第2章
 くらしを深める「環境の心」

 くらしの実践者である一人ひとりが消費者、投資家、生活者として、「環境のわざ」を作り出す事業者を支え、導き、この両者が互いに支え合って初めて「環境のわざ」を活かすことができます。本章では、こうした行動をもたらす意識である「環境の心」に着目し、社会の中での「環境の心」を考えるとともに、地域での実践例等を紹介していきます。

 第1節 社会で育む「環境の心」

 環境保全の取組を支える環境情報の役割と「環境の心」が社会の中で育まれていくことを見ていきます。

1 環境保全の意識と情報

 環境問題に関する国際共同調査によると、日本では、環境問題に能動的に取り組まない要因として、「時間、資金の不足」を挙げる者は他国に比べると少ない一方、「具体的な情報の不足」とともに「個人での取組の限界」を挙げる者が他国より多くなっています(図2-1-1)。

 環境に関する正確な情報を各主体が必要な時に必要な形で入手できるようにすることは、環境保全に関する責務を認識し、行動をする上で重要です。環境情報に関する関心度を見てみると、「日常生活が環境に及ぼす影響」(82.0%)、「環境問題が生活に及ぼす影響」(82.0%)をはじめとして、環境情報への関心は高いといえます。しかし、その満足度を見ると、「満足している」と回答した人は、全項目についてわずかです(図2-1-2)。

 環境情報への関心度と満足度の乖離を考えると、今後、行政、事業者、民間団体等がより一層わかりやすい情報提供の充実に努める必要があります。

環境意識に関する国際比較
環境情報への関心の高さ、満足度について

2 日本に伝わる「環境の心」

 個別の環境情報が得られ、多少の努力で環境保全に効果があるとわかっても、「自分一人ぐらい」「なぜ自分だけが」と考え、当面の日常生活の快適さを優先することがあります。いわゆる「共有地の悲劇」(コラム参照)のような社会的ジレンマといわれる場合です。これを防ぐため、個人の努力がその人にとっても利益となる誘因を確保することが求められますが、同時に、一人ひとりが社会全体を尊重し、環境を考える心を持つことも重要です。
 「環境の心」とは、環境を大切にし、敬う心です。社会のさまざまな人々が互いに支え合い、連携し合うことによって育まれます。「みんなで」「お互いさま」という仲間意識と相互依存関係の理解が、社会的ジレンマの中で生じた「自分一人ぐらい」「なぜ自分だけが」という感情を克服し、全体にとって長期的に最も良い行動を促します。関係者が問題意識を共有し、環境に良いことに向けて協力し合うように、人と人とをつないでいくことが重要です。
 この考え方は、必ずしも新しい概念ではありません。日本の歴史をふりかえってみれば、村人が山に入ることに対して、自然への畏敬の念も踏まえ、山林資源の持続可能性を維持するために共同体の風習が作られ、長年にわたって守られ続けた例が多くあります。
 こうした、日本古来の「環境の心」を振り返り、地球という共有地の持続可能性について語り合う国際的な議論に参加し、21世紀にふさわしい「環境の心」を育んでいくことが、これからの日本の役割と考えられます。

コラム1
 「共有地の悲劇」と環境問題

 「共有地の悲劇」は、1968年にハーディンが発表した行動モデルで、環境問題との関連などで議論されています。共有地である牧草地で人々が羊を飼っている場合、牧草地の容量内において羊を飼育している限り、問題は生じません。しかし、羊を多く飼育して多くの収入を得ようとその頭数を増やしていくと、やがて牧草地の容量を超え、牧草は枯渇します。
 個人にとっては、増やした羊分だけ利益が多くなりますが、その一方、牧草の減少により牧草地全体で見れば損失が多くなります。しかし、後者については全体の中に分散するため、個人の経済的利潤のみを追求した場合には、羊を増やすことの方が合理的な判断となり、このようなことが起こります。
 これは環境問題にも当てはまります。例えばエアコンの効いた部屋で快適に過ごしたり、自動車に乗ることは、個人の利益の達成ということでは合理的な判断といえます。しかし、多くの人が同じように行動すれば、結局は地球温暖化が進み、多くの人がその被害を受けます。


