第9節 国際的取組に係る施策


1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

 地球環境問題に対処するため、1)国際機関の活動への支援、2)条約・議定書の国際交渉への積極的参加、3)諸外国との協力、4)開発途上地域への支援を積極的に行っています。
 平成16年11月には、環境大臣より中央環境審議会に対し、今後の国際環境協力の在り方について諮問し、近年の地球環境保全等に関する国内外の動向の変化に対応した今後の国際協力の方向性について検討が開始されました。
 また、政府一体となった地球環境保全関係施策の効果的な推進に資する観点から、関係省庁全体の地球環境保全関係予算を集計しており、平成16年度の総額は8,321億円でした。平成17年度の総額は7,104億円であり、前年度に比べ14.6%減となっています(表7-9-1)。


表7-9-1 環境保全関係予算について


(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保
 ア 多国間の枠組みによる連携
 (ア)国連を通じた取組
1) 国連持続可能な開発委員会(CSD)
  国連持続可能な開発委員会(CSD)第12会期が、2004年(平成16年)4月に米国・ニューヨークの国連本部にて開催されました。今回の会合では、水、衛生及び人間居住に関するヨハネスブルク実施計画の取組状況の評価等が行われました。
2) 国連環境計画(UNEP)における活動
  日本は、創設当初から一貫して国連環境計画(UNEP)の管理理事国であるとともに、国連環境基金に対し、2003年(平成15年)は約350万ドルを拠出する等多大な貢献を行っています。2005年(平成17年)2月には、UNEP第23回管理理事会及び第6回グローバル閣僚級環境フォーラムがナイロビ(ケニア)で開催され、環境の状況の評価、国際環境ガバナンス、国連機関の協力と調整、UNEPのプログラムと予算等について議論が行われるとともに、環境の持続可能性確保、環境と貧困等について議論が行われました。
  また、UNEP親善大使である加藤登紀子さんが、2004年(平成16年)5月にインドを、7月に中国を訪問し、草の根レベルの環境保全活動を視察するとともに関係者と交流し、広報を行うなどの活動を支援・推進しました。
  そのほか、日本に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(IETC)が実施する開発途上国等への環境上適正な技術(EST)の移転を目的とした環境保全技術データベース等の事業を支援・推進しました。
3) 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)における活動
  第5回アジア太平洋環境と開発に関する閣僚級会合(MCED2005)が2005年(平成17年)3月に韓国・ソウルで開催され、環境にやさしい生産消費パターンへの転換により経済成長による環境負荷を削減することにより、持続可能な開発を実現しようとする「グリーン成長」をテーマに議論が行われました。貧困削減とグリーン成長の実現に向け努力するとする閣僚宣言や、今後5年間の取組を促進する枠組み(地域実施計画2006-2010)がまとめられました。
  国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の第1回環境・持続的開発小委員会が2004年(平成16年)9月〜10月にタイ・バンコクにて開催され、持続可能な開発のためのエネルギーサービス、水資源管理、黄砂対策等をテーマとして議論が行われました。
 (イ)経済協力開発機構(OECD)における取組
 経済協力開発機構(OECD)環境政策委員会における定期的な会合に積極的に参加しています。2004年(平成16年)4月には、環境大臣会合が開催され、「OECD21世紀最初の10年の環境戦略」の実施状況の評価等について議論が行われました。本会合の成果として、わが国提案の「物質フローと資源生産性に関する理事会勧告案」を含む3件の理事会勧告案が承認されるとともに、「持続可能な開発に関するOECDの更なる活動に関する環境大臣声明」が採択されました。
 持続可能な開発に関するOECDの横断的な取組としては、上記の閣僚級会合でも支持された「持続可能な開発年次専門家会合」の設置が同年5月の閣僚理事会で承認され、その第1回会合が同年9月に開催されました。
 同年11月には、OECDの非加盟国やNGO等のステークホルダーとの政策対話の場である、持続可能な開発に関するグローバルフォーラムが開催され、「気候変動と開発」をテーマとして議論が行われました。
 (ウ)世界貿易機関(WTO)等における取組
 2001年(平成13年)11月にカタールのドーハで開催された世界貿易機関(WTO)第4回閣僚会議で採択された閣僚宣言に基づき、WTO貿易と環境に関する委員会(CTE)では、WTOルールと多国間環境協定(MEAs)が規定する特定の貿易上の義務との関係や、環境関連の物品及びサービスの関税・非関税障壁の削減又は撤廃等について、WTOドーハ開発アジェンダ交渉の下で交渉が行われています。
 WTOにおける多国間の貿易自由化に加え、二か国間や地域ごとの自由貿易や経済連携を進める協定の締結が急速に進められています。日本でも各国との経済連携協定の締結に取り組んでおり、2004年(平成16年)には、9月にメキシコと締結し、11月にはフィリピンと内容について大筋で合意しています。これらの中には環境に関して協力することが位置付けられています。現在は韓国、ASEANなどとの間でも交渉を行っています。このような状況を踏まえ、自由貿易協定・経済連携協定と環境保全との相互支持性を向上させるための具体的手法について検討を行っています。
 (エ)主要国首脳会議(G8サミット)における環境問題への取組
