第3節 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組


1 経済的措置


(1)経済的助成
ア 政府関係機関等の助成
政府関係機関等による環境保全事業の助成については、表7-3-1のとおりでした。

表7-3-1	政府関係機関等による環境保全事業の助成

イ 税制上の措置等
平成17年度税制改正において、低公害車や、最新排出ガス規制(平成17年規制)適合車(ディーゼルバス・トラック等)の取得に係る自動車取得税の軽減措置の延長、揮発性有機化合物排出抑制設備に係る特別償却制度及び固定資産税・事業所税の課税標準の特例措置を新設、緑化施設に係る課税標準の特例措置の拡充及び延長などを講じました。

(2)経済的負担
ア 基本的考え方
環境への負荷の低減を図るために経済的負担を課す措置については、その具体的措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、廃棄物の抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響及び諸外国の活用事例等につき、調査・研究を進めました。
イ 具体的な取組事例
平成17年度においては、経済的措置の検討が深められた事例として以下のようなものがあります。
(ア)政府における環境関連税の検討状況
地球温暖化防止のための環境税については、京都議定書目標達成計画(平成17年4月28日閣議決定)では、「国民に広く負担を求めることになるため、関係審議会をはじめとする各方面における地球温暖化対策に係るさまざまな政策的手法の検討に留意しつつ、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題である。」とされています。
環境省は、平成16年に引き続き17年8月末に環境税の創設要望を提出し、同年10月25日に、環境税の具体案を公表しました。
これを受けて、税制改正論議において活発な議論が行われ、政府税制調査会では、平成17年11月の「平成18年度の税制改正に関する答申」において、「いわゆる環境税については、国・地方の温暖化対策全体の中での環境税の具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組みの現状、さらには既存のエネルギー関係諸税との関係といった多岐にわたる検討課題がある。現在、関係省庁等において、これらの課題について議論が行われているところであり、その状況を踏まえつつ、総合的に検討していく必要がある。」と答申しました。
中央環境審議会においては、平成15年に設置された施策総合企画小委員会において、環境税に関して国民の意見を聴くため地方ヒアリングを開催するなど、引き続き、環境税に関する総合的な検討を進めています。また、17年4月に設置された環境税の経済分析等に関する専門委員会においては、環境税の効果等について技術的・専門的な見地から検討を深め、「これまでの審議の整理」を同年9月13日に公表しました。

(イ)地方公共団体における環境関連税導入の動き
地方公共団体において、環境関連税の導入の検討が進められています。 例えば、産業廃棄物の排出量又は処分量を課税標準とする税について、平成18年3月末現在、26の地方公共団体で条例が制定され、22の団体で施行されました。税収は、主に産業廃棄物の発生抑制、再生、減量、その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てられています。
また、高知県や岡山県など8の県では、森林整備等を目的とする税が導入されています。例えば、高知県では、県民税均等割の額に500円を加算し、その税収を森林整備等に充てるために森林環境保全基金を条例により創設するなど、実質的に目的税の性格を持たせたものとなっています。

2 環境配慮型製品の普及等


(1)グリーン購入の推進
国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)は、国等の各機関(国や独立行政法人等の公的機関)による環境物品等(環境への負荷の低減に資する物品又は役務)の調達の推進、情報提供の充実などにより、環境物品等への需要転換を促進することを目的としています。
グリーン購入法の仕組みについては、図7-3-1のとおりです。国等の各機関では、基本方針に即して平成17年度の環境物品等の調達方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。また、16年度の調達実績を取りまとめ、公表しています。

図7-3-1	グリーン購入法の仕組み

基本方針に定められた、国等の各機関が特に重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類である特定調達品目及びその判断の基準等については、その開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて適宜品目の追加・見直しを行っていくこととしています。平成17年度においても18年2月に基本方針の変更(変更後、特定調達品目は17分野214品目)について閣議決定しました。また、将来的に政府調達の対象となり得る省エネルギー型の革新的な製品の開発に対する補助を行いました。
地方公共団体については、毎年度、環境物品等の調達方針を作成して調達を行うよう努めることが定められているところであり、平成16年度においては、ほとんどすべての都道府県、政令指定都市が調達の方針を作成してグリーン購入に取り組んでいます。その取組をさらに促すため、基本方針の変更について、地方公共団体を対象とした説明会を全国9か所において開催しました。
グリーン購入の推進のためには、各地域において行政、地元の事業者、住民等によるネットワークが組織されることが重要です。そこで、グリーン購入地域ネットワークの構築を推進するために、地方公共団体、消費者、事業者等に対し、情報提供や啓発のためのセミナーを開催しました。また、環境物品等の情報を購入者に提供するため、製造者等によるグリーン購入法の特定調達物品(基本方針の判断の基準を満たす物品)に関する情報の提供の場として「グリーン購入法特定調達物品情報提供システム」を運用し、随時更新しています。さらに、各主体のグリーン購入への取組を推進するため、さまざまな団体のグリーン購入に関する情報を紹介する「グリーン購入取り組み事例データベース」を運用し、定期的に更新しています。

