環境省総合環境政策社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会

社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会
企業におけるCSPの取組の現状について(第3回)
議事録


  1. 日時:平成16年11月18日(木) 10:00~12:00
     
  2. 場所:経済産業省別館 1012会議室
     
  3. 出席者
    メンバー(五十音順): 12名
    秋山  裕之 
    足達  英一郎 
    荒井  喜章 
    大久保  和孝 
    黒田  かをり 
    五所  亜紀子 
    齊藤  弘憲 
    酒井  香世子 
    坂口  和隆 
    龍井  葉二 
    長沢  恵美子 
    山田  真理子 
    スーパーバイザー(五十音順、敬称略): 1名
    後藤  敏彦
    オブザーバー(五十音順): 4名
    厚生労働省3名
    経済産業省2名
    事務局: 6名
    西久保  裕彦
    川野  光一
    瀧口  直樹
    石川  宣明
    藤原  敬明
    島川  崇
     
  4. 議題
    (1)企業がCSRに取り組む課題とその対策について
      ・新日本監査法人 大久保 和孝
    (2)質疑応答・意見交換
     
  5. 配布資料
    資料3-1 議事次第
    資料3-2 メンバー名簿
    資料3-3 座席表
    資料3-4 「企業がCSRに取り組む課題とその対策について」
    参考資料
     ・ 各セクターに求められる課題と対応策(事務局)
     ・ 競争力ある組織へ―CSRとしてのDiversity 女性の活力を 組織に活力を(新日本監査法人 大久保 和孝)
     ・ CSRを原点から見つめなおそう(新日本監査法人 大久保 和孝)
     ・ 「本気度映す不祥事の記述」日経ビジネス2004年7月26日号P.36-37(新日本監査法人 大久保 和孝)
     ・ 「NPOが変える[1]~[3]」朝日新聞2004年10月27、29、30日(新日本監査法人 大久保 和孝)
     
  6. 議事内容(発言者ごとに発言内容を記述):

事務局(川野補佐)
 それでは、定刻になりましたので「社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会」の第3回研究会を始めさせていただきます。第2回では、日本環境経営学会五所様、損害保険ジャパン酒井様、日本環境協会山田様、連合龍井様からステークホルダー側の意識がどこまで変わってきているだろうというところに焦点を当ててプレゼンテーションをしていただきました。
 それを受けたディスカッションでは、ステークホルダーの意識向上のために、第一に、消費者が物を購入する最前線においてモチベーションが高められるよう、情報を提供する際は最前線ですべきである。第二に、同じく情報を出す際には、自分の行動がどのように結びつくのかわかるようにしていく。第三に、職場において消費者教育が行われるといった、企業の中でも消費者意識の向上がもっとなされれば良いではないか。最後にかっこよさに訴えるなど、マジョリティの意識向上のためには、ちょっとした工夫がいるのではないかという方向性が出されました。
 本日は企業が持続可能な環境経済社会システムの実現に向けて継続的に取組むための課題を解決するためにどのような方策が考えられるかについてご闊達な意見をいただきたいと思います。

足達メンバー
 5回の議論で何がまとまるのかというところがありますが、持続可能な環境と経済について、我々の問題意識としては、第1回で同友会の斎藤さんの話にもありましたが、マーケットが経済性だけではなく、社会性や人間性を評価していけば環境問題も経済的な一つの動機として同時並行的に一つの価値を見つけていけるだろうという期待から、確かにそのような方向にマーケットは向かっているだろうか、阻害要因があるとすれば何なんだろうか、その阻害要因を取り除いていくためには何が必要なのか、このような道筋で議論を進めていければ良いと思います。
 本日は第3回目で、前回に阻害要因についてある程度議論をしましたが、何ができるかについて本日は大久保さんに発表いただき、そしてもう一度前回のところまで戻ってマーケットは変わっているのか、阻害要因があるとすれば何なのか、それを取り除く、あるいは市場の進化を促進するためには今アクションとして何ができるのかなどについて議論したいと思います。

大久保メンバー
 「企業がCSRに取組む課題とその対策について」を発表。
 
 私のバックボーンとして、まず政策研究を行ってきたこと、次にコンプライアンスに関わってきたこと、また現在CSRのコンサルティングを企業の現場で行っていることです。
 また、私なりの課題、問題提起として、一つ目は概念論としてCSRの正しい解釈の醸成を行いたいこと、二つ目はサステイナブルな社会とは何か、我が国が目指す方向性などについても議論したいこと、三つ目は社会貢献論から派生して、NGOと企業の関わり方を見直す必要があると考えていることです。

足達メンバー
 マクロ的な視点の話だと思います。確認したいことは、正しい解釈、サステイナビリティなりゴールを考えれば、それを作っていく主体は、大久保さんの考えでは、国や行政サイドでやることなのでしょうか、企業サイドでやることなのでしょうか、あるいはステークホルダーサイドがそのような動きを起こすべきなのでしょうか、またその機会があるのでしょうか。つまり、誰がという主体をどのように考えていますか。

大久保メンバー
 サステイナブルな社会を作るのはステークホルダーサイドだと考えております。ステークホルダーには政府も含めて、価値観の醸成について議論していただきたいと思います。
 CSRは、そのサステイナブルに対して企業としてどのように取組んでいるかということなので、したがって企業サイドだと捉えています。

足達メンバー
 本日の議論は、大久保さんがおっしゃってくださったテーマだけではなく、前回のテーマに戻ることも可能ということで、ステークホルダーがマーケットの中で社会的価値、人間的価値など経済的な部分以外を評価するような動きがあるのだろうか、そこに戻ってもう一度、原因は何か、阻害要因は何かなど幅広く議論いただきたいと思っております。
 「各セクターに求められる課題と対応策」という資料があると思います。前回までの議論で、消費者では、エコマークのことなどを紹介いただきましたが、BtoB、企業側はエコマークを採用している。しかし、消費者については必ずしもマジョリティが関心を寄せていないのではないかということでした。情報開示、理解の不足などがあるのではないかというご指摘があり、その対応策として、一つ目は最前線での情報提供で、売り場で情報提供しなければならないとご指摘がありました。二つ目は行動と結びつく情報内容の提供で、これを買うとどれだけ環境に良いのだということを消費者は実感できていないというご指摘がありました。三つ目はマジョリティを動かす工夫で、かっこよく見せるなどが必要ではないかというご指摘がありました。
 次に、従業員は、連合の龍井さんの方で、従業員の意見を代表する調査結果が残念ながらないというご報告があり、まだ空欄です。ただ、何か物を買ったり、株を買ったり、職業選択をしたりなどの行動をとる際に、経済的以外の部分を考慮していきましょうということを職場で考えていく教育の機会はもっとあっても良いのではないかというご指摘があったと思います。
 NPOは、まだ空欄です。
 金融機関では、第2回に酒井さんから、SRIファンドは拡大しており、パフォーマンス次第では、損保ジャパンさんのファンドについて言えば支持は拡大しているということでした。しかし、その一方でまだまだ正しく理解されていない、評価を受けていないことがあるのではないかということでした。
 海外のNPO、海外投資家では、酒井さんから、きちんと取組めば海外の格付け機関などから評価を受け、それは社内でも実感できているというお話があったと思います。
 このマトリックスの空欄部分も含めて、それぞれのステークホルダーの、市場の進化と言っても良いですが、環境と経済の両立という姿に対してどのような現状にあるのか。遅れている、何か障害があるのならばその原因は何かについて、是非ご意見をいただきたいと思います。前回秋山さん、荒井さんが欠席だったのですが、消費者の動きで、エコマークの観点ではBtoBよりはBtoC、消費者はまだまだエコだからと言っても買ってくれない傾向があるという報告が山田さんからありました。正にメーカーの最前線にいらっしゃるお二人から、これに関して何かご意見をお願いします。