 2004年(平成16年)6月に米国で開催されたシーアイランド・サミットにおいて、小泉総理は、3R(廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル))を通じて循環型社会の構築を目指す「3Rイニシアティブ」を提案し、同イニシアティブを開始するための閣僚会合を開催する旨表明しました。小泉総理の提案はG8首脳の賛同を得て、G8の新たなイニシアティブとして合意され、『持続可能な開発のための科学技術:「3R」行動計画及び実施の進捗』と題する文書が発出されました。
 3Rイニシアティブ閣僚会合(環境大臣主催)は、米国、ドイツ、フランスなどG8を含む20か国の閣僚等及び4つの関連国際機関の代表の参加を得て、2005年(平成17年)4月28日から30日まで東京において開催されました。同閣僚会合では、3Rに関する取組を国際的に推進するための議論が行われました。わが国からは、小泉総理の指示の下に取りまとめられた日本の行動計画(通称:ゴミゼロ国際化行動計画)を提案するなど、主催国として積極的な貢献を行いました。
 その結果、各国における3R推進のためのビジョン・戦略の策定・実施を推進するとともに、3R関連物品等の国際流通に対する障壁の低減、先進国と開発途上国との協力、さまざまな関係者間の協力、3Rに適した科学技術の推進について、国際協力の下、取組を一層充実・強化していくことが合意されました。
 さらに、閣僚会合の成果は、2005年(平成17年)7月のG8グレンイーグルズ・サミットに報告すべきであることについて合意されたほか、3Rイニシアティブをフォローアップする高級事務レベル会合を2006年春までに開催するとの日本の提案が支持されました。
 (オ)G8環境・開発大臣会合
 2005年(平成17年)3月に、イギリスのダービーシャーにおいて、G8環境・開発大臣会合が開催され、アフリカの気候変動に関する観測体制の強化などが盛り込まれた「アフリカと気候変動」に関する議長総括が作成されるとともに、木材生産国への支援強化などが盛り込まれた「森林違法伐採」に関するG8閣僚声明が採択されました。
 (カ)アジア・太平洋地域における取組
1) アジア太平洋環境会議(エコアジア)
  2004年(平成16年)6月に、鳥取県米子市において第12回アジア太平洋環境会議(エコアジア)を開催しました。同会議には、6名の環境担当大臣を含むアジア太平洋地域の20か国及び13国際機関が参加し、「環境教育」及び「持続可能な開発に関する世界首脳会議の成果の具体的実施」をテーマとして議論が行われました。
2) アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)
  アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)は、2004年(平成16年)5月にカザフスタンのアスタナで第5回実質会合を、12月には東京で第6回実質会合を開催しAPFED最終報告書を採択しました。同最終報告書では、アジア太平洋地域の特性を活かして持続可能な開発を達成するため、(1)持続可能な開発のための統合的アプローチ、(2)ステークホルダー間の連携強化、(3)淡水資源、海洋・沿岸資源、エネルギーと清浄な大気、土地利用管理、化学物質問題の5つの主要な分野について、100を越える具体的な提言が行われました。またこれらの提言のうち(1)マルチステークホルダーの相互対話チャンネル、(2)持続可能な開発に関する知識イニシアティブ、(3)持続可能な開発のための革新的な取組のショーケースを、実施の端緒となるような取組(アクションプラットフォーム)として取りまとめ、さまざまな主体が実施していくことを呼びかけました。また2005年(平成17年)3月の第5回アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会合(MCED5)のマルチステークホルダーフォーラムを開催しました。このフォーラムでは、APFED最終報告書について紹介するとともに、上述の提案の一つである持続可能な開発に関する知的イニシアティブのあり方や活用方法について議論を行いました。また、アジア太平洋地域の持続可能な開発の達成を目指す協働へ加わるよう、MCED5への参加者に呼びかけるアピール文を採択しました。
3) アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)
  第Iフェーズ(平成14〜16年度)においては、アジア太平洋地域の持続可能な開発のための政策決定を支援するため、衛星データ等を活用した統合的環境モニタリング、環境・経済統合モデルによる分析・評価、革新的な戦略オプションの開発を行いました。第12回エコアジアにおいては、その成果をアジア太平洋地域の政策決定者に発信し、平成17年度からAPFEDIIの下で第IIフェーズを開始することが合意されました。
4) 北東アジア環境協力高級事務レベル会合
  2004年(平成16年)11月に、沖縄県那覇市において第10回北東アジア環境協力高級事務レベル会合が開催されました。会合では、新たに大型哺乳類や渡り鳥の保全プロジェクトを開始することが合意されたほか、現在実施されている大気汚染対策プロジェクトの今後の方向性などについて話し合われました。
5) 環日本海環境協力会議(NEAC)
  2004年(平成16年)12月に、韓国・ソウルにおいて第13回環日本海環境協力会議(NEAC)が開催されました。会議では、「都市部の大気環境管理」と題した公開シンポジウムを行うとともに、「地方自治体における環境回復」「各国における種の回復」「工業団地における持続可能な管理の経験と事例研究」について、幅広い観点から議論が行われました。
6) 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)
