環境省総合環境政策社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会

社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会
企業の社会的責任(持続可能な環境と経済)をどう確保していくのか(第5回)
議事録


  1. 日時:平成17年2月4日(木) 10:00~12:00
     
  2. 場所:環境省 中央合同庁舎5号館 22階 環境省第一会議室
     
  3. 出席者
    メンバー(五十音順): 11名
    秋山  裕之 
    足達  英一郎 
    荒井  喜章 
    大久保  和孝 
    黒田  かをり 
    五所  亜紀子 
    齊藤  弘憲 
    酒井  香世子 
    龍井  葉二 
    長沢  恵美子 
    山田  真理子 
    スーパーバイザー(五十音順、敬称略): 2名
    大木  壮一
    後藤  敏彦
    オブザーバー(五十音順): 4名
    厚生労働省2名
    経済産業省2名
    事務局: 6名
    鎌形  浩
    川野  光一
    瀧口  直樹
    石川  宣明
    藤原  敬明
    島川  崇
     
  4. 議題
    (1)企業の社会的責任(持続可能な環境と経済)をどう確保していくのか
     
  5. 配布資料
    資料5-1 議事次第
    資料5-2 メンバー名簿
    資料5-3 座席表
    資料5-4 社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会報告書(ドラフト)
          ・・・メンバー・関係者限り
    資料5-5 論点ペーパー
     
  6. 議事内容(発言者ごとに発言内容を記述):

事務局(川野補佐)
 新日本監査法人の大久保様がまだお見えになっていないようですが、定刻になりましたので「社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会」の第5回研究会を開催させていただきます。本日第5回目で今回が最終回になりますので、是非みなさまのご闊達なご意見をたまわりたいと思います。それではまず課長の鎌形からご挨拶をさせていただきたいと思います。
 
事務局(鎌形課長)
 環境省環境経済課課長の鎌形でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日私ども環境省の方から桜井審議官に出席いただいておりますので、ご紹介させていただきます。
 
 本日でございますが、今回が最終回ということでございます。実は私、第1回目に出席させていただきましたが、2回目、3回目、4回目と他の業務もございまして残念ながら欠席させていただきました。大学の講義で言いますと単位を取れる出席日数に達していないことになるのですが、その間には各委員のご発表を中心に活発な議論が行われたと各会議の後にその都度報告を受けて参りました。今回は最終回ということで、大きくまとめていただくような方向でご議論をお願いいたしたいと思います。基本的にはこの研究会はいろいろな立場の方々の考え方、ご意見というものを出し合っていこうということで始めさせていただきました。そういう意味で研究会のまとめとしては、何か一つの政策の方向を決めるというのではなく、様々なこれまでの各委員のご発表を中心にどんな議論がなされていたのかということを大きくまとめてということを報告書の考え方とさせていただきたいと思います。
 ただその中で様々な課題が見えてきて、それらの課題を解決していくには、こんな方向があるのではないかという議論もあったかと思います。そういうものを最後にまとめという形でどうかということで事務局としては考えております。
 そういう意味では、本日用意させていただきました資料はこれまでの皆様方のご発表を中心にまとめていることが第一でございます。あと最後の方で見えてきた課題を抽出してそれをどうやって解決したらいいかという提案ができればと考えております。実は資料ではその部分は空欄とさせていただいております。今日のご議論の中で出されたご意見をまとめていくという形で進めていただければと考えております。
 簡単ですが、私の挨拶とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局(川野補佐)
 それでは本日のテーマでございます「企業の社会的責任(持続可能な環境と経済)をどう確保していくのか」について事務局の足達様から進行をお願いいたします。

足達メンバー
 5回目になりますが、本日の司会進行をさせていただきます。議事次第の方には企業の社会的責任をどう確保していくのかというテーマがひとつ上がっていますけれど、今日の議論は実質的に二つに分けて参りたいと思います。前半では先日ドラフト案を事前配布させていただきました。今日お手元にお配りしているものについて言えば46ページのところの内容がなくなって、今日の議論を反映することにしますと変更されております。まずはドラフト案全体のトーン、内容、報告書の性格等含めて皆さんからのご質問やご意見をたまわろうというのが最初のパートです。そして二つ目にその議論がある程度つくせたとすれば、今46ページのところでお話がありました今後の持続可能な環境経済社会実現に向けての課題なり解決の方向性というところで議論をお願いできればと思います。前回お送りしたドラフト案の中にまだ熟していない事務局の記述が皆さまのお目には止まっているとは思いますので、そこからの比較あるいはそれをたたき台にした意見でも結構でございます。そうした大きな前半後半二つに分けて進めていきたいと思っております

 さてそれではまず、ドラフト案の全体のトーンあるいはご意見ご質問等について議論させていただきたいと思っています。実は今日は坂口さんがご欠席でございまして、メールでご意見をいただいておりますので、それをご披露させていただきます。
 「全体的に議論されてきた内容をこえた記述が多い。研究会の発言は節の最後に羅列してあるのみで、議論から抽出された報告書というイメージが薄い。議論されたあるいは報告された内容以外のものがあって、本委員会のメンバーとして名を連ねているの者として違和感がある。」これが第一点です。特に41ページ目の日本型環境経済社会システムのアジアへの進展という点について、「日本がアジアに先進的な環境経済システムを伝えていくように記述をされているが、こうした議論はしていないと思う。」というご指摘をいただいております。まず坂口さんのご意見をご披露したうえで、皆さんからも忌憚のないところでうかがいたいと思います。

長沢メンバー
 日本経団連の長沢です。私も全く坂口さんと同じ印象を持っていまして、このような議論をしたか、資料が出ていたかを以前の研究会の資料に戻って確認してみましたが、やはりないものが多い。先ほど課長からは、議論した内容をまとめていくという報告書の位置づけのご説明がありましたが、それとはかけ離れているという印象を持ちました。もう一つ全体的なトーンとしてすごく気になるのは、企業はあたかも外部からプレッシャーを受けてCSRの活動を推進していくようなトーンで書かれていて、プレッシャーという単語が各所に出てきます。そういったことなのかと。企業は企業の価値につながると考えて積極的にCSRに取組もうとしています。まだまだその取組が十分なレベルに達していないかもしれませんが、担当者の荒井さん、秋山さん、酒井さんは地べたを這うような思いでやってこられています。この研究会全体のトーンとしては、そういう企業の試みを応援していくためにステークホルダーとして何ができるかという、協働の視点でずっと議論してきたと思っています。そのトーンではなく書かれているのは非常に残念です。それから随所に、経団連の関連機関のものがいろいろと引用されていますが、事実誤認である、一部を切り取っているようなところがあると、担当部局から非常に厳重な抗議がきています。これについては細かい点になりますから、その議論になったときにご紹介していきたいと思います。

酒井メンバー
 損保ジャパンの酒井です。私も全体を読んで、この話はあったかなー?と率直に感じるところはいくつかございまして、事務局の方がいろいろな情報が報告書ということでお伝えしていきたいということで入れられたと思いますが、これまでの4回の議論を振返ってみてもあまりまとめた報告書にする必要はなのではないかという話は、出ていたと思います。いろいろな皆さまの立場の有意義な意見があったと思いますが、報告書の最後に研究会の発言よりという形で切り取られたような形で掲載しているだけだとその想いが伝わりにくいと思います。例えば32ページのところで、特に私は企業の立場ではありますが、NPOの記述のところではネガティブな記述が多いというふうに感じました。例えば4段目のところで「NPOに対する一般からの信頼性があまりなく、うさんくさい存在として扱われている」「NPOは中間支援的役割を担って、自身の自立できる環境が必要」というのがございます。多分そういう発言があったのかもしれませんが、その二行だけをとらえると、そういう話で終わったというような誤解を招いてしまうような気がしています。今後いろいろなステークホルダーがCSRを実現していくためには、参加をしていくという先ほど長沢さんがおっしゃった協働というようなことを考えていくと、もうすこし発言者の背景みたいなところも記載いただけたらと思いました。それから確か中小企業のCSRというものも検討していくべきだという話もあったかと思いますので、そこの部分も少し薄いような気がしましたので入れていただければと感じました。

山田メンバー
 酒井さんと長沢さんの発言にもありましたが、32ページのところでNPOの記述につきまして、一般からの信頼性があまりなくうさんくさい存在として扱われているというような発言は確かににあったと思いますが、酒井さんと同様に前後関係としてどうあるべきなのかとか議論があったかと思いますのでそういったことの記述が必要かと思います。NPOは企業ともっと協力体制を深め、つなぎ手の役割を果たしていかなければいけないという記述についても、そのとおりこういう議論があったと記憶していますが、企業とも協力体制を深めることが重要であるとともに、私もエコマークの事業をやっておりまして感じるのはNPOの方、NGOの方、非常に熱心に関心を私どもの事業に寄せていただいているのは感じております。ただそこに一般消費者ですとか市民の方々の参画をもっとそくしていきたい。そちら側に対しても働きかけていきたいというような記述も必要なのではないかなと思います。市民の参加という観点ですね。市民が参加をして、判断能力というのを醸成していくような社会に向かっていくことが必要ではないかといったような議論もあったかとは思いますので、そういった記述も必要だと思います。

足達メンバー
 今のご指摘は誰から誰へということでいえば、NPO、NGOから市民へ?そうじゃなくて企業から市民へ?