コラム2
 「もったいない」と日本の心

 「もったいない」という日本語に、私たちが昔から受け継いできた「環境の心」が表れています。広辞苑によれば、「もったい」とは、「物の本体」で、「もったいない」は「物の本体を失する」こととされています。「もったいない」の意味としては「そのものの値打ちが生かされず無駄になるのが惜しい」が挙げられていますが、このほかに、「神仏、貴人などに対して不都合である、不届きである」という意味も記されています。
 日本人は、このような「環境の心」を持ちながら、壮麗さよりも簡素で繊細な美を極め、物量よりも風雅な趣を楽しむ生活を貴んできました。「もったいない」は、自然を敬う日々の中で暮らしてきた、いにしえの日本人の子孫として、美しい環境を後の世代に伝える上から、大切にしたい言葉です。


 第2節 「環境のわざ」を支える消費と投資

 私たちは、「環境の心」を通して、消費者や投資家として、事業者等と関わる中で、環境保全を進めることができます。

1 グリーン購入

 環境に配慮された製品やサービスを選択し、購入することを「グリーン購入」と、グリーン購入に取り組んでいる人を「グリーンコンシューマー」と呼びます。グリーン購入は、市場を通しての消費者からのアプローチであり、事業者に対し環境負荷低減への取組を働き掛けていこうとする行動であると同時に、環境対策等に積極的な事業者に対する支援ともなっています。

(1)グリーン購入の状況
 国等の各機関のグリーン購入は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(平成12年法律第100号)で義務付けられ、取組が進められています。また、多くの都道府県・政令指定都市や大規模な事業者等でも組織を挙げてグリーン購入に取り組んでいます(図2-2-1)。

グリーン購入の取組・方針策定・実績把握等の状況


 一方で、個人のグリーン購入に対する意識について調査すると、物を買う時の環境配慮について肯定する人の割合は高くなっています(図2-2-2)。個人消費者が購入した環境配慮型製品としては、ボールペンなどの再生材料を使用したプラスチック製品、トイレットペーパーなどの衛生用紙、ノートなどの紙製の事務用品が上位を占めています(図2-2-3)。


物を買うときの環境への配慮意識(全体)
商品類型ごとのエコマーク商品購入の上位10類型

 しかし、意識面とは裏腹に、一人ひとりのグリーン購入の実施状況は、ごみの分別やリサイクル、省エネ関係の環境配慮行動に比べて低くなっています(図2-2-4)。「循環型社会の形成に関する世論調査」(内閣府、平成13年度)によれば、グリーン購入を行う上で「支障を感じることはない」(36.4%)と答えた者がいる一方で、支障を感じる場面としては、「適切な情報が足りないため、判断できない場合」(25.9%)、「一般の製品より割高な場合」(16.5%)となっており、情報上の支障と経済上の支障が阻害要因となっています。

環境保全行動の実施状況


(2)グリーン購入促進のために
 グリーン購入を促進するためには、情報上の支障と経済上の支障を解決し、一人ひとりが行動するための条件を整えなければなりません。
 環境に配慮しているかどうかを判断するためには、製品の使用段階の環境負荷だけでなく、資源の採取から使用後の廃棄に至るまでの環境負荷も視野に入れ、総合的に判断する必要があります。そのためには、行政や事業者等から消費者に対して、事業活動や製品・サービス等に関する環境情報の適切な提供が必要です。「環境ラベル」は、このような環境情報の提供手段として、重要な役割を果たしています(表2-2-1)。

主な環境ラベル


 また、環境に配慮した製品やサービスを普及促進するための手法としては、補助金のほか税制上の優遇(自動車税のグリーン化など)が挙げられます。

2 環境に配慮した投資

 日本の個人金融資産は平成15年末で約1,410兆円余りであり、これが銀行や保険会社、証券会社等を通じて投資資金となっていますが、近年の環境保全に対する個人意識の高まりを受け、環境面に配慮した金融商品が注目されています。

