第4節 地域づくりにおける取組の推進


1 地域における環境保全の現状

(1)地域における環境保全施策の計画的、総合的推進
1) 全国の地方公共団体の環境関連情報を提供するウェブサイト「地域環境行政支援情報システム(知恵の環)(http://www.chie-no-wa.com)」の運営を行ったほか、平成16年度から地方公共団体向けに環境省の環境施策に関する情報提供を行うメールマガジンの発行を開始しました。
2) 各地方公共団体においてそれぞれ地域環境保全基金が設けられています。この基金により、ビデオ、学校教育用副読本等の啓発資料の作成、地域の環境保全活動に対する相談窓口の設置、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援等が行われました。
3) 「緊急地域雇用創出特別交付金」を活用し、地域住民や企業退職者、さらには地域環境に詳しい人材が行う森林の下草刈り、「ごみマップ」の作成等の環境関連事業を幅広く推進しました。

(2)地方環境情勢の把握
 環境省では、全国9ブロックに配置している地方環境対策調査官(平成16年度末定員:107名)を活用し、廃棄物の不法投棄現場などの現地調査を行い、関係者の意見・要望を聞くなどして地方環境情勢の把握に努めました。また、全国7か所において地域環境問題懇談会を実施し、地方公共団体との環境保全に関する意見交換を行い、今後の施策を展開する上での参考としました。
 環境問題に関する国民の意見・要望などを全国的に把握するため、全国で500人の環境モニターを委嘱しており、モニターからの意見・要望等は、環境省の各種施策の企画、立案等に活用されています。平成16年度の報告件数は845件でした。
 都道府県及び政令市における騒音規制法、振動規制法及び悪臭防止法に係るそれぞれの施行状況に関する調査を実施しました。
 以上のほか、地方環境対策調査官事務所では、NGO/NPO、地方公共団体、地域企業などが一堂に会した各種会議や環境施策PRのための環境展などの行事の開催、また、相談窓口などを通じて、環境問題に関する情報や国民の要望の把握に努めました。

(3)地方公共団体の環境保全対策
 ア 環境行政担当組織及び職員の現況
 都道府県・政令指定都市では、平成16年4月1日現在、公害等(廃棄物、下水道関係等を除く。市町村についても同じ。)担当職員数は7,493人、自然保護担当職員数は3,054人となっています。また、市町村では、16年4月1日現在、公害等担当職員数は、9,170人、自然保護担当職員数は、3,255人となっています。
 イ 条例の制定状況
 地方公共団体においては、環境保全に関連した条例等の下、地域の特性に応じたさまざまな施策が実施されました。地方公共団体の環境保全関連条例は表7-4-1のとおり4つに大別され、平成16年4月1日現在、都道府県・政令指定都市のうち、1)は59団体、2)は51団体、3)は55団体が制定しています。


表7-4-1 地方公共団体における環境保全関連条例区分


 ウ 総合的な地域環境計画の策定状況
 環境基本法(平成5年法律第91号)の制定と環境基本計画の策定を契機として、地方公共団体においても、環境についての基本理念を明らかにした総合的な地域環境計画の策定が進んでおり、平成16年4月1日現在、すべての都道府県・政令指定都市で策定されています。また、市町村では、同日現在、618団体において策定されています。
 エ 地方公共団体の事業者・消費者としての環境保全に係る行動の取組状況
 地方公共団体は、通常の経済主体として自らの経済活動に伴う環境負荷の削減が強く期待されており、多くの地方公共団体で、省資源・省エネルギー活動等のさまざまな環境負荷低減のための取組を内容とする計画や行動のための指針が策定されています。
 オ 公害防止協定の締結状況
 平成15年4月〜16年3月までの間に締結された公害防止協定数は、989件となっており、協定締結の事業所数を業種別に見ると表7-4-2のとおりとなっています。


表7-4-2 業種別の公害防止協定締結事業所数(自治体−企業等)


 カ 公害対策経費
 平成15年度において、地方公共団体が支出した公害対策経費(地方公営企業に係るものを含む。)は、3兆9,850億円(都道府県8,590億円、市町村3兆1,259億円)となっています。これを前年度と比べると、7,322億円(都道府県594億円減、市町村6,728億円減)、15.5%の減となっています(表7-4-3)。


表7-4-3 地方公共団体公害対策決算状況(平成15年度)


 公害対策経費の内訳で見ると、公害防止事業費が3兆5,938億円(構成比90.2%)、次いで一般経費(人件費等)が1,905億円(同4.8%)等となっています。さらに、公害防止事業費の内訳をみると、下水道整備事業費が2兆9,429億円で公害対策経費の73.8%と最も高い比率を占めており、次いで廃棄物処理施設整備事業費が4,959億円(構成費12.4%)となっています。
 なお、平成17年度の地方財政対策において、地域環境保全・創造対策及びリサイクル推進対策として合わせて2,880億円程度が計上され、地方交付税措置等が講じられています。

