環境省総合環境政策社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会

社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会
企業におけるCSRの取組の現状について(第2回)
議事録


  1. 日時:平成16年10月27日(水) 14:00~16:00
     
  2. 場所:経済産業省別館 944会議室
     
  3. 出席者
    メンバー(敬称略、五十音順): 9名
    足達  英一郎
    大久保  和孝
    黒田  かをり
    五所  亜紀子
    齊藤  弘憲
    酒井  香世子
    坂口  和隆
    龍井  葉二
    山田  真理子
    スーパーバイザー(五十音順、敬称略): 2名
    大木  壮一
    後藤  敏彦
    オブザーバー(五十音順): 4名
    厚生労働省2名
    経済産業省1名
    事務局: 6名
    西久保  裕彦
    川野  光一
    瀧口  直樹
    石川  宣明
    藤原  敬明
    島川  崇
     
  4. 議題
    (1)企業の環境格付けとその活用の可能性
      ・日本環境経営学会 五所 亜紀子
    (2)損保ジャパンのCSRコミュニケーション ステークホルダーとの「対話」・「協働」
      損害保険ジャパン CSR・環境推進室 室長代理 酒井 香世子
    (3)消費者意識とエコフレンドリー製品
      ・日本環境協会 エコマーク事務局 山田 真理子
    (4)企業の社会的責任と労働組合
      ・連合 総合政策局 総合局長 龍井 葉二
    (5)質疑応答・意見交換
     
  5. 配布資料
    資料2-1 議事次第
    資料2-2 メンバー名簿
    資料2-3 座席表
    資料2-4 企業の環境格付けとその活用の可能性
    資料2-5 損保ジャパンのCSRコミュニケーション ステークホルダーとの「対話」・「協働」
    資料2-6 消費者意識とエコフレンドリー製品
    資料2-7 企業の社会的責任と労働組合
    参考資料
     ・CSRコミュニケーションレポート2004(株式会社損害保険ジャパン)
     ・エコマークをみつけてみよう!(財団法人日本環境協会)
     ・環境にやさしい買い物をしましょう。(財団法人日本環境協会)
     ・FeEEL(財団法人日本環境協会)
     ・発見!あなたの身近にエコマーク(財団法人日本環境協会)
     
  6. 議事内容(発言者ごとに発言内容を記述):

事務局(川野補佐)
 皆様揃いましたので、第2回の研究会を始めたいと思います。今回は全5回の会合の内第2回でございます。課長である鎌形が本日急用のため欠席させていただきます。申し訳ございません。
 前回CSRの取組へのメリットが見えてこない、ステークホルダーからのプレッシャーが感じられない、CSRの定義がはっきりしないなど皆様方のご発言で様々な課題が出て参りました。その中で、同友会の齊藤様から市場の進化、社会的責任経営を提唱していただき、松下電器の荒井様からも事例と致しまして、日経新聞の経営度ランキング、海外のグリンピースからのプレッシャーなどを挙げていただき、また大木様からCSRの分配論の視点という新しい考え方など様々なご意見をいただきました。そのようなご意見を踏まえ、本日のテーマでございます、ステークホルダーの意識と取組の現状につなげていきたいと思います。本日も皆様方の闊達なご意見をいただきまして、私どものこれからの様々な検討課題にしたいと思っております。よろしくお願い致します。
 それでは、日本総研の足達様を進行役として研究会を始めたいと思います。

足達メンバー
 これまであまた官庁さんの会議が開催されている中で、どこに視点を合わせるのかということで、第1回にも触れさせていただいたと理解しておりますが、どちらかと言えば、どうやってこのCSRという概念、多少ぼんやりとしたところがあるにせよ、個々の環境の問題、あるいはグローバリゼーションへの対応の問題など個々の問題が進むだろうかというところに関心を当てていきたいと思います。
 前回、世の中は着々と良い方向に進んできているというようなポジティブな意見が出ていたと記憶した上で、本日第2回は敢えてステークホルダーの側の意識がどこまで変わってきているだろうかというところに焦点を当てて、金融という観点から酒井さんに、コンシューマという観点では山田さんに、日本では働く人はステークホルダーだというのは分かりにくいと言われていますが、龍井さんには、連合という立場よりも、むしろ働く人の意識がどのように変わってきているか、そしてそれがCSRとどのように結びついていくのかについて、そして五所さんには環境格付け、環境格付け機構さんの背後にはどのようなステークホルダーがいるのかということについても含めて、総括的に企業を評価するということの背景にある人々の意識という観点でお話をいただければありがたいと思います。
 所見を先に申し上げると、社会的責任投資などについても私自身係わり合いを持っておりますが、やはり投資家、消費者、我々一人ひとりも同様ですが、その意識がなければ、それを代弁するマーケットに働きかける主体の力だけでは、大きく世の中が変わっていかないのではないかということも常日頃考えております。その接点としてどのような動きがあるのかということについて、是非リアリティのある話を伺いたいと思います。
 それでは、資料の順番に従い、五所さんから発表をお願いしたいと思います。