山田メンバー
 議論は企業と一般の市民の比較的関心が薄いのかなと思うような消費者というお話でしたよね。ですから対企業だけではなくて、ということを申し上げたかった訳です。

荒井メンバー
 松下電器の荒井でございます。全体の議論をこえているというようなお話、まあその通りだとは感じます。一つは読んでいますと、なんとなくこの水増し感を感じるといいますか。読んでいて、おおそうだったのかと発見するようなことが多くて、勉強になったというか。たとえば少し細かい部分ですが、タイの事例が多かったですね。バランスが欠けているような気がしました。大きなトレンドは描かれているなということで、おそらくこれを見ていただいた方には何をすべきかという方向性というのは見えるだろうなと。ただ残念ながらその水増し感があるために、骨格の部分が見えにくくなっているのではないかと。確かにばらばらでしたが、これまで4回の議論を積み重ねてきた中で、できれば今回切り取られている形のものをそこだけでもいいので例えばサマライズしてみるというところ、それとストーリーづけというところが、もう少し自分たちが腑に落ちるレベルで見えてくると意味のあるものできる一つのやり方ではないかと感じました。

長沢メンバー
 タイの話題が出ましたので、経団連の国際労務担当者からのコメントをお伝えしたいと思います。まず、36ページの「アジア太平洋経営者会議」の正確な名称は、「アジア太平洋地域経営者サミット」で、日本経団連がILOやIOEと共催しているものです。この総括の一部「ビジネスの目的と責任は利益を上げる形で操業することである」を切り取って引用されていますが、その後にそれによって富と雇用を創出し、という社会との関係について、きっちりと記述されています。そこを書かずして切り取って引用すると、非常に総括の意図を外れたものとなります。それからカントリーペーパーで、タイのことが書かれていますけど、これは本来公表されていないはずのものとのことです。他の国のカントリーペーパーも作られている中、タイのものだけを取り上げる理由は何なのか。この報告書の主旨、どう関連づけられているのか。それはCSRを認証規格のようなもので出している国だからなのか、というような指摘がありましたのでお伝えしておきます。

龍井メンバー
 全体の印象ですが、一度各レポートの途中でチャートが出されましたよね。各ステークホルダーの一覧表が。CSR関係のレポートがいっぱいある中で、今回のこういうメンバーでしかも環境省というところで、まとめられたものの売りは何かなというふうに考えたときに、わたしはこう言うと失礼ですけど、いわゆる環境シフトではなくてコミュニケーションシフトというかそういうところへの目配りの部分が、私が参加しているいくつかの中よりも今回の研究会では特徴的だったのではないかと私は認識をもっております。そういう中で確かにアジアというのは文章構成から言うと唐突感はありますけど、きちんと位置づけをすれば、何故それが我々にとって重要なのかっていうことが示せれば、たまたまのものじゃなくて必然性をもって浮かび上げられてくると思います。そういう意味ではその売りというところにもう少し着目をしていただいて、冒頭のところで厳密な定義というのは必要ないとは思いますが、冒頭のときに問題提起がかなりされて現時点でCSRとは何かという時に皆さま発言され、その共通認識というのはこれに書き込まれていないわけですよね。定義って必要ないのですがこういう共通認識ですよ、だからこういう性格だよと。ステークホルダーの広がりを持って今までの個別企業レベルの社会的責任論とは違う枠組みで議論を積んできました。こういうストーリー展開が一本柱としてあって、そこに関連資料とか発言とかがあれば、私がさっき言った売りになると思います。そこをもう少し鮮明にしていただくということが今回一番印象に残っています。

秋山メンバー
 富士ゼロックスの秋山でございます。総括的な話をさせていただくと、やはりまとめというのは要するに「誰に向けて」「何のために」発信するのかというのが非常に重要なポイントではないかなと思っています。もともと今回いろんなステークホルダーズのまさに現場で先頭きっていらっしゃる方が集まってと、ちょっとおこがましいですけどそのメンバーに加えさせていただいて、それぞれの立場で今どういう風にとらえて、どういう課題を認識しているかということで事務局の方からいくつかの重要なテーマというのを挙げていただいた。まずそれをしっかり受けとめて発言を含めた事実が何かというところを明確に整理していただくというのがこういったまとめの重要なところじゃないかなと思います。特にCSRというのは、こういうのを提言というのは本当になじむのかなというのを私は素朴に思っておりまして、議論して議論するほど論理構造を決めてこういう風にしなきゃいけないと、がちがちに企業というのはこうならなきゃいけないといった顔が見えない企業像を作るという方向に言ってしまうのは嫌だなと。今回このような場で話をさせていただく上で個人としてこのように考えています。私どもCSRというものを企業の中でになっている立場としてこのような課題がある、このように捉えているという話は是非まとめの中に入れていただければうれしいと思います。
 それから個別の課題、いろいろな発言の中にあったものが整理されてそれを皆で共有できるというようなまとめ方であればいいと考えております。

斎藤メンバー
 先ほどから議論のレベルをこえているという話があったのですが、それは反面この4回の議論でまとめなければならない事務局のご苦労も仕事柄共感を覚えてしまう面もあるのですが、4回の議論で私なりに印象に残ったことは3つ程あります。一つは環境の意識を高めていく。具体的に言えば、製品とサービスに関しての国民の環境意識をどう高めていくか。第2点としては、NPOとの関係をそれぞれ企業の立場、社会の立場からどのように見ていくのかということがあったかと思います。それから十分に議論は尽くされていませんが、3点目としてアジアの問題をどのように考えるのかということがあったかと思います。これらの議論を踏まえた報告をしていただく。皆さんからの活発な意見があったと思いますので如何に強調していくのかがあればいいと思います。おそらく後半の議論のところであります最後のまとめに関係してくると思いますが、そこのメッセージをはっきりさせる報告がいいのではないかと思います。
 いろいろな現状でアジアについても記述してありますが、議論にあったものがデータ等に埋もれてしまっていて出てきていない。おそらく新しい視点での報告書になりますので先ほど申しました3点を強調する形にしていただければ他の省庁の報告書と違うメッセージが出るのではないかと思います。

五所メンバー
 環境経営学会の五所でございます。非常に事務局のご苦労は分かるのですが、やはり議論から逸脱していたと感じています。最初に川野補佐からお話をいただいたときに、現場の若手で企業のCSRそれから若手の方が見ているものを教えて欲しいそのような会にしたいごという思いをいただきました。そのような思いを申し上げてきたつもりでございます。ですからボトムの取組など今まで議論があったところをもう少し整理していただければと思いました。
 それから折角環境省の研究会ですので、これまで環境省が取組んできた環境経営や環境関連の法律、労組の取組ややってきたこと、従業員教育の視点、各団体例えば経団連や同友会さんがそれぞれやってきたことを示されればいいと思います。
 更に従業員に対する教育の視点が欠けています。これは環境教育促進法というのがありますし、このようなところも話が出ていたと思います。最後に地域住民という点が出ていたと思います。それはアジアに発展するものでもあります。このときにコミュニケーションが非常に大切である。コミュニケーションを図るためには、共生、融合いくことが重要であると感じています。そういう意味ではさみしいレポートだと感じています。

