第2節 科学的知見の充実及び環境リスク評価の推進


1 化学物質の環境リスク評価の推進

化学物質による人や生態系への影響を未然に防止するためには、多くの化学物質を対象に、その生産、使用、廃棄等の仕方に応じた、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれ(環境リスク)についての評価を行い、その結果に基づき適切な環境リスク対策を講じていく必要があります。
このため、化学物質の環境リスク評価のための知見を収集し、平成17年度に環境リスク初期評価等について第4次取りまとめを行いました。この中では、環境リスク初期評価を20物質を対象として行ったほか、生態リスクについては9物質を選定して初期評価を行いました。その結果、健康リスクについては1物質、生態リスクについては1物質が、相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」と判定されました。
また、生態系に対する影響に関する知見を充実させるため、平成7年度から経済協力開発機構(OECD)のテストガイドラインを踏まえて藻類、ミジンコ、魚類等を用いた生態影響試験を実施しており、17年度は82物質について試験を行いました。
このほか、化学物質に関するばく露状況や感受性など小児等の特性を考慮したリスク評価手法の開発に向けて、調査研究を進めました。また、小児等の環境保健に関する国内外の専門家を招いて国際シンポジウムを開催しました。

2 化学物質の内分泌かく乱作用(いわゆる環境ホルモン作用)問題に係る取組

化学物質の内分泌かく乱作用問題については、その有害性など未解明な点が多く、関係府省が連携して、環境中濃度の実態把握、試験方法の開発、生態系影響やヒト健康影響などに関する科学的知見を集積するための調査研究を、国際的に協調して実施しています。
環境省は、平成10年からこの問題について取組を進め、その成果として、環境中の濃度測定の結果を公表してきたほか、36物質について、魚類を用いた生態系影響に関する評価結果及び哺乳類(げっ歯類)を用いたヒト健康影響に関する評価結果を公表してきました。この中で4-ノニルフェノール(分岐型)、4-tert-オクチルフェノール、ビスフェノールA、o,p'-DDTについては魚類に対して内分泌かく乱作用を有することが推察されました。
平成17年3月には、これまでの取組の成果をまとめるとともに、取組指針を示すものとして「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について-ExTEND 2005-」を公表しました。17年度からは、ExTEND2005に沿って、野生生物の観察、環境中濃度の実態の把握及びばく露の測定、基盤的研究の推進、影響評価並びに情報提供及びリスクコミュニケーションの推進といったより一層幅広い取組を開始しました。
また、国際協力の一環として、OECDを中心として先進各国が協力・分担して取り組んでいるスクリーニング試験法等の開発に引き続き参加しています。さらに、日英共同研究、日韓共同研究及び日米二国間協力を行っているほか、「化学物質の内分泌かく乱作用に関する国際シンポジウム」を、平成17年は沖縄県で開催しました。
厚生労働省では、人に対する健康影響を調査するため、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」を設置し、平成17年3月に、新たに得られた知見、今後実施されるべき調査研究及び行動計画を含む「中間報告書追補その2」を取りまとめ、当該行動計画に沿った調査研究を実施しました。
経済産業省では、SPEED’98において内分泌かく乱作用を有すると疑われていた化学物質(67物質群)のうち、日本での生産・使用実態がないとされた物質群、農薬取締法に基づく登録農薬やダイオキシン類等の各種対策が進められている物質群を除いた15物質について有害性評価を行い、ヒトへの明らかな内分泌かく乱作用は認められなかったことを確認しました。15物質のうち、生殖毒性等の有害性知見が不足しているとされた7物質については二世代繁殖毒性試験を実施しました。また、得られた有害性評価結果を踏まえ、3つの物質群について化学物質リスク評価管理研究会を(独)製品評価技術基盤機構に設置してリスク評価情報の取りまとめを行い、「ノニルフェノール及びノニルフェノールエトキシレートのリスク管理の現状と今後のあり方」及び「フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)のリスク管理の現状と今後のあり方」を17年2月に、「ビスフェノールAのリスク管理の現状と今後のあり方」を17年11月に公開しました。
国土交通省では、環境省と連携し平成10年度から水環境中の内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質の存在状況を把握するため、全国109の一級河川を対象に、水質及び底質の調査を実施するとともに、主要な下水道における流入・放流水の水質調査を実施しています。


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