第4節 地域づくりにおける取組の推進


1 地域における環境保全の現状


(1)地方環境事務所の設立
環境行政において軸足を地域に置いた政策の展開が求められている今日、地域の実情に応じた機動的できめ細かな施策を実施するため、平成17年10月に、従来の自然保護事務所と地方環境対策調査官事務所を統合し、法令権限や予算執行権限を委任できる地方支分部局として全国7か所に地方環境事務所を設置しました。
地方環境事務所は、地域の行政・専門家・住民等と協働し、地域の視点から問題に取り組んでいます。

(2)地域における環境保全施策の計画的、総合的推進
全国の地方公共団体の環境関連情報を提供するウェブサイト「地域環境行政支援情報システム(知恵の環)(http://www.chie-no-wa.com)」の運営を行ったほか、地方公共団体向けに環境省の環境施策に関する情報提供を行うメールマガジンの発行を行いました。
各地方公共団体においてそれぞれ地域環境保全基金が設けられており、これにより、ビデオ、学校教育用副読本等の啓発資料の作成、地域の環境保全活動に対する相談窓口の設置、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援等が行われました。

(3)地方公共団体の環境保全対策
ア 環境基本条例の制定状況
環境基本法(平成5年法律第91号)の理念に沿って環境保全施策に関する最も基本的な事項を定めた条例である環境基本条例は、平成17年4月1日現在、全地方公共団体中788団体において制定されています。
イ 総合的な地域環境計画の策定状況
地方公共団体では、環境についての基本理念を明らかにした総合的な地域環境計画の策定が進んでおり、平成17年4月1日現在、全地方公共団体中575団体において策定されています。
ウ 公害防止協定の締結状況
平成16年4月〜17年3月までの間に締結された公害防止協定数は、1,142件となっており、協定締結の事業所数を業種別に見ると表7-4-1のとおりとなっています。

表7-4-1	業種別の公害防止協定締結事業所数(自治体−企業等)

エ 公害対策経費
平成16年度において、地方公共団体が支出した公害対策経費(地方公営企業に係るものを含む。)は、3兆5,389億円(都道府県7,639億円、市町村2兆7,749億円)となっています。これを前年度と比べると、4,461億円(都道府県951億円、市町村3,510億円)、11.2%の減となっています(表7-4-2)。

表7-4-2	地方公共団体公害対策決算状況

公害対策経費の内訳を見ると、公害防止事業費が3兆1,688億円(構成比89,5%)、次いで一般経費(人件費等)が1,900億円(同5.4%)等となっています。さらに、公害防止事業費の内訳を見ると、下水道整備事業費が2兆5,753億円で公害対策経費の72.8%と最も高い比率を占めており、次いで廃棄物処理施設整備事業費が4,537億円(構成費12.8%)となっています。

2 循環と共生を基調とした地域づくり


(1)持続可能な地域づくりに関する取組
環境省では、平成16年度から、地域発の創意工夫と幅広い主体の参加によって、二酸化炭素排出削減等を通じた環境保全と、雇用創出等による地域経済の活性化を同時に実現する事業を支援する「環境と経済の好循環のまちモデル事業」を実施しています。
具体的には、環境と経済の好循環のまちづくりについて、地域の創意工夫によるアイディアを募集・選定し、平成16年度に選定した10か所に加え、17年度に新たに選定した10か所の地域において事業を実施しています(表7-4-3)。

表7-4-3	「環境と経済の好循環まちモデル事業」の対象地域

環境省では、地球環境問題からリサイクル対策まで多岐にわたる地域の課題を視野に入れ、住民、企業等との協働を図りながら、環境の恵み豊かな、持続可能なまちづくりに取り組んでいる地域を対象に、大臣表彰を行っています。平成17年度「循環・共生・参加まちづくり表彰」においては、八戸市(青森県)、二ツ井町[現 能代市](秋田県)、館林市(群馬県)、練馬区(東京都)、氷見市(富山県)、名田庄村[現 おおい町](福井県)、上石津町[現 大垣市](岐阜県)、西宮市(兵庫県)の8団体を表彰しました。
省エネルギー化を図った施設建築物を整備する市街地再開発事業等に対し特別な助成を行う先導型再開発緊急促進事業にて支援を行いました。また、環境への負荷を低減するモデル性の高い住宅市街地の整備を推進する「環境共生住宅市街地モデル事業」にて支援を行いました。

(2)自然と共生する地域づくりに対する取組
ほ場整備による優良農地の確保、保全とあわせて地域の活性化のため、既存集落と一体的に生活環境を整備することにより、潤いのある田園居住空間を創造する「農村振興総合整備事業(田園居住空間整備)」を実施しました。農業用水や農業水利施設が持つ景観形成、親水、生態系の保全などの地域用水機能の発揮に配慮した整備を行うことにより、都市住民にも開かれた豊かで潤いのある水辺空間を創出する地域用水環境整備事業を実施しました。たい肥化施設等の計画的な活用により、農業集落排水汚泥等の有機性資源の循環利用の促進を図りました。生態系の保全等に資する農業用水路等を子どもたちの遊び場、自然体験の場として活用する「あぜ道とせせらぎ」づくり推進事業を、関係府省が連携して行いました。

(3)景観を保全・創造する地域づくりに対する取組
河川と一体になったまちなみ景観の保全・創造のために、美しい水辺空間を創出する「マイタウン・マイリバー整備事業」「ふるさとの川整備事業」等を各地域において推進しました。

(4)歴史的景観と調和する地域づくりに対する取組
豊かな歴史的環境の確保・保全のため、地方公共団体が行う史跡等の公有化や整備・活用などの事業に対して補助を行いました。
市町村が行う伝統的建造物群保存対策調査及び重要伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物の保存修理、防災施設等の設置、建物や土地の公有化などの事業に対して補助を行いました。また、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和41年法律第1号)に基づき指定された歴史的風土保存区域において、特に枢要な部分を構成している地域については、歴史的風土特別保存地区の指定や地方公共団体による土地の買入れ等を推進しました。さらに、文化財としての価値を有する土地改良施設の補修等を、その歴史的価値の保全に配慮しつつ行いました。

3 公害防止計画

平成16年度末に計画期間が終了した新潟地域等5地域について、17年10月に環境大臣が各関係知事に対して新規計画の策定を指示しました。指示を受けた知事は、環境大臣が示した基本方針に基づいて各地域の公害防止計画を作成し、各計画は環境大臣によって18年3月に同意されました。
公害の防止に関する施策の一層の推進を図るため、地方公共団体が公害防止計画に基づき実施する公害防止対策事業については、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和46年法律第70号)に基づいて、国の負担又は補助の割合のかさ上げ等、国が財政上の特別措置を講じています(http://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/kobo/)。


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