第7節 地域の生活環境に係る問題への対策


1 騒音・振動対策

(1)騒音規制法及び振動規制法による規制の実施
 騒音・振動対策については、主に騒音規制法(昭和43年法律第98号)及び振動規制法(昭和51年法律第64号)に基づき、規制等を実施しています。騒音規制法及び振動規制法では、騒音・振動を防止することにより生活環境を保全すべき地域を都道府県知事(指定都市・中核市・特例市及び特別区にあってはその長)が指定し、この指定地域内にある、法で定める工場・事業場及び建設作業の騒音・振動を規制するとともに、自動車から発生する騒音の許容限度を環境大臣が定め、市町村長が都道府県の公安委員会に対して道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置を要請することができる要請限度制度が定められています。

(2)工場・事業場及び建設作業による騒音・振動対策
 騒音規制法及び振動規制法では、指定地域内にあって金属加工機械等の政令で定める特定施設を設置している工場・事業場(以下「特定工場等」という。)と、指定地域内においてくい打ち作業等の政令で定める特定建設作業を伴う建設工事が規制の対象となります。指定地域内の特定工場等の総数は平成15年度末現在で騒音規制法、振動規制法それぞれ207,950件、121,947件で、15年度には、苦情に基づく行政指導がそれぞれ924件、146件、また騒音規制法に基づく改善勧告が6件行われました。15年度に行われた特定建設作業に係る実施の届出件数は騒音規制法、振動規制法それぞれ68,333件、30,317件で、15年度には、苦情に基づく行政指導がそれぞれ1,352件、455件、また騒音規制法に基づく改善勧告が1件行われました。建設作業の騒音・振動については、適切な規制のあり方を検討するため、建設作業場から発生する騒音・振動について実態調査を行いました。また、公共事業を中心に騒音・振動対策を施した低騒音型・低振動型建設機械の使用を推進するなど、建設作業の低騒音・低振動化に取り組んでいます。

(3)自動車交通騒音・振動対策
 自動車交通騒音・振動問題を抜本的に解決するため、自動車単体の構造の改善による騒音の低減等の発生源対策、交通流対策、道路構造対策、沿道対策等の諸施策を総合的に推進しています(表2-7-1)。


表2-7-1 道路交通騒音対策の状況


 自動車単体から発生する騒音を減らすため加速走行騒音、定常走行騒音、近接排気騒音の3種類について規制を実施しています。また、平成16年11月に暴走族対策の推進を図るための道路交通法の一部を改正する法律が施行されたことを踏まえ、消音器不備、空ぶかし運転等に対する取締りを強化するなど、暴走族による爆音暴走の防止対策に取り組んでいます。
 しかし、幹線道路の沿道地域を中心に環境基準の達成率は依然として低く、一層の騒音低減が必要なため、平成15年度から自動車単体騒音対策検討・調査を開始しました。
 また、道路交通環境が厳しい地域を対象として、警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成する道路交通環境対策関係省庁連絡会議において対策を検討しています。この会議で取りまとめた「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針」(平成7年)に沿って、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の各種対策の総合的実施を図っています。
 なお、要請限度制度に基づき、自動車騒音について、平成15年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した195地点のうち、要請限度値を超過したのは32地点で、同様に、道路交通振動については、測定を実施した163地点のうち、要請限度値を超過したのは2地点でした。また、自動車騒音に関して、15年度に市町村長が都道府県公安委員会に対して要請を行った件数は1件、道路管理者に対して意見陳述を行った件数は23件でした(表2-7-2)。


表2-7-2 「騒音規制法」に基づく自動車騒音に係わる要請及び意見陳述の状況(平成10年度〜15年度)


(4)航空機騒音対策
 一定の基準以上の騒音を発生する航空機の運航を禁止する耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度については、逐次規制の強化が行われ、昭和53年に強化された騒音基準に適合しない航空機については、平成14年4月以降運航を禁止しています。また、緊急時等を除き、成田国際空港及び大阪国際空港については夜間の航空機の発着を禁止しています。
 発生源対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行っています。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際、大阪国際、福岡等14空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備、テレビ受信料の助成等を行っています(表2-7-3)。


表2-7-3 空港周辺対策事業一覧表(平成14年度〜16年度)


 また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業、代替地造成事業等を実施しています。
 コミューター空港、ヘリポート等については、環境基準が適用されない小規模なものが多く、平成2年にこれらの騒音問題の発生の未然防止を図るために必要な環境保全上の暫定指針を定めています。
 自衛隊及び在日米軍の使用する飛行場周辺の航空機騒音については、自衛隊機等の本来の機能・目的からみてエンジン音の軽減・低下を図ることは限界があることから、消音装置の設置・使用、飛行方法の規制等についての配慮が中心となっています。在日米軍における音源対策、運航対策については、日米合同委員会等の場を通じて協力を要請しており、厚木、横田、嘉手納及び普天間の各飛行場における航空機の騒音規制措置について合意しています。
 自衛隊等の使用する飛行場に係る周辺対策としては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)などに基づき、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転補償、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策を行っています(表2-7-4)。平成16年度末現在29飛行場周辺について同法に基づく区域指定がされており、住宅防音工事の助成等を行っています。また、住宅防音工事の一環として太陽光発電システムの設置助成(モニタリング事業)、住宅の外郭防音工事の促進など新たな施策の充実に努めているところです。