秋山メンバー
 松下さんと我々とでは消費者が若干異なりますが、我々は最終消費者というよりはBtoBです。どちらの方向に動いているかについては1社の中では難しいのですが、我々が対応している企業の意識は変わってきているという印象はあります。法的な規制など含めて、我々が例えば環境に対して、環境にやさしい商品を出すという非常に漠とした表現でお客様が買ってくれるかと言うと、そのような状況ではないと思います。その際に我々ではタイプ1から3まで基準がありますが、海外からでもブルーエンジェルなど色々なラベルの問題がありますが、企業としてこのようなものを出していきたいという姿勢を明確にし、それをお客様はどのように捉えるか、我々の場合BtoBなのでお客様は企業なりますが、そのような部分は非常に重要になってきていると思います。
 先ほどコミュニケーションのことについてありましたが、CSR、環境、品質などの側面で、我々はマネジメントとコミュニケーションという2つの柱が非常に重要であると考えております。環境レポートなどもそうですが、一つのコミュニケーション手段なのです。商品、サービスをコミュニケーションとして、お客様や地域に対して、我々はこのような工場を建てますのでよろしくお願いしますなど、まずはコミュニケーションといった形で情報発信を行います。それを受け止めてくださったお客様や地域からのリターンを、我々が企業の中でどのようにマネジメントするかが非常に重要なことだと思います。
 エコマークについても、我々がこのようなエコマーク商品を出します、またブルーエンジェルから認定いただいた商品をお客様に提供しますといったことをお客様に発信したときに、お客様がどのように反応するか、その反応がもう一度企業の中に返ってきたときに、詳細な話をすると、エンジニア、自分たちがより消費効率の高いかつ同じようなパフォーマンス、さらにパフォーマンスが2倍3倍になるようなものを提供することがお客様に喜ばれるとなれば、自らのインセンティブにつながることになるので、そのような活動は非常に重要だと思っております。
 我々の一つの例ですが、環境に関して環境効率という話がよく出ます。いわゆるエコロジカル・フットプリントで、環境効率を2050年までに10倍を目指しましょうという話の中で、企業はどのように受け止めるかという議論があり、我々企業の中でも色々な議論をしております。従来の開発部門にはラベルの問題と環境効率をぶつけて、環境効率を高めるような仕事をしてくださいというお願いをしております。ところが、実際は現場から反発があります。環境効率というと分母と分子ということで、お客様への効能と環境負荷の削減とを分母と分子の比率で捉えて、それがどのように代わってきているかということを捉えます。我々は従来、売上げを分子に持ってくる形とすると、現場からの反発は売上げは現場ではどうしようもないということで、エンジニア自らがコントロールできるところで環境を捉えたいという話が出てきました。このような話が現場から上がってくるのは我々としては非常にうれしいことです。ただ鵜呑みにして、それが達成できたができなかったかという議論ではなく、エンジニアとして環境負荷、パフォーマンスや品質の側面以外で、また納期、開発投資の側面以外で、重要なファクターとして捉えているという流れだと私は受け取っております。それをよりインセンティブという形で展開するということで、絶対値として、認証やラベルがエンジニアとしてのゴールとして明確になれば、今言ったコミュニケーションの中でお客様から喜んでいただけるのであれば、ますます促進していく動きになると思います。

足達メンバー
 今の話で面白いところは、エコマークは消費者のためあると思っていましたが、メーカーさんの中では社内のエンジニアさんの学習やものの考えを変えていくのに大きな役割を果たすということです。
 荒井さんはいかがでしょうか。

荒井メンバー
 ステークホルダーの観点からの話をさせていただきます。我々は、ゼロックスさんと観点が異なるのは、コンシューマ・エレクトロニックグッズを中心に商売させていただいていますので、その点で消費者との関係が若干異なると思います。
 簡単に、今の我々の議論を言うと、欧州の方から風が吹いているように思います。昨日も欧州の環境、CSR責任者と話をしていて大喧嘩をしたのですが、現在欧州の消費者からは雪崩のように我々企業に対して言ってきています。オランダの消費者団体、例えばアムネスティさんなど名だたるNPOさんが50くらいありますが、ある表基準を持って企業の活動と製品を良くするということで、我々のテレビやDVDプレーヤーなどで、具体的にそのことを評価軸として定められて、それによって消費行動を変えていこうという動きがあり、我々も提案をしてきた経緯があります。昨日はグリーンピースさんから、我々の化学物質対策に関して不十分だとして、メーカーにこれをやれというようなことを、オランダでEメールを通じて2時間で60件入ってきました。そのような熱を日本の我々はどういうわけか感じないのです。その熱が何でそのようになっているのか、大阪にいたらわからないのです。そのことで昨日彼と大喧嘩をして、ようやくわかってきました。そもそも企業とステークホルダーとのパワーゲームだと私は思っています。そもそもそこの関係が違うのではないかと感じています。大久保さんの話にもありましたが、日本でもそのような大きな価値観をもっと提示していくようなことが必要ではないかと思います。消費者とNPOはイコールだと私は思っているので、そのことがパワーになっていないのではないかと思います。従業員と資料にもありますが、我々企業内の労働組合は力を失っていると思います。最近プロ野球のような動きを、もはや自分たちに労働者の権利というものを失っていると思いますが、結局パワーゲームだと思います。
 また、例えばRoHS指令の対応を我々は必死にやっているのですが、日本企業が血眼になってやっています。しかし、それが消費者や社会から正しく評価していただいているかと言ったら、必ずしもそうではありません。我々もそのことがしっかりと理解されていないことが原動力を失っている一因にもなっております。そのような関係の中で、我々がイニシアティブを持ってやっていることが、逆に言うと、競争力を失っている、また国益に反していることすら生み出されているのではないかと局面が出てきています。
 そこでもう一度ステークホルダー議論に戻しますが、大久保さんの話で面白いのは、企業はレピュテーション・バリューを上げるために8割9割は広告宣伝、つまりマスに対して開示をしているということです。ところが、世の中の変化は1割で起きているのです。その1割をどのように日々感じて、経営に活かしていくかということをやれるのかどうかというところがポイントになってくるように思います。その意味で、多国籍企業がCSRに敏感なのは当たり前なのです。欧州の動きを敏感に捉えざるを得ないからです。したがって、そこに目を向けている多国籍企業は当たり前だが、では日本の産業として、企業のあり方として次のステップをどのようにすれば良いかというところは、大久保さんがおっしゃっている課題と同じではないかと思いました。