(1)社会的責任投資(SRI)とエコファンド
 収益面といった財務的観点のみならず、環境問題や社会問題に前向きに取り組む事業者へ投資することを社会的責任投資と呼びます。社会的責任投資のうち特に環境面に着目し、環境配慮に優れていたり、優れた環境パフォーマンスを上げている事業者に積極的に投資しようとする投資信託が、エコファンドと呼ばれます。エコファンドは多くの国で、事業者の環境に配慮した事業活動の促進材料となっています。投資対象となる企業を選定する観点から、企業の環境配慮の取組状況を勘案するためには、事業者の環境情報の開示が特に重要で、環境情報を開示するツールとして環境報告書や環境会計が活用されています。
 社会的責任投資という考え方は欧米では早くから登場しており、1990年代に入り環境面での評価もこれに加わるようになりました。米国では、社会的責任投資全体での2003年における資産残高は約237兆円(Social Investment Forum,2003 Trends Reportをもとに、仮換算レート:1ドル110円で試算したもの。)となっています。一方日本では、1999年に社会的責任投資の一つであるエコファンドが初めて発売されるなど、社会的責任投資の歴史は欧米に比べると浅く、エコファンドの資産残高は一時2,000億円を超える規模にまで拡大しましたが、その後は、株式市場の低迷等も重なり、現在1,000億円を下回る金額で推移しています。

(2) 個人投資家に対する普及に向けて
 「社会的責任投資に関する日米英3か国比較調査報告書」(環境省、平成15年度)では、日本と米国、英国を含めた3か国の個人投資家に対して社会的責任投資への認知度や意識について以下の比較研究を行っています。
 企業の社会的責任について「関心がある層」については米国、英国に比べて日本が高く、また証券投資をする際に企業の社会的責任を考慮に入れて投資判断を行うべきと考える人は、日本は米国、英国と同じ割合を占めています(図2-2-5図2-2-6)。その一方で、「既に購入している層」は日本では全体のわずか0.4%にとどまっており、個人投資家の低い購買率が課題といわれているほかの2国ですら、日本の5~10倍となっています。このことから、社会的責任投資を活発にしていくこととする場合は、「関心がある層」を、いかにして実際の購買行動に結びつけるかが課題といえます。

企業の社会的責任についての関心
証券投資の際の企業の社会的責任の考慮

 日本では、社会的責任投資に「関心がある層」の3分の2以上が、また「関心がない層」の半数以上が、エコファンドなどについての情報不足を訴えています(図2-2-7)。今後、情報不足を解消して実際の購買行動へと結びつけるためには、社会的責任投資の内容や考え方の広報、運用報告書の工夫、社会的責任投資に携わる販売員の教育や研修等が有効と考えられます。 エコファンド等の改善すべき点(関心がある層とない層)

 第3節 くらしの中で環境保全

 消費者や投資家としての行動以外にも、日々のくらしの実践者である生活者として、環境負荷を低減し、豊かな環境を保全・創造する取組があります。

1 日常生活からの環境負荷と物質収支

 今日の生活は、資源を採取する段階から製造、使用、廃棄の各段階において、また衣食住を通した日常生活のあらゆる場面で、環境へ負荷を与えています(図2-3-1)。その結果、約588百万トンの廃棄物等が発生し、約404百万トンがエネルギーとして消費されています(わが国における物質フロ-)。