五所メンバー
「企業の環境格付けとその活用の可能性」について説明。

酒井メンバー
「損保ジャパンのCSRコミュニケーション ステークホルダーとの『対話』・『協働』」について説明。

山田メンバー
 「消費者意識とエコフレンドリー製品」について説明。

龍井メンバー
「企業の社会的責任と労働組合」について説明。

足達メンバー
 酒井さんの話で驚いたことは、海外からは評価されているということです。これは海外の投資家には、損保ジャパンさんの取組のメリットが返っていることの例だと思います。コミュニケーションされると色々な好意的な意見が返ってきているということでした。
 一方、山田さんの話では、資料2-6の11ページにあるように、法人では90%以上がコピー紙などを注意して購入しているが、一般消費者では40%程度であるということに驚きました。法人がなぜこのようなことに注意するかといえば、その先にある消費者が自社の取組の評価を先んじてこのような行動をしていると思います。しかし、消費者の意識は低いのです。このことは、日本の企業は積極的にCSRに取り組んでえらい、と海外の人たちに日本のCSRに対して誉められる所以であると思います。
 このように、前回に斎藤さんがおっしゃった企業の進化という考え方、すなわち企業がある先行的な取組を行うことがマーケットで支持をされて、さらにそれをメリットと感じてWin-Winの関係で回っていける、それを実現できているステークホルダーもあるのかもしれませんし、まだまだ実現できていないというところもあるかもしれません。
 企業はこれからどのようなことに取組んでいけばよいのかについては次回のテーマとなりますが、そのようなところも含めて皆様から感想でも、ご意見でもいただいて議論を進めたいと思います。

大久保メンバー
 五所さんに4つの質問をしたいと思います。その上で考えたいと思っております。これは問題提起であって、五所さんに対する批評ではありません。問題提起というのは、ステークホルダーの位置付けがあいまいではないかと思ったからです。
 一つ目として、サステイナブルの対象をどのように捉えていますか。企業の持続可能性なのか、社会の持続可能性なのかということであります。企業のサステイナブルと言いつつも、社会のサステイナブルということを言っておられたと思います。環境格付けでやられているサステイナブルはどのように捉えればよいのでしょうか。

五所メンバー
 まずは企業の取組をきちんと評価して、その結果企業がバージョンアップすることによって社会に影響を及ぼすということです。つまり、一つの集団をきちんと評価し、それがある程度のレベルに行くようにすることであります。

大久保メンバー
 二つ目は、資料2-4の9ページ目に、企業経営格付けはサステイナブルであるという定義されている上で、海外のCSRを取り込んでいると言われていました。サステイナブルとCSRとを分けて使っているように思うのですが、ここで言うCSRはどのような意味でしょうか。

五所メンバー
 これは我々の中で色々と議論があったのですが、そこではCSRにおける社会的な側面にはどのようなものがあるかということがありました。これは企業の方々や立場によって色々な考え方があります。従来からあるもののバージョンアップや、新しいものを加えようとするときに、今の情報や流れもあり、それらは企業から見たもの、我々審査機関から見たものなど様々であります。それをどのような方向性でいくのが、短い時間で皆さんがよい取組をしているかを話し合った結果がこの評価の中に現れていて、それをCSR関連の評価というやわらかい形でまとめております。

大久保メンバー
 三つ目は、企業の持続性となると、経済性の論理をなくしてそれはあり得るのかということです。例えば、自動車会社が10年後に車輪がない車が飛ぶような車を作っていたら、その自動車会社が技術面で生きていけるのかということです。そのような技術のIR的な側面をどのように見るのかというところで、評価項目のところで経済だけを抽出しているように思います。それはどのような趣旨に基づくものかということです。

五所メンバー
 これも議論しあったのですが、経済性を評価する環境会計の部分を今回は省いております。まず、ツールではなく本質的な状況をつかむということを趣旨にして環境会計を除きました。もちろん評価・分析していくツールは重要だと思っております。今回は残念ながらそれを入れておりません。