黒田メンバー
 全体的な印象については、これまでの意見に近いところがございますのであえてコメントは致しませんが、私はNPOという立場で気になったところだけを申し上げたいと思います。既に何人かの方からご発言があったかと思うのですが、これまでいろいろな発言があって報告書にまとめることは大変なご苦労であると思います。何人かの方もおっしゃっていますが、やはり想いというかどのようなメッセージを最終的に発信したいのかということで、多分いろいろなものがまだまとめきれていない気がします。NPOに関して言えば、市民というものが全体的に見えていないとか、あまり大きな議論にならなかったのですが、政府の役割というものが出てきたと思います。これだけのいろいろなバックグランドをもった方々が参加しており、この会自体がマルチステークホルダーで行われているのですから、一部の方が書かれたレポートに近い形になっているのは残念でございます。NPOに関しても確かに会での発言では乱暴な言い方があったのですが、文書だけを切り取ってしまいますと誤解を与えてしまうという意見がこれまでも出ていました。それではNPOとの関係をどのようにしていくのかというところも議論があったと思いますので、描ける未来像と申しますか、今はそうではないけれども是非このようにしていきたい、このようにしていったらいいと思うというようなところがトーンとして出てくると読んでいる人達に希望を与えてくれるのではないかと思います。報告書だけ見ると日本のNPOはだめだという見方になってしまっていると感じます。

大久保メンバー
 細かいことなど他の方々のご発言があったことを省略した上で、私からは2点提言させていただければと思います。一つは秋山さんからもご指摘がありました誰のためにこれを作るのかということを明示してもいいのかと。研究会に参加されている方々はその分野の先端的な方が多いということがありますが、私自身日々現場を回っていると感じますのは、おそらく多くの企業にとってみるとあまり心を打たないのではないかと。だから結局何なのということになってしまうのではないかと思います。おそらく私もプレゼンテーションさせていただきましたが、ポジションを明確にして、どの位置づけのどういう立場の人が、どこが有用であるということをどこかに加えていただくともっと読みやすくなるのではないかと言うことを一つ提案させていただきたいかと思います。
 それから二点目として、企業を中心とするかを含めてでございますが、各ステークホルダーがどのような行動をしていくべきかということを明示していただいてもいいかと。これは環境省の研究会でございますので、個々の企業をどうするかという問題よりは社会全体の枠組みの中でそれぞれのステークホルダーがどのように作用しあうことによって、初めて社会を構成していくのか。例えばNPO・NGO一つにしても、政府そのものもどのような機能を果たすべきなのか。また企業がそのような行動をするのかということをもう少し整理してもいいのではないでしょうか。31ページにもありますが、NPOが企業とステークホルダーとの関係を仲介していくとあるのですが、NPOも立派なステークホルダーでありますので、ここの表現も誤解が出てくるところがあると思いますので、そのような部分も含めていただくともう少し読みやすい報告書になるのではないかと思います。

足達メンバー
 これまでいろいろなご意見をいただきましたが、ここまでをまとめさせていただきますと、共通にあるのは、いろいろなところから事実を持ってくる、データを断片的に持ってくるのではなく、4回の議論の発言に立脚した報告書にすべきである。ということになる。 二つ目は、焦点を絞った方がいい。斎藤様からはメッセージとして国民の意識をどう高めていくか、NPO・NGOとの連携をどのようにしていくのか、あるいはアジアを含めてどのように考えていくのかというメッセージとして焦点を絞ったトーンにすればいいというご意見がありました。大久保様からは、誰のために誰が発行する、誰から誰へという関係を明確にすることで焦点を絞ればいいというご意見がありましたように、焦点の絞り方についてのご意見がございました。
 今の焦点の絞り方について他にご意見がありますでしょうか。この研究会はマルチホルダーで集まっていただいたということについては日本でもあまり例のないものであったと思います。そこから出てくるものが「誰へ」というところで、ご意見をいただければと思います。

大久保メンバー
 CSRそのものが広範にわたっていることが事実であると思います。であるならばそれをマッピングしまして、どこにどう位置づけているかということを整理していただいて、それぞれ個々の論点と結びつけていけば、読み手の立場で例えばNPOの方や企業の方が読んでみるとどこに関係してくるのかということが見えてくるのではないかと思います。 あまり絞り込みすぎなくても議論は広範にわたっていたところがあると思いますので、日本の話もあればアジアの話もありましたので、一枚の表等を作成して、マッピングできればいいのかという提案でございます。

龍井メンバー
 先ほど私は定義がないと申しましたが、9ページで強調されているマルチステークホルダーとの関係を意識してバランスよく対応することとみなされているという受身の定義になっています。私は何がということよりは、どういう場で誰が参加してということが大きいのではないかと思います。コミュニケーションと一言でくくることができないいくつかの複雑な問題があるかと思いますが、売りがあるとすればコミュニケーションであると思っています。いろいろな情報発信をしています。製品についても先端的な取組がある。その時にハードとしての持続可能性ではなく、コミュニケーションあるいは対話自身が持続可能になっていく場がどうしたら作れるのか。その中で、それぞれどのような役割があるのか。どのような視点でやっていくのか。この辺がポイントなのではないかと感じています。

足達メンバー
 企業とその他ステークホルダーズの間のコミュニケーションをどう持続的に確保していくのか。この部分について現状認識として、まだ十分でない。これはよろしいでしょうか。

長沢メンバー
 ステークホルダーとの関係構築が、十分でないと企業の方は認識されていると思います。ただその時の関係は圧力ではなく協働です。それぞれにどのような役割があるのかという視点で、ステークホルダーの役割についてもこの研究会で議論してきました。例えば消費者とエコマークの話、労働組合はどうするか、従業員という立場ではどうなのか、ということが議論されてきたと思います。報告書では、例えば消費者が最も重要と位置づけていますが、消費者が大切だと思っていることと他の主体が大切だと思っていることが折り合わない可能性もあります。例えばフィランソロピーについて、フィランソロピーは重要ではないとデータを使って示していますが、果たしてそうなのか。他にも黒田さんのプレゼンテーションでは、フィランソロピーが慈善ではなくてコミュニティの課題に移っているという話がでていると思います。総合すると、この研究会で話し合われていないデータを使うことによって、誤解を与えることがありうると思います。きちんと話し合った中から抽出していただくだけでも、それぞれのステークホルダーとどのような関係を築き、そこにおいて何が足りないのかが見えてきます。企業からすれば、エコマーク商品を選んでもらうための情報の出し方が足りないという課題もありました。他にも企業を中心においてもいいと思うのですが、出された課題を整理してくれば将来何をすべきかということも見えてきやすい。現在の報告書の案では、最後に議論しようとする「何のために、何をすべきか」ということが見えづらいと思います。この後どのように議論すればいいかと感じています。

大木スーパーバイザー
 読み手を考えますと、ハウツー本なのかそれとも分析研究の資料集なのか。そのような研究をしたつもりはない。ハウツー本でもないと思います。意見が中心になって、いろいろな階層の方々にどう役立つか。こういう意見があるというものをサポートするデータを活用しているのか。これで政策検討することはないということですが、そうはいっても環境省でやっていますので、企業としてはどのような方向付けをしていけばいいか。役所が政策としてこのようなことをやろうということではなくていいのですが、例えば役所の役割が出てくればそれを読み取っていくと、すべきということではなく、実際に出た意見とつなげてそれをサポートするデータを活用して整理されればいいと思います。

後藤スーパーバイザー
 CSRを企業、政府、NGO、NPOを含めて関係性の見直しであると日ごろとらえております。そういう意味では、この研究会でもマルチセクターの議論はユニークであった。であるからこそ、その発言を中心にしたレポートにすべきだと思います。これは皆さんもおっしゃっていることだと思います。それにデータをつけなくてはいけない。確かにNPOやNGOにうさんくさいところはある。しかし企業にもうさんくさいところはある。そのような断片的なところではなく、企業の取組が無形資産として企業価値につながっていくということを評価する人がいなくてはいけない。そのことを含めて参加されている企業の方から見ると、つきあっているNPOやNGOの方々も決してうさんくさいものばかりではなく厳しいけれど正しく評価してくれるNPOやNGOと付き合っておられる。そういう発言を丁寧に前後を補足する形で発言を生かしていくことで皆さんの真意が伝わることになると思っています。
 CSRについては様々なデータがありますので、なにがしかのものを補足的に付け加えることはレポートとしてどうしても必要だと思っております。その時に、環境省の委員会ですからヨハネスブルグサミットで南北問題、企業への期待というようなデータは入れておいた方がいいのではと思います。
 それから長沢さんがおっしゃったようにプレッシャーではなく、マルチステークホルダーとの協働、社会のガバナンスというトーンの方がいいのではないかと思います。