日常生活における環境負荷

わが国における物質フロー


2 環境に配慮した行動の提案

(1)省エネによる環境負荷の低減
 家電製品等の新規購入や買換えの際に、序章で見た「省エネラベリング制度」の対象商品を購入したり、第1章で見た「次世代省エネルギー基準」に適合した住宅に住むことによる省エネ化が、地球環境を守ることに貢献します。これ以外に、こまめな消灯や、主電源を切って待機電力を抑える等、使い方を工夫することによっても省エネは可能です。
 (財)省エネルギーセンターのアンケート調査によると、省エネ行動の容易さとエネルギーの年間節約額との関係は、図2-3-3のとおりです。例えば、「エアコンをつけっぱなしにしない」等機器の使い方に気をつける行動は、比較的負担感が少なく、大きな節約効果をあげることができます。また、洗濯や冷蔵庫の開閉等をまとめて行うことで、環境負荷低減効果をあげるものもあります。

省エネにおける実施のしやすさと年間節約額の散布図


(2)食からの環境負荷の低減
 最近、季節や地域に関わりなく、さまざまな食品を手に入れることができるようになりました。輸入も含めた食品供給地の拡大が原因の一つですが、加温したビニールハウス等の施設栽培率の増加も一因です。加温栽培には多くのエネルギーを要し、二酸化炭素の排出量を増やしています(図2-3-4)。旬の時期に旬のものを食べることは、自然の移り変わりを意識し失われつつある季節感を回復するとともに、環境にも貢献するくらし方です。
きゅうりへの投入エネルギー量(1990年)

(3)衣服での環境負荷の低減
 今日、各家庭での冷暖房兼用エアコンの普及率は100%を超え、数台を所持している家庭も少なくありません。
 エアコン一台当たり、夏場に設定温度を27℃から1℃上げるだけで年間5.9㎏の、また冬場に設定温度を21℃から1℃下げるだけで年間25.7kgの二酸化炭素排出量削減が可能となります。まずは衣服によって温度調節することが、二酸化炭素の排出量減少につながります。職場によっては、夏季の適正冷房の実施とそれを補完するための軽装が励行されています。「夏の軽装は相手にとって失礼ではなく、省エネで環境にやさしく、四季のある日本の良識である」という発想の転換が求められます。
 近年では、夏はより涼しく、冬はより暖かな衣服が、技術開発の結果として製品化されています。夏の室温28℃でも暑さを感じにくいよう工夫したシャツやスーツ等が、夏季の適正冷房実施に一役買うことが期待されます。冬用には、軽くて暖かい繊維が開発されています。

(4)屋上緑化と壁面緑化
 都市部の開発・都市化等により、自然環境が変えられ自然との関わりが減少しています。自然の減少は、潤いやゆとりの喪失だけでなく、大気汚染、生物多様性の減少、防災機能の低下や都市のヒートアイランド現象なども招きます。こうした問題を解決するためには、都市公園や街路樹のみならず、庭園のほか、屋上や壁面など建築物における緑化が必要です。
 屋上・壁面緑化は、夏季の室温上昇を抑制し、冷房の省エネに貢献します。また、騒音の低減や建築物の保護、空気の浄化や都市気象の改善にも役立ちます。
2章3節(4)屋上・壁面緑化の様子

(5)生活用水、排水対策
 日本の生活用水の使用量は最近横ばいの傾向にあるものの(図2-3-5)、排水に含まれるさまざまな物質が、環境に負荷を与えています。特に、生活排水中の環境負荷を示す生物化学的酸素要求量(BOD)を個別に見てみると、台所から発生する負荷量が4割以上と大きな割合を占めています(図2-3-6)。

生活用水使用量の推移

生活排水と生物化学的酸素要求量(BOD)の割合


 家庭での発生源対策としては、汚濁物質の除去という面から、生活排水処理施設の整備による削減が考えられます。しかし、施設整備には多くの費用と時間を要することから、まず、発生源を減らす工夫も大切です。
 家庭から排出される汚濁をBODで示すと、表2-3-1のとおりです。飲み残しを少なくする等、家庭からの負荷をなるべく減らす工夫が、川や海や湖沼の水質保全につながります。例えば、みそ汁など食べ残しのない分量だけ調理することや、食用油の適正な処理などの工夫が挙げられます。