(2)環境ラベリング
消費者が環境負荷の低い製品を選択する際に適切な情報を入手できるように、環境ラベルその他の手法による情報提供を進めています。日本唯一のタイプI環境ラベル(ISO14024準拠)であるエコマーク制度ではライフサイクルを考慮した指標に基づく新しい商品類型を整備しています。平成18年3月末現在、エコマーク対象商品類型数は46、認定商品数は4,832となっています。
また、事業者の自己宣言による環境主張であるタイプII環境ラベルや民間団体が行う環境ラベル等の情報提供制度を整理、分析して提供する「環境ラベル等データベース」をホームページに開設し、随時更新しています。
さらに、購入者に対して製品やサービスの環境情報を定量的に開示するタイプIII環境ラベルであるエコリーフの普及を進めています。平成18年3月末現在のラベル公開数は、365件となっています。
また、環境物品を国際的に流通させてグリーン購入の取組を推進するためには、各国の環境ラベル制度における基準の共通化等が必要であるため、わが国のエコマークを中心に、各国環境ラベル間の相互認証に関する調査・分析を行いました。

(3)標準化の推進
日本工業標準調査会(JISC)は、平成17年度、「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」、「電気・電子機器の特定の化学物質の含有表示方法」など60件の環境JIS制定・改正を行い、2件のTS(標準仕様書)の公表を実施しました(平成14〜17年度で178件のJISの制定・改正、3件のTS及び4件のTR(標準報告書)の公表を実施)。

(4)ライフサイクルアセスメント(LCA)
製品やサービスに関するライフサイクルアセスメントの手法について、投入される資源、エネルギー量と生産される製品及び排出物のデータ収集、定量化などを行うインベントリ分析や、インベントリ分析の結果を各種環境影響カテゴリーに分類し、それを使用して環境影響の大きさと重要度を分析するインパクト評価の手法などを調査、研究しました。この成果を踏まえ、商品やサービスに起因する環境負荷をライフサイクル的視点から定量化し、その結果を分かりやすく消費者に提供する「商品環境情報提供システム」を構築しました。

3 事業活動への環境配慮の組み込みの推進


(1)環境マネジメントシステム
環境マネジメントシステムの要求事項を定めた国際規格であるISO14001及びこれを翻訳した日本工業規格JISQ14001について、この情報提供等を行うとともに中小企業への環境マネジメントシステムの普及を図るため、環境マネジメントシステム構築融資制度により、事業者のISO14001認証取得及びそれに伴う環境対策投資を支援しました。また、全国各地で講習会を開催しました。平成18年2月末現在、国内のISO14001審査登録件数は20,079件となり、世界で最も取組が進んでいます(図7-3-2)。

図7-3-2	日本のISO14001登録審査件数の推移


(2)環境パフォーマンス評価
事業者が環境関連データを自主的・積極的に収集し、環境パフォーマンス指標等の形で活用する状態を創出するには、これらのデータを収集・管理することの効用や効果を明確に示すことが必要です。このため、「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン―2002年度版―」による普及を引き続き行いました。

(3)環境会計
事業者による効率的かつ効果的な環境保全活動の推進に資する環境会計システムの確立に向けて、平成17年2月に改訂した「環境会計ガイドライン2005年版」による環境会計の普及促進に努めました。また、企業経営に役立つ環境管理会計手法の研究を実施し、報告書を取りまとめました。さらに、環境会計の国際動向を把握するため、国連持続可能開発部環境管理会計専門家会合(UNDSDEMA−EWG)などの国際的な議論に積極的に参画しました。

