第2節 重要地域の保全と生態系ネットワーク


1 重要地域の保全


(1)自然環境保全地域
原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の適正な保全を図るため、引き続き現況の把握やモニタリングを行います。

(2)自然公園
ア 自然公園の指定、公園区域及び公園計画の見直し
社会条件等の変化に対応するため、自然保護の強化を基調として、公園区域及び公園計画の全般的な見直しを行います。また、全般的な見直しを終了した公園については、おおむね5年ごとに公園区域及び公園計画の点検を行います。国定公園については、都道府県から申出のある地域について検討を行い、見直し等の作業を進めます。
イ 自然公園の管理の充実
国立公園の管理計画の策定を推進し、自然公園法に基づく許可、認可等の適正な運用を図ります。また、国立・国定公園の特別地域において捕獲等に許可を要する動物を指定し、管理の強化を図ります。さらに、特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)等と連携し、地域密着型の公園管理を行う公園管理団体の指定、風景地保護協定の締結等を進め、管理体制の強化を推進します。
また、専門的な知識を持ったアクティブ・レンジャーを全国に配置して、現場管理の充実に努めます。
ウ 自然公園における環境保全対策
自然公園等において、太陽光パネルなど自然エネルギーを利用した地球環境にやさしい施設の整備を推進します。
また、荒廃した登山道、周辺の植生の復元のための施設及びシカ等の野生生物の食害等から植生を保護するための施設の整備を実施します。釧路湿原、サロベツ原野等においては、自然再生の取組を引き続き推進します。
国立公園の集団施設地区等については、関係道県及び市町村の協力の下に清掃活動を実施します。また、「自然公園クリーンデー」における各種行事の実施等、美化思想の普及に努めます。
グリーンワーカー事業では、登山道の補修や清掃作業、サンゴ礁の保護対策、外来生物の駆除、湿地の保全、里地里山の維持などを引き続き行うとともに景観法の対応としての景観形成のてこ入れ及びエコツーリズムの支援を推進します。
また、国立公園等の山岳地域等における環境浄化及び安全対策を図るため、山小屋事業者等がし尿・排水処理施設等の整備を行う場合に、その経費の一部を補助し、自然環境の保全と利用環境の改善を推進します。
すぐれた自然環境を保全していくため、引き続き民有地買上げの推進を図ります。

(3)鳥獣保護区等
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)に基づき国内希少野生動植物種の生息・生育地として重要な地域である生息地等保護区の指定を進め、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ります。
国際的又は全国的な鳥獣の保護の見地から重要な区域について、国指定鳥獣保護区の指定等を行います。国指定鳥獣保護区の管理については、管理員の配置等を行い、また、必要に応じて、野生鳥獣に関する環境学習等のための施設の整備を行います。

(4)森林
わが国の森林のうち、すぐれた自然環境の保全を含む公益的機能の発揮のため特に必要な森林を保安林として計画的に指定し、適正な管理を行います。また、国有林においては、引き続き貴重な野生動植物の生息地又は生育地の保護、その他の自然環境の保全に配慮した管理を行う必要がある国有林の区域を保護林に設定します。また、入林の影響等により植生の劣化がみられる保護林については、植生の回復のための事業を行う等その適切な保護管理を行います。

(5)名勝(自然的なもの)、天然記念物、重要文化的景観
日本の動植物種及び生態系を中心とした日本を代表する自然を保全するため、名勝(自然的なもの)、天然記念物の指定、重要文化的景観の選定を行います。また、保存・活用に関する補助制度や現状変更等の許可制度などを活用した文化財の保存を実施します。

(6)ナショナル・トラスト活動
ナショナル・トラスト活動については、その一層の促進のため、引き続き税制優遇措置、普及啓発等の施策を講じます。

2 生態系ネットワーク

生物多様性の確保のため、国土レベルの広域的な生態系ネットワーク形成の推進に向けて引き続き関係各省庁で連携を図り、検討を進めます。
国有林においては、野生生物の自由な移動の場を確保するため、保護林のネットワークの形成を図る「緑の回廊」の設定と整備を引き続き推進し、より広範で効果的な森林生態系の保護を推進します。


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