第5節 環境影響評価等


1 国の施策の策定等に当たっての環境保全上の配慮

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法第19条は、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たっては、環境保全について配慮しなければならないものと規定しています。このため、各種計画の策定に当たり、環境の保全に関しては、環境基本計画の基本的方向に沿ったものとなるよう、これらの計画と環境基本計画との相互の連携を図りました。また、個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることとなる計画(上位計画)や政策における環境配慮の具体的なあり方について検討を進めました。
 上位計画や政策に対する環境配慮として、現在、河川整備計画策定段階において従来の環境配慮をより充実させるための基本的な考え方が提言される等各事業分野における検討が進んでいます。
 内容や制度に差異はありますが、EUにおいて、計画案の環境評価に関する指令に基づき、一部の加盟国で計画案の環境評価が制度化されるなど、諸外国において「戦略的環境アセスメント」と呼ばれる仕組みの導入に関する取組がなされています。
 環境省では、学識経験者による研究会を設けて、廃棄物分野におけるケーススタディを中心に手法等の研究を行ったり、海外の専門家に依頼して海外事例の研究を行っています。
 また、国の実施する社会資本等の整備のための公共事業については、計画段階からのその実施が環境に及ぼす影響について、最新の知見により調査予測を実施し、環境への影響の防止のための対策の検討を行うなど、環境保全上の調査・検討に努めました。

2 環境影響評価の実施

(1)環境影響評価法に基づく環境影響評価
 環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の面的開発事業のうち、規模が大きく、環境影響が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています(図7-5-1)。同法に基づき、平成17年3月末までに102件の事業が手続を開始し、そのうち、16年度においては、10件が新たに手続を完了しており(表7-5-1)、社会資本整備における環境配慮の徹底が図られました。



図7-5-1 環境影響評価法の手続の流れ


表7-5-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況


(2)環境影響評価の適切な運用への取組
 環境影響評価に係る技術手法の向上、改善のための検討を行うとともに、環境影響評価における住民等の意見の収集を効果的かつ効率的に行う手法の検討を行いました。また、技術検討の成果及び環境影響評価の実施状況を踏まえ、基本的事項の点検を行い、それに基づき所要の改正を行いました。
 さらに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の提供による環境影響評価の質及び信頼性の確保を目的として、環境影響評価の実施に際して必要となる情報等を集積し、インターネット等を活用した国民や地方公共団体等への情報支援体制の整備を進めました。

(3)個別法等による環境影響評価等
 港湾法(昭和25年法律第218号)等の個別法に基づく環境影響評価について、平成16年度に実施されたものの概要は表7-5-2のとおりです。


表7-5-2 個別法等による環境影響評価


(4)地方公共団体における取組
 都道府県・政令指定都市の多くは、条例や要綱による独自の環境影響評価手続を設けていましたが、環境影響評価法の制定等を背景に、制度の見直しが活発に行われ、平成16年度末現在、すべての都道府県及び政令指定都市において環境影響評価条例が公布・施行され、さらに知事意見を述べる際の審査会等第三者機関への諮問や事業者への事後調査の義務付けを導入しています。
 対象事業については環境影響評価法対象の規模要件を下回るものに加え、廃棄物処理施設やスポーツ・レクリエーション施設、畜産施設、土石の採取、複合事業なども対象としており、さらに環境基本法に規定されている「環境」よりも広い範囲の「環境」の保全を目的とし、埋蔵文化財、地域コミュニティの維持、安全などについても評価対象にするなど、地域の独自性が発揮されています。
 また、個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策における環境配慮について、東京都で計画段階に環境アセスメントを義務付けるための条例改正(平成14年7月)が行われ、埼玉県では戦略的環境影響評価実施要綱(平成14年3月)、広島市では多元的環境アセスメント実施要綱(平成16年3月)、京都市では計画段階環境影響評価要綱(平成16年10月)が制定されました。


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