資料1 循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)の概要


(1)法の概要
ア 法律制定の背景
人類が今世紀に入って高度に展開させてきた活動様式、すなわち「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会活動は、私たちに大きな恩恵をもたらしてきましたが、他方で、物質循環の輪を断ち、その健全な循環を阻害するという側面も有しています。このような活動様式は、私たちが意識するとしないとにかかわらず、その生存基盤たる環境に対して負荷を与え続けてきました。経済社会活動の規模が小さく、環境に加えられる負荷が自然の循環を大きく損なうことがない間は、私たちはその深刻さを真摯に受け止めることができなかったと言えます。しかし、今やこの活動様式によって加えられる負荷は、自然の循環を阻害し、これまでのような経済社会活動の在り方そのものが限界を迎えているのではないか、との認識が共有されつつあります。
こうしたことから、21世紀の経済社会の在り方として考えられたのが、「循環型社会」であり、循環型社会の実現に向けた道程を明らかにするために循環型社会基本法が制定されました。
本法は、平成12年6月2日に公布され、平成13年1月6日をもって全面施行されました。

イ 循環型社会とは
本法では、目指すべき「循環型社会」を第2条第1項において定義しました。「循環型社会」とは、第1に製品等が廃棄物等となることを抑制し、第2に排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として適正に利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することが徹底されることにより実現される、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷が低減される社会です。

ウ 法の対象物
本法は、対象物を有価・無価を問わず「廃棄物等」として一体的にとらえ、製品等が廃棄物等となることの抑制を図るべきことと、発生した廃棄物等についてはその有用性に着目して「循環資源」としてとらえ直し、その適正な循環的利用(再使用、再生利用、熱回収)を図るべきことを規定しています。

エ 循環型社会における施策の優先順位
本法は、製品等が廃棄物等になる場合や、なった場合の施策の優先順位を我が国で初めて法定化しています。すなわち、第1に発生抑制、第2に再使用、第3に再生利用、第4に熱回収、最後に処分という優先順位です。この優先順位は、環境負荷をできる限り低減するという観点から定められた基本原則であり、この順位に従わないことが環境負荷の低減に有効である場合はこの順位によらない場合もあります。
あわせて、循環資源の循環的な利用や処分は、環境保全上の支障が生じないように適正に行われなければならないことについても規定しています。
さらに、循環型社会の形成に深く関連する自然界における物質の適正な循環の確保に関する施策への配慮について定めています。

オ 国、地方公共団体、事業者及び国民の責務
循環型社会の形成のためには、国、地方公共団体、事業者及び国民のそれぞれが適切に役割を分担して取り組むことが重要です。このため、本法では、これらの主体の責務を規定しています。
特に、事業者及び国民の排出者責任を明らかにするとともに、拡大生産者責任を明確に位置付けた点が大きな特徴です。

(ア)排出者責任
排出者責任とは、廃棄物等を排出した者が、その適正な処理に関する責任を負うべきであるとの考え方であり、廃棄物・リサイクル対策の基本的な原則の一つです。
循環型社会基本法では、事業者の排出者責任として、廃棄物等の排出事業者が、自らの責任において、その排出したものについて適正な循環的な利用又は処分をすべき責務を規定しています。さらに、国として、排出事業者に対する規制などの適切な措置を講ずること、不法投棄等により環境保全上の支障が生じた場合に当該排出等の行為を行った事業者等に環境保全上の支障の除去等をさせるため、必要な措置を講ずることについて規定しています。
また、国民の排出者責任として、国民が、その循環資源について適正に循環的な利用が行われることを促進するよう努めるとともに、その適正な処分に関し国及び地方公共団体に協力する責務、循環資源を回収する事業者に当該循環資源を適切に引き渡す責務等を規定しています。さらに、国として、国民が循環資源の適正な循環的な利用及び処分が行われることを促進するよう、必要な措置を講ずることについて規定しています。

(イ)拡大生産者責任
循環型社会基本法では、拡大生産者責任として、生産者が、その製造する製品の耐久性の向上、設計の工夫、材質や成分の表示等を行う責務、一定の製品について、引取り、引渡し又は循環的な利用を行う責務を規定しています。
さらに、国として、生産者に、一定の製品について、引取り、引渡し又は循環的な利用を行わせるために必要な措置を講ずること、国として、生産者が各種の工夫をするよう、技術的支援等の措置を講ずること、国として、生産者がその製品の材質又は成分等の情報を提供するよう、必要な措置を講ずることを規定しています(資料1-図)。

資料1-図 循環型社会基本法の仕組み


カ 循環型社会基本計画
本法では、第2章において、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府に循環型社会基本計画の策定を義務付けています((2)参照)。

キ 循環型社会の形成に関する基本的施策
本法第3章では、循環型社会の形成のために、国又は地方公共団体が講ずべき施策について具体的に規定しています。

(2)循環型社会基本計画
ア 循環型社会基本計画の内容
循環型社会基本法は、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、循環型社会基本計画の策定を定めています。循環型社会基本計画の内容としては、1)施策の基本的な方針、2)政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、3)そのほか、施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項について定めることとされています。

イ 循環型社会基本計画の見直し
循環型社会基本計画は、おおむね5年ごとに見直しを行うものとされています。この見直しに際しては、循環型社会基本計画に基づく施策の進捗状況等を把握し、施策の効果や問題点の分析を適切に行い、その結果を見直しに反映させていくことが必要です。このようなフォローアップに資するため、政府は毎年国会に循環型社会の形成に関して講じた施策等に関する年次報告(「循環型社会白書」)を提出することとされています。

ウ 循環型社会基本計画の位置付け
循環型社会基本計画は、環境基本法の環境基本計画を基本として策定することとされています。また、このほかの国の計画は、循環型社会の形成に関しては、循環型社会基本計画を基本とするものとされています。


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