大久保メンバー
 四つ目として、環境格付けという名前が経営そのものを対象にしているのではないかと思います。なぜ環境を強調されているのでしょうか。これ以上長くなるといけませんので、この質問に対する答えは結構です。
 実は、サステイナブルとCSRという言葉の使い分けが非常に難しくなっており、サステイナブルとCSRはイコールではないのではないか、必要要件と十分要件の関係はあったとしても、必ずしもイコールではないのではないかと考えております。
 また、サステイナブルという言葉もどこにステークホルダーを位置付けて見るのか、企業のサステイナブルなのか、社会のサステイナブルなのかということも見ていかなければならないのではないかと思っております。企業のサステイナブルの場合、企業は将来どのようにやっていくのか、技術IRまで入れると限界があり難しい。そうすると企業が取組み出せるのは、CSRとして社会に対してどのように責任を果たしていくのかという整理があると思います。
 一方で、社会のサステイナブルの場合、諸外国のCSR議論はどのような社会を築きたいかという価値観が非常に明確になってきているという印象があります。例えば、EUならば域内のメルクマールとして位置付け、私が先日訪問した中国であれば科学的発展感というキーワードを持っているように思います。しかし、日本の場合、どのような社会を築きたいかという議論がなされないまま、(CSRという)言葉におっしゃっている方々の価値観が出ていて、したがってCSRがどこを目指しているか分からないのだと思います。
 このような政策的議論の中で、CSRの目指すべき方向性として、どのような社会を形成すべきか、議論をしても良いのではないかと思います。一方、企業の議論をするのであれば、もう少しCSR的な議論があるべきなのではないかと思います。これはあくまでも問題提起であります。

瀧口補佐
 我々の関心も、大久保さんがおっしゃったことに近いところがあります。例えば、格付けの中で、倫理という言葉が出てきますが、その倫理性とは一体何なのか。ヨーロッパとは違った視点があって格付けされているのではないか、ではその違う視点は何なのか。おそらく、大久保さんがおっしゃったように、ある社会を作るべく、その中で企業はどうあるべきなのか。理想の企業、企業像のようなものがあって、その上での格付けなのかという印象があります。その関係はなかなか難しいと思っております。大久保さんがおっしゃるように、経済性抜きの企業の持続可能性は有り得ないと思いますし、だからといって、龍井さんがおっしゃるように、短期的な利益だけで社会的に反することがあっても仕方ないような行動をとることが良いのか、しかしそうではないと思います。では、その時にどのような関係が成り立つのか。我々も考えているのですが、議論いただきたいと思っております。例えば格付けで、どのような企業像があるのか、社会像を念頭においてこのような一つ一つのメルクマールを選ばれているのかを五所様に伺いたいと思います。

五所メンバー
 私個人の意見も入れてお答えしたいと思います。個人的には技術は重要だと思っております。環境経営を行う上で経済性が前面に出ますが、効率的な取組を行うにはそこに技術がかかわってきます。その社会性、経済性、環境性のベースとなるものは、倫理観といった哲学的なものが重要になると思います。企業経営者はそのような哲学的なものを持って、企業経営を行っているはずだと思います。それを効率的に行うときに経済的な配慮をしたり、社会的な配慮をしたりすると思います。自社だけで良いのではなく、色々な企業とお付き合いしながら、提携しながら、協力しながらやっていくので、そのようなところで環境も社会的に配慮することが重要になってくると思います。
 そのような倫理観というものは非常に重要なのですが、今回の格付けの中にはそのような哲学的なものは入れていません。そのような熱いものが重要で、その熱いものは人それぞれ違うと思います。それを話し合う場がなかなかありません。特に日本からはそのようなものを発信しておりません。まずは、環境経営学会という場で、熱いものを持っている様々な人が集まり、評価軸を通して話し合うことが大切なのです。
 このような企業であれば、このような企業が集まれば良い社会ができるのではないかという熱い思いを持った人が集まり、評価しております。そのことが重要だと思います。今回はこれがベストではないと思いますが、このような評価軸となっております。実はこれで終わりではなく、我々もスパイラルに上がっていかなければなりません。それを企業の方とも話しますし、評価軸を作成する我々も勉強しながら、こうあるべきだという熱い想いをどんどん入れていくことが環境格付学会の意思であると思います。

足達メンバー
 前回の斎藤さんの、同友会の自己評価指標はあくまでも企業が自己評価するためというように目線は企業にあり、龍井さんの場合働く人という目線があり、山田さんの場合消費者のためという目線があるわけです。この環境格付けの考え方では、誰か特定のステークホルダーの意見を代弁しているというわけではなく、議論している人たちがマルチステークホルダーで、代弁ではなく我々が決めるのだという感じなのでしょうか。