足達メンバー
 後藤さんから、政府、市民、企業の関係性の見直し非常に集約をしていただいたご意見が出ました。さらに先ほどコミュニケーションというようなキーワードが出ました。このあたりが骨格になってくるというコンセンサスであるように思います。
 現状そこが必ずしも十分ではないという認識について投げかけをさせていただきましたが、これもステレオタイプに十分である十分でないというお答えを期待するつもりはございませんが、いかがでしょうか。例えば関係性の見直しというのは、Aという今までの関係性がBというどのような新しい関係性に変わっていけばいいのかという議論でもいいと思います。

大久保メンバー
 企業と行政と社会の役割が社会構造の変化と規制緩和の影響を受けてどのように変わっていくのかということで2つの視点があると思います。企業や社会セクターがそれぞれの役割をどのように果たすべきか。個々のイシューがそれぞれ議論されたことにつながっていく。もう一つは企業と市民社会との関係。市民社会と行政の関係。企業と行政は今までも十分な関係があるのでその部分は除いていいと思いますが、そのような関係性のところがどのような方向にこれからいくべきなのかという提言になればと考えております。

足達メンバー
 その新しい関係性というのは、長沢さんのご指摘では、企業を取り巻くステークホルダーが圧力を強めればいいというのは間違いということ。これもおっしゃるとおりだと思います。それでは連携とか協働というものをもう少しブレークダウンして、圧力ではなく、連携とか協働という本質やイメージは何かというところでのキーワードをいただきたいと思います。

長沢メンバー
 今まで議論したところにそれがあると思っています。例えば消費者との関係で言えば、選んでもらうためにどのような情報を出していくのか、消費者が何を求めているのかをどのようにつかんでいくのか、ということを考えていかなくてはいけない。NGOとの関係では、NGOが課題と思っていることが、企業活動の延長線上にどのような接点があってお互いに役割分担してできることは何か。例えば評価機関であれば、評価をする側とされる側ということではなく、対等な関係で評価できるか。私は全てに共通して言えることは、第4回で坂口さんから指摘がありましたように、誰かが上に立って下のということではなく、対等な関係であると思います。消費者に関しても消費者政策も、消費者を守るべき対象から対等な立場として見て、情報を与えて選択ができるようにする方向に変わってきています。そのように全て対等な立場でそれぞれの役割を果たしていく。労働組合も、企業の不祥事が起こったことに対して、現場を預かっている人間としてウォーニングを出さなかったのではないかとおっしゃっている労働組合(単組)もあります。企業が社会的責任を果たしていくために、それぞれのステークホルダーが何ができるかについては、十分に議論できているかということは別にして、議論の中で上がってきていると理解しています。


足達メンバー
 対等性と自主性というキーワードになりますか。

酒井メンバー
 現状がまだまだなのか、それとも、というように必ずしも2つだけではないと思います。ただ、まだまだということではなく、いろいろな芽が出てきている。その事例がこれまでの報告で紹介されてきたのではないかと思います。例えば、環境経営学会さんの格付けも企業との対話を通じてレベルをアップしていこうという取組ですし、当社がやっておりますステークホルダーミーティングもまさにそのような取組です。同友会さんの調査もそのようなものでした。エコマークさんの報告も同様でした。そのような芽が出てきて、先ほど後藤さんがおっしゃった新しい関係の見直しが進んできている。このような芽を社会に広めていく、やっていこうというような提案のような形で示していけば夢があっていいと思います。

龍井メンバー
 長沢さんのご意見を私なりに整理させていただくと、レベルが二つある。場と言うのは事例としてなされている。但し従業員あるいは労働組合に限ってもその場があったが、今までは企業という閉鎖的な空間の中でしか行われていなかった。それがどのように外にでていくかということが問われている。
 もう一つはマーケットです。マーケットではどのような情報で選ぶことができるのか。あるいはフィードバックができるのか。そこでは顔が見える場と顔が見えない場とは違う。情報開示ということについて法律ということではなく、最低限これだけは開示する。自主性でできるところと自主性だけでできるかという懸念もありますので、何らかの規範がいるのではないか思っています。顔が見えないマーケットでも情報についてあるいはチェックすることについてどのような役割が果たせるのかということだと思います。

足達メンバー
 これまでも関係の場はあったが非常に閉鎖的であったということについてもう少し伺いたいと思います。例えば労使協議というのは外部に情報がほとんど公開されていなかったという理解でよろしいでしょうか。

秋山メンバー
 これまで関係論の話、対等性や公開性の話は非常に重要であると考えております。あまり機会はございませんが、1ヶ月に1回か2回NPOの方々とコミュニケーションする場がございます。従来は何か問題が起きたか起きつつある時に、プレッシャーというような関係があったかと思います。最近は両方が何をかかえているのかという形である程度の頻度で情報交換することは非常に有効であると思っております。決してどちらかに問題が起こってということではない関係ができればいいと思っております。
 公開についても重要であると考えております。NPOに客観的に見ていただく場として積極的に活用するという動きがあると思います。ただおざなりにやったらおしまいということであるといけない。実は私共はステークホルダーズミーティングをやっておりません。これは課題としてとらえております。
 ランキングの話がありましたが、私個人で言えばあまりランキングは好きではありません。環境経営度ランキングが4位から5位になりました。私が担当になりましてから一つランクを落としてしまいました。幸いにもトップが順位にこだわらずに悪いことがあれば正しなさいと大所高所の観点で判断いただいております。しかし対外的には朝刊で見ましたと言われますとあまりいい気持ちはしません。ある会社とある会社を比較してどちらが上か下かというより、我々は大きなくくりの中で鏡にしていきたいというところは企業として自己満足にならないためにも必要であると感じています。しかし100位までランキング付けをしてどこが良いとか悪いとか、企業によっては、来年10位になりなさいとか一桁を目指すといった企業があるということを聞いております。私としては4位から5位でも立場が良くなかったと感じました。一つのケースとしてご紹介させていただきました。

後藤スーパーバイザー
 秋山さんがステークホルダーダイアログとやっていないという発言がありましたが、企業は過去も様々なステークホルダーダイアログをやってきたはずだと考えています。ゼロックスさんも現実にやっております。先ほども言いましたように役割分担が変わってきている中で、今までやってきたダイアログの目的と現在それから将来においてのダイアログの目的が少しずつ変わってきている。そういう意味で新しい関係におけるダイアログの目的が明確になっていないので、そのような目的のダイアログが行われていないということであると思います。

足達メンバー
 今後藤さんがおっしゃった新しい関係でのダイアログというのはどのようなイメージを持てばいいのでしょうか。

後藤スーパーバイザー
 それは公開性です。今までやってこられたことはクローズドなものが多かった。クローズドな取組は今後もあっていいのですが、これからのダイアログは公開性というものが大きなポイントであると思っております。

山田メンバー
 先ほどからキーワードになっておりました対等性、公開性それから今後のダイアログの目的ということでエコマークの立場から少しコメントさせていただきます。ダイアログの目的、つまり新たな方向性を目指すということは市民社会において理性的な判断能力を醸成していくことが一つの目的ではないかと思っております。対等性ということを考えましても、企業とステークホルダーの対話に参加する市民の方というのはそこに責任が生じていく、対等であっていくためにそして企業と協働していくためにどのような方向に社会を持っていくのかという非常に重たい責任が生じます。これは一朝一夕に身につくものではないですし、そこにNPOとしてファシリテートしていく、仲介役としての役割を果たしていくことが非常に重要であるという議論があったかと思います。この対等性というものを今後担保していくためには時間を要するのではないかと思っています。
 例えばエコマーク事業で私どもはまさに公開性ですとか透明性を重視しておりますので、消費者の方と企業の方と中立な立場の専門家の方との協議の場を設けています。そのような場で、企業の環境配慮型商品ですとか企業の環境のポリシーに対して消費者の方が理解してプレッシャーではなく情報を発信していくことは極めて難しい問題であると思っております。ただNPOの方も参加していただいて積み重ねていただくことで消費者の方が理性的な判断を下していく、例えば秋山さんの話にもありました格付けが4位から5位になることがどうのようなことなのかといったことを理性的な判断を下すことが非常に大切になっていくのではないかと思います。例えばエコマークであれば化学物質のリスクであるとか、リスクと便益のバランスをどのように考えていくのかという議論があります。化学物質を使用しないことが最善の策であるのですが、それによって生じる便益とともに受容することができなくなることがあります。それが果たしていいのかという判断を下すには議論を醸成させていくことしか手段がないと思います。何かを廃止してもその代替物質に新たな問題が生じる、次はこれ、次はこれということを繰り返していくような事例があります。洗浄剤を例に取りますと有機塩素系の物質は発ガン性がある。その代替え品が今度オゾン層破壊につながる。次に代替えフロンを使う。そうすると地球温暖化物質だった。それではどうすればいいのか。これは企業の方が環境への排出がない方法で管理することが必要なのではないかということになっていくといった選択肢が残されていくべきだと思っています。そのような判断能力、市民の方がこの物質を廃止するというだけではなく、どう管理していってもらうことが地球環境によいのかという議論ができるようになっていくための判断能力を醸成していかなくてはいけない。それは対等性であると思います。その手段として公開性、公開していくことが非常に重要であると思います。
 つまりダイアログの今後の目的は、理性的な判断能力の醸成にあるのではないかと思います。

