95%という目標を達成すると共に、最終処分量についてはほぼ横ばいとなりました

 今後も、最終処分量のさらなる低減を目指し、「2010年度再資源化率を95%程度とするように努める」との目標達成に向け、取組を進めることとしています。


コラム図6 電気事業

(5)自動車製造業

 自動車製造業においては、2007年度の廃棄物発生量は約265.9万トンで、前年度より4.4万トン増加しています。一方、再資源化量は約265.7万トンで、再資源化率は99.9%となっています。

 最終処分量削減に向けた取組として、主に廃プラスチックの再資源化を推進しており、さらに減容化するなど発生抑制の取組を実施しています。また、製品の製造工程や将来の廃車時において廃棄物となるものを設計段階から減らし、リサイクルしやすい素材の採用や、部品の材料表示、分解のしやすさを考慮した製品の設計等を推進しています。


コラム図7 自動車製造業

(6)製紙業

 製紙業においては、2007年度の廃棄物発生量は古紙利用率の向上に伴い有機性スラッジの発生量が増加したため、前年度より21.7万トン増加して683.2万トンとなりました。一方、再資源化量は281.6万トンで前年度より22.6万トン増加してたことから、最終処分量は前年度より7.1万トン減少し、40.1万トンとなりました。

 有機性スラッジは燃料として焼却し、熱エネルギーを回収して工場内で再利用していることから、2007年度より発生量に対する有効利用量(再資源化量+熱利用量)の割合を指標とした独自目標を設定し、積極的に取組を進めています(2007年度有効利用率実績94.1%)。


コラム図8 製紙業



(4)動脈産業と静脈産業の融合に伴う課題

 これまで見てきたように、さまざまな製品に循環資源の利用が進められています。しかし、天然資源の価格高騰時は相対的に安価な廃棄物等への需要が高くなる一方で、天然資源の価格が低下すると廃棄物等の利用がなされなくなる可能性があります。また、循環資源の供給は基本的に廃棄物の排出者側の事情に支配され、利用者側の需要を考慮していないため、需給のバランスがとれているとは言い難い状況です。加えて、精密な製品づくりのためには、循環資源の質を一定にする必要があるという問題があります。

 さらに、廃棄物等の利用は、コストダウンの要因にはなりますが、一般的には天然資源のみで生産された製品を品質的に上回ることは困難であり、同様の品質を確保しようとすると、循環資源に含まれる不純物や汚れ等を除去する必要があり、コスト高につながります。JIS等の規格では、そもそも循環資源の製品への利用を想定していないケースが多く見られます。この問題については、一部は環境JISで解決されていますが、さらに消費者側の意識改革も必要であり、再生紙の例にみられるように、循環利用を前提に過剰な品質を求めないという点が必要です。

4 2050年を見据えた循環型社会の展望

 持続可能な社会経済の実現には、いくつかの条件が必要です。経済学者であるハーマン・デイリーは、地球が定常状態で維持されるための条件として、以下の3原則を提唱しました。[1]再生可能な資源の消費ペースは、その再生ペースを上回ってはならない、[2]再生不可能な資源の消費ペースは、それに代わりうる持続可能な再生可能資源が開発されるペースを上回ってはならない、[3]汚染の排出量は、環境の吸収能力を上回ってはならない。

 2050年までに温室効果ガスの排出量を現状から60%〜80%を削減するという長期的な削減目標を掲げた低炭素社会に向けた挑戦は、まさにこの地球の定常状態を実現するための、人類の存続をかけた挑戦といえます。

 循環型社会の構築についても同じことがいえます。世界的に廃棄物問題が深刻化しつつあるとともに、資源の安定供給に対する懸念が強まっている今日の状況においては、天然資源の効率的利用、資源の循環利用、再生可能資源の利用促進等に向けた各主体の具体的な行動はもちろんのこと、生産、流通、消費・使用、廃棄・処理の各段階での、各種リサイクル制度の構築やごみの有料化等の実績の上に立った更なる社会経済システムの変革が強く求められています。これにより、経済成長や地域活性化への寄与が期待されます。第二次循環基本計画の目標年である2015年を一里塚とした、持続可能な2050年に向けて、「待ったなし」の状況を迎えています。


循環型社会の形成に向けた国民、民間団体等の取組事例


 現在、さまざまな取組が進められていますが、ここでは、特定非営利活動法人持続可能な社会をつくる元気ネットが主催する「市民が創る環境のまち『元気大賞』」、3R活動推進フォーラム並びに環境省が主催する「循環型社会形成推進功労者等環境大臣表彰」、環境省が主催する「容器包装3R推進環境大臣賞」、及び、「食品リサイクル推進環境大臣賞」において平成20年度に表彰された、民間団体における先進的な取組事例を紹介します。

1 市民が創る環境のまち「元気大賞」

 「NPO法人 持続可能な社会をつくる元気ネット」は、平成13年度から「市民が創る環境のまち『元気大賞』」を創設し、全国各地域で先進な取組を行っている団体を表彰しています。

(1)平成20年度 大賞

 取組名:『地域の輪(和)で創る 持続可能な「食と環境」推進プロジェクト』団体名:北海道中標津農業高等学校農業クラブ(北海道標津郡中標津町)

