第9節 海洋汚染の防止に関する国際的枠組みの下での取組と新たな国際的枠組みづくり


 日本は、海防法の制定及び改正等の所要の国内法整備を行った上で、廃棄物等を船舶等から海洋投棄することを規制するロンドン条約、船舶等からの油、有害液体物質等、廃棄物及び大気汚染物質の排出や船舶の構造・設備等を規制する海洋汚染防止のための包括的な条約であるMARPOL73/78条約並びに大規模油流出事故が発生した場合への準備、対応及び国際協力を防災のみならず海洋環境の保全の観点からも強化することを目的としたOPRC条約等を締結し、海洋汚染防止対策の充実強化を図っています。
 平成8年に採択された海洋投棄の大幅な規制強化を目的とするロンドン条約96年議定書が1〜2年以内にも発効する見通しであることから、その締結に向けた具体的な準備を進める必要があります。このため、16年5月には海洋投入処分の許可制度を導入すること等を規定した海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律が改正されました。
 油汚染を防止するため、平成15年12月には、タンカーのダブルハル(二重船体)化を促進する趣旨のMARPOL73/78条約附属書I改正に対応し、国内法制化のための準備を進めました。さらに、船舶からの大気汚染を防止するためのMARPOL73/78条約附属書VIに対応し、16年4月には海洋汚染防止及び海上災害の防止に関する法律並びに揮発油等の品質の確保等に関する法律が改正されました。
 また、バラスト水問題の解決を目的としたバラスト水管理条約実施のための国際的な規制の作成が行われており、日本は、国際海事機関(IMO)における審議において、バラスト水を海域に排出する際に混入している生物数に関する条約の基準を遵守するための処理装置の承認のための試験方法について提案等を積極的に行うとともに、処理装置の認証に関する体制整備のための検討を進めました。さらに、バラスト水中に含まれる生物による海洋環境への影響に関する基礎調査を行いました。
 近年、シップリサイクル(船舶の解撤)に関して、海洋環境の汚染等が問題視されていますが、日本はこれらの問題解決のため、IMO等における議論に積極的に参加しており、平成16年には、IMOにおいて新たなルール作りに向けた議論が開始されました。
 海洋環境管理については、東アジア12か国の参加による東アジア海域の持続可能な開発のための連携強化を目的とした東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)に参画しており、2003年12月の閣僚級会合で採択された東アジア海域の持続可能な開発戦略(SDS-SEA)の実施に向けた取組を進めました。
 地域的な取組としては、平成6年に日本、韓国、中国及びロシアの4か国により、日本海及び黄海を対象海域とする北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)が採択されています。各国には、NOWPAPの活動を強力に進めるための地域活動センター(RAC)が設置され、日本では(財)環日本海環境協力センターが特殊モニタリング及び沿岸環境評価に関する地域活動センター(CEARAC)として指定されました。16年11月には、本計画の事務局機能を果たす地域調整ユニット(RCU)が設置され、その開所式典が日本(富山)と韓国(プサン)で行われました。本計画に従った具体的な活動としては、河川や大気を経由して日本海に流入する汚染負荷量の把握に関する調査を行っているほか、対象海域の状況を把握するために、人工衛星からのリモートセンシングデータを受信・処理する施設を富山県に設置し、調査を実施しています。さらに、16年11月から、本計画の対象海域内において、一国の対応能力を超え他国からの援助が必要な大規模な油流出事故が発生した場合に、NOWPAP参加国が協力して対応するための枠組みを定めた「NOWPAP地域油流出緊急時計画」が本格的に実施されています。
 UNEPが提唱した「陸域活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画」(GPA)に関しては、次回政府間レビュー会合の対応に向けた情報収集を行いました。
 また、北太平洋海洋科学機関(PICES)のための条約には、現在、日本、アメリカ、カナダ、中国、韓国及びロシアが加盟しており、海洋環境委員会等4つの科学委員会において海洋科学の推進が図られています。

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