第2節 地球温暖化対策


1 地球温暖化対策の目指す方向

 平成17年4月に策定した京都議定書目標達成計画(以下「目標達成計画」という。)に基づき、京都議定書の6%削減約束の確実な達成を図り、地球規模での温室効果ガスのさらなる長期的・継続的な排出削減へと導きます。

2 地球温暖化対策及び施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進
 これまでの個別のエネルギー関連機器や事業所ごとの対策を引き続き推進するとともに、都市や地域の構造、公共交通インフラを含め、日本の経済社会構造を変革し、省CO2型の都市や交通システムを構築することを目指します。この際、エネルギーの需給に関連する各主体が、他の主体と連携してエネルギー効率のさらなる向上を目指すとともに、他の主体の省CO2化に積極的に貢献する取組を推進します。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進
 引き続き、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進します。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進
 目標達成計画に基づき、代替フロン等3ガスの排出量に関する従来より強化された目標の達成のため、引き続き、産業界の計画的な取組の促進、代替物質等の開発等、代替物質を使用した製品等の利用の促進、法律に基づく冷媒として機器に充てんされたHFCの回収等の施策を実施します。具体的には、ノンフロン発泡断熱材を一層普及させるための対策や、業務用冷凍空調機器からのフロン類回収率向上対策の検討等を実施することとしています。また、今年度から新たに、ノンフロン型省エネ冷凍空調システムの開発に取り組むとともに、冷媒にフロンを用いない省エネ型自然冷媒冷凍装置の導入を補助する事業を行います。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進
 温室効果ガス吸収源対策としては、地球温暖化対策推進大綱に盛り込まれた地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策の下で、森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林の整備・保全、木材供給、木材の有効利用、国民参加の森林づくり等の取組を国、地方公共団体、事業体及び国民各層の連携・協力の下に着実かつ総合的に実施します。また、日本の吸収量が国際的にも認められるよう、森林等の吸収源に関するガイダンスであるIPCC良好手法指針に即した報告・検証体制の強化を図ります。

(5)京都メカニズムに関する対策の推進
 京都メカニズムに関する対策は本章第1節参照。

(6)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度
 排出者自らが排出量を算定することにより国民各層にわたる自主的な温暖化対策への取組の基盤づくりを進めるとともに、排出量情報の公表・可視化による国民・事業者全般の自主的取組の促進へのインセンティブ・気運を高める視点から、温室効果ガスを相当程度多く排出する者に排出量を国に報告することを義務付け、国が報告された情報を排出者の権利利益の保護に配慮しつつ集計して公表する制度を構築します。

(7)国民運動の展開
 著名人から成る「環のくらし応援団」に新メンバーを加え、引き続き国民に対し、ライフスタイルを見直していく取組を求めるメッセージの発信を行います。特に6月(環境月間)に、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ等を有機的に使用した広範で集中的なキャンペーンを、経済界をはじめとする各界と連携しながら実施することにより、ライフスタイル変革の国民運動を促進します。その際、統一ロゴマーク及び「チーム・マイナス6%」というスローガンを使用し、一体感を醸成します。

「チーム・マイナス6%」ロゴマーク

 また、地域特性や世帯人員等を考慮しつつ各世帯に期待される電力・ガスなどの消費量を国民の行動の目安として策定するとともに、目安を達成するための具体的な行動・選択肢を示し、国民一人ひとりによるライフスタイル・ワークスタイルの不断の見直しを促していきます。
 さらに、全国センターにおいて、国民の地球温暖化防止に向けた取組を支援します。
 また、地球温暖化防止について、意識の向上を図るため、エコレールマーク等の普及、推進を図ります。

(8)公的機関の率先的取組
 目標達成計画に基づき平成17年4月に策定した新たな政府の実行計画に定められた取組を推進していきます。また、引き続き、前年度の政府の事務及び事業に伴い排出される温室効果ガスの総排出量を推計し、公表するとともに、そのほかの数量的目標や対策の取組状況についても、調査を行い、結果を公表します。
 さらに、平成17年4月28日の閣僚懇談会における申し合わせに基づき、6月1日から9月30日まで夏季の軽装(ノーネクタイ・ノー上着)の励行を実施します。

(9)サマータイムの導入
 夏時間(サマータイム)の導入について、ライフスタイルやワークスタイルのあり方も含めて国民的議論の展開を図り、環境意識の醸成と合意形成を図ります。

(10)税、課徴金等の経済的手法
 税、課徴金等の経済的手法については、第7章第3節参照。

(11)国内排出量取引
 費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自ら定めた削減目標を達成しようとする企業に対して、経済的なインセンティブを与えるとともに、排出枠の取引を活用する自主参加型の国内排出量取引を実施します。
 国内排出量取引制度は、他の手法との比較やその効果、産業活動や国民経済に与える影響等幅広い論点について、総合的に検討していくべき課題です。

(12)排出量・吸収量算定手法の改善等
 日本では毎年、気候変動枠組条約に基づいて温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)を作成しています。インベントリは地球温暖化対策の極めて重要な基礎指標となることから、温室効果ガス排出量・吸収量のさらなる精度の向上に向けた算定方法の改善、情報解析、要因分析などを行うほか、インベントリ作成の迅速化等を図ります。

(13)地球温暖化対策技術開発の推進
 技術開発は、その普及を通じて、環境と経済の両立を図りつつ、将来にわたり大きな温室効果ガス削減効果が期待できる取組です。このため、総合科学技術会議の意見具申(「地球温暖化対策技術研究開発の推進について」平成15年4月21日)や地球温暖化研究イニシャティブなどを踏まえ、関係各府省が連携し、産学官で協力しながら総合的な推進を図ります。

(14)観測・調査研究の推進
 地球温暖化に係る不確実性を解明し、科学的知見を踏まえた一層適切な対策を講じるため、地球環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究を総合的に推進します。また、温室効果ガスの観測及び人工衛星等を用いた観測技術の開発を実施します。


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