 「わが郷土を世界の酪農郷に」をスローガンに、日本有数の酪農地域である“ふるさと”を持続的に発展させるため、地域の「食と環境」を学び・作り・伝える活動を展開しています。次代を担う幼児や小中学生と連携し、人と心の輪(和)を広げ、ふるさとに学び、誇りが持てる持続可能な地域創生に向かうネットワーク作りのほか、食育学校の実施、循環型酪農の導入、酪農地域のイメージアップ活動、地産地消推進活動などを推進しています。

2 循環型社会形成推進功労者等環境大臣表彰

 循環型社会形成推進功労者表彰は、廃棄物の発生量の抑制(リデュース)、再使用リユース)、再生利用(リサイクル)の適切な推進に顕著な功績があった個人、企業、団体を表彰し、その功績をたたえて、循環型社会の形成の推進に資することを目的として、平成18年度から実施しています。

 平成20年度の受賞者数は、6個人、14団体、29企業の計49件であり、平成20年10月に、山形市で開催された「第3回3R推進全国大会」式典において、表彰式が行われました。以下では、表彰された取組の数例を紹介します。

(1)平成20年度循環型社会形成推進功労者・3R活動推進功労(団体)

 長井市/レインボープラン推進協議会(山形県長井市)

 現在、市内の中央地区約5,000世帯の家庭から排出される生ごみを分別、収集して堆肥化し、この堆肥を使い、市内の農地で農薬、化学肥料を制限して生産した農作物を販売し、地域内の各家庭の食卓や学校給食で消費するという、市民と農家と行政とが連携・協働する地域循環システムを推進しています。

(2)平成20年度循環型社会形成推進功労者・3R活動優良企業(企業)

 有限会社 山陰クリエート(鳥取県米子市)

 「地球にやさしく 資源を大切に!!」をスローガンに、地元の自治体や学校などの協力により、回収した廃プラスチック類を再生利用し、建設・梱包製品の製造を行うほか、固形燃料化する取組や、油化還元装置を開発し、廃発泡スチロールから回収した油を、焼却炉やリサイクル施設内の装置等の熱源燃料として利用するなど、平成2年より、産業廃棄物の削減による環境保全及び資源の有効活用を図る取組を進めています。

3 容器包装3R推進環境大臣賞

 容器包装廃棄物の3R推進に資する活動の奨励・普及を図るため、平成18年度に「容器包装3R推進環境大臣賞」を設け、毎年、「地域の連携協働部門」、「小売店部門」、「製品部門」の3部門において、容器包装廃棄物の3R推進に寄与する優れた取組事例、製品を表彰しています。

(1)平成20年度「地域の連携・協働部門」最優秀賞

 取組名:「レジ袋減らし隊」全国運動、団体名:全国生活学校連絡協議会(東京都千代田区)

 長年レジ袋削減運動を続け、さらに一般の人々も広く参加できるよう、平成19年7月から、わが国初の全国規模の取組として「レジ袋減らし隊」全国運動を市民団体等と共催で実施しています。

 本運動は、消費者がレジ袋を断った証として「レジ袋減らし隊カード」に店のスタンプを貰い、スタンプカードを事務局に送る仕組みで、消費者には金銭的なメリットは用意していませんが、6,000店舗を上回る協力店、10県6市4区13町が本運動に協力して全国で実施したもので、「レジ袋減らし隊カード」だけで約870万枚、協力いただいた企業や自治体の削減枚数を合わせると、約1億8千万枚のレジ袋削減を実現しています。

(2)平成20年度「小売店部門」最優秀賞

 事業名:ECO推進サービス、事業者名:株式会社光生舎(北海道札幌市)

 エコロジカルな視点・発想を取り入れ、その一環として、クリーニング袋の提供辞退者には、ハンガーに掛けて仕上がったクリーニング品にビニール袋をかけず渡す取組を実施するなど、「ECO推進サービス」を積極的に推進、環境保護の貢献活動を展開しています。

(3)平成20年度「製品部門」最優秀賞

 製品名:能勢山水、能勢山水ウーロン茶、事業者名:能勢酒造株式会社(大阪府豊能郡能勢町)

 リターナブル瓶の普及に努め、リターナブル方式による1リットル化粧瓶入りウーロン茶を新たに開発しました。ペットボトル入りウーロン茶の代替品として提供することでペットボトルごみの削減に寄与する商品として近隣家庭への宅配及び飲食店向けに販売し、地域で完結するリユースの仕組みを実践し、定着させています。

4 食品リサイクル推進環境大臣賞

 環境省では、食品関連事業者等による食品循環資源の再生利用及び熱回収並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関する優れた取組を表彰し、全国に紹介することで、さらなる取組の推進、普及啓発を図り、循環型社会の形成を推進しています。

(1)平成20年度「食品リサイクル推進環境大臣賞」最優秀賞

 取組名:団体名:『エコフィード循環事業協同組合』(株式会社バイオマスグリーン、金澤産業株式会社との連盟)(兵庫県加西市)

 産官学農連携による地産地消型食品循環リサイクルの事業化の取組として、食品スーパー、食品工場から排出される野菜くず・パンくず、賞味期限切れ食品を回収し、エコフィード(リサイクル飼料)を製造。養豚農家、配合飼料工場へ販売し、地産地消食品として「霜降豚肉」を生産し、食品スーパーで販売しています。



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