足達メンバー
 国内で言うと、NPO・NGOの力、今荒井さんは消費者と考えても良いのだとおっしゃいましたが、例えばRoHS指令などもそこまでは知られていないというところから始まって、それを明確に指示してくれる声などがありました。
 また、労働組合の話も出ましたが、果たして労働組合が市場の進化という一つのモデルに対して何ができるのか、役割があるのだろうか、やや刺激的なご意見でしたが、それを踏まえて、龍井さんはどのように考えていますか。

龍井メンバー
 従業員がこの資料で空欄になっていることで難しいという側面を前回提起するはずだったのは、NPOと消費者から見た場合の企業という存在の一部をなしているという面と、公害問題などは典型的ですが、社会的に批判にさらされる、あるいはトラブルが起きた際、今回も不祥事がいくつかありましたが、そのようなときに外側、今の言葉で言えばNPOと、社会の中に物言わぬ存在という2つの側面があることを前回に話したと思います。その時に、今のCSR議論が環境先行で、組合が入り込む余地がないほど先行していて、ただし企業経営のあり方が、良い部分とそうでない部分とのギャップがますます深まりつつあり、競争ルールに企業経営が翻弄されているというのが我々の認識です。これも前回指摘しましたが、長期的なものよりは短期のバランスシート合わせだけに狂奔されている、目が奪われている。これは我々労働組合からすると、人事全般というよりは、財務の影響力、これは実際の役員構成からしても、その勢力が強まっていく中での我々の在り方を考えるべきというのが実感です。その時これは、ステークホルダーの一員として要求していく場合に、今までの労働条件、権利だけではなく、コンプライアンスの問題、また我々当事者だけではない問題、これは目を外に向ければ企業外存在としての組合の立場から、取引関係、今お話になった海外のNGOなども視野に入れた活動をしなければならないという問題意識は持っています。したがって、同じ従業員と言っても、マトリックスが2つ3つあるので、このチャートには収まりにくいというのはそのような理由があるからです。ただ、従業員の2つの側面のうち、どちらの側面が出るかは課題や状況によって、今パワーがないとおっしゃいましたが、確かに企業経営が苦しくなっている中で、今までのようにはいかなくなっています。ただしこれは、前回も指摘したように、従来型のスタンスの枠組みでは対応できなくなっているので、要は金融サイドの方もそういうものが短期化している中で、今までの枠組みでは捉えられない。前回お伝えさせていただきましたが、今までのパワーでは通用しない、新しい発言力、影響力を求められているわけですが、労働組合は過渡期にあって、分解しながらそれそれの核の元に収束していこうというスタンスを取っています。

足達メンバー
 なかなか一つのセルでは表現できないということです。2つの側面があるということですが、企業の中にいる存在であるという側面と、企業の外にいる存在の側面とですね。個人的な意見では、CSRに取組もうとしているのは、企業の中の論理よりも、外の存在ということを強く意識して、労働組合さんが、CSRがもし大きなテーマとして取り上げることを決断されれば、活動していくように変わっていくのではないかと思っていますが、その解釈は合っておりますでしょうか。

龍井メンバー
 それが正に課題で、企業外存在として企業のあり方について責任を持って発言していくという活動は残念ながら、今地域別、産業別で話し合いはありますが、交渉はなかなか成り立ちません。多国籍企業の制約する枠組み協定が見せにくい状況があるので、視点としては、一つひとつの個別企業ではないです。ただ、我々が残念なのは交渉の場で表に出ないことであり、地域単位でNPOなどと連携して作業をしていきたいと思っておりますが、残念ながら現時点では制約があります。

足達メンバー
 何かご意見があればどうぞ。

荒井メンバー
 環境の話ですが、面白い話をしたいと思います。松下は一つだけ誇れる活動をしています。地球を愛する市民活動というものがあります。これは、我々は当然企業として環境、CSRをやっていかなければなりません。あくまでも企業は企業人としての側面だけを作りますが、人づくりとしては企業人としての側面ばかりをやっていてはいけません。企業人は社会に出たら社会人であり、家に帰ったら家庭人です。そのような根源的なところから基本的なあり方を考えてみようではないか、おそらくそこの連鎖がない限り企業では本当にがんばっていけないという発想からスタートした運動がありました。これは労働組合と松下グリーンボランティアというボランティア機能と一緒になって会社の枠組みを超えた活動をしています。6年ほどやっております。これはおそらく、すぐには結果が出ないと思います。環境家計簿、マイバック運動など色々なことをやっています。そのうねりを作っていくこと、企業も多少のお金を出せばできるのです。そのような枠組みを人事の中に提案していくなど。それを労働組合のミッションと合わせていきながら、その流れを作っていくことが今必要なのではないかと思います。ところが、松下も経営が大変な状況になってきて、これが崩壊寸前になっています。これではいけないと思います。日本的なアプローチとは、そのようなところにもあるのだと思います。

足達メンバー
 ありがとうございます。
 長沢さんは社会貢献活動の調査をやられていると思いますが、今あったような従業員の人たちが取組む活動、あるいは会社が行っているような活動に企業サイドが支援をしていくような動きは広まっているのですか。

長沢メンバー
 そうですね。今ご紹介いただいたような活動もあると思います。また、CSRを企業の担当者の方たちと議論していると、最も重要なステークホルダーは従業員だとおっしゃいます。それは従業員がCSRの担い手でもあるからということもあると思います。それを踏まえれば、10年以上も積み重ねてきた社員の人たちが社会の風に触れるというような活動は非常に重要視されてきていると思います。今までは社員の自主性などを尊重して、もちろん今でもそうですが、色々な機会を提供してやってきたと思うのですが、意味合いがこの数年間で本当に変わってきています。企業の社会的な責任を遂行する上で、社員本人が外の声を聞いてくる、また環境破壊が起こっている現場に行って調査に参加するなど、そのようなことにある戦略を持って社員を送り出している企業まで出てきていると思います。社会貢献活動と言っても、そのような側面を持ち始めているのではないかと思います。ちなみに、我々が行っている1%クラブでは、新潟中越地震の際に被災地の支援をしようということで、社員に呼びかけボランティアを募ったところすぐに集まりました。忙しくて大変だと言われている技術者の方、営業マンが多かったです。そう考えると、社会に出て現場をきちんと見てこようという方は増えていて、そのような人たちの力を結集していく、バックアップしていく、企業と労組、NPOが一緒になって活動していこうという姿はこれから必要になってくると思います。

足達メンバー
 資料のマトリックスで、従業員でCSR軸での評価のところで、CSR軸で評価している行動が見られるのかというとまだよくわかりませんが、対応策のところでは、社会の風に触れる、現場に行ったり、ボランティアを経験したり、あるいは環境家計簿もそうかもしれませんが、何かきっかけを作るのはおそらく意識が変わったり、関心を高めるスタートにはなると思います。それは現実に言えるのでしょうね。