足達メンバー
 今のご意見は斎藤さんがおっしゃっていました、国民の意識をどう高めていくのかということとも非常に大きく関わっていると思います。
 今コミュニケーションの各論に入ってきましたので、議論を進めていきたいと思います。先ほど秋山さんから格付けやスコアリングといった話がありました。その当事者から言えばコミュニケーションを活性化させる役割を担えるのではないかという期待感や想いがあるのではないでしょうか。

五所メンバー
 本当にそう思っております。今回60社近くが環境格付けにエントリーしていただいています。それを学会に参加しているメンバーが伺って格付けや評価を行っております。当然トップの方とも話をさせていただいております。そのような中で企業と私どものような格付けをするNPOがコミュニケーションを取っていく。何故このような評価をしているのかというという質問がもちろんあります。評価するシートを作っているスタッフには企業に勤めている者もいますし、今まで企業で働いた後も熱い熱意を持って、このように企業はあって欲しいと思っている方々もいらっしゃいます。評価機関やシンクタンク等の研究的な立場や大学で研究されている方等いろいろな分野の方が話し合いをしながら、このようにしていくと企業はよくなっていくのではないかというスタンスで項目別に作り上げていきます。その作業があって、参加していただく企業があって、スコアリングが出来ていきます。これはランキングということではなく、実は環境経営学会のシートを見ていただくと分かるのですが、木の幹と葉があります。葉には各項目の評価があるのですが、色が青やグリーンがほとんどというと最高位になってきます。その一方で黄色や赤になっているとまだ足りない、自分たちが進歩していかなくてはいけない項目だということを分かっていただけると思います。それから他社さんの評価を見ていただきます。そうすると同業種でも自分たちの企業より進んでいる企業があるとどうやってやっているのだろうということで企業同士のコミュニケーションにつながっていきます。例えばよい取組を水平展開していくネットワーク作りの仲介役でありたいと思いますし、それを主観的ではなく、中立的に皆さんといい社会を作っていくお手伝いをしていきたいと思っております。それを押し付けるのではなく、共生する、融合する、コミュニケーションの場を与えていく機関でいたいと考えています。

大久保メンバー
 ランキングについて一つ感じたことがございます。まずアンケートの説明責任があまり果たされていない。この間も大きな新聞の一面でランキングが出ていましたが、アンケートに答えていることをそのまま評定する。そうすると表現力のある企業さんが上にいくことがあるかもしれません。その一方で評価された企業の方々の受けとめ方が少し過剰かとも感じております。トップ100というのは上場企業1500社の最高峰の100社であります。よく企業の方から言われたのは、何故20位なのか、15位ではないのかといった非常に細かいところを気にされる企業の方が多かった。富士ゼロックスさんの話もありましたが、これはやはりトップの見方によるところが大きいと思います。4位か5位かということは大した差ではありません。それが大幅に落ちた時には何かある、原因を追求していくといった活用の仕方であると思います。
 これは政策評価や病院評価の議論でも全く同じことが言えるのですが、何か向上心を持たせようとするとやはり他との比較がある程度あってしかるべきではないか。先ほど対等性の話がありましたが、ステークホルダーに企業との対等性を持たせるといった時には、ある程度企業をおびやかすものがないと、文書をいくら送りつけてもなかなか改善を促すことは難しい。それでは具体的にどのようなところを改善して欲しいのかということの具体性を持たすということであればランキングが一つあるのではないかと考えております。ですからこのランキングに関してはマスコミが先行しているところがいけない部分もありますが、もう少し成熟させてある面ではランキングは必要なことだと思います。ある面では過剰になりすぎている部分もあるのでもう少し関係性の中で議論していくことも必要ではないかと思っております。

足達メンバー
 この問題は研究会では、結論としてこうあるべきという形にはできないと思います。

荒井メンバー
 関係性の見直し、コミュニケーションといったキーワードは本当にそうであると思っております。更に付け加えるのであれば、関係性の強化という気がしております。と申しますのは、企業の立場で申しますと、企業というのはなかなか社会的存在であると思っていないところがあります。その中でコミュニケーションが進化していって、関係性が強化されていく中で企業が自分は何をしているのかと考えてきたのがこれまで10年間の動きではないか。その一つがランキングだと思います。2001年に44位になりまして、社長が経営会議で環境の看板をはずせと言われたことがございます。その後評価の悪かった物流部門が徹底的に動いて、今では環境に関する有数の物流対策を行っている企業になっております。それくらいランキングは影響力のある一面があります。私は、コミュニケーションの議論がある中で、要するに関係性が強化していって深まることこそが、大事であるというか少なくともそのような潮流があるというだと思います。
 もう一つ申し上げたいことは、特に環境に関してうねりが生まれてきた10年だったのですが、まだその動きはほんの上澄みに過ぎないと思います。確かに企業の取組は、環境分野では相当深まってきています。しかしコミュニケーションしていると言っても私一人であったりします。私一人が責任を持って、果たせる役割を行っていくことはコミュニケーションになりますし、責任が生まれてきます。私たちの会社は34万人いることにギャップがあります。そこで企業が考える時間軸である2~3年の間で、私どもは少なくともマーケットに挑戦しよう、マーケットというのは国民になりますから、国民に挑戦していかなくてはいけないと思っております。その挑戦を支えていく社会システムが整っていくということが必要なのではないか。
 例えば労働や人権といった社会性の問題に関して言うと、本当に環境の分野で10年前に議論していたことと同じような状態です。それくらいテーマごとに温度差と時間軸の差があります。それをまとめるということではなく、一つ一つ丁寧に切り取っていくこと大事であると思います。

足達メンバー
 関係性が強化していくための方法は分かりやすいのですが、それでは関係性が強化された状態というのは、この研究会で言えば、企業の環境パフォーマンスもしくはCSRパフォーマンスが向上することなのでしょうか。

大久保メンバー
 ステークホルダーが望んでいることが実現できることだと思います。

荒井メンバー
 全くそのとおりでございます。今京都議定書が発効されます。法的に責任が出てくるのは工場の環境負荷です。それはかなり厳しいものになります。しかし最終的にはお金で解決します。今必要なのは環境パフォーマンスを上げるために企業は何とか解決していきます。しかしそれが本当に企業の社会的責任を果たしているのかという議論があります。例えば、我々の会社では国内で排出しているCO2は140万tです。ところが製品を100年間で使っていただく時に発生するCO2は1,000万tになります。それでは本当の責任はどこにあるのかを真剣に考えるとそこにステークホルダーの目線がなければ、我々はアクションすることはありません。といった議論が必要なのではないかと思います。

後藤スーパーバイザー
 先ほどからの議論の中で、国民の意識や認識のレベルを上げる話がありました。それはちょっと違うと思います。例えば論点ペーパーに示されている現状の認識は、ある言い方をすれば、確かにこの通りであるのですが、ここでの議論はネガティブな表現ではなく、むしろそうではない方向に動きつつあるという発言がありました。既に芽が出てきている訳ですからそれをどう広めていくかと言うことが現状だと思います。つまり状況ではないということではなく、むしろ推進し始めているという状況で、しかしまだ一部に留まっているという現実はあると思いますので否定的にとらえるべきではないと思います。
 そういう意味で認識を広げるというレベルで、その対象は国民、企業、行政、NPOやNGO等全体のレベルが上がっていかなくてはいけない。

