第3節 地球温暖化対策


1 地球温暖化問題をめぐる動き


 日本では、平成14年3月に、京都議定書の6%削減約束の達成に向けて、対策・施策を取りまとめた地球温暖化対策推進大綱を決定しました。大綱は、第1約束期間終了までの間を3つのステップに区分し、節目節目で対策・施策の進ちょく状況・排出状況等を評価し、必要な追加的対策・施策を講じていくステップ・バイ・ステップのアプローチを採用しました。
 平成16年は大綱の評価・見直しの年に当たり、関係各審議会において、評価・見直しの作業が行われました。この結果、6%削減約束の達成のためには追加的対策・施策が必要との評価がなされ、さまざまな追加的対策・施策が提案されました。
 こうした関係各審議会の答申等を踏まえ、平成17年4月、京都議定書目標達成計画が閣議決定されました。

2 地球温暖化対策


 二酸化炭素は、人間活動のあらゆる局面から生じるものであり、このため、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠です。また、地球温暖化対策を推進するに当たっては、環境と経済の両立に資する仕組みを整備・構築していく必要があります。
 平成16年度に政府が国内で講じた主な施策は次のとおりです。

(1)エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制対策
 ア エネルギー需要面の対策について
 経団連環境自主行動計画に基づく、産業界における省エネルギー・二酸化炭素排出削減のための対策の進捗状況について、関係審議会においてその内容の聴取を行い、フォローアップを実施しました。
 また、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ法」という。)に基づくトップランナー基準の対象範囲として除外していた品目(ガスオーブン等)を対象に追加したほか、省エネ対策の抜本的強化を図るため省エネ法改正法案を第162回国会に提出しました。
 さらに、クリーンエネルギー自動車を含む低公害車の開発・普及の促進を図るため、民間事業者等に対する購入補助を実施したほか、自動車税のグリーン化、低公害車を取得した場合の自動車取得税の軽減措置等の支援等を実施しました。交通流対策としては、高度道路交通システム(ITS)の推進等を行いました。物流の効率化については、モーダルシフト関連施策の推進を含め、環境負荷が小さく効率的な物流体系の構築に取り組みました。その他、公共交通機関の利用促進のため、鉄道新線・新交通システムの整備等を図りました。
 イ エネルギー供給面の対策について
 電気事業者に販売電力量に応じて一定割合の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付ける、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成14年法律第62号。以下「RPS法」という。)について着実に運用を行いました。
 また、ごみ焼却余熱の有効利用を図るため、発電等を行うごみ焼却施設整備事業に対し国庫補助を行いました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の排出抑制対策
 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進等による最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。
 また、下水排熱等の有効利用を図るため、新世代下水道支援事業制度リサイクル推進事業に対し引き続き国庫補助等を行いました。

(3)代替フロン等3ガスの排出抑制対策の推進
 2003年(平成15年)の代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出量はおよそ2,580万トン*(以下、*は二酸化炭素換算)であり、1995年(代替フロン等3ガスの基準年)排出量からみてほぼ半減しました。これは、HCFC製造時の副生成物であるHFC23の回収や電気絶縁ガスとして用いられるSF6の回収等が業界の自主的な行動計画により進展したことや、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)や特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収破壊法」という。)などの法律に基づくHFCの回収による効果が現れたことなどを背景としています。
 しかし、今後、モントリオール議定書に基づく規制の進展に伴い、冷凍空調機器や断熱材などの分野で、CFCやHCFCからの代替に伴うHFCの排出量増加が見込まれることや、マグネシウム製造量の増加に伴いSF6の使用の増加が見込まれることなどから、関係審議会において、対策を一層強化する方針について合意されました。

(4)革新的技術開発
 温室効果ガスの排出抑制のためのより高度な新エネルギー技術や省エネルギー技術、水素製造技術、二酸化炭素の固定化・有効利用等の革新的技術開発について、引き続き積極的に推進しました。

(5)国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動の推進
 ア 国及び地方公共団体による取組
 平成14年7月、地球温暖化対策推進法に基づき、「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」を閣議決定しました。この計画は政府自らが率先して、温室効果ガスの排出抑制等に取り組むことで、地球温暖化対策への取組姿勢をアピールするものであり、同計画において、政府は自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスを18年度までに13年度比で7%削減することを目標としています。
 平成15年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は、197.8万トン*(基準年度値の0.1%増)となりました(表1-3-1)。


表1-3-1 政府の実行計画に掲げられている温室効果ガスの総排出量以外の数量を伴う目標に関する平成13年度(基準年度)〜15年度における実績数値


 地球温暖化対策推進法においては、地域レベルでの取組を推進するため、1)地方公共団体の事務・事業に係る実行計画の策定義務付け、2)区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策の策定に努めること、3)地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての都道府県地球温暖化防止活動推進センター(都道府県センター)を指定できること、4)地方公共団体、都道府県センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等からなる地球温暖化対策地域協議会を組織できることによる、パートナーシップによる地域ぐるみの取組の推進、等を図ることとしています。
 平成16年度においては、全都道府県に加え、市町村においても実行計画の策定が進んだほか、14年の法改正を踏まえ、特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)が都道府県センターとして指定される等、地域レベルの取組が着実に進んでいます。
 イ 地球温暖化防止に向けての国民運動の展開
 国民一人ひとりのライフスタイルを見直していく取組の一環として、NGOと連携し、夏至の日の直前の日曜日の夜8時〜10時に全国一斉消灯を呼びかけるCO2削減/ライトダウンキャンペーン「ブラックイルミネーション2004」を開催し、全国6,088か所の施設、約640万人が参加しました。具体的な温暖化対策製品を紹介する冊子「ふたりで始める『環のくらし』」を作成し、市販の雑誌の別冊として配布しました。
 また、毎年12月の地球温暖化防止月間関連行事である地球温暖化防止活動環境大臣表彰等や平成17年2月16日の京都議定書発効記念行事といった広報活動を行いました。さらに、全国地球温暖化防止活動推進センター(全国センター)において、平成16年7月に「ストップおんだん館」を開設し、国民の地球温暖化防止に向けた取組を支援しました。

(6)温室効果ガス吸収源対策の推進
 温室効果ガス吸収源対策の推進を図るため、二酸化炭素吸収源である森林の適切な整備・保全等を推進しました。また、大綱で目標とされた森林による吸収量3.9%の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進、国民参加の森林づくり等の総合的な取組を内容とする「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を展開しました。

(7)国内排出量取引
 国内排出量取引制度については、他の手法との比較やその効果、産業活動や国民経済に与える影響等の幅広い論点について、総合的に検討していく課題です。
 平成16年度においては、15年度から引き続き、今後必要とされた場合に備えた排出量の算定・検証、削減目標の設定等に係る技術的な知見を集積するための試行事業を行いました。

(8)税・課徴金等の経済的手法
 税、課徴金等の経済的手法については、第7章第3節参照。

(9)排出量・吸収量算定手法の改善等
 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関する条約事務局による平成15年10月の訪問審査の結果を踏まえ、インベントリの整備体制や算定方法の改善について検討しました。

(10)観測・調査研究の推進
 地球温暖化に係る不確実性を低減させ、科学的知見を踏まえた一層適切な対策を講じるため、引き続き、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究、人工衛星等を用いた温室効果ガスの観測技術の開発を実施しました。また、地球環境研究総合推進費等を活用し、これらの調査研究等の推進を図りました。


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