長沢メンバー
 そうだと思います。もう少し話をすると、社会貢献活動のテーマのようなものも、これから変わっていかなければいけないという認識を担当者の方たちは持っているようです。格好が良いようなテーマから、CSRのテーマになっているような人権の話、例えば日本に来ている難民の方たちの人権がどのように侵害されているか、あるいはドメスティックバイオレンス、ホームレス人たち、外国人労働者の人たちなど、そのような人たちを見ていくと、本当にどのように人権侵害があって、またどのようなニーズがあってというものを見て、それを商品開発につなげていくということができると思います。大久保さんの新聞資料に、ピースウィンズジャパンとテイジンの例が載っていると思いますが、これは技術者のインセンティブになっている話で、テイジンさんは最初しぶしぶやっていて、対話をしていくと、それが現場で役立つのだと目に見える形で表れて、嬉々としてやるようになったという話です。同じような話がソニーさんでもあり、私たちの技術がこんなものに役立つのかというのが開発のインセンティブになっているという例はたくさんあると思うので、そのようなことはどんどんやっていく方が良いと思います。

龍井メンバー
 特に労働組合は職場にある率というのは非常に低いので、コンプライアンスの問題があるところ、労基法が守られていないところ、違法な外国人を使っているところなど、そのような意味でも、問題はいくらでもあるのです。外に出て行くときの労働者、従業員の役割の問題と、労使関係のレベルにまでいかない職場と、たくさんあるのです。

足達メンバー
 まず確認したいと思います。長沢さんがテイジンさんの例などが挙がりましたが、これは良いことだろうと、この会のメンバーの皆さんはそのようなコンセンサスを持っていただけたと思いますが、そのような事例がもっともっと出てくるにはどのようにすればよいでしょうか。経団連さんが意見を募ったり、NGOなどに呼びかける方が良いのか、どのようなアイデアがありますか。

長沢メンバー
 つなぎ役が必要になると思います。実は今のテイジンさんの例は、私がつなぎ役をしております。NGOが直接行っても会ってもらえなかったという例があるので、仲介というものが必要になると思います。しかし、一つは、NPOやNGOの問題になるかもしれませんが、現場に基づく提案力がNPOやNGOには求められます。企業側はオープンになって対話をしていくしかないと思います。松下さんのグリンピースジャパンへの対応というのは、そういうことにつながっていった例だと思います。先ほどコミュニケーションとおっしゃっていましたが、やはりコミュニケーションが大切になると思います。

足達メンバー
 酒井さんに伺います。損保ジャパンさんも非常にオープンマインドで臨んでいると、報告書を読む限りでは理解していますが、保険商品は電気製品に比べるとなかなか難しいと思いますが、事業の種のようなものはそのような外からやってくるようなケースはございますか。

酒井メンバー
 保険の商品に直接結びつくのはなかなか難しいですが、今の話を聞いていて、仲介というのは非常に大切だと実感しています。それは、NPOと企業を結ぶ仲介もありますが、企業とステークホルダーを結ぶ仲介としてNPOさんが果たす役割というのもどんどん出てくるのではないかと思います。我々の報告書を読む会というのもステークホルダーを集めて企業と対話する会ですが、NPOにコーディネートしていただいています。直接やっていたらおそらく喧嘩になるのではないかと思います。私も想いを持って言っている言葉でも、直接話すと伝わらなかったりすることも、間に入っているNPOのコーディネーターの方が我々の意図をステークホルダーにうまく訳してくれたり、逆にステークホルダーの意図を我々にうまく伝えてくれたりしています。
 また、当社もNPOとの協働を色々としています。すぐに商品開発に結びつくという話ではないですが、社外の風に触れる、つまり色々な主張をされている方と手を組んで協働プログラムをすることによって、次の事業展開や、社員の発想のきっかけになることがたくさんあると思います。例えば、93年から市民のための環境公開講座というものを環境NPOと一緒に当社はずっと続けてきておりますが、その中で培った人脈をベースに、今度愛知万博にブースを出しますが、そのブースもNPOさんと協働で何かやろうと、市民講座の中で知り合いになっていったNPOの方と手を組んでいくなど、新たな事業展開につながるということはたくさんあると思います。
 資料の中で、従業員のところに何も書いていないというのは、私も非常に残念で、本当は太字で囲うくらい重要なセクターだと思います。また、将来従業員になるであろう学生さんや若者もステークホルダーグループに入れていただきたいと思います。我々にCSRに関して質問をしてくる方の中では学生さんは非常に多いのです。企業がどのように環境やCSRに取り組んでいるのかということに興味を持つ人が増えているのだと思います。そのようなアプローチをされた場合には、当社としてもしっかり説明していますし、また、環境NGOへのインターンシッププログラムも提供したりしていますが、そのようなところに学生さんが行っていただいて、企業も変わりつつあるということを感じていただくことが、長期的に見れば日本を変えていくのではないかと思います。

足達メンバー
 私も学生さんのところは、就職情報誌などでランキングをやる会社で、あなたの就職活動でCSRを意識していますかという調査をやっている例を見たことはないのですが、そのような調査が出てきて、学生さんが気にしていることがわかると、企業の方にも影響を与えるだろうし、マーケットの進化にもつながってくると思います。どなたか、そのような関係者の方がいれば是非やっていただきたいと思います。
 今NPOやNGOの話がたくさん出ましたが、これは黒田さん、坂口さんに伺うことが良いと思いますが、国内で活動をしているとは限りませんので、NPOやNGOに最も近い立場というところで、日本国内のNPOやNGOがこのようなマーケットを変える力が発揮しているのかどうか、期待などお聞かせください。

