第2節 化学物質の環境リスク評価


1 化学物質の環境リスク評価の推進

環境リスク、すなわち化学物質の人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれについての評価(環境リスク評価)を行うための知見を収集し、平成18年度に環境リスク初期評価等について第5次取りまとめを行いました。この中では、環境リスク初期評価を23物質を対象として行ったほか、生態リスクについては6物質を選定して初期評価を行いました。その結果、健康リスクについては2物質、生態リスクについては3物質が、相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」と判定されました。
また、生態系に対する影響に関する知見を充実させるため、経済協力開発機構(OECD)のテストガイドラインを踏まえて実施している藻類、ミジンコ、魚類等を用いた生態影響試験を、18年度は56物質について行いました。
経済産業省では、化学物質排出把握管理促進法第一種指定化学物質の中でも生産量・排出量の多い物質を中心に、PRTRデータを活用してヒト健康及び生態への影響を評価したリスク評価書の整備を実施しました。平成18年度に16物質についての初期リスク評価書と10物質についての詳細リスク評価書を作成しました。

2 化学物質の内分泌かく乱作用問題に係る取組

化学物質の内分泌かく乱作用問題については、その有害性など未解明な点が多く、関係府省が連携して、環境中濃度の実態把握、試験方法の開発、生態系影響やヒト健康影響等に関する科学的知見を集積するための調査研究を、国際的に協調して実施しています。これまでに、環境省が行った調査研究においては、魚類に対して4-ノニルフェノール(分岐型)、4-tert-オクチルフェノール、ビスフェノールA及びo,p'-DDTの4物質について内分泌かく乱作用を有することが推察されましたが、哺乳類に対しては、ヒト推定ばく露量を考慮した用量での明らかな内分泌かく乱作用が認められた物質は見つかっていません。
環境省では、「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について-ExTEND 2005-」に基づき、野生生物の観察、環境中濃度の実態の把握及びばく露の測定、基盤的研究の推進、影響評価並びに情報提供及びリスクコミュニケーションの推進といったより一層幅広い取組を進めました。平成18年11月には、小児環境保健についても併せて紹介した「化学物質の環境リスクに関する国際シンポジウム」を釧路市で開催しました。
厚生労働省では、人に対する健康影響を調査するため、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」が取りまとめた「中間報告書追補その2」の行動計画に沿った調査研究を実施しました。
経済産業省では、SPEED’98の対象となった化学物質のうち、日本での生産・使用実態がある物質を中心に有害性評価を行い、ヒトへの明らかな内分泌かく乱作用は認められないことを確認し、「化学物質審議会管理部会・審査部会内分泌かく乱作用検討小委員会中間報告書」に取りまとめました。また、3つの物質群について、(独)製品評価技術基盤機構においてリスク管理のあり方を取りまとめて公開しました。
国土交通省では、環境省と連携し、水環境中の内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質の存在状況を把握するため、全国109の一級河川を対象に、水質及び底質の調査及び主要な下水道における流入・放流水の水質調査を引き続き実施しました。

3 小児環境保健への取組

近年、小児に対する環境リスクが増大しているのではないかとの懸念があり、国際的にも小児の環境保健に関心が払われていることを背景に、環境省の「小児の環境保健に関する懇談会」において、我が国において取り組むべき小児環境リスク評価の対応策が検討され、研究基盤の整備、小児環境保健に関する研究の推進、リスクコミュニケーションの推進及び国際協力の推進等が提言されました。(「小児の環境保健に関する懇談会報告書」(平成18年8月)http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-04/index.html

4 化学物質に係る新たな課題への対応

環境省では、UNEPにおける水銀、鉛及びカドミウムを対象とした有害金属に関する検討等の動向を踏まえ、国際的観点からの有害金属対策戦略を策定するための調査・検討を開始しました。
経済産業省では、ナノ粒子のばく露評価手法やリスク評価手法等を体系的に行う「ナノ粒子特別評価手法」の研究開発を開始しました。


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