  2004年(平成16年)12月に、東京において第6回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)が開催され、気候変動問題等の地球環境問題や、黄砂等の北東アジア地域の環境問題について話し合われました。今後、循環型社会等の環境と経済に関する分野で情報交換や政策対話を始めること、北東アジア地域の環境管理のあり方を検討していくことが合意されました。また、本会合にあわせて、モンゴルを加えた4カ国が参加して黄砂問題に関する大臣会合を開催しました。
7) 東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)環境大臣会合
  2004年(平成16年)10月に、東南アジア諸国連合(ASEAN)に日中韓の三カ国を加えた第3回ASEAN+3環境大臣会合がシンガポールで開催され、ASEAN と日中韓による環境協力の現状や今後のあり方等について意見交換等が行われました。
8) 交通と環境に関するマニラ政策対話(Manila Policy Dialogue on Environment and Transport in the Asian Region)のフォローアップ
  平成16年1月に、フィリピンと「交通と環境に関するマニラ政策対話」の結果採択した「マニラ宣言」に基づき、「アジアEST地域フォーラム」の準備会議を行い、環境面から持続可能な交通の構築に向けた国・地域レベルの戦略計画の策定に取り組んでいます。
9) アジア水環境パートナーシップ(Water Environment Partnership in Asia:WEPA)
  2005年(平成17年)1月、アジアモンスーン地域の各国が水環境保全に関する情報を共有し、先進的な取組を相互に学ぶことのできる仕組みを作ることを目的とした「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」事業を推進するため、第1回WEPA国際ワークショップを東京で開催しました。ワークショップには関係8か国の水環境政策担当者が参加し、水環境情報データベースの作成方針等について議論を行いました。
 (キ)世界水フォーラムのフォローアップ
 2003年(平成15年)3月、日本政府が主催した第3回世界水フォーラム閣僚級国際会議において発表された「水行動集」をフォローアップするためのウェブサイト(「PWAウェブサイトネットワーク」http://www.pwa-web.org/)の活用を促進するため、国連持続可能な開発委員会第12会期(CSD12)等の水に関する国際会議へ積極的に参加し、世界的な水問題の解決に向けた国際連携に努めました。
 (ク)国内における取組
1) 「アジェンダ21」に基づく取組
  日本は、「アジェンダ21」行動計画にのっとり、持続可能な開発の達成に向けた種々の取組を行いました。また、アジェンダ21においては、その実施主体として地方公共団体の役割を期待しており、地方公共団体の取組を効果的に進めるため、ローカルアジェンダ21を未策定の地方公共団体に対し、その策定を求めました。さらに、ヨハネスブルグ・サミットの合意を踏まえ、国際環境自治体協議会(ICLEI)などのイニシアティブにより、ローカルアジェンダ21を具体的な行動に移していくための「ローカルアクション21」を引き続き進めました。
2) 持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)
  持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)では、ヨハネスブルグ・サミットで合意された実施計画の我が国におけるフォローアップ等について、情報の共有及び意見交換を行いました。
 イ 二国間の枠組みによる連携
 (ア)環境保護協力協定に基づく取組
 中国及び韓国等と環境保護協力協定に基づく協力を進めています。
 (イ)科学技術協力協定に基づく取組
 米国、カナダ、オーストラリア等との科学技術協力協定に基づく合同委員会が開催され、環境分野における共同研究等の協力が進められています。他にも、ドイツ、ロシア、中国等と科学技術協力協定に基づく協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施しています。
 (ウ)その他の取組
 2005年(平成17年)3月に、イギリスのロンドンにおいて、エネルギー・環境閣僚円卓会議が開催されました。同会議は、気候変動問題の鍵を握る主要20ヶ国のエネルギー・環境大臣が一堂に会し、低炭素社会の実現に向けた国際協力のあり方について意見交換を行う画期的な取組であり、地球環境問題の克服と経済発展の両立のためには、エネルギー政策と環境政策の両立が重要である点が確認されました。今後、同会合の成果は、2005年夏のG8サミットに対して重要な貢献を果たすものと期待されています。
 1997年(平成9年)に日中間で合意した「日中環境開発モデル都市構想」に基づき指定された重慶、貴陽及び大連の3モデル都市については、大気汚染対策等に集中的に円借款を通じて支援するとともに、人材育成や制度整備等のソフト面を技術協力によって支援しています。2003年には1999年と比較して、3都市において二酸化硫黄年間排出量は約1.1万トン〜17万トン減少しましたが、そのうち約30〜40%以上(試算)の削減に円借款は貢献しています。
 ウ 海外広報の推進
 環境省は、日本の環境政策の紹介のための広報パンフレット「Annual Report on the Environment in Japan 2004」(図でみる環境白書の英語版)等海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行っています。また、アジア太平洋地域内の各国及び各国際機関がインターネットを通じて環境情報を提供するアジア太平洋環境情報ネットワーク(エコアジア・ネット、http://www.ecoasia.org/)により、英語による環境情報の提供を行っています。