(4)環境報告書
さまざまな事業者による環境報告書の作成、公表を促進するため、「環境報告書ガイドライン(2003年度版)」により環境報告書の普及促進を引き続き行いました。このほか、環境コミュニケーション大賞による表彰や環境コミュニケーションシンポジウムの開催、インターネット上に開設した環境報告書のデータベースの運用などにより、環境報告書への取組支援を実施しました。
また、環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号。以下「環境配慮促進法」という。)が平成17年4月から施行されたことを踏まえ、主として環境報告書の作成・公表に初めて取り組む事業者、あるいは環境報告書の作成・公表に取り組んで間もない事業者のために「環境報告書の記載事項等に関する手引き」を策定しました。また、環境報告書ガイドラインを参考に作成された環境報告書を対象に、その信頼性について自己評価を行うための「環境報告書の自己評価に関する手引き」を策定しました。
さらに、環境配慮促進法について、特定事業者を対象とした説明会を全国2か所で開催したほか、まだ環境報告書を作成・公表していない民間事業者を対象とした説明会を東京で開催しました(図7-3-3)。

図7-3-3	環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律


(5)中小企業の取組の促進
エコアクション21」(環境活動評価プログラム)(平成8年策定。16年改訂。)について、引き続きその普及に努めました。また、エコアクション21よりさらに小規模の事業者向け支援ソフトウェアである「環境大福帳」(平成16年公表)についても、引き続き普及促進を図りました。さらに、エコアクション21や環境大福帳の普及促進を担う人材を育成するための「指導者講習会」を全国4か所で実施しました。また、運輸関係企業に多い中小規模の事業者においても自主的に環境保全の取組が推進できるように、従来のトラック・バス・タクシー事業者に加え、平成17年7月より旅客船、内航海運、倉庫及び港湾運送の事業者のグリーン経営認証制度を開始しました。

(6)公害防止管理制度
工場における公害防止体制を整備するため、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第107号)によって一定規模の工場に公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する公害防止管理者等の選任が義務付けられており、約2万の特定工場において公害防止組織の整備が図られています。
同法に基づく公害防止管理者等の資格取得のために国家試験が、昭和46年度以降毎年実施されており、平成17年度の合格者数は7,376人、これまでの延べ合格者数は29万9,663人です。
また、国家試験のほかに、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者が公害防止管理者等の資格を取得するには、資格認定講習を修了する方法があり、平成17年度の修了者数は3,194人、これまでの修了者数は24万6,392人です。

4 環境に配慮した投融資の促進

事業者の環境に配慮した事業活動を促進するためには、従来の株式投資の尺度である企業の収益力、成長性等の判断に加え、企業が本来持つ社会的責任である法令遵守や雇用問題、人権問題などの社会・倫理面及び環境面から企業を評価・選別し、投資や融資することが重要です。このため、平成16年から、環境に配慮した事業活動を行う事業者を支援するため、日本政策投資銀行の投融資項目として環境配慮型経営促進事業を創設し、環境面からのスクリーニング手法を用いた低利融資を実施しています。

5 環境に配慮した事業活動の促進

環境保全に資する製品やサービスを提供する環境ビジネスの振興は、環境への負荷の少ない持続可能な社会の実現を目指す上で、極めて重要な役割を果たすものであると同時に、経済の活性化、国際競争力の強化や雇用の確保を図る上でも大きな役割を果たすものです。

(1)環境ビジネスの市場・雇用規模
わが国の環境ビジネスの市場・雇用規模について、環境省が経済協力開発機構(OECD)の環境分類に基づき調査し推計を行った結果、2004年の市場規模は約37兆2千億円、雇用規模は約95万6千人となりました。
また、省エネ家電やエコファンドなど環境保全を考えた消費者の行動が需要を誘発するビジネスも上記の環境ビジネスに加えた環境誘発型ビジネスの市場・雇用規模を試算した結果、2004年の市場規模は約50兆9千億円、雇用規模は約128万7千人となりました(表7-3-2)。

表7-3-2	環境ビジネス及び環境誘発型ビジネスの市場規模及び雇用規模の現状


(2)その他
企業の社会的責任という観点から環境への取組をとらえる傾向が高まっていることを受けて、平成17年6月に、証券業界との協力により、「社会的責任投資(SRI)に関するシンポジウム」を開催しました。
また、地域における企業、NPO、市民等が連携した環境に配慮したまちづくりに資する「環境コミュニティ・ビジネス」を発掘し、その展開を支援しました。