どんなものに、どのくらいBODがあるか


コラム1
 「環のくらし」を目指して

 政府は、持続可能な簡素で質を重視する循環型社会としての「環の国」を目指して、「環の国くらし会議」を開催しました。具体的提案を掲載した「私の環のくらし ハンドブック」や、低公害車、省エネ家電、住宅等地球温暖化防止への取組を支援する具体的な商品やその使い方等を紹介した「環のくらし応援BOOK」、「同 Part・2」を作成し、「環のくらし」の実践を呼びかけるメッセージを発信しました。
(「環のくらし」のホームページ http://www.wanokurashi.ne.jp


コラム2
 鳥や虫の来る庭

 自然と関わる一つの手段として、生物の生息・生育空間であるビオトープがあります。ビオトープは主に学校や公園などで作られてきましたが、最近では、家庭の庭やベランダ、屋上などに、野生の鳥や虫などが来られる小さな草地や水辺、木立などを作る動きがあります。
(「おしえてビオトープ」のホームページ http://www.env.go.jp/nature/biodic/eap61/


2章3節(4)コラム 家庭でのビオトープ


コラム3
 水洗トイレの音消し水

 水洗トイレは、節水型の機種でさえ一回に8lもの水を必要とします。水道水を供給するためには、水源から取水して浄化し、各家庭に配水するまでに多くのエネルギーが消費され、その結果、二酸化炭素が排出されます。
 音を消すためにこの水を流さないように、擬似的な流水音を出す装置が設置され、節水の効果が出ています。
 しかし、海外では、そもそも周囲を気にして音消し水を流す習慣はないといわれています。


 第4節 環境保全のまちづくり

 環境の視点に立って、地域の特色を生かした地域づくりやまちづくりが注目されています。地域の再生活動に参画したり、地域のボランティア活動へ参加する住民が増えてきています。本節では、本章で述べられた「環境の心」が活かされ、連携した地域での取組を見ていきます。

1 各地域での取組

 自然の保全、ごみ問題、地球環境問題など、身近な地域からの取組が各地で行われています。

(1)風力発電を使ったまちづくり(高知県梼原町)
 梼原町は、高知県中西部の四万十川の源流域である四国カルスト高原に位置する山間の町です。平成8年度からの風況調査により、風力発電所の建設に最良の条件にあることが実証され、風力発電を中心とした環境保全の取組(「風をおこし、町をおこす」)が進められています。 
 建設に当たっては、住民との意見交換会を実施し、風力発電によるCO2削減に貢献するだけでなく、売電収益を環境基金とし、住宅用太陽光発電の設置や間伐による健全な森林づくりへの活用など、さらに環境を良くしていこうという取組が行われています。
 また、住民の環境に対する意識が高く、「環境整備デイ」などを立ち上げ、次代を担う人材を育成するとともに、千枚田オーナー制度などコミュニティに根ざした環境保全の取組も行われています。
(梼原町のホームページ http://www.town.yusuhara.kochi.jp/
2章4節 梼原町

(2)コウノトリと共生するまちづくり(兵庫県豊岡市)
 豊岡市は、兵庫県の北東部の豊岡盆地に位置します。日本産の野生のコウノトリの最後の生息地だった豊岡市では、都市像として「コウノトリ悠然と舞い 笑顔あふれる ふるさと・豊岡」を掲げ、まちづくりを行っています。
 具体的には、「コウノトリと共生するまちづくり」を目指し、「15の元気メニュー」を市民・事業者・行政等の協働により展開し、農家による「田んぼビオトープ」づくりや「無農薬によるアイガモ農法」、市民による「コウノトリ感謝祭」などを、全市一体となって取り組んでいます。また、平成12年4月には、「豊岡市コウノトリ基金」が設立され、田んぼをコウノトリの生息地にするためなどに活用されています。14年には、こうした取組が功を奏してか、大陸から1羽のコウノトリが飛来し、住みつきました。
(豊岡市のホームページ http://www.city.toyooka.hyogo.jp/
2章4節 豊岡市