2 循環と共生を基調とした地域づくり

(1)持続可能な地域づくりに対する取組
 地球温暖化を防ぐ地域づくりを進めるため、平成16年度から「環境と経済の好循環のまちモデル事業」を実施しています。この事業では、地域発の創意工夫と幅広い主体の参加によって、二酸化炭素排出削減等を通じた環境保全と、雇用創出等による地域経済の活性化を同時に実現する事業を支援していくことにより、環境保全をバネにしたまちづくりの成功例を広く国の内外に示すことを目的としています。
 具体的には、環境と経済の好循環のまちづくりについて、地域の創意工夫によるアイディアを募集・選定し、10か所(大規模5か所、小規模5か所)の地域において事業を実施しています。
【大規模】いわき市(福島県)、つくば市(茨城県)、太田市(群馬県)、飯田市(長野県)、周南市(山口県)
【小規模】住田町(岩手県)、飯豊町(山形県)、平田市〔現 出雲市〕(島根県)、上勝町(徳島県)、梼原町(高知県)

 環境省では地球環境問題からリサイクル対策まで多岐にわたる地域の課題を視野に入れ、市民との協働を図りながら、環境の恵み豊かな、持続可能なまちづくりに取り組んでいる地域を対象に、大臣表彰を行っています。平成16年度「循環・共生・参加まちづくり表彰」においては、釜石市(岩手県)、葛巻町(岩手県)、北区(東京都)、立山町(富山県)、飯田市(長野県)、多治見市(岐阜県)、田原市(愛知県)、川上村(奈良県)、大佐町(岡山県)、熊本市(熊本県)の10団体を表彰しました。
 また、平成16年10月には、循環・共生・参加まちづくりネットワーク(全国95地方公共団体で構成)、上越市と共催で「地球環境シンポジウム2004」を開催し、15年度表彰団体による地域の取組の事例発表等を行いました。
 平成15年度には、関係する行政機関が相互に密接な連携と協力を図り、施策を総合的に推進するため、「環境共生まちづくり」のモデル地域(室蘭市、飯田市、田原町〔現 田原市〕、近江八幡市、京都市、北九州市、日南市の7地域)を選定しました。現在、それぞれの地域で環境共生まちづくりの課題について検討が行われています。
 新世代下水道支援事業制度水環境創造事業を引き続き推進するとともに、省エネルギー化を図った施設建築物を整備する市街地再開発事業等に対し特別な助成を行う先導型再開発緊急促進事業にて支援を行いました。また、環境への負荷を低減するモデル性の高い住宅市街地の整備を推進する「環境共生住宅市街地モデル事業」にて支援を行いました。

(2)自然と共生する地域づくりに対する取組
 ほ場整備による優良農地の確保、保全とあわせて地域の活性化のため、既存集落と一体的に生活環境を整備することにより、潤いのある田園居住空間を創造する「農村振興総合整備事業(田園居住空間整備)」を実施しました。農業用水や農業水利施設が持つ景観形成、親水、生態系の保全などの地域用水機能の発揮に配慮した整備を行うことにより、都市住民にも開かれた豊かで潤いのある水辺空間を創出する地域用水環境整備事業を実施しました。たい肥化施設等の計画的な活用により、農業集落排水汚泥等の有機性資源の循環利用の促進を図りました。生態系の保全等に資する農業用水路等を子どもたちの遊び場、自然体験の場として活用する「あぜ道とせせらぎ」づくり推進事業を、関係府省が連携して行いました。

(3)景観を保全・創造する地域づくりに対する取組
 河川と一体になったまちなみ景観の保全・創造のために、美しい水辺空間を創出する「マイタウン・マイリバー整備事業」「ふるさとの川整備事業」等を各地域において推進しました。
 シンボルロード整備事業等による良好な公共施設の整備と、地区計画等による地域内の建築物の形態等の規制を実施し、美しい街並みが形成されるよう、積極的な支援を行いました。

(4)歴史的景観と調和する地域づくりに対する取組
 豊かな歴史的環境の確保・保全のため、史跡等の公有化及び整備・活用等を通じて地域づくり等を推進しました。
 市町村が行う伝統的建造物群保存対策調査及び重要伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物の保存修理、防災施設等の設置、建物や土地の公有化などの事業に対して補助を行いました。古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和41年法律第1号)に基づき指定された歴史的風土保存区域において、特に枢要な部分を構成している地域については、歴史的風土特別保存地区の指定や地方公共団体による土地の買入れ等を推進しました。また、文化財としての価値を有する土地改良施設の補修等を、その歴史的価値の保全に配慮しつつ行いました。

3 公害防止計画

 平成15年度末に計画期間が終了した仙台湾地域等5地域について、16年10月に環境大臣が各地域の関係県知事に対して新規計画の策定を指示しました。指示を受けた県知事は、環境大臣が示した基本方針に基づいて各地域の公害防止計画を作成しました。各計画は環境大臣によって17年3月に同意されました。
 公害の防止に関する施策の一層の推進を図るため、地方公共団体が公害防止計画に基づき実施する公害防止対策事業については、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和46年法律第70号)に基づいて、国の負担又は補助の割合のかさ上げ等、国が財政上の特別措置を講じています(http://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/kobo/)。


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