6 社会経済の主要な分野での取組


(1)物の生産・販売・消費・廃棄
ア 全般的な取組
産業界では、地球温暖化問題への主体的取組として、(社)日本経済団体連合会は、平成9年6月に経済団体連合会環境自主行動計画を策定しました。本計画は、2010年(平成22年)の二酸化炭素排出量を1990年(平成2年)比±0%以下に抑制することを目標としており、また、各業種においても定量的な目標を設定した環境自主行動計画を策定しています。このような事業者による自主行動計画はこれまで成果を上げてきており、政府は、これらの取組の透明性・信頼性及び目標達成の蓋然性が向上するよう、関係審議会等によりその進ちょく状況を点検しています。また、行動計画を策定していない業種に対し、数値目標などの具体的な行動計画の早期の策定と公表を促すこととしています。
イ 農林水産業における取組
たい肥等による土づくりを通じて化学肥料・化学合成農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業生産を推進するため、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)に対する金融・税制上の支援措置、面的なまとまりを持った環境保全型農業技術の導入促進等を引き続き講じました。また、環境と調和のとれた農業生産活動を促進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき「環境と調和のとれた農業生産活動規範」の普及・定着を推進しました。
さらに、農業生産活動に伴う環境負荷の大幅な低減を図る先進的な取組への支援の導入を検討するため、低減効果の評価・検証手法等の確立に必要な調査を実施しました。
また、家畜排せつ物については、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成11年法律第112号。以下「家畜排せつ物法」という。)に基づき、適正な処理や保管を徹底するとともにその利活用を促進するため、より高い環境保全効果を有する家畜排せつ物処理施設の整備等に取り組みました。また、未利用有機性資源等の循環利用・広域流通及び都市近郊から発生する生ごみ等の都市農業における活用の促進を図るため、都道府県におけるマスタープランの策定支援、生ごみの分別収集の啓発、たい肥化施設の整備等を行いました。さらに、生産基盤等の総合的整備の際に周辺環境基盤の造成整備を進めました。
林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を推進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理、二酸化炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材利用の推進に引き続き努めています。
水産業においては、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく、漁協等による養殖漁場の漁場改善計画策定の取組を促進するための措置を講じました。また、つくり育てる漁業を推進するため、沿岸域の藻場・干潟の造成、底質改善等を実施しました。さらに、栽培漁業については、遺伝的多様性の確保、生態系への影響等に配慮しつつ、種苗の生産、放流等を実施し、養殖業については漁場の利用方法と漁場環境間の定量的データを取得するとともに、養殖業由来の環境負荷を低減するための実用的技術の開発を進めました。加えて、漁協等による「資源管理型漁業」を一層推進することにより、各地域の多種多様な漁業実態に即した水産資源の適切な保存・管理と持続的な利用を図るための事業を実施しました。
ウ 製造・流通業における取組
製造・流通業に対しては、適切な指導を行ったほか、省資源・再資源化推進のための環境整備を行いました。また、中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援しています。
食品産業に対しては、生産段階では、環境情報の提供、産業廃棄物管理票制度の普及推進を行いました。流通段階では、飲食店等の食品廃棄物から製造される肥飼料等の特性と効果的利用法を把握するための検討を行いました。また、容器包装リサイクル対策を行うとともに、食品リサイクル法の普及啓発、先進的な食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入を図りました。
また、建築物の居住性(室内環境)の向上と省エネルギー対策をはじめとする環境負荷の低減等を、総合的な環境性能として一体的に評価を行い、結果を分かりやすい指標として提示する建築物総合環境評価システム(CASBEE)の開発・普及を推進しました。