(2)開発途上地域の環境の保全
 日本は政府開発援助(ODA)による開発途上国支援を積極的に行っています。環境問題は、「政府開発援助大綱」において、「重点課題」である「地球的規模の問題への取組」の中で対応を強化しなければならない問題と位置付けられています。また、政府開発援助大綱のうち、考え方や取組等を内外に対してより具体的に示すべき事項を中心に記述した「政府開発援助に関する中期政策」(平成17年2月策定)においても、「重点課題」である「地球的規模の問題への取組」の中で環境問題への取組を取り上げています。
 さらに、ODAを中心としたわが国の国際環境協力については、平成14年8月に表明した「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(EcoISD)」において、環境対処能力向上や我が国の経験と科学技術の活用等の基本方針のもとで、1)地球温暖化対策、2)環境汚染対策、3)「水」問題への取組、4)自然環境保全を重点分野とする行動計画を掲げています。15年度においては、環境分野のODAとして約3,423億円(ODA全体に占める割合は約33.3%)の支援を行っています。
 戦後のイラクに対しては、国連イラク復興信託基金を通じて国連環境計画(UNEP)の行う「イラク南部湿原環境管理支援プロジェクト」などの環境プロジェクトを支援するとともに、環境省では有識者からなる検討会を設置し、我が国として中長期的にどのような支援が可能か検討を進めています。
 ア 技術協力
 国際協力機構(JICA)を通じて、研修員の受入れ、環境専門家の派遣、機材供与、またそれらを組み合わせた技術協力プロジェクト(表7-9-2)、さらに開発途上国の環境保全に関する計画策定を支援するための開発調査など、開発途上国への技術協力を積極的に行っています。