坂口メンバー
 シャプラニールは海外を中心に国内でも様々な活動をしていますが、海外と国内の取り組みをうまくリンクさせて活動しております。大久保さんの発表にもありましたが、まずNPO、NGOについて、NPOがどれだけCSRに関心を持っているか。よく名前の出てくるグリーンピースさんやアムネスティさんのような、アドボカシー系のNPO、NGOをもってCSRに取り組んでいると言ってしまって良いのかという疑問があると思います。
 ご存知のように、NPOと言っても日本の法律で17分野あります。NGOと言ってもアドボカシー系もあれば、我々のような開発系、研究系など様々な活動をしております。NPOをまとめて考えてはいけないのではないかという気がしております。NPOのCSRで、先ほど話にも出ておりましたが、どのようにCSRに託して協賛してもらえるようなイベントを作るかということを考えているところも多々あると思います。今までは社会貢献や環境でしたが、今度はCSRということで、どのように提案すれば企業と仕事ができるのか、また協賛してお金がいただけるのかということを戦略的に考えているNPOが多々あるというのがまだまだ実態だと思います。つまり、企業のCSRなり社会的責任をどのように改善していくかをミッションにしているNPO、NGOが全てではないということを理解していただきたいと思います。
 黒田さんのご専門だと思いますので是非お聞かせ願いたいのですが、先ほど大久保さんの発表でも、NPOは市民の代表だからとありましたが、一体何を持って市民の代表と言えるのかという正当性の問題があります。レジティマシーという部分で、これは国内外で非常に議論されています。特に保守系のところで、市民の代表だと言っているが、どれだけ信任を得ているのか、全国民、全市民の代表なのかということを突きつけられた場合に、私のところは4,000名いますと言っても、たかだか4,000名です。このレジティマシーの議論もNGO側として議論していかなければならないと思います。
 我々は海外協力の団体なので、主な仕事は海外、特に途上国にあるのですが、話を聞いておりますと、CSRが企業のマーケットが存在するところだけを対象に議論が進行している気がしてなりません。主にバングラデシュ、ネパールで活動しているのですが、そこにおける日本企業のCSRがどのような関係があるのかと言ったら、地球環境全般という意味では最終的には関係があるかもしれませんが、直接の関係は見えません。逆に、国際協力分野で言えば、今旬のイシューは国連が定義しましたMDGS:ミレニアム開発目標だと思います。貧困、保健衛生、教育など8つほどの分野があると思いますが、そのような分野に企業の方々がCSRとして何らかの取り組みをしていこうという芽があるかどうか、ないならばなせないのかというところも観点に入れていただきたいと思います。
 ステークホルダーについて、荒井さんがおっしゃいましたが、我々も企業に対して何をお願いしていくかという部分で、小さなイベントの協賛をお願いすることもありますが、どのように企業人を地域に返していくかということがあると思います。ちまたのNPOの問題としては2007年問題で、一斉に団塊の世代の退職者が地域に戻ってくることに対して、どのように彼らを受け入れていくかということが問題になっております。今まで企業人だった人間が家に帰ると、地域住民になり、父、母になりますが、企業人としてしっかりとCSRに取り組んでいる方が、家に帰り、一市民として他のステークホルダーになった場合に、ご自身で意識的にCSRに取組むかという問題があります。国際協力をやっていると特にそうなのですが、一つひとつの課題なり意思を外部化して、仕事として考えてしまいがちです。NGOの取り組みの中にもあると思いますが、もっと全人的に、一個人、一人間のためのCSRの意識化をたくさんの従業員を抱えている企業の中で、一人の人間の様々なステークホルダーの面を統一化するような動きが必要ではないかと思います。
 酒井さんが学生さんをという話をおっしゃいましたが、私はもっと下にいって、総合的な学習の時間にCSRの取り組みを売り込んでいったらどうかと思っています。先週も小学校に行き国際協力の話をしましたが、最近の先生は目が開けつつありますので、子どものときからエコマーク、単にゴミを捨てないようにしましょうではなく、企業としてそのようなところに入っていくことによって、マーケットしてではなく、一番小さなところから教育に関わっていく考えも持っていただきたいと思います。

足達メンバー
 アドボカシー系のNPO、NGOのCSRの議論が今前面に出ているが、マジョリティとしてはそれ以外の団体もある。確かにそうだと思いますが、それ以外のところはCSRの推進力、つまり企業の社会的責任の取り組みを進めていくための力になれるのかなれないのか、市場の進化を推し進めるプレーヤーとして有望な道はあるのか、そこは分けて考えてよろしいのでしょうか。

坂口メンバー
 なり得ると思うのですが、そこまでNPOが意識化されていないと思います。グリーンピースさんやアムネスティさんは全世界的、我々も世界的かもしれませんが、そうではなく、本当にローカルなイシューに取組む人たちというのは、企業イコール周りの商店街だったり、中小企業だったりします。そこからいかにご協賛をいただくかというところにとどまっています。当然として、中小企業にもCSRが議論されていかなければならないと思います。しかし、意識化されていない、すなわち企業が社会的責任を果たしていく、社会に貢献していくことに対して目をもっているが、大企業でも支店単位、営業所単位で取組もうとしているところまで意識化されていないと思います。それを誰が意識化していくか。確かに企業もあるかもしれませんが、先ほど長沢さんがおっしゃったように、媒介を取り持つ中間支援組織、あるいは経済団体かもしれませんが、そのようなところが取り持っていかなければ、上の存在の議論になっていくのではないかと思います。

足達メンバー
 もう一つ、マーケットがあるところばかりにCSR論が限定されてしまっているというご指摘も、非常に重いご指摘だと思いますが、これについて長沢さん、意見をお聞かせください。

長沢メンバー
 おそらく、おっしゃられている通りだと思います。関心は広まってきていることは確かだと思います。どのようなことができるかについて、我々社会貢献が担当している懇談会でも勉強しようということで、坂口さんのシャプラニールの代表に来てお話いただいたり、またミレニアム開発計画についてお話いただいたりなどをする予定です。例えば、今問題になっているのは三大感染症で、日本の企業はそこに全く目を向けて活動していないことが世界的に指摘されています。やはり、欧米の企業は自らの問題として、例えばアフリカのエイズの問題に取り組んでいるところがたくさんあると思います。日本の企業は、自分が活動しているフィールドとそうでないフィールドを分けてしまっているという印象があります。ただ、そういうところで我々のような団体や、同友会さんのような団体が役割を果たしていくべきだと思っております。
 もう一つ、CSRを推し進める上でNPOはプレーヤーになり得るかというところですが、具体的に可能性があることを言うと、障害者雇用の問題があると思います。障害者の方たちの問題を取り扱っているNPOと組んで推し進めている企業も出ています。そのよう意識化はされていないが、推し進める上で不可欠な存在になりつつあるかもしれないと私自身は感じております。

黒田メンバー
 今長沢さんがおっしゃった、意識化はされていないが、切羽詰ったところでやっているような企業は実はたくさんあると思っております。そのようなものはミクロレベルで行われていて、全体的にまだ見えてきていないのではないかと思います。今、NPOの実態と求められている役割とのギャップが開いてきているように思います。そこに身を置く私も様々な想いがあります。つまり、ミクロ的でなるべくプロジェクトができるものであれば、どうにか自分たちも活動していくことが出るのですが、それを超えた大きなもの、政策レベルだと思いますが、自分たちにもの力の不足はありますが、それをつなげていく能力が不足していると思います。それだけではなく、そのようなマクロ的なものをNPOが担っていく、例えば政策的なものにも入っていけるような合意形成がないと思います。何を言わんとしているかと言うと、NPO、NGOに今与えられている環境は、98年にNPO法人が取得できるようになりましたが、そのような制度的に不十分なところがありますが、NPOがそのような役割を担っていけるような環境や、環境づくり、制度づくりがまだなされていないと思います。その意味で、欧米のNGOと日本のそれとは、社会のインパクトや影響力の面を比較するのは難しいのではないかと思います。去年財務省の委託で経済産業研究所の職員の方が座長の委員会があり、そのレポートの中で私はイギリスを担当させていただいたのですが、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、日本を比べたときに、NPO、NGOが政策など非常に大きなところに入り込んでいく、いわゆるアドボカシーがメインストリーム化する、そのようなものを良しとする国の政策があり、そこに政治の意思があると思います。NPO、NGOに、そのような舞台がある程度用意されていて、その上で、うるさいことを言う団体も出てくると思いますが、それを良しとする社会的なものがあると思います。日本のNPO、NGOには一般の方からの信頼性が実はあまりなく、企業の方と話していても1時間経つとNPOは胡散臭いという話になってしまいます。言葉の上で企業とNPO協働と言っても、根の部分で市民に支えられなければならないと思います。そういった社会の中で信頼を勝ち得ていないという実情もありますが、NPOがもっとCSRの役割を担うべきだというのはその通りだと思いますし、そのようになれば良いと思います。先ほどから出ている、つなぎ役、これは単なるつなぎではなく、ファシリテートするということだと思いますが、例えば南米など色々なところでは対立しているコミュニティの住民との間にNPOが入っている例も最近聞いています。その意味でも、NPOが中間支援的な役割をきちんと担って、NPO自身もちゃんとご飯が食べられる環境が必要なのではないかと思います。