(2)エネルギーの供給と消費
環境への負荷の少ないエネルギー供給構造を形成するため、発電部門、都市ガス製造部門等のエネルギー転換事業部門におけるエネルギー効率の向上や、環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を積極的に進め、次のような取組を実施しました。
太陽光やバイオマス等の新エネルギーの低コスト化・高効率化のための技術開発・実証試験や、民間事業者や地方公共団体等が新エネルギー設備を設置する際の補助を通じて導入促進等の支援措置を講じました。また、将来の水素社会の実現に向けて、燃料電池の技術開発等の推進を図りました。さらに、電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定量以上利用することを義務付ける、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成14年法律第62号。以下「RPS法」という。)法の着実な運用等を通じて電力分野における新エネルギー導入の拡大に努めました。加えて、海水・河川水・下水・ごみ焼却廃熱等の未利用エネルギーを活用する技術の導入に対する支援等により、未利用エネルギー等の活用を進めました。
原子力については、供給安定性等エネルギー政策の観点のみならず、発電過程で二酸化炭素を排出することがなく、地球温暖化対策に資することから、エネルギー基本計画においても、安全の確保を大前提に、国民の理解を得つつ、核燃料サイクルを含め、原子力発電を基幹電源として推進することとしています。平成17年10月には、核燃料サイクルの根幹をなす再処理事業等に要する将来費用をあらかじめ確保することを目的とする、原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律(平成17年法律第48号)が施行されました。また、同月には、従来からの原子力政策の方向性を再確認し、改めて、原子力発電が現在の水準程度かそれ以上の役割を担うことが適切であるなどのわが国の原子力政策の基本方針を示した「原子力政策大綱」を原子力委員会が決定し、これを政府として尊重する旨の閣議決定を行いました。
省エネルギー対策については、重点的な取組として、以下のような施策を講じました。
近年エネルギー消費の伸びが大きい民生・運輸部門等に係る対策の強化を図る、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)の一部改正法が成立しました。また、産業部門において費用対効果にすぐれ、政策的意義が高い省エネ設備への大規模投資に対する支援を行うとともに、民生部門の省エネを確実に進める上で大きな役割を果たし得る高効率給湯器等の導入等を重点的に支援しました。さらに、自動車、家電等に適用するトップランナー基準の対象機器の拡大の検討(同基準に基づく世界で初めてトラック及びバスの燃費基準の策定など)、包括的な省エネルギーサービスを提供するESCO事業の普及促進、複数の主体間の連携によるエネルギーの有効活用の推進等を実施しました。
また、総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会石油製品品質小委員会の答申(平成15年8月)を踏まえ、サルファーフリー(硫黄分10ppm以下)ガソリン・軽油の早期普及を促すため、サルファーフリー燃料の義務化(軽油は平成19年から、ガソリンは20年からの予定)に先駆けて、当該燃料を供給する事業者に対する支援措置を実施しました。
さらに、エネルギー等の特別会計のグリーン化が一層促進され、新エネルギー対策、省エネルギー対策、京都メカニズムの活用等の取組が強化されました。