表7-9-2 主な技術協力プロジェクト


 イ 無償資金協力
 無償資金協力は、居住環境改善(都市の上水道整備、地方の井戸掘削など)、地球温暖化関連(植林、エネルギー効率向上)等の各分野において実施しています(表7-9-3)。

また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。

表7-9-3 主な水資源・地球環境無償の実績(旧「地球環境無償」分:平成14〜16年度)


 ウ 有償資金協力
 有償資金協力は経済インフラ型案件・社会インフラ型案件への援助等を通じ開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対し、日本は国際協力銀行(JBIC)を通じ、積極的に円借款を供与しています(表7-9-4)。


表7-9-4 主な有償資金協力(円借款)プロジェクト


 エ 国際機関を通じた協力
 各種国際機関を通じた協力は、特に二国間協力のみでは十分に対応できない地球環境保全対策、共通の取組のための指針作り、情報量の少ない国・分野への取組等を進める観点から重要です。
 日本は、UNEPの国連環境基金、UNEP国際環境技術センター技術協力信託基金等に対し拠出を行っており、また、日本が主要拠出国及び出資国となっている国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これらの機関を通じた協力も環境分野では重要になってきています。
 地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等で行う地球環境保全のためのプロジェクトに対して、主として地球環境益に資する増加コストに対する資金を供与する国際的資金メカニズムです。日本は主要な資金の拠出国として、実質的な意思決定機関である評議会の場等を通じて、GEFの活動に積極的に参画しています。

(3)国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備
 国際会議における専門的かつ技術的議論の進展と国際世論づくりに一層貢献していくため、政府内の専門家の育成に努めるとともに、政府外の専門家の知見の活用を図るため、NGO、学術研究機関、産業界などとの連携を強めました。
 また、開発途上国に移転可能な技術、国内に蓄積されている経験等各種情報を収集・整理し、円滑な技術移転のための基盤整備を進めました。さらに、国民の理解と支持を得るための環境省ホームページを活用した広報等を行いました(『持続可能な開発に向けた国際環境協力』http://www.env.go.jp/earth/coop/coop/)。