龍井メンバー
 現状は共存しているということだと思います。企業のパフォーマンスも消費者パフォーマンスも。片方で安ければいいという価値観があり、片方で長期的に捉える価値観がある。このようなトレンドが動きつつある。悪いほうのパフォーマンスが付いてくると言う保証はない。ただそのような認識は抑えておいた方がいいと思います。
 もう一つはアウトプットからプロセスへ見方が変わってきている。アウトプットの製品の環境負荷であり、あるいは廃棄物やパフォーマンスもそうであります。プロセスは閉鎖的、クローズドで見えない。ブラックボックスでよかった。今それが安全性やきちんとしたルールに基づいた労働条件であるのかといったプロセスが問われるようになった。これが今までとは違っていると思います。その広がりの指摘をしておくといいと思います。

五所メンバー
 今プロセスの話がありましたが、プロセスのツールもコミュニケーションであると思っています。今まではアウトプットがこうでしたで終わっていたのですが、プロセスがこうであった、途中であってもこのようにしていきたいといった事例が出されていると思いますが、それらをまとめていきますと各論的ではありますが、本質的なところが見えてきてボトムからこのように努力しているということが分かっていただける。それが環境省さんの政策に結びつくようなヒントがあるのかもしれませんし、私たちはそれぞれいろいろなステークホルダーですが、私たちも考え直す機会になると思います。是非プロセスをまとめていただくといいレポートになると思います。

足達メンバー
 それがまさに関係性を議論する場とかコミュニケーションする場とも同じになるのでしょう。まだ意見の一致はありませんが、スコアリングですとか企業を評価するということもプロセスを明らかにする試みかもしれないという意見がある訳です。
 これまでの意見を全て集約したという自信はありませんが、皆さんのトーンは確実に反映させたいと思いますけれども、その上で、どのような課題があって、その解決策として何ができるだろうか。必ず出てくるのは龍井さんが気にしておられるのかもしれませんが、必要最低限は何か情報開示でも制度化が必要なのではないかといったアプローチもコミュニケーションを活性化させる新しい場を作るために必要であるというご意見もあると思います。そのようなコミュニケーションを活性化させるところにあえて絞り込んだ上で、課題が何であるか解決策として、これは環境省という一つの行政機関の研究会でもありますので、行政の役割としてどのようなことがあるのだろうかについてご意見をいただきたいという議論に進めていきたいと思います。
 もちろん企業が努力します。マーケティング力と言いますか市場からの声を聞くという取組はもっともっとやらなくてはいけないと思いますと言うご意見ありました。それから従業員教育、荒井さんがおっしゃっていただきました企業のスポークスマンとしてのお立場と34万人の社員とのギャップを埋めるということも一つの課題であると思います。そこでの解決策ですとか行政の役割についてご意見がございますでしょうか。

荒井メンバー
 いずれにしてもステップバイステップのアプローチしかないと思っております。もう少し一かゼロの議論ではなく、ロードマップを描く必要があるのではないかと思っております。それには今回の研究会の時間がまだ不足していると思います。そのような議論になりますと考え方から議論していかないといけないと思います。

足達メンバー
 例えば従業員のCSR意識を高めるということだけで一つの検討会が必要となるくらいのテーマであるということですね。

秋山メンバー
 意識を高めることに直接関わるかどうか分かりませんがコメントをさせていただきます。例えば環境報告書があります。昔は環境報告書でした。今では社会性がかなり入ってきている。私ども昨年の報告書を一回目にお配りしたと思いますが、半分は社会性の報告になっています。従来の環境報告書のスタンスからすると外に向けて発信することが目的になっておりました。ただそれを見る社員がいる。Webに公開すると社員も見ることになる。お客さんに見せるときもその内容を説明するために社員も勉強することになります。そのような意味では、中身を見てこの部分は知っている、これだけ環境に配慮しているといったことを知ることになる。この範囲をもう少し広げたいと思っております。今年サスティナビリティレポートということでかなりのものが出来たと思いますが、来年は広報宣伝部をうまく巻き込んで、この報告書があれば一通り営業などにも使えるというものにしていきたいと考えております。もちろん一朝一夕にできるものではありませんので、時間軸については考えていきたいと思いますが、社外向けの報告書であっても実は社内向けのコミュニケーションとしてのいい意味でのツールになっていると思いましたので、紹介させていただきました。

後藤スーパーバイザー
 私は経営者の哲学レベルを上げることがCSR推進に最も重要なことだ、国民の意識よりも経営者の哲学レベルを上げることが一番重要であると感じております。ここにおられる企業の方はよく考えると経営者がすばらしい方であることによってすばらしい取組になっているはずです。従業員の誰かが一生懸命やって企業がそこまで動いたかという例はあるのかもしれませんが、スタートはトップの認識レベルだったのではないかと思います。
 つまり国民のレベルを上げるというよりは経営者の哲学レベルを上げることがCSR推進には大きいと思っています。
 報告書ですが、先般環境コミュニケーション大賞で表彰式がありました。私も審査員の一人でしたが、今七百数十社が出していることがすごいことなのか、たった七百数十社なのかということは前にも申したと思いますが、そのような状況にある中で、環境省さんの環境配慮法など、ファンダメンタルな部分は整理されてきていると思っています。しかしまだ認知度は低い。弁護士さんでも知らない。

斎藤メンバー
 情報開示とかいう話になると報告書を義務化するといった方向に話がいってしまう。読んでいる情報も確かに重要なのですが、経営者でも直接NPOに接触した人は意識が変わったりすることもあると思います。それは従業員でも同じことで、例えば社内のレポート作成に関わった人というのも意識が変わると思います。
 先ほどの企業、政府、社会の関係の中でもそれぞれが重なり合っている。その部分をどのように考えていけばいいのか。その辺が面白いヒントになるのではないかと考えております。

足達メンバー
 Business In the Communityから副理事長が来ておりまして話があった時に、Seeing is Believing(見ることが信じることだ)ということでまさに企業のトップを連れて行って現場を見てもらうといった取組を海外のCSRでは展開しております。
 まさに46ページのところで、どのようなことを盛り込んでいけばいいかということで継続していきたいと思います。

五所メンバー
 トップの哲学を変える場合には、私の業務の中ではボトムの取組を見ていきます。それから本社に伺うとトップの方とお話をします。そのときにトップの方はボトムの活動をよく分かっていない場合があります。感覚的かもしれないのですが、例えばコンプライアンスの取組として、ローカルの取組をして欲しいということで、トップとお話させていただくと「えっ、そんなことがあったの?それは出来ていると思っていた」と初めてご存知になることがあります。そこで、企業としてやることとしてトップダウンの動きになります。つまりボトムの整理をしていくことは非常に重要で、トップに報告することで意識が変わってそこから対処していくという企業の動きがあると感じています。

足達メンバー
 この点について皆さんの違和感はないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

大久保メンバー
 トップは一体誰かということがあります。例えばゼロックスさんのように強いリーダーシップを発揮されている会社の場合には効果的ですが、実は上場会社の多くの課題は役員会にあるのではないか。役員会でどれだけコミットしてもらえるかが本当の企業のトップダウンにつながってくる。おそらく経済同友会を見てもトップの方はだいぶ理解されてきていて、かなり浸透しておられる。トップの方ですとCSRと言うとすぐ理解していただけます。じゃあそれを具体化できるのかというとトップはそこまでできません。具体化する機能として取締役会に大きな課題がございます。私も役員会で話をしますと全然そのようなことは考えもしなかったという役員の方の意見がむしろ多くて必ず紛糾します。
 つまりいかに役員会でコミットをもらえるかということが重要ではないかと思います。もし書かれるのでしたらそこまで言及していただきたいと思います。

長沢メンバー
 トップのことも重要だと思いますが、この研究会の議論との関係を考えますと、これまでボトムの話をしていますので、そのような取組をまとめて報告することでトップの方々に伝えることが重要だと思います。我々がトップにあれこれ言うのはおこがましいのではと思います。
 おそらく企業の担当者が努力されているのは、トップからの指示を実現するためにクリアしていかなくてはいけない難関が多くあって、そこで苦労されていると思います。そこは企業も変わってきており、例えばトップの声で役員会の中にCSRを研究する組織がつくられた時、そのような場にいろいろな人を招いて話を聞いてみようという姿勢になっているというのはCSRを推進する芽なのではないかと思います。
実際、そのような場に現場の人間が行って話をすることもあります。

後藤スーパーバイザー 
 私も荒井さんがおっしゃったようにマッピングするには議論が十分ではない。私もそう思っていますので、今回の報告書に書くということで言ったわけではありません。