後藤スーパーバイザー
 運営について、皆さんのプレゼンテーションが長いのでもう少し短くし、議論の時間を十分に取ったほうが良いと思います。
 サステイナビリティとCSRの定義についてですが、サステイナビリティの定義はISOでも議論されているように、まだ計測法がないのでしないということになっております。したがって、サステイナビリティとCSRの議論をし出すと止めようがありません。
 国立科学研究所でも79年以降のサステイナブルディベロプメントの定義を集め整理をしております。今から集めてもそれを何十にでも作れますので、その議論をしても仕方ないと思います。
 環境格付けに関わっている身分から申し上げますと、環境格付けにおけるCSRはサステイナブルソサイエティでございます。欧米の格付けが主観で、日本のそれが主観ではないという議論もありますが、端的に言うと格付けというのは全て主観でございます。その意味で、アンケートを作っている人たちの主観の集合がどれだけ客観性を持てるようなアンケートになっているかに拠ります。その場合、欧米の格付けは一人のリーダーを中心として行うものなので、極めて主観性の強いものになります。それに対して、日本の格付けは集団で作成するので主観性が弱くなります。言い換えれば、かなりの人たちによる主観の集合になっております。しかしながら、格付けが主観的であることには変わりありません。
 足達さんの話で、会社のCSRについて社会の評価がないと意味がないとおっしゃいました。その意味で、損保ジャパンさんの欧米の評価が高いというのは良いことです。欧米の場合、社会の声の代弁をNGOなどが行っています。日本は歴史的にそのようなものを作ってきませんでした。この流れでは残念ながら社会の評価が見にくいと言えます。その中で、社会の評価というものを、フェイストゥフェイスでやればステークホルダーダイアログが一番実感しやすいというのは分かるのですが、(損保ジャパンさんの資料の中でステークホルダーダイアログが社会の評価として書かれていることは、)非常に限定的であると思います。これが社会と言えるか。これはその方々の評価で、社会に通じるような評価がこの日本であるのかというようなことについて、(酒井さんが)実践している中で感じることがあれば、お話いただきたいと思います。
 また、エコマークについて、環境に良い商品を買いますかというアンケートの中で、誰も買わないというのは分かっていたことだと思います。山田さんの個人的な意見で結構ですので、これに対してどうすればよいと思いますか。

酒井メンバー
 非常に難しいです。海外SRIからの調査や評価は社内を動かす外圧としては非常に分かりやすいですが、日本ではそのような社会からの評価が得にくい面があります。敢えて言えば、表彰制度のようなものでマスメディアに露出することは、社員に自社が表彰されたと思ってもらう意味で現時点では一番大きいことだと思います。CSRに取組むことの価値や効果が問われたときになかなか分からないように、社会からの評価を見ることは非常に難しいのです。先ほどの格付けも、一つの指標であるので、あらゆる指標を会社として受け入れ、その中から取捨選択し、それをまたフィードバックすることを繰り返すことしかないと思っております。また、日本でも格付け機構さんなどがチャレンジングな取組をされていると思いますので、もっとそのようなものが出てくれば良いと思います。

山田メンバー
 なぜ消費者が(環境に良い商品に)関心を寄せていないのかについて、第一の理由として情報提供が十分になされていないと思います。例えば、先ほど情報用紙についての事例を挙げさせていただきましたが、先般富士ゼロックスさんではそれに非常に関心を持っていただいております。古紙以外の原料でも、天然林が混ざっていないかなど厳しい目をもってサステイナビリティ報告書に記述しておられました。一般消費者の方も、熱帯雨林の減少やその地域住民の方の生活、生物多様性など実は関心を持っていると思うのですが、実際に自分が使っている紙にどのような森林から生産されたパルプが入っているかどうかということに関心を寄せることができるような情報を、十分に提供されていないのではないかと感じています。そこで第一のステップとして、情報提供、啓発ということがあると思います。
 次に、消費者の方が細部まで関心を持つと、例えば情報用紙を作っている企業が原料となるパルプをどこから調達するかを追っていくことは極めて煩雑な作業となりますが、製紙会社もそういったことに負担を負うことに対しては消費者からの強い圧迫感がなければできないと思います。消費者の方が関心を寄せ、彼らの力によって製紙会社を変えたのだということによってそれらの相乗効果で、消費者も自分たちの購買行動が社会に影響をもたらしたのだとか、より良いことをしたのだという自信が付くと思います。したがって、第二のステップとして、自分の起こした行動についてフィードバックが返ってくることです。
 第三のステップとして、先ほど五所さんもおっしゃっていましたが、第一、第二のステップを通して、熱意を持つことだと思います。
 我々エコマーク事務局としては、私自身は昨年木製品の認定基準の担当をしており、(現在製品の)技術過程を公開しておりますが、それをいかに読んでいただいて議論に加わっていただくかということが課題になると思います。