2 国際協力の実施等に当たっての環境配慮

(1)ODA及び輸出信用等における環境配慮
 技術協力等を担当する国際協力機構(JICA)では、現行の環境配慮ガイドラインを改定するため、平成14年度より「JICA環境社会配慮ガイドラインに関する改定委員会」を設置し検討を行ってきましたが、16年4月に同委員会提言を踏まえる形で新ガイドラインを策定し、同月より施行しています。
 国際協力銀行(JBIC)においては、円借款事業と輸出信用等に共通して適用される「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を策定し、平成15年10月より完全施行するとともに、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインに基づく異議申立手続要綱」を同月より施行しています。
 輸出信用機関である日本貿易保険(NEXI)では、「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」を平成15年10月から実施するとともに、「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン異議申立手続等について」と題する手続要綱を実施しています。
 無償資金協力については、平成16年8月に、「無償資金協力審査ガイドライン」を作成し、同月より試行的に適用しています。本ガイドラインは、基本的にJICAの環境社会配慮ガイドラインを準用することとし、無償資金協力全体の審査のどの段階でどのようにJICAのガイドラインを適用するかについて示しています。
 また、OECD開発援助委員会(DAC)では、途上国が開発政策に環境を統合して持続可能な国家戦略を作成する上での支援方策、及び途上国が地球環境関係の諸条約に対応する上での支援方策に関するガイドラインが策定されており、これらの普及に向けた検討が行われています。
 環境省においては、平成16年度は、援助機関等の環境社会配慮ガイドラインの適用に当たって、途上国の事業実施主体等が直面する課題について検討しました。

(2)民間の海外事業に対する環境配慮
 海外に事業展開する民間企業においても、環境問題に真摯に取り組むことが求められていますが、現地において積極的な環境対策を展開する日系企業も増えてきました。環境省においては、平成8年度から15年度にかけて(12年度を除く。)、在外日系企業の環境配慮活動の取組や経験に関する具体的な事例を国別に調査し提供してきました。16年度は、企業が対応を求められる社会的責任(CSR)への対応にかかる先進事例の収集を行い、企業の取組を促進するための行政施策の今後の方向性を検討しました。

3 地方公共団体又は民間団体による活動の推進

(1)地方公共団体の活動
 地方公共団体は、国内や世界の地方公共団体などと共同して、生活環境から地球規模の環境問題まで積極的に取り組んでいます。地方公共団体の主なネットワークとして、クリーンな環境のための北九州イニシアティブ持続可能な都市のための20%クラブ、国際環境自治体協議会(ICLEI)などがあります。このようなネットワークは、地方公共団体の連携を強化するとともに、国や国際機関などさまざまな主体との連携にも拡がっています。
 国際協力機構(JICA)を通じて、多数の地方公共団体の環境専門家を開発途上国へ派遣しています。また、多くの開発途上国からの研修員が全国各地の地方公共団体やその試験研究機関等で技術を修得しています。
 さらに、姉妹友好都市等からの研修員受入れ、会議の開催及び情報交換、開発途上国現地における技術指導、機材等の贈与など地方公共団体が独自に行う環境協力も進められています。
 環境省においては、「地方公共団体等による国際環境協力ガイドブック」を作成し、国際環境協力に必要なノウハウなどを地方公共団体に情報提供しました。

(2)民間の活動
 公害防止装置をはじめとする環境保全技術の多くは、政府の規制・指導、国民意識の高まり等に応じて、民間企業によって開発されてきたものです。また、開発途上国への技術移転においては、直接投資等、民間企業が果たす役割も大きくなっています。
 公益法人やNPO法人、任意団体をはじめとする多くの民間団体が、政府レベルから草の根レベルまでの環境保全プロジェクトの実施、環境協力に関するシンポジウム、講演会、セミナーの開催等により国際環境協力の推進に取り組んでいます。こうした民間団体の活動は、独立行政法人環境再生保全機構の地球環境基金、外務省のNGO事業補助金、日本NGO支援無償資金協力及び草の根・人間の安全保障無償資金協力、JICAの草の根技術協力、日本郵政公社の寄附金付お年玉付郵便葉書等に付加された寄附金や国際ボランティア貯金の寄附金の配分等による支援が行われていることや国民の関心の高まりにつれて、ますます活発となっています。

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