足達メンバー
 今の話の中で、国の政策の中にNPOをポジティブに位置付けているというのは、日本にとって示唆的な発言だと思います。どちらかと言うと、日本はネガティブな雰囲気が強いと感じております。

大久保メンバー
 今までの議論で言うと、2つあります。私の資料の14ページです。
 企業とNPOが戦略的な行動をとっていかなければならないことです。NGO、NPOの方と勉強会をしていると、最終的に同情論のようなものになり、それでは戦略性がないので、黒田さんのご指摘のような話が出るのだと思います。
 その際に課題が2つあります。先ほど企業はもっと広く見るべきだという意見がありましたが、私は反対しております。企業は本業を通じて社会貢献を行うべきであり、細かいことをやると中途半端になったり、打ち切りになったりするのだと思います。
 その背景にあるのは、社会貢献に対する価値観をどのように醸成するかという問題があり、これは良いか悪いかの議論ではありません。社会貢献に下心があってはならないという日本人的な価値観があり、あえて本業とは違うところで貢献事業をしています。これは、欧米とは決定的な違いです。結果としてみれば良いか悪いかはわかりませんが、欧米の場合は本業と価値観が一致するところで、それゆえ巨額の投資を行い、景気が悪くなっても継続しているという事例が見られます。松下さんも含め社会貢献事業をたくさんやっているのはわかるのですが、それをわざとアピールいていないように思います。それが日本人的価値観だと思います。中国は顕著ですが、アメリカの企業に比べると松下さんの方が明らかに社会貢献をしているのですが、しかし中国側から見るとアメリカの企業の方が、イメージが良いのです。
 したがって、企業はそのような社会貢献事業を体系化していくことが必要で、体系化していけば、必ず行き着くところは社会のあり方だと思います。例えばワクチンの問題にしても、その地域において感染症がなくならなければ従業員が雇用できない問題になると思いますし、労働需要が崩壊すると従業員はどこに行くのか、もっと劣悪な工場に行くのか、それとも教育に向かうのか、では教育をやらなければならない。このように体系化すれば、良い社会をどのように構築するかに行き着くはずです。単発的にやることによって、体系化されないという問題が出てくると思います。したがって、本業を通じて行うことによって、企業はどのように体系化するかが重要だと思います。
 一方で、NPOに関して、自分自身は現在やっていますが、懐疑的なところから出発しました。現在のNPOは人材と資金が圧倒的に足りないという問題を抱えております。資金面に関しては、政府が国益の部分として、政策としてもっと行っていくべきだと思います。例えば国連などが政策を打ち出すときには、まずNGOに説明してから発表しています。したがって、もう少しこの部分は手を加えていくべきだと思います。また、具体的な手段としてどうすべきかということも考えていく必要があると思います。これら双方がコミュニケートしていけば、NGOと企業が共生していくのではないかと思います。

齊藤メンバー
 NPOの議論が盛り上がっていますが、実は、本日午後から経営者を集めて、登校拒否をしている児童をケアしているNPOの現場に訪問する予定です。先ほどの、アドボカシー系以外のNPOがドライバーになる、また社会の風に触れさせるということで、私の今までの経験を申し上げます。
 以前に、ドメスティックバイオレンス問題のNPOに経営者を対面させたことがあります。そうすると、新聞やテレビでは知ってはいても、実際に話を聞くとショックを受けます。そのうちに、実は社員の中でそのような経験をしていた人がいて結局辞めてしまった、企業もやはりそのようなことに対して取組んでいかなければならないなどと発想がどんどん膨らんでいきます。あるいは、NPOが人的、金銭的な問題で悩んでいると聞くと、経営者の立場からその改善策をアドバイスから始まり、例えば2007年問題で悩んでいると、社員でそのようなことに得意な者がいるから、キャリアの中にどのように活かしていくかなどと、やはりどんどん発想が膨らむのです。これは社会の風に触れることがきっかけになっているのです。最初は小さいかもしれませんが、そのような社会に隠れているニーズをNPOが発掘するという役割があると思います。その発掘したニーズを、企業はただお金を出すだけではなく、事業の中に組み入れていくことが重要ではないかと思います。

足達メンバー
 経済同友会さんは、例えば役員室を開こうなど、そのようなプログラムを体系的に取組んでいるのですか。

齊藤メンバー
 いえ、まだそこまでは行っていません。単にお金を出すだけではいけないのではないか、ではどうすれば良いのかという一貫として、今は色々なことを見てもらおうというところから始まりました。例えば、役員室を開くことでは、ヨーロッパに行ったとき理論付けがうまいと思ったのは、社員を学校などに派遣して色々な研修をすることなどをやっています。これは社会貢献でやっている反面、実は社員にコーチング技術を身に付けさせ、それを企業の従業員の教育やリーダーシップに役立たせています。他にもまだ色々なことをやっています。日本の場合は良いことをするから、しないからという二元論になってしまっているので、そのような理屈付けも重要ではないかと思います。

足達メンバー
 社員だけではく、エグゼクティブの方ももっと社会の風に触れる方が良いのではないかと思います。山田さん、いかがでしょうか。

山田メンバー
 戦略的な行動、誰がステークホルダーであるか、社会のつなぎ手としてのNPOについて話したいと思います。
 秋山さんと荒井さんの話で、両者とも環境配慮型製品に非常に熱心に取組んでいると思います。ステークホルダーが誰かということで考えると、前回エコマークの調査データを紹介しました。認定企業である複写機、プリンターの事業者様にはエコマーク商品を多数取っていただいており、市場調査の一つとしてあなたの顧客はエコマーク商品に関心を寄せていますかというアンケートをさせていただいております。それに対して直接の顧客である事業者、BtoBの商品だと思いますが、事業者は非常に高い関心を寄せている回答を得ていますが、その実際のユーザである消費者の方がエコマーク商品に関心を持っているかという質問に対しては、よくわからないという回答が3割以上で、ほとんど関心がないのではないかという回答が3割程度、高い関心を寄せているという回答がゼロでした。実際の顧客は一般消費者ではないので、戦略性という意味からは合理的であるかもしれません。しかし実際に使用する一般のユーザの方が高い関心を持っているかと言えば、よくわからないという回答が3割以上という結果が出ています。
 荒井さんの話にもありましたRoHS指令に力を注ぎ、対策をしているのが現実であるかもしれませんが、電機関係の事業者の方が大変な企業努力を持って取組んでいるのは存じ上げているのですが、一般のユーザの方が、RoHS指令で禁止される鉛などの特定物質が、人体や環境にどのような影響を及ぼすか、なぜ禁止されるのかまでは、日本の市場ではほとんど関心が寄せられていないのが現状であるともいます。BtoB製品の事業者様にとってステークホルダーとしては一般の消費者は直接の顧客ではないと思いますが、しかし実際にその先で使用する方が関心を寄せないと、企業だけががんばっても、好循環は生まれないと思います。
 長沢さんの、つなぎ手が必要であるという話で、エコマークもそのような役割を果たしていかなければならないと思いますが、複写機や家電製品などの複雑な商品になればなるほど、どんな環境対策を行っているのか、要求される項目が多岐に渡ってきます。一般の消費者の方がこれらの専門的な話をするのは極めて難しいことだと思いますが、市民社会の中から盛り上げていかなければいけません。企業があり、つなぎ手としてのNPOがあり、一般消費者、市民社会があり、それでうまく循環させていかないといけないと思います。
 我々事務局の調査で、エコマークはどこと連携していくべきかという質問に対して、行政という回答が非常に多かったのですが、企業や流通ともっと協力体制を深めていくべきだという回答がたくさんあったので、今後はそれに力を入れていかなければならない、NPOとしてつなぎ手の役割を果たしていきたいと思いました。