後藤スーパーバイザー
 セカンドステップからは分かります。ただ最初の情報提供については、日本の消費者は知識があるが動かないと言われています。情報がないからなのか、それとも知識があるというと情報があるということですね。したがって情報提供したから変わるのかはちょっと分かりません。

足達メンバー
 情報提供について、実は先日の厚生労働省さんでのCSR委員会でもそれがテーマとなっておりました。今就職情報というようなところでCSRに関する情報がないから、そこで情報提供したらどうかと言われています。例えば、職安でもCSR情報が取れるようにしたらどうかと議論されてはみたのですが、果たしてその情報を取ってある会社に行こうとか行くまいと思うことがあるのか疑問があるところです。情報過多、あるいは情報不足などについて、どのように思いますか。

坂口メンバー
 国際協力の分野でも同様ですが、情報の押し売りにならないかという問題があると思います。売りたい売りたいと言われると、買いたくないという部分は捨てきれないと思います。
 私はモチベーションやファシリテーションという部分にもっと力を注ぐべきだと思います。結局、なぜ良いと分かっていて買わないかというと、高かったり、露出度が低かったり、情報が露出されていなかったりなどがあるかもしれません。しかし、我々がスーパーなどに買いに行って、エコフレンドリーな商品のフェアを一度も見たことがありません。つまり、消費者が物を購入する最前線の場面でモチベーションを高めるような方策が図られていないのではないかと考えます。
 消費者にとっては毎日の買い物に行くスーパーこそが購入・選択の最前線であり、その場でのファシリテーション、モチベーションが有効だと考えれば、山田さんの資料にある情報用紙のグラフは、流通業者は(環境に良い商品の購買を)考えているけれども消費者は買わないというのは、むしろ流通業者や物を売っている方々自身がその状況を頭では理解しているけれども、それ(環境に良い商品)を何とかして売っていこうという姿勢になりきれていないのではないかと考えられます。意識化、意識付けをしていくためには購買の最前線で何らかの方策をとっていく必要があるのではないかと思います。その場面を担当している企業の方々の全社的な意識化、エコフレンドリーに対する主体性のモチベーションが重要ではないかと思います。
 また、消費者はどのようなステークホルダーかと言った場合、実は正に企業の従業員はステークホルダーであって、会社ではCSRという形でそれに取組んでいるにもかかわらず、一市民、一地域住民に戻って近くの店に行ったときに、それに対して行動がなされないこと自体、自分の中に2つの側面がある。すなわち一市民と一会社人間とのすみわけができ過ぎてしまっているのではないかと考えるのであれば、日本の多くの人々が関わっている企業の中でも消費者意識の向上がもっとなされても良いのではないかと考えます。

大木スーパーバイザー
 同じようなことを申し上げようと思いました。
 我々は会社に勤めております。BtoBとBtoCとでは非常に異なります。BtoCのコンシューマということになりますと、エコラベルだけではなく、分別収集など色々あります。事実、CO2排出量は家庭が一番減らないのですが、このような家庭の問題については、全体の環境意識が高まらないと解決しません。
 企業については、顧客と話していると、経営者も環境に取り組みました、またISOもとりました、会社ではがんばっている。その一方で家に帰ると父親ががんばっているが母親ががんばっていないということがありました。会社の中では、分別収集するし、電気も消します。消費者から盛り上がっても、大企業から盛り上がっても良いのですが、一般的に大企業が日本の文化を作ってきましたので、大手の先進企業がリーダーシップを発揮して、マーケットを作ることも一つの方向性かもしれません。その意味で、非常に地道な努力があると思います。家庭の中まで浸透させていくプロセスの中では、根気よく頑張るより仕方がないのではないかと思います。

足達メンバー
 今のご指摘は、情報はもう行き届いているということでしょうか。

大木スーパーバイザー
 元々やろうとしない人、無関心な人にデータを持っていっても、それで終わってしまうのではないかということです。したがって、家に帰ってみんながやる環境を作っていくことが必要だと思います。