(3)ごみ減量を通じたまちづくり(東京都日野市)
 日野市は、東京都のほぼ中央に位置し、市の北部には多摩川が、中央部には浅川が流れ、南部はゆるやかな丘陵地となっています。
 日野市では、平成6年の直接請求による環境基本条例の提案、平成10年の公募市民などによる環境基本計画の策定をはじめとして、市民と行政がパートナーシップを組んで身近な環境問題に取り組んでいます。平成12年には、市民と共に「ゴミゼロのまちづくり」を目指して、約3万人の市民に「ごみ改革」の必要性を説明し、分別ごみの戸別収集、ダストボックスの全面撤去を行いました。これらの活動の結果、「ごみ改革」の1年後にはごみの約50%減量を達成し、さらに最終処分場の延命化にも貢献するなど効果を上げています。
(日野市のホームページ http://www.city.hino.tokyo.jp/info/
2章4節 日野市

(4)川の流域で連携した取組(宮川流域ルネッサンス協議会(三重県))
 三重県のほぼ中央を東西に流れる宮川(延長:90.7km)の流域14市町村(伊勢市、多気町、明和町、大台町、勢和村、宮川村、玉城町、二見町、小俣町、大宮町、紀勢町、御薗村、大内山村、度会町)、県、国関係機関が、宮川流域(流域面積:920km2)の自然・歴史・文化の保全や再生を推進するため、平成12年度に「宮川流域ルネッサンス協議会」を設立し、広域での連携した活動を行っています。
 活動内容としては、住民自らが「流域案内人」として地域の魅力を来訪者に伝え、交流を通じて地域の魅力を再発見、探求、創造し、環境意識を高めています。来訪者も流域の豊かな環境を体感することができます。また、水質等水環境調査や住民啓発パンフレットの作成、流域情報誌の発行、子どもへの啓発事業の実施を住民と協働で行う等、流域レベルでのネットワークづくりも展開されています。
 こうした事業の推進により、この地域での行事(宮川流域エコミュージアム)への平成14年度の来訪者数は、約2,000人となっています。
(宮川流域ルネッサンス協議会のホームページ http://www.miyarune.jp/
2章4節 宮川

コラム
 Tokyo Half Project 東京からのCO2排出の半減を求めて-

 Tokyo Half Project は、現在の経済活動レベルを維持しつつ、東京都で発生する温室効果ガス(主に二酸化炭素)を半減することを目標に、いかなる技術群の導入が望ましいかを統合的に評価する研究です。東京大学が中心となって、海外の大学を含めた共同の学際的研究プログラムとして実施されています。 
 この研究は、学際的な温室効果ガス削減対策の国際共同研究として、個別の評価モデルを連結して全体モデルを構築するものです。都市の温室効果ガスの削減には複合的な対策を行っていく必要があり、こうした学際的研究が注目されています。(Tokyo Half Projectのホームページ http://www.thp.t.u-tokyo.ac.jp/


2 環境と経済の好循環のまちづくりに向けて

 環境を良くすることが経済を発展させ、経済の活性化が環境を改善するという関係(環境と経済の好循環)を地域発で築いていくため、環境省では平成16年度からモデル事業を行うことになりました。これは、全国の市町村から二酸化炭素排出の削減等の環境保全と経済活性化を実現するアイデアを募集し、優れたものを選んでモデルとするもので、「環境と経済の好循環のまちモデル事業(「平成のまほろば」まちづくり事業)」と呼ばれます。
 具体的には、地域発の創意工夫を生かし住民や事業者などの幅広い参加を得た事業に対し、政府の一般会計から環境関連の勉強会などのソフト事業を委託し、石油特別会計からは代替エネルギーや省エネルギー関係の施設設置等に使える交付金を交付します。このようなモデルが成功し、環境と経済の好循環に向けたまちづくりが広がることが期待されます。
(地域環境行政支援情報システム「知恵の環」のホームページ http://www.chie-no-wa.com/