大木スーパーバイザー
 コミュニケーション、評価、情報を強調していければと思っております。その中で日本人はあまり評価になじんでいないので、環境だけではなく、マニフェストなどの評価の仕組みが出てきたおかげで、世の中進歩してきています。環境やCSRだけで頑張っても風土が変わらないとだめだと思います。今回このような研究会をやることによって、国民に評価の風土が根付いていけば、世の中が変わっていくと思います。例えばCSRを一番やらなくてはいけないのは行政だと思います。今回の研究会が環境とCSRをテーマにして一つのきっかけになればいいと個人的な意見を持っております。

足達メンバー
 先ほどの対等性、協働・協調というキーワードは皆さん合意だと思うのですが、それを具体化する評価という言い方をしていいかどうか。斎藤さんのご意見は、情報提供とか評価に向かう前に現場の見る、感じるといったことの方が重要ではないかと思うのですが。

大木スーパーバイザー
 評価がないとトップとしてどうしていいか分からない。評価されていればこれに向かってやろうという通信簿をもらいませんとトップは意思決定が非常にしにくい。会計ではROEとかEVAとかがありますが、他の分野についてはそのようなものがありません。ですから何らかの評価があって自分でレスポンスしたいという気持ちがトップにはあると思います。そういう意味で評価が必要かと思います。

長沢メンバー
 これまで、評価の視点やコミュニケーションの促進について議論がありました。ただ単純に評価のための評価にならないためにはどうすればいいかという考え方が必要だと思います。それでも個人的には評価には違和感があります。例えば企業の社会貢献を長く担当していますが、活動を評価してくれとか、NPOを評価してくれとよく言われます。でも評価は見る視点によって全く異なります。それぞれが判断できるための情報を開示してコミュニケーションをとっていくことこそ重要であって、誰かが判断してくれたものを信じて行動を起こすのでは、それこそ市民社会が成熟していないと思います。私はそれぞれが自らの価値観に応じて好き勝手に判断するという世界が本当は望ましいと思っています。

龍井メンバー
 その時の情報というものが何か。自分の得意な情報を発信するということは重要なのですが、ここのところはどうかという情報は何かというものを極端な話では、法律で決めてしまうのか。それとも業界ルールとして自主的にやることにするのか。それも一つの例です。いずれにせよ情報というベースがやはりエコマークの例のようにベースがあって初めて得体の知れない評価でない評価ができると思います。そのような基準作りのようなものを促進するという意味では、今言われている評価の役割は大きいと思います。CSRが進むようなプロセスであれば行政の役割はありうるのかなと思っています。ベストであるとは思っておりません。

荒井メンバー
 評価のあり方ということで是非お話したいと思います。グローバルレポーターズというのが2年に一度後藤さんにも随分ご協力をいただいて今回は34位でしたが。これを読んでおりますと、評価のあり方自身が変わってきているように感じます。彼らの言い方ですと絨毯爆撃症候群といったあれもこれもやっている情報開示なりコミュニケーションはもう評価しないと明確に言っている。その一つの手法が意思決定ですとかコミュニケーションのプロセスに対する信頼性を担保していくという切り口になっております。トヨタや松下がCO2を減らすということを評価するというよりは、そこにある思想ですとか重要性の議論ですとか何故そこに意思決定をしたのかそれらをどのような形でコミュニケートしながらプロセスを回していっているのかというところで信頼性の評価を行うと示しています。もうすぐ日本語版ができるそうですが、そのような評価のあり方なのかと一つ未来が見えてきたような気がします。おそらくその辺が変わってくるのではないかと思います。

足達メンバー
 今のグローバルレポーターズというのはサスティナビリティ社が今年はS&PとUNEPと共同で明確にランキングを示しています。1位はイギリスマンチェスターにあるコーポラティブバンクが2年連続で取っています。
 つまりプロセスの評価が入ってくればいいのではないか、あってもいいのではないかというのは荒井さんの意見ですね。

山田メンバー
 何らかの評価基準があって、それに対して個人が判断できるようになっていくというのが、極めて重要なことだと思います。しかしながら現状として個人が自分の価値観や多様性を持って判断できる社会であるかというと、そのためにはもっと議論にあったようなコミュニケーションを積み重ねていかないと難しいのではないかと実感しております。そのツールとして何らかの評価軸というのが極めて有効だと思います。この回の最初に議論されたことですが、情報はあふれているけれども、何故行動に移せないかといった課題があったように思いますので、先ほど申しましたように、判断能力を醸成させていくことが必要だと思います。エコマークも認定基準を作成するにあたって、消費者の方と事業者の方との協議によって作っています。どのような思想を持って認定基準を作成したのかということは全て公開しています。しかし調査結果によるとなかなかそこまでは消費者に見ていただいている段階ではないです。今後消費者個人が判断できるようになっていくためには、非常に重たい責任を持つことになります。そのためには、NPOのファシリテート等を含めた積み重ねが必要だと思います。

足達メンバー
 関係性の見直し、対等性、自主性というキーワードがありましたが、これは企業を取り巻くステークホルダーが自主的に何ができるのかとか、そこに何か変化が起きるために行政に何ができるのかという視点でご意見をいただければと思います。

黒田メンバー
 NPOのことになりますが、この研究会の中でNPOのことについては、非常に議論されてきたと思います。やはりどうしても企業中心のステークホルダーの一つとして脇役的な見方をしていたと思います。実はNPOの中にも非常に大きな変化が起きています。今一番議論されているのは、やはりNPO自身のアカウンタビリティをどういう風にしようかということでNPO自身も規制ではなく、自分たちの評価ツールを作っていこうという動きが活発になっています。これは日本に限ったことではありません。その結果、行動規範のようなものをNGO自身が作っていく。どうしてそのようなことをしているかというと、NPOが社会の中において大きなアクターになればなるほど、彼ら自身の社会的責任が問われていくという時代になってきているからです。日本のNPOに関して言えば、確かにあまり力がないということは事実だと思います。ですからNPO自身が抱えている課題やNPOがまだCSRに積極的になっていないように見えるのですが、実はNPOの中でも国際的なネットワークを持っている団体は国際的な戦略を持った形で日本の企業との対話ですとか自分たちの方から働きかけてWIN-WIN関係を築いていこうと変わりつつあります。ですからNPO自身の課題もありますし、NPOにまだあまり力がないので、そこまでいろいろなことができていないことも含めて、NPOに触れていただければと思います。

龍井メンバー
 実は労働組合は従業員の立場でいえば、消費者であり、NPOの一つです。多くの場合企業の関係で言えば枠の中に留まっていました。今自らの責任について議論があります。もう一つは、我々自身がチェックをする外側の面と能力開発を含めて享受をするという両方の面があると指摘させていただきました。そこで享受をするときに問題になってきている事は、非正規社員との関係があります。つまりステークホルダーと言っても3割以上、ほっとくと4割になる人が企業との労使協議や給与保証の場から適用除外になってきています。それを労働組合としてどのようにカバーしていけるか。組織率が低いということだけではなく、そのような面の代表になっているのかという課題があります。
 我々自身も主要な労働条件の労使協議だけではなく、多面的に参加していかなくてはいけない。その多面的というときに、企業も労働組合の側もルールなりコミュニケーションなりの土俵を広げていけるかという大きな課題があります。それは業種なのか地域の労使になるのか。その地域となれば関連するNPOが入らざるを得なくなってきている。一言にコミュニケーションと言ってもこのような土俵があるということは問題として捉えています。

