第2節 環境教育・環境学習の推進及び環境保全活動の促進


1 環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律について


 平成15年7月に環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律(平成15年法律第130号)が成立し、その後、16年9月の「環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本的な方針」の閣議決定、同年の「人材認定等事業に係る登録に関する省令」の公布を経て、同年10月に同法が完全施行されました。この法律には、国民各界各層の環境保全に関する理解を深めるための環境教育・環境学習の推進、環境保全活動に取り組む意欲を高めていくための体験機会や情報の提供等の措置が盛り込まれています。基本方針には、これらを推進するに当たっての基本的な考え方、具体的な施策が定められています。また、環境保全活動や環境教育の現場における指導者不足、教育現場と環境教育指導者のマッチング欠如等の課題に対応するための人材認定等事業の事業登録制度の運用を開始しました。

2 環境教育・環境学習の推進


(1)多様な場における環境教育・環境学習の推進
 行政、事業者、民間団体、個人が連携を図りつつ、幼児から高齢者までのそれぞれの年齢層に対して、学校、地域、職場、野外活動の場等多様な場において、環境教育・環境学習を総合的に推進することが重要であり、表7-2-1に例示するような各種施策を実施しました。


表7-2-1 環境教育・環境学習に関する施策の例


(2)国際的な取組の推進
 2005年(平成17年)から始まった「国連持続可能な開発のための教育の10年」に関して、関係省連絡会議において、今後の日本としての対応について検討しました。
 2004年(平成16年)12月には、日中韓三カ国における環境教育関係者によるワークショップ・シンポジウムを中国において開催しました。また、子どものための三カ国共通の環境教育教材の作成を推進しました。

(3)環境研修の推進
 ア 環境研修の実施
 環境調査研修所において、国及び地方公共団体等の職員等を対象に、行政、国際、分析及び職員の各種研修を実施しています。
 平成16年度においては、行政研修14コース(15回)、国際研修7コース(7回)、分析研修15コース(18回)及び職員研修6コース(9回)の合計42コース(49回)を実施しました。また、日中韓三カ国合同環境研修を実施するとともに、JICA水環境モニタリングコース研修を受け入れました。
 平成16年度の研修修了者は、1,780名(前年度1,740名)となりました。修了者の研修区分別数は、行政研修(職員研修含む)が1,339名、国際研修が184名、分析研修が257名でした。その他、JICA水環境モニタリングコース研修の修了者が10名、日中韓三カ国合同環境研修の修了者が20名でした。所属機関別の修了者の割合は、国が21.5%、地方公共団体が74.5%、特殊法人等が4.0%となっています。
 イ 各研修の内容
 行政研修では、NPO、企業、市民等とのパートナーシップを組む機会が増大していることを踏まえ、環境パートナーシップ研修を新設しました。国際研修では、地球温暖化対策研修に公共施設整備特設コースを新たに設けるとともに、JICA水環境モニタリングコース研修と合同の講義などを設けることにより、研修効果を高める工夫を行いました。分析研修では、最新分析技術研修を新設し、平成16年度はLC/MS分析をテーマに実施しました。また、第4回日中韓三カ国合同環境研修を環境調査研修所において実施し、三カ国の環境行政官が参加して、循環型社会の構築や地球温暖化対策をテーマに講義やディスカッションを行いました。

3 環境保全活動の促進


(1)民間団体等による環境のための活動の推進
 ア 市民、事業者、民間団体による環境保全活動の支援
 環境省では、事業者や市民が行う環境保全活動に対して助言・指導を行う人材の活用を図るため「環境カウンセラー登録制度」に基づき、平成16年度までに環境カウンセラー3,900名の登録を行いました。また、環境カウンセラーへの研修を実施したほか、16年度より各環境カウンセラーの活動実績等報告書をホームページ上で公開しました。また、地域環境保全基金等による地方公共団体の環境保全活動促進施策を支援するため、関連する情報の収集、提供等を行いました。
 平成16年4月に環境事業団より独立行政法人環境再生保全機構に移管された「地球環境基金」では、国内外の民間団体が国内や開発途上地域において行う環境保全活動に対する助成や「地球環境市民大学校」の開催など民間団体による環境保全活動を振興するための事業を行いました。このうち、16年度の助成については、503件の助成要望に対し、203件、総額約738百万円の助成決定が行われました(表7-2-2)。


表7-2-2 平成16年度の助成要望と採択の状況(実績)


 さらに、森林ボランティアをはじめとした広範な国民が行う森林づくり活動等を促進するための事業を実施しました。特に、里山林や都市近郊林については、「森林と人と共生林」の整備に向けた条件整備やNPO等を対象とする公募モデル事業を実施するとともに、市民や森林保全・利用団体等による里山林等での多様な自然・文化体験活動を推進しました。加えて、緑の募金を活用した活動を推進しました。
 イ 各主体のパートナーシップによる取組の促進
 環境省では、事業者、市民、民間団体等のあらゆる主体のパートナーシップによる取組の支援や交流の機会を提供する拠点として、国連大学との共同事業として「地球環境パートナーシッププラザ」を開設しています。「地球環境パートナーシッププラザ」では、平成16年度は、パートナーシップへの理解と認識を深めることを目的に、主に行政職員を対象としたワークショップやセミナーを開催するとともに、市民や民間団体等の声を政策に反映することを目的として意見交換会などを開催しました。また、地方での環境パートナーシップ形成促進拠点として「地方環境パートナーシップオフィス」を全国各ブロックに設置していく予定であり、平成16年度は中国、近畿、中部の3カ所に設置しました。
 また、NGO/NPOや企業からの優れた政策提言を環境政策に反映することを目的に環境政策提言を募集し、発表の場として「NGO/NPO・企業環境政策提言フォーラム」を開催するとともに、実現可能性のある提案を対象として追加調査を実施しました。

(2)ライフスタイルの変革に向けた取組
 内閣府では、地球環境と調和したライフスタイルの形成促進のため、省資源・省エネルギー国民運動の展開を図るとともに、各種の普及啓発活動等を行いました。また、マイバッグを持参する、過剰包装を避ける、詰め替え商品を選ぶ等の行動がごみの減量化につながるように、日常の買い物と環境問題は密接に関係していることから、内閣府、経済産業省、環境省では、10月に「買い物」における環境配慮行動の実践を呼びかける「環境にやさしい買い物キャンペーン」を、全国各地のコンビニエンスストア、スーパー、生活協同組合、百貨店、商店街等の協力を得ながら47都道府県と共同で実施しました。
 また、関係4省庁(警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省)による「エコドライブ普及連絡会」において、アイドリングストップをはじめとする環境負荷の軽減に配慮した自動車の使用(エコドライブ)の普及推進策を検討しました。


前ページ目次 次ページ