足達メンバー
 それをどのように突破するかが問題ですね。

荒井メンバー
 ステークホルダーに関して話したいと思います。
 大久保さんの話で、NPOには人と金がないとありましたが、企業には人と金が有り余りすぎるほどあります。これはパワーなのです。まずはここからスタートしなければならないと思います。私の仲間で、ピーターセンというコンサルの社長がいますが、そのひとのアイデアを少し広げて考えていることが3つあります。
 どのようにすれば、企業や社会が動く原動力になるか。一つ目は、ファンをつくること、ブランドです。二つ目は、金、投資という視点で企業を育てていくことです。三つ目は、マーケット、購買行動です。この3つで企業や社会が動いていると考えたとすると、今日出た議論で是非要請したいことは、時間軸を持ってものごとを考えるべきであるということです。
 今申し上げた、一つ目と二つ目は長期的に考えなければならないことです。しかし、我々が直近の課題として求められていることが、マーケットとの関係性だと思います。お客様が我々の商品を選んでいただけるのかというところが即効力のある話として、まずは我々が考えていかなければならないことです。それとは違う次元で地道に積み上げていかなければならないことも必要だと思います。
 三つ目の切り口として、我々が現在取り組んでいるCSR、環境活動を一般の人たちにわかっていただくこと、そこがおそらく非常に距離感があるのだと思います。そこに、NPO、エコマークなどのマーキング、お墨付き、仲介役が必要なのではないかと思います。
 一つの事例として、私の中でマーキングとして注目しているのは、省エネ大賞です。これはお墨付きなのです。我々は大手を振って8割から9割をかけている広告宣伝の中に金色のマークをつけて、我々の商品の中に社会的に形を担保していただいているのです。そのような直接的な我々のアプローチを、CSRではどのようにできるのか。色々と考えてきたのですが、今日は止めておきます。
 また、今日の議論におけるポイントの一つに、社会の風に触れることがあります。先日、生態学会で話をするのに、釧路に行きました。その際に釧路湿原を見ながら、私はこの自然を守るために仕事をしてきたのだと感じました。何でこのようなことを考えずに企業で働いていたのだろうかと思いました。つまり、社会の風に触れていなかったのです。したがって、その関係性を理解していないのです。本業か本業ではないのかに対して答えはないのですが、その関係性を整理するというプロセスを我々は今しなければならないと思います。第1回目に少し話したのですが、CSRとは何かと聞かれると、色々あるのですと答えながらも、我々なりに整理してきて、企業の中に連絡会を作りました。我々は色々な部門でそれをしているのですが、今度はわからないということです。結局わからないのです。例えば、携帯に使っているものが、実際に影響されている部分、そこの関係性をつないでいかなければなりません。そこにNPOなどの基軸が必要なのではないかと思います。お金の話もしたかったのですが、今日は控えさせていただきます。

足達メンバー
 せっかくご用意していただいたので、後で事務局が聞きに伺います。

大久保メンバー
 NPO、NGOを評価する仕組みを考えるべきではないかと思います。企業の中では政治や政策に非常に無関心だと実感しています。その経緯で団体を立ち上げたのですが、企業の方は入ってくれません。そのような関心のない人たちが社会についてどのようにするかを模索され始めたときに悩むのは当然です。ニュー・パブリック・マネジメントという行政の成績評価にも使われている指標がありますが、そのようなものを企業側は勉強しながら、NPO側はそれを取り入れていきながら、きちんとNPOを評価していくことが大切だと思います。結果として、社会に役立つためには経済性の議論と有効性の議論を明確に分けていかないと、それを混在して議論すると、外側が非常に混乱するので、行政改革以降非常に良い手法が起きてきているのでそのようなことも入れてはどうかという提案です。

足達メンバー
 今のところはまた大議論を呼び起こすところだと思います。五所さん、どうぞ。

五所メンバー
 NPOの立場として発言させていただきます。やはり人と資金はないと思います。我々環境経営学会は、専門家、企業に勤めている方、技術者の方、私のように監査法人に勤めている者まで様々な人が集まっていますが、それぞれ認識が異なります。したがって、みんなでコミュニケーションしていくことが非常に重要だと思います。それがNPOとしての存在意義を高めるものだと思います。逆に、我々がやってきている、例えば環境格付けを通して、企業の方と対話を持つことは、市民としての考え、そして専門家としての考えを反映させた上で、企業の方と話すので、それは橋渡しだと思っています。また、それをきちんとやっていくことがNPOの意識を皆さんに認識してもらうことになると思います。このNPO、NGOの存在を意識してもらうことは、市民、企業、政府などに対して発信していかなければならないと思います。
 今評価という話がありました。企業、NPO、NGOがやったことに対する評価は重要だと思いますが、しかしここで重要なことは多様性を認めない評価をしていけないことだと思います。ポジティブに評価していくことが重要で、ネガティブなところでつぶしてしまうのは良くないと思います。ポジティブな評価をする中で、それは自然に淘汰されていくものだと思います。

秋山メンバー
 私は基本的には人が重要だと考えています。私が知っている総務省の方は足長おじさんのような形で東南アジアなどに援助することを広める活動をされています。ここにいるメンバーの方も、企業人、行政人としてではなく、個人として、社会人として様々な活動をしていると思います。その意味で、事務局のマトリックスでは、消費者、従業員など実践で区分されていますが、その枠を越えて人が横断的に動くことも見逃してはならないことだと思います。我々の会社の事例でもそうなのですが、いわゆる9時から5時まで労働時間がありますが、その就業時間が終わって夜ではないとNPO活動ができないというわけではないと思います。企業の中に仕組みとして、そのような意識を持っている社員が活動できるような形をつくっていかなければならないと思います。我々にも、例えばボランティア休職制度、介護休職制度などがあり、また会社の施設を提供するなども行っています。ただし、目標値を決めて、いくら投資してどれだけの効果があったということを絶対にしてはいけないと思います。企業として仕組みを作ることで、そこで働いている方がその制度を活用しながら様々なサービスを提供するという形が良いのではないかと思います。あまり話す時間もございませんので、とりわけ人が重要だということについて申し上げました。