龍井メンバー
 基本は私もそう思います。なぜ私が先ほど無理を承知で義務付けという問題提起をしたかというと、先ほどのマーケットの勝ち負けで言うと、結局がんばったなりのことがそれほど出ないということが現状では言えると思います。そうすると、良いか悪いかと言ったときに、良いところの先進企業が牽引することで、全体の底上げされていくようになる前提で施策などを考えるのか、むしろそこを開いたところに立つと、そこの情報はある意味ではルールがない情報ならば良い情報しか出てこないわけですし、良いところ取りのような情報が我々の行動の基準になるかというと、必ずしもなりません。本当に必要な情報はというと、NPOが出てやることが望ましいことなのかもしれませんが、それを待つのはなかなか進まないのではないかと思います。そうならば、(プレゼンテーションでは)敢えて組合の言い方でナショナル、ローカル、産業と申し上げましたが、企業と社会の二極ではなく、我々の立場で言えば、それは地域貢献のようなもので、顔の見える範囲内での活動で、企業の枠を越えてやっていることだと思います。そのようなレベルでNPOと組んで、何か活動を起こすということが考えられます。産業ならば、自動車ならば産業政策として成り立っているのか、同友会の提言で言うと業界レベル同士ではそれはどうなのか、業界にいたときにそれはどうなのかということです。そのような企業が個別ではなく、業界に広がっていくような手立てが必要だと思います。

山田メンバー
 先ほど情報提供ということを申し上げましたが、本当に申し上げたかったことは、熱帯雨林が減少しているとか、生物の生態が損なわれているという情報は確かに溢れています。それについて(消費者は)知っていると思いますが、あなたの使う紙の原料は何ですかということです。
 先日仙台でGPNの会議があり、面白いデータを発表されていた方がいました。正に流通の場で環境配慮型商品を販売するときに、この環境配慮型商品は何に影響を及ぼしているか、例えば森林を守るといった情報を書くと売上げが上がったという電通さんのデータを示している方がいました。それはファシリテートに含まれると思いますが、あなたのやっていることがどこにどのような影響を及ぼしているかをファシリテートしていくことが重要ではないかと思います。私どもは流通との協力体制を今後進めていきたいと思います。

足達メンバー
 今までの議論を整理すると、一つ目として情報を提供する際は最前線ですべきであること、二つ目として職場で消費者教育を行うこと、職場にはそのような役割があっても良いのではないかということ、三つ目として情報を出す際には例えば地球環境が問題ですと言って出すのではなく、あなたが買おうとしている、そのことがどう関係しているのだということで、自分の行動がどのように結びつくかを分かるように情報提供していくべきだということです。
 その上で、もし違うテーマがあればご意見はありますか。

後藤スーパーバイザー
 龍井さんにお聞きしたいと思います。
 先ほどプレゼンテーションいただいた中で、例えばILOの中核的労働条件の4条件について、そもそもILOは56人の理事のうち28人が政府で14人が労働組合で14人が産業界で、連合さんは理事、経団連も理事になると思います。その中核的労働条件の中に、児童労働があります。さすがに最近トップ企業では何でそんなものをと言うところは減ってきましたが、つい1、2年前までは堂々とおっしゃっている時代であったということが事実であります。また、OECDの多国籍企業ガイドライン2000年の大改定も労働組合は参加され、産業界も参加され、いわば3者で作ったものですが、なぜか日本に来るとなぜこんなものをということをおっしゃる方がいるわけです。
 トップ企業はその認識はしてきましたということを認めるのですが、一方で組合として企業も含めた多数のステークホルダーを考えた場合、このようなものを今日のテーマであるステークホルダーの意識と取組の現状という観点で考えたとき、こういった国際的な、いわば中核的な基準、これは良い悪いの議論は全くない人類社会としてやっていかなければならない基準だと思いますが、この基準をどのように考え、どのような対応を取っていくべきだと考えていますか。

龍井メンバー
 一つ目として、名だたるところは大丈夫であるとも必ずしもいえないと思います。やはり進出している企業がそれに基づいてナショナルコンダクトポイントに訴える、問題提起をして調査に入ることが、実はまだ日本企業に必要と思います。
 二つ目として、例えば日本の場合でも多国籍化してくれば、今回のナイキの問題でもあれだけ問題になり、CSR論議も特に欧米での大きなきっかけになった問題がいつ内部告発であれ、起こるとは限りません。そのように考えると、中小企業でも進出しているところがあるので、規模の大小は問わず、可能性はあるということです。我々はそれを国内問題として捉えた場合には、遅れていたわけですが、個別企業レベル、産業別レベルでどれだけ労使協議の対象として我々の方から持ち込んで、それを協約化させていくか。正直に申し上げると、協約の課題としてそこまでは取組が遅いです。ただそれをやろうという問題定義をしております。多分これはこの項目だけではなく、先ほどご指摘あったように、有職時の情報提供など色々なものとセットでなければ、これだけでは取組めるものではありません。ただCSRの問題、特に雇用労働に関わる情報の中では重視をしています。
 三つ目として、産業別レベルでも遅れていますが、そこが多国籍企業とじかに枠組み協定の中で、そうしたことについてそのような取組をするという一つのひな型としてありますので、それを進めていこうと考えております。確かに進んでいるところは進んでいますが、連合としては方針化して具体化しようという段階です。