表2-7-4 防衛施設周辺騒音対策関係事業一覧表(平成14年度〜16年度)


(5)鉄道騒音・振動対策
 東海道・山陽・東北及び上越新幹線については、「国鉄改革後における新幹線鉄道騒音対策の推進について」(昭和62年3月閣議了解)等を受けて、鉄道事業者が各種の騒音・振動対策を実施しました。併せて環境基準達成のために、第1次から第3次75デジベル対策が順次行われており、すべての対策区間において75デジベル以下となっていることが確認されました。また、平成16年度には、騒音対策の深度化を図るために検討会を実施しました。
 騒音対策が必要な住宅や学校、病院等に対し防音工事の助成等を実施し、振動においても、振動対策が必要な住宅等の防振工事の助成及び移転補償等を実施し、申出のあった対象家屋についてはすべて対策を講じています。さらに、有効な騒音・振動防止対策の開発等を推進しています。
 新幹線以外のいわゆる在来鉄道については、新設又は高架化等のように環境が急変する場合の騒音問題を未然に防止する必要があるとの観点から、「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」(平成7年12月)(表2-7-5)を踏まえ、騒音対策の適切かつ円滑な実施に努めています。


表2-7-5 在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針


(6)近隣騒音対策(良好な音環境の保全)
 近年、営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等のいわゆる近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約1/4を占めています。近隣騒音対策は、各人のマナーやモラルに期待するところが大きいといえますが、各地方公共団体においても取組が進められ、平成15年度末現在、深夜営業騒音については51の都道府県、指定都市、中核市、特例市及び特別区で、拡声機騒音については55の都道府県、指定都市、中核市、特例市及び特別区で条例により規制しています。

(7)低周波音対策
 人の耳には聞き取りにくい低い周波数の音がガラス窓や戸、障子等を振動させたり、気分のイライラ、頭痛、めまいを引き起こすといった苦情は、平成15年度は全国で94件が地方公共団体において受け付けられました。このような低周波音問題の改善を図るため、低周波音の感じ方や不快感に関する調査を行うとともに、低周波音問題に対応する際の注意すべき項目について検討しました。

2 悪臭対策

(1)悪臭防止法による規制の実施
 悪臭対策については、悪臭防止法(昭和46年法律第91号)に基づき、工場・事業場から排出される悪臭原因物の規制等を実施しています。同法では、都道府県知事(指定都市、中核市、特例市及び特別区においてはその長)が規制地域の指定及び規制基準の設定を行うこととしており、平成15年度末現在、全国の57.2%に当たる1,804市区町村(645市、1,004町、132村、23特別区)で規制地域が指定されています。15年度は、同法に基づき、改善勧告が4件行われました。このほか、規制地域内の悪臭発生事業場に対して11,278件の行政指導が行われました。同法は、複合臭問題等への対策強化を目的として、人間の嗅覚に基づいた臭気指数規制を導入しており、16年度は、地方公共団体職員を対象とした講習会、嗅覚測定技術の研修等、地方公共団体における臭気指数規制の一層の導入促進に向けた取組を行いました。また、臭気指数等の測定を行う臭気測定業務従事者についての国家資格を認定する臭気判定士試験を実施しました。

(2)悪臭防止技術の普及推進
 近年特に臭気対策の必要性が高まっている中小規模の事業場が導入可能な脱臭技術の開発・普及を促進するため、比較的安価で省スペース、かつ維持管理の容易な脱臭技術を募集し、その情報を紹介した「ひと目で分かる『脱臭装置』選択ガイド2004」を作成しました。

(3)嗅覚測定法に関する海外動向調査
 国際的な嗅覚測定法の標準規格化の動きに対応するため、欧州と日本の測定法の比較検討調査や、諸外国における悪臭に関する法制度や臭気測定技術についての調査を行ったほか、諸外国の専門家との情報交換を目的とした「臭気の測定と対策に関する東アジアワークショップ」を開催しました。

(4)快適なにおい環境の創造
 身のまわりの不快なにおいを低減し、快適なにおい環境を創造しようとする地域の取組を支援するため、平成13年度に全国の優れたかおり風景として「かおり風景100選」を選定しました。16年度には、和歌山県高野町において「2004かおり風景全国フォーラムin高野」を開催し、地方公共団体や各種団体の参加のもと、各地域の取組についての意見や情報の交換が行われました。

3 ヒートアイランド対策

 内閣官房、警察庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成されるヒートアイランド対策関係府省連絡会議は、平成16年3月に、人工排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、ライフスタイルの改善の4つを対策の柱とするヒートアイランド対策大綱を取りまとめ、対策の推進を図りました。
 ヒートアイランド現象の緩和に向けた取組としては、同現象による人、生物、大気など環境への影響に関する調査、関東圏・近畿圏・中京圏における気温等の広域測定を実施しました。さらには、新宿御苑とその周辺地域をモデルとして、都市緑地を活用した地域の熱環境改善構想の検討にも着手しました。

4 光害(ひかりがい)対策等

 光害については、光害対策ガイドライン、地域照明環境計画策定マニュアル及び光害防止制度に係るガイドブック等を活用して、地方公共団体における良好な照明環境の実現を図る取組を支援しました。また、肉眼や双眼鏡等による星空観察を行う全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)事業(http://www.env.go.jp/kids/star.html)や、良好な大気環境・光環境の保全等を目的とした「星空の街・あおぞらの街」全国大会を実施しています。


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