(3)運輸・交通
運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス・騒音規制の強化を着実に実施しました。自動車NOx・PM法に基づく自動車使用の合理化等の指導を進めるとともに、冬季における高濃度の大気汚染に対応するため、入出荷貨物車台数の抑制等を内容とする「季節大気汚染対策」を実施しました。12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施しました。
ア 低公害車の開発等
次世代低公害車の技術開発としては、ディーゼルエンジンの高い熱効率を維持したまま排出ガスの低減を図ることを目的とした予混合圧縮燃焼エンジン技術、革新的後処理システム技術の開発を進めるとともに、低公害性の抜本的な改良を目指すジメチルエーテル自動車、次世代ハイブリッド自動車、大型CNG自動車、従来の大型ディーゼルエンジンよりも排出ガスを大幅に低減したスーパークリーンディーゼル車の公道試験等を実施し、さらにLNG、FTD(合成軽油)及び水素を燃料とする自動車の開発を進めました。また、燃料電池自動車について、国内自動車メーカー2社から申請のあった乗用車に対して、世界で初めて型式認定を行いました。さらに、自動車税のグリーン化や新長期規制適合車に対する自動車取得税の軽減措置等の税制上の特例措置を講じ、低公害車のさらなる普及促進を図りました。
また、信号待ちや渋滞時におけるアイドリングストップの著しい省エネ効果を確認するとともに、各地におけるシンポジウムやアイドリングストップ車試乗会開催のほか、交通の方法に関する教則により、アイドリングストップの普及啓発を図りました。
なお、駐停車時等のアイドリングストップ等のエコドライブについては、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」の6つのアクションの一つに盛り込まれ、その普及を図りました。
イ 交通管理
道路交通公害の防止に資する以下の対策を講じました。
1) 新交通管理システム(UTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞、旅行時間等の交通情報を迅速かつ的確に提供しました。また、交通公害低減システム(EPMS)を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用しました。さらに、3メディア対応型道路交通情報通信システム(VICS)車載機の導入・普及等を積極的に推進しました。
2) 都市部を中心に、各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システム(PTPS)の整備等を推進しました。
3) 都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、悪質性・危険性・迷惑性の高い駐車違反に重点を置いた取締り、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の運用、違法駐車防止条例の制定の働きかけ等のハード・ソフト一体となった駐車対策を推進しました。
4) 大気汚染・騒音・振動等の原因ともなっている過積載運転に対しては、荷主等の背後責任追及を積極的に実施するなど、取締りを一層強化しました。
ウ グリーン物流の実現
効率的で環境にやさしい物流の実現を目指すため、平成17年11月に策定された「総合物流施策大綱(2005-2009)」においても、物流に関わるさまざまな関係者が連携して地球環境問題に適切に対応することが重要な課題とされています。
そのため、「グリーン物流パートナーシップ会議」を活用し、事業者の連携・協働による先進的な取組への支援等を通じて、グリーン物流の実現を図るとともに、物流の総合的、効率的な実施に対する支援法である流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)を制定しました。
また、「グリーン物流パートナーシップ会議」を通じて、モデル事業の実施、事業効果の測定手法の確立、優秀事例の普及広報を行っています。また、モデル事業のうち、特に先進的な事業については補助金を交付しました。
鉄道においては、二酸化炭素排出量の少ない輸送手段である鉄道貨物輸送へのモーダルシフトを推進するため、東京から北九州間において一貫して1編成のコンテナ貨車26両(1,300トン)輸送を実現する山陽線の輸送力増強事業の推進を図るとともに、環境負荷低減の取組に対する消費者や企業の意識の向上を目指して、鉄道貨物輸送による環境負荷低減に積極的に取り組んでいる企業や商品を認定する「エコレールマーク」制度を創設しました。(http://www.mlit.go.jp/tetudo/index.html
エ 公共交通機関利用の促進
自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進するため、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行う一方、三大都市圏における都市鉄道新線の整備、複々線化等の輸送力増強による混雑緩和や、速達性の向上を図っています。また、貨物線の旅客線化、駅施設や線路施設の改良などにより既存ストックを有効活用するとともに、乗継円滑化等に対する支援措置を講じることによる利用者利便の向上に加え、交通事業者が行う先進的な「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験」等に対する支援を通じて、ICカードの導入等情報化の推進、乗り継ぎ改善や切れ目のない公共交通の実現等によるサービス・利便性の向上による利用促進に努めています。
また、「公共交通利用推進等マネジメント協議会」を通じて、低公害バス等の活用による通勤交通の公共交通利用転換、カーシェアリング推進等の企業等交通サービスの需要側における取組を促進しています。
オ ESTの取組への普及推進
公共交通機関の利用を促進し、自家用自動車に過度に依存しないなど、環境的に持続可能な交通(EST)の実現を目指す先導的な地域の取組に対して、関係省庁が連携して集中的に支援策を講じるESTモデル事業を11地域で実施しました。

(4)情報通信の活用
テレワークSOHO、テレビ会議、高度道路交通システム(ITS)、電子商取引など、さまざまな情報通信システムが普及することにより、交通の代替、交通流の円滑化、生産・流通の効率化やペーパーレス化などを通じて大きな環境負荷の低減効果が期待できます。
テレワーク、SOHOの普及を図るため、次のような施策を講じました。
1) 「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」の作成・公表
テレワーク推進関係4省(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)が共同で、企業におけるテレワークの導入・運用を支援するための手引書を作成し、平成17年8月に公表しました。(http://www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/index.html
2) 国家公務員のテレワークの拡大試行の実施
総務省では、平成16年度の試行を踏まえ、規模を拡大しつつ、17年11月から18年2月に、職員によるテレワークの試行を実施し、18年度以降のテレワークの本格実施に向けた課題の検討を行いました。(http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/telework/index.htm
3) 「テレワーク推進フォーラム」の設立
政府の目標である2010年までに「テレワーカーが就業者人口の2割(e-Japan戦略II 平成15年7月IT戦略本部決定)」の達成に資するよう、産学官による「テレワーク推進フォーラム」を平成17年11月に設立し、課題解決のための調査研究や普及活動を展開しました。(http://www.telework-forum.jp

(5)戦略的環境アセスメント
平成12年12月に閣議決定された環境基本計画において、上位計画や政策における環境配慮のあり方について、現状での課題を整理した上で、内容、手法などの具体的な検討を行うとともに、国や地方公共団体における取組の実例を積み重ね、その有効性、実効性の検証を行い、それを踏まえてガイドラインの作成を図ることが定められています。
これを踏まえ、個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策における環境配慮の具体的なあり方についての内容、手法等の検討を進めました。


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