足達メンバー
 海外に進出している日本企業の労働者は、日本の単組に加盟していくという動きなり、そのこと自体労働組合は還元していくという議論についてはどうでしょうか。

龍井メンバー
 残念ながら今のところないです。直接的な労働条件に関与できるかできないか、逆に言えば、日本の進出している企業の組合員が本国のメンバーシップになる、あるいはなることのメリット、デメリットを考えると、おそらくそれはゆるやか協議会で、国際的企業グループ労連のようなものを作っていくものを準備しなければ、そこのメンバーシップになったからと言って、当事者として交渉できるとは限らない仕組みになると思います。一緒に運動したいということと、協約上の問題と制約があると思います。

足達メンバー
 そうすると、例えば中国の労働者の声、正にステークホルダーの声が日本企業に届けられるに当たって、日本の労働組合がそのチャネルになることはなかなか難しいということですね。

龍井メンバー
今申し上げたのは、こういうことについて守りましょう、現状フォローしましょうということです。フォローアップする段階では先頭に来ると思います。

黒田メンバー
 ステークホルダーをどこまで含めるのかが非常に難しい問題だと思います。実は、ステークホルダーが今頭の中で考えていないところまで広がっているところに、このCSRは難しい問題をはらんでいると伺っていました。例えば、先ほど五所さんから格付け評価の側面ということで、(社会的側面では)地域の文化継承や地域の生活環境形成、労働安全衛生など項目が挙がっていますが、こういったものが例えば日本の消費者で考えていると、何となく分かるのですが、これが他の国で創業している企業などサプライチェーンまで含んでくると、どこまで責任を負いきれるのかということが非常に大きな問題になると思います。サプライチェーンの先の先まで本当に責任を負えるのか、負いきれないのではないかと思います。その意味で、グローバルな格付けもあると思いますが、日本国内というよりも地球規模でこのような問題に取組まなければならないと思いますので、その中で格付けをされる場合においても、また企業でCSRを取組む場合でも、そのあたりはどこまで気を使わなければならないのか、これまで考えてきましたが答えが見つかりません。

足達メンバー
 本日は、松下の荒井さん、ゼロックスの秋山さんがいらっしゃらないので企業の実感を伺うことはできないのですが、この研究会としては少なくともアジアの消費者、日本の何らかの商品を買ってくれる消費者、日本の製品を作る労働者まではスコープに入れようということで、実は第4回にアジアをテーマに据えているつもりです。確かに、日本企業それぞれ、スコープやバウンダリーは異なると思います。

大木スーパーバイザー
 我々は営業のようなところでCSRを議論させていただくのですが、現場レベルではそのような議論はでません。一方でトップ、社長や会長レベルはそのことに悩んでいます。どこまで我々は責任を持たなければならないのかは、経営のトップの方にとって深刻な問題となっております。

後藤スーパーバイザー
 これは大木さんがおっしゃったように、個別企業がデシジョンすることでありますので、正解はないと思います。デシジョンがまずいとその会社は傾くし、正しければ発展することになると思います。エンドレスの活動になると思います。したがって、企業規模、業種、活動地域によって全て異なります。多国籍企業と、町の有限会社ではステークホルダーは異なると思いますし、将来世代から南北問題まで目を向けなくてはならない企業とそうでない企業とがあると思います。五所さんに代わって答えてしまうと、格付けの場合、私が考えているのは、2002年にWBCSDで決議が採択されております。この採択の認識は、特に多国籍企業にとっては、重要な認識の基準になるのではないかと思います。

