第4節 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策


1 固定発生源対策


(1)窒素酸化物対策
これまでの排出量の低減の実績を踏まえ、東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の総量規制地域について、年間を通じた排出実態等規制の実施状況を把握し、総量規制の徹底を図ります。群小発生源からの窒素酸化物の排出状況、環境影響等の把握を行い、優良品推奨水準としてのNOx排出ガイドラインに適合する小規模燃焼機器の普及を推進します。また、NOx等削減効果の高い小型ボイラ及び温水発生機の導入効果を実証するため、これら機器を導入するモニターに対し支援措置を実施します。

(2)浮遊粒子状物質対策
浮遊粒子状物質(SPM)については、原因物質の排出実態、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等のガス状物質が大気中で粒子状物質に変化する二次粒子の生成など発生機構の解明に努めるとともに、これらを踏まえ、環境基準の達成に向けた総合的対策の確立を図ります。
また、平成11年度から開始した、微小粒子状物質についての疫学調査、実測調査、動物実験等を引き続き実施します。
さらに、粒径がおおむね50nm以下の極微小粒子(環境ナノ粒子)についても、動物実験や性状把握等の調査を実施し、リスク評価を行います。

(3)硫黄酸化物等対策
エネルギー事情等の推移を見守りつつ、今後も二酸化硫黄等の環境基準を維持達成するため所要の対策を講じます。

2 移動発生源対策


(1)自動車排出ガス対策
ア 自動車単体対策と燃料対策
自動車単体の排出ガス対策については、中央環境審議会の平成17年第八次答申に沿って21年からさらにPMとNOxに係る排出ガス規制を大幅に強化し、いわゆる「脱PM」化を現実のものとするよう努めます。自動車から排出される粒子状物質については、排気拡散チャンバーを用いて、さまざまな種類のディーゼル自動車や直噴式のガソリン自動車から排出される粒子状物質の粒子数や組成等を測定し、大気中に排出された後の粒子の特性の実態について調査を行います。同時に、粒子状物質の質に着目した自動車排出ガス規制に向けた測定法の確立を検討します。また、試験モード外(オフサイクル)における排出実態等について調査を行い、その結果を踏まえ対策を検討します。さらに、使用過程車のNOx及びPMの排出実態調査を行い、必要に応じ使用過程車の排出ガスの水準について検討します。
燃料品質については、中央環境審議会の平成15年第七次答申に沿った燃料規制の強化を進めます。今後、さらなる排出ガス低減に必要な燃料対策のあり方を検討するとともに、新燃料による排出ガス低減効果等を客観的に評価するための調査を実施します。また、公道を走行しない建設機械等の特殊自動車(特定特殊自動車)に対する排出ガス規制を18年10月から開始するとともに、排出ガス基準に適合する特定特殊自動車への買換えが円滑に進むよう、特定特殊自動車に係る固定資産税の特例措置を講じます。
イ 大都市地域における自動車排出ガス対策
大都市地域における二酸化窒素及び浮遊粒子状物質(SPM)に係る大気環境の改善に向け、自動車NOx・PM法に基づく車種規制、事業者による排出抑制のための措置、局地汚染対策等の施策を円滑かつ着実に推進します。同法に基づく排出基準適合車への代替促進については、一定の排出基準不適合車の廃車を伴う場合に自動車取得税の軽減措置を引き続き講じるとともに、政府系金融機関による低利融資等を講じます。
平成17年度に取りまとめられた「今後の自動車排出ガス総合対策中間報告」(中央環境審議会大気環境部会自動車排出ガス総合対策小委員会)について、今後さらなる審議を行うとともに、その結果を踏まえて今後の対策について検討を行います。
また、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、パークアンドライド、時差通勤など都市内交通を適切に調節する施策を実施します。
ウ 低公害車の普及促進
地方公共団体や民間事業者等が低公害車を導入する際の補助及び自動車税のグリーン化等の税制上の特例措置等を通じて、低公害車のさらなる普及促進を図ります。なお、昨今の低公害車の普及状況、技術開発の状況を踏まえ、「低公害車開発普及アクションプラン」の見直しを行います。
エ 交通流対策
交通流の分散・円滑化施策としては、沿道環境保全に配慮しつつバイパス、環状道路をはじめとする道路網の体系的整備、交差点及び踏切道の改良を推進します。ETCの普及を促進し、道路交通情報通信システム(VICS)の情報提供エリアのさらなる拡大及び道路交通情報提供の内容・精度の改善・充実、信号機の高度化を行います。また、平成18年6月1日から施行される新たな駐車対策法制による違法駐車対策をはじめ、ハード・ソフト一体となった駐車対策を推進するとともに、環境ロードプライシング施策の検討・試行的実施を進め、住宅地域の沿道環境の改善を図ります。
交通量の抑制・低減施策としては、交通需要マネジメント施策を推進します。公共交通機関の利用を促進するため、公共車両優先システム(PTPS)の整備、都市におけるバス交通の活性化や交通結節点の整備を推進します。物流の効率化を図るため、物流拠点の整備、高規格幹線道路周辺等への物流拠点の立地促進や共同輸配送の実施を進めます。

(2)自動車以外の移動発生源対策
建設工事において、公共事業を中心に排出ガス対策型建設機械の使用を引き続き推進するとともに、さらなる排出ガス低減を目指し建設機械の排出ガス対策について引き続き検討を行います。
MARPOL73/78条約の1997年(平成9年)の議定書に対応した海防法に基づき、船舶に搭載される原動機や焼却炉等の設備に関する検査等による規制の実効性確保に引き続き努めます。また、今後の国際的なNOx・SOxの排出規制強化及び新たなPM規制の検討等の動きを踏まえ、革新的な環境負荷低減技術の開発とIMOにおける船舶からの排出ガスに関する規制の見直しへの対応についての検討を併せて行う総合的対策を引き続き実施します。

(3)普及啓発施策等
6月の環境月間には、低公害車の普及啓発を目的とした「エコカーワールド(低公害車フェア)」を実施します。さらに、12月は二酸化窒素や浮遊粒子状物質(SPM)の濃度が特に高くなることから、同月を「大気汚染防止推進月間」に指定し、マイカーの使用抑制等や適切な自動車の使用等を呼びかけます。また、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」において、6つのアクションに盛り込まれている駐停車時のアイドリングストップ等のエコドライブの普及・推進を図ります。


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