龍井メンバー
 先ほど時間軸の話がありましたが、実際に起こっていることを見ると、投資ではなく、もっと短い時間で動いていることについて我々がどのように役割を果たしていけるかということの方が問題だと思います。逆に、短期の判断、マーケットというところも、実際の売買というところで必要です。ですが、その中の価値観にどれだけ中長期的、情報開示的なものを目指せるか、それが大きな課題だと思います。
 また、人ということを今おっしゃいましたが、4つ目の軸として人材を入れていくことが必要だと思います。これも短期的なスパンか長期的なスパンかで、企業経営の中で分かれてきます。したがって、従業員という言い方で、働き手がひとくくりになっていることが問題なのです。先ほどおっしゃられた、社会の意味は変わっても、これは業界なのか、地域なのか幅広い、先ほどおっしゃられた仕組みとはこのようなことです。
 その時に、労働組合という、これは影響力がないのか、マトリックスに枠がありませんが、労働組合がつなぎ手になる可能性があります。そこで、マトリックスを広げることで可能性が開けてくるかもしれません。

事務局(川野補佐)
 行政と言うよりも、個人的に話します。先ほどのマトリックスに行政が入っていなかったのですが、行政もある意味ではステークホルダーだと思います。
 本日は社会的な議論が活発でしたが、環境も当然あり、その上に立って、その中で何をするか判断が求められるのではないかと思います。
 先ほど、学生さんの話がありましたが、今年の環境白書で調べた結果、環境に関した学部の学生さんがこの10年間で3千人から3万人と10倍に増え、非常に楽しみだと思います。
 今朝の新聞にも、RoHS指令について環境省が基準を決めていくことが出ていましたが、これも、鉛とは何かではなく、なぜ6物質を規定するかという点について消費者にもっと理解してもらいたいと思います。持続可能性、環境公平性という意味で、廃家電の中に含まれる6物質がいずれは廃棄物にされ、我々の将来の世代が被害を被るということを、エコジャスティスという面でもっともっと知らしめる必要があると思いました。
 感染症に関して、最近環境と医療について勉強しはじめました。日本の医療は感染症から生活習慣病にシフトしており、先日も葉山のハートセンターに行ってきました。そこは心臓外科の手術をするところですが、全室オーシャンビューの病室で、そのために入院が他よりも3倍近く短くなることを聞きました。アメニティ、環境の中での医療が回復に与える影響もあることを非常に感心しました。現在医療マーケットは30兆円ほどあるそうですが、平成14年に環境ビジネスの市場を調べたところ、それも同じで30兆円くらいあります。今や安全・健康・安心も環境の分野に入ってきているという意味では、非常に近いものがあると思いました。
 次回のテーマは海外になりますが、その中でも環境、軍事、先ほどのRoHS指令だとppmオーダーの物質の中でダイオキシンがありますが、PBBという非常に有毒性のあるということで、そのような問題、また地球誕生から40数億年という還元期を持つ劣化ウランなど、環境に対する非常に大きなプレッシャーがあると思います。皆様の話を聞いていて、そのようなことを感じました。

後藤スーパーバイザー
 大久保さんの話で、CSRの正確な概念がないというのはその通りだと思います。最近講演を頼まれると、CSRはサステイナブル・ソサイエティとして話します。その時にCSR from society sideとCSR from Business sideとに分けて話します。
 大久保さんの話で、日本ではコンプライアンスだとして意義付けることが多いとありましたが、確かCSRの取組に対する経団連の定義では企業の取組という定義でした。しかし欧州では、定義ではないですが、共通するものとして、相互交流ということが書かれています。その意味で、日本と欧州では根本的に違っていると思います。
 私自身は、CSRはサステイナブル・ソサイエティであり、企業、NPOなど社会、政府の関係性の見直しだと考えています。このところの整理をする必要があると思います。その意味で言うと、事務局のマトリックスには、企業と政府が抜けており、プラス各セクターのステークホルダーの分類がこれにはとどまらず色々あるという形だと思います。政府の失敗と言われますが、関係性の見直しの中で、社会のガバナンス、統治という意味ではなく、亡くなられた小渕さんが訳された協治という意味で、政府、企業、社会で整理をする必要があると思います。
 (スライドを見せながら)サステイナブルの定義は、国立科学研究所の亡くなられた森田先生たちが79年以降のサステイナブル・ディベロプメントの定義を集め整理したものがあるので、それを使えばよいと思います。
 ステークホルダー論とは別に、企業サイドのCSRの観点で、資料にはなく、無形資産をスライドで見せましたが、実は企業にとって極めて重要なもので、有形資産と無形資産では無形資産の方が企業での比重が高くなっています。経産省さんが今年の10月に出された通商白書の第2章にこのことが書かれています。ここは企業サイドにとってはCSRの意味は何なのか、from Business sideという観点で、社会貢献は意味がないと思いませんが、基本的に本業の企業価値の問題であるという捉え方をする必要があるのではないかと思います。
 関係性の見直しという観点で、NPOの問題は黒田さんのおっしゃった通りであります。明治時代に民法を作ったときの法制審議会で、要するにNPOは作らせないという社会システムを日本は作りました。それを100年続けてきました。今世界を見ると、政府、NPO・NGOで代表される社会、企業という関係性の見直しの中で、100年以上NPO・NGOを作らせないという社会システムできていて、突然作れと言っても無理です。数はたくさんあるが力はないというのは事実だと思います。私は5つほどNPO・NGOの代表幹事をしていますが、全部無給ですし、活動の交通費も実費でやっています。私はたまたま余裕がありますが、2007年以降はそれでは成り立たないと思います。したがって、ここは社会、政治の意思として、つまりCSRを関係性とすれば、政府がどのような役割をするかという中で、NPO・NGOをどのように作っていくかという観点でも、我々の次の世代がある程度成り立つというようなものを作っていかなければならないと思います。このような各NPOの役割の前に、社会システムの課題があると思います。

足達メンバー
 スーパーバイザーとして発言をいただきました。
 本日は大変大きな話になり、環境省さんは心配されているのではないかと思います。次回はアジアのことです。特に意図があるわけではないですが、日本の中のCSRを進行するために、アジアの人たちが、例えば日本の製品、環境特性を評価してくれる、そんな例があるのではないか、そのような期待感からそのあたりのことを追ってみたいと思います。次回はアジアのステークホルダーの立場から、日本企業にメッセージはないか、そこに何か期待感があるのならば、日本型のCSR、環境経営と、アジアの持続可能な循環型社会とがリンケージを取っていくことができるのではないかということに焦点を当てて議論していきたいと思います。坂口さん、黒田さんからご発表いただこうと予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 次回は12月22日、14時から環境省の22階の第1会議室で開催いたします。
 それでは、第3回研究会を終了いたします。

以上