足達メンバー
 それはサプライチェーンまで含めるという、かなり広い定義になるということですね。

五所メンバー
 格付けを離れ、本業の審査機関として発言します。(審査機関では)グローバル企業の検証業務をさせていただいておりますが、その中で環境の取組は多国籍企業になっている企業ではガバナンスがとれていると思っております。いわゆる一流企業と呼ばれる企業では環境ガバナンスが取れております。労働者の問題については、国内の本社直営の工場はきちんと把握をしております。次に、国内では、国内のグループ企業についてはどうかと見始めている企業と、グループ企業まで情報を把握しているところまできている企業と2つに分かれると思います。さらに海外では、海外のグループ企業が置かれるローカルな事情まで把握し、本社もそれを知っておかなければならないという危機感を抱いている企業があるという実感があります。このように、情報を入手しなければならない範囲は企業による選択肢によりますが、やはりグローバル展開している企業はサプライヤーの問題にしても、国内から海外へと少しずつ範囲を広げてきていると感じます。自分たちとお付き合いしている企業について、このようなレベルの情報は把握してマネジメントしている、このような項目についてはこの範囲でマネジメントしているなどを企業は出していってあげることが重要ではないかと思います。そのように出して整理していくことがまず重要であるので、どこまでやるかではなく、出した上で、グローバルエリアでマネジメントすべきものであると判断したものはそれを進めていくべきであり、それでガバナンスをとるのであれば本社にきちんと情報を提示しなさないという仕組み作りを検討し、その中でステークホルダーを考えていくべきだと思います。一片に全部はできないので、まず自分の企業は何が重要で、それをどの範囲まで把握することが必要かということに現在企業は取組んでいると思います。

齊藤メンバー
 今先進的にCSRに取組んでいる企業は、大企業だから、また余裕があるからと言われていますが、私はそれは違うと思っており、最近それを痛感しました。企業を見ていると、格付け、ステークホルダーとのコミュニケーション、従業員の満足度などをおざなりにやるのではなく、その中でどこに強みがあり、どこに弱みがあるのかをきちんと把握し、弱みが合った場合でもそれで終わらせるのではなく、それを次にどうすれば良いか、常に前向きに取り組んでいる企業がCSRとしてしっかりとやっている企業だと思いました。そうした場合サプライチェーンをどこまで含めるかと言ったとき、経営者の方々がとても悩まれるのは良いことだと思います。一律に全世界は入れないということはできないので、企業それぞれの悩みの中で、着実にワンステップワンステップ、弱みがあれば、問題が起こりそうだ、あるいは起こったところからどうしようかということを始める。そのような個々の企業の取組が重要になってくるのではないかと思います。サプライチェーンだから一概に世界を視野に入れるということはできないと思います。
 先ほどの、情報があるけれどもなかなか買ってくれないということについて、情報はあるけれども危機感がない、あるいはダメにならないと動かないという日本人の特徴があると思いますが、環境や政府の財政も同じだと思いますが、買ってくれるようにする、マジョリティを動かすのは時間がかかると思います。面白い事例で、現在アメリカでハイブリッドカーが売れているそうですが、燃費や原油が高くなったという理由もあるのですが、ハイブリッドでなければ格好悪い、世間体が悪いなどの意識も出ているということです。その格好良さなどを企業が訴えることも一つの可能性があると思います。もちろん、どれだけ地球環境が破壊されているかという危機感を訴えることも重要だと思います。ただマジョリティを動かすにはちょっとした工夫がいるのだと思います。

足達メンバー
 これが4つ目のヒントになりますね。

大久保メンバー
 次回の予告も兼ねてですが、後藤さんのおっしゃったように、私はCSRを名詞ではなく、動詞だと常に言っております。名詞だとすればどこまで取組めば良いか、目標が定まるのですが、このCSRは活動の仕方を指しているのではないかと思います。その活動の仕方はステークホルダーの視点を取り入れていかなければならないということです。私も現場にいて、CSRのトップ企業では思いのほかその部分は見ていないと感じます。少なくともエビデンス化はされておりません。そのような活動をどのようにしていくかがCSRだと思います。
 先ほど、環境格付けを議論に上げてしまいましたが、それが良いか悪いかという議論ではありません。現在のCSRを取り巻く議論が言葉に踊らされて、言葉通りするのではないかと感じられます。後藤さんのおっしゃるように、CSRの定義付けはないと思います。しかしながら、研究会と公的な場でできる作業としては、方向感など整理をすることくらいはできないのかと思います。それができず、このまま行けば、言葉倒れ、来年にはこの言葉が流行っていたくらいに終わってしまうのではないかと思っております。それでは国際競争の中で取り残されてしまうのではないかという問題意識の中で、どのような方向感でのキーワードの切り分けと、日本がどのような方向に向いていくべきなのかという大きなビジョンを与えて欲しいと思っております。そのきっかけが何かできないものかと考えております。それはまた次回に行いたいと思います。

足達メンバー
 今日伺いたくて伺えなかったことは、アジアのステークホルダーで何か日本企業に対するメッセージなどがあるのかということですが、それは次々回に議論したいと思います。
 次回は、11月18日午前中10時からとなります。経済産業省別館1012で開催します。よろしくお願い致します。
 それでは、第2回の研究会を終了したいと思います。



以上