足達メンバー
 見えてきた課題としては、環境、行政にこだわらず、それくらい幅広く書いてもいいかもしれません。

大久保メンバー
 役割分担としてそれぞれのステークホルダーが義務や責任を果たすのかを明示することに尽きるかと思います。先ほど取締役会の事例を挙げましたのも、荒井さんのおっしゃっているように、一担当者にお話したときに話が通るケースは非常にまれで、むしろ「そうですね」で終わってしまう。ステークホルダーミーティングでCSRレポートの説明会をして意見を申し上げたことが反映されるケースは少ないのではないかという印象をもっています。その時に企業側のドライビングフォースとしていかに吸収する仕組みを作るのか。それから長沢さんのご意見に付け加えたいと思いましたのは、個々人がやりたいことをやって評価されればいいということではないと思います。三者(企業、行政、社会)の関係がうまく融合しあって始めてこの社会がどのような社会でいくべきかという議論があるべきだと思います。そのためには、役割の方向性を明示しないといけない。それぞれが別の方向を歩いてしまうといつまでたっても出会うことはないと思います。
 それから消費者団体に関して以前ヒアリングさせていただいたときの感想としましては、消費者団体そのものもまだまだだと思います。例えば非常に著名な団体でもパソコンがない。その場合には情報セキュリティの問題が出てきたときに企業に対して対等になれないと思います。パソコンの使い方も知らない。そういうときにNPOやNGOセクターとしてどうしたらいいのかを考えるともう少し具体的なテーマがあると思います。例えば労働組合の話が出てきましたが、海外のアジアでは労働人権問題があります。それを日本に当てはめてみると労使関係が非常に良好な企業さんが多いわけで、それでは労働組合と企業でどのようにコラボレートするのかということを具体的に追求してみることも考えられます。その他にも例えばNPOを育てるためにどうしたらいいかという点では、諸外国のNGOのように政府からお金を出せばいいではないかという考えもあると思います。
 しかしもっと大事なのは、人をもっと出すとか、人の出し方も出向で出すのではなく、2週間に1回、5時以降、現場の40代以上の方に行ってもらう。それだけでマーケティングの手法だとか経理の手法だとかいい英知が入ってきます。そうすると今会社をリタイヤしている方で形成されている団体からよりもっとアクティビティな、戦略的な団体になっていくといった明日にもできる施策はあるはずだと思います。それは逆にNGOセクターが育っていただかなくてはいけないという義務がNGOセクターに課されているのではありますが、そこに方向性を示せるところに事例が挙がっているのでまとめられてはいかがでしょうか。

龍井メンバー
 その場の責任ということと、ルールというものが構えの問題だけで終わるのか、もう少し見える形で個別の取組から広がっていくために考えられるプロセスとはどのようなものがあるのでしょうか。私は何らかの自主的なルールを含めたことも必要だと思っています。

長沢メンバー
 例えば業界の自主的なルールや取組として、環境分野では自主行動計画が挙げられます。これを実現して発表していくことも重要であろうと考えます。以前は企業や業界の中だけでやっていましたが、今は第三者によってきちんと評価してもらうプロセスも加えています。そのような試みはできるかと思います。
 私は、CSRを義務として捉えていくべきという考えは良く分かりません。むしろよく定義にあるように、法律を越えたところで何ができるのかということではないでしょうか。具体的なイシューを決めるのであれば、誰とどう連携するのかということが本当は重要です。例えば龍井さんがおっしゃられた非正規社員との関連では、こうした方々をどのようにしていくかという時に、例えば日本の国内であっても外国人労働者で下請けの形で雇用されている人たちに対しても企業として、労働組合として、そのような人たちを支援しているNGOとしてどう考えるのか、知恵を出し合って解決していく。あるいはアジアにおける人権の問題についていろいろな人たちが知恵を出し合ってどのように解決していくのか。そのような解決していく方法やプロセスを社会にきちんと見えるようにして、消費行動につなげてもらうにはどうしたらいいのかという情報提供の仕方も考えなければいけないと思います。
 情報開示の話になるとすぐ法律ということになりがちです。お役所だとすぐに法律で開示させればいいではないかとなり、環境報告書の範囲を社会的責任にまで広げるという議論が環境省であったと思いますが、そういうことではないのではないかと思います。最低限守らなくてはいけないものをどう開示していくかという点は様々な場で議論されていくことだろうと思います。それを超えた部分をどうするかという議論については、環境はある程度成熟していると思いますが、何が社会にとって重要なのかということについては、コンセンサスはできていないと思います。例えば労働団体としては企業にこのような情報を開示することを求めていきたい、消費者団体としては、このような情報を開示することを求めていきたいといった対話がまず必要だと思います。その上で初めて法制化するのか業界が自主的にやるものなのか、あるいは合意でやるものなのかといったことが決まってくるかと思います。

龍井メンバー
 一般的なコミュニケーションのレベルから、労働組合やNPOも含めて、可能性が例示されてきています。それをマッピングしていただいて、可能性としてこのような分野があると示すことでも十分なメッセージになると思います。

足達メンバー
 今まではこのような情報開示をして欲しいという声すら今まで上がらなかったということがあります。それができるかできないかと対話する場もなかった。仮にあるとしても、クローズドで行われていた。これらを変えていこうになりますか。例えばステークホルダー間の連携等はそういうニュアンスも入っているのかもしれません。
 大体予定の時間がせまってきておりますが、この後の予定をうかがわないといけないかと思います。鎌形課長からコメントをいただいて最後に審議官にという順番でよろしいでしょうか。

事務局(鎌形課長)
 大変活発な議論をありがとうございます。環境省も審議会、検討会、懇談会とかいろいろございますが大体言いっぱなしが多いところこれだけ双方向のコミュニケーションが図れる会合は珍しいと思います。まさにこのような議論を反映させた報告書にしていきたいと思います。そういう意味で本日ご用意しました報告書につきましては、いろいろなご指摘がございました。全面的にそういう目から見直すという形に致したいと思います。ただ会議自体は今回最終回とさせていただきたいと思いますが、このコミュニケーションは引き続き続けたいと思いますので、このような場でお集まりいただいてという形ではございませんが、研究会のまとめを作成する過程でスーパーバイザーの方にもご相談しながら、皆さんに個別にご相談をさせていただきたい。そのような作業の延長戦を行いたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

足達メンバー
 その上でまとめ方のご意見でも結構ですし、この研究会についてのご意見でもあれば皆さんからいただきたいと思います。

長沢メンバー
 これだけ議論してみると、今の報告書案とは違うアウトプットを求めたことになってしまうと思います。それについて、変えていただいたとしてもそれぞれがOKを出すかということが出てくると思うのですが、その部分について、それぞれ個別にクローズドの中でネゴをしていくということで、本当に皆さんがいいのかどうか。事務局として本当にそれで耐えていただけるのかということもあると思います。私はきっちりまとめていただいて、もう一度議論するくらいの勢いがあってもいいのかと思います。自分たちの首をしめるようなことになりますが、忙しい方々だと思うのでこれだけ言い放った責任も一方ではあると思います。例えばそのとおりにならなかった場合を想定すると、委員としての私たちの名前を落として欲しいということもありうると思います。メールだけのコミュニケーションでいいのか、疑問があります。

事務局(鎌形課長)
 いろいろな制約があるかと思いますが、想定しておりましたのは原案を作って皆さまにお配りして事務局が実際にお会いしてお話するなり、メールも含めてやり取りをすることを想定しておりました。今のようなお話もありますので、会合をするにしても全員お集まりいただくことが難しければ、その時にご都合いい方に出席いただくこともあるかと思いますので、ご主旨を踏まえて、少しやり方は考えたいと思います。

後藤スーパーバイザー
 やはり作り変えていただいたのを見ないと会合を一回やって片がつくかという問題でもないですから、鎌形課長のおっしゃった形でリライトしたものを見せていただいて意見を言うということしかないのではないでしょうか。

事務局(鎌形課長)
 お集まりいただけるという機会が皆さまの総意であるのであれば、そのようなこともあるかと思いますが、一旦リライトしたものをお配りしつつご相談させていただければと思います。

桜井審議官
 二時間にわたるご熱心な議論をありがとうございました。私も初めて出席しましたので、一から勉強させていただきました。感想を述べさせていただきますと、役所の立場からは制度や枠組みという発想が立つわけでございますが、今日ご議論いただき ました話は企業にとっては従来からの株主との関係あるいは消費者との関係、あるいは労働組合との関係を超える新しい関係をどうやって作っていこうかということでしょうし、それが、従来の株主、消費者、労働組合との議論を超えることが環境もしくは社会的な責任と言われている部分であると思います。それをどのように作っていくかということについて、環境省という役所の研究会でございますが、直ちに何をするかということではなく、やはり今日出ました論点の中で、どういったものをこれから作っていくのかということだと思います。最初に鎌形課長から申しましたようにこの研究会を受けて国が直ちに何かをやろうということではございませんので、是非まとめかたについてのご議論もありましたが、折角出ましたご議論を参考にまとめて参加いただいた方だけではなく、他の方々にも議論の輪が広がっていけばいいかと思います。いずれにいたしましても、内容の濃い議論をありがとうございました。

足達メンバー
 それでは第5回研究会を閉会とさせていただきたいと思います。

以上