環境影響評価制度総合研究会報告書(平成8年6月)
概要

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(資料2)「環境影響評価制度の現状と課題について」(環境影響評価制度総合研究会報告書)の概要

1.環境影響評価制度に関する内外の動向

  • 閣議アセス制定以来、10余年を経過し、その実績は着実に積み重ねられてきており、個別法に基づくアセス手続、通商産業省省議決定による発電所アセス手続、運輸大臣通達による整備五新幹線アセス手続も行われている。
  •  地方公共団体における制度化が全国的に広がっており、都道府県政令市59団体中、条例制定団体6、要綱等制定団体44となっている。
  • 諸外国では、OECD加盟国27カ国中、日本を除く26カ国のすべてが環境影響評価の一般的な手続を規定する何らかの法制度を有している。
  • 国際条約、国際機構の宣言等においても、環境影響評価の考え方が1980年代以降定着してきている。我が国が関与したものについては、対応を求められている。
 

2.環境影響評価制度の現状と課題

(1) 早期段階での環境配慮と環境影響評価の実施時期

  • 我が国では事業の概略が固まった段階で環境影響評価手続が開始されているが、この段階では事業内容の変更等に反映されにくい等の指摘がある。内外の制度では、事前手続を導入することが広まりつつあり、これは論点を絞った予測評価や関係者の理解の促進、作業の手戻りの防止等の効果や事業計画の早期段階での環境配慮に資することが期待される。一方、事前手続において、時間や事務量のいたずらな増大を懸念する指摘や用地の取得を困難とするなど狭隘な我が国では事業の遂行を困難とするという意見などもある。
  • 主要諸国では、政府機関の上位計画・政策段階での戦略的環境アセスメントへの取組が進みつつあり、我が国でも、このような段階での環境配慮方策を検討することが必要である。

(2) 対象事業

  • 我が国の制度は環境影響評価が必要な事業を限定列記する方式を概ね採用しているが、主要諸国では、詳細な環境影響評価を実施する対象とするかどうかを個別の事業ごとに判断する手続(スクリーニング)が取り入れられつつある。
  •  閣議アセスでは国関与要件と環境影響要件の二つの視点で対象事業を選んでいるが、事業実施自体が法的な許認可等の対象にならない事業の取扱について検討する必要がある。
  • 国外での事業の扱いについて、アメリカでは他の主権国の領土内での自国の制度の手続の適用は極めて難しいとの解釈が通説となりつつある。

(3) 評価対象

  • 各案件ごとに評価対象を絞り込んでいく手続(スコーピング)が、主要諸国において広く取り入れられているが、これにより論点が絞られた効率的なアセスメントができることが期待される。一方、スコーピングにおいていたずらに時間を要したり、際限のない調査要求が出る等かえって非効率となることを懸念する意見もある。
  • 生物の多様性の確保、地球環境保全など、環境基本法の制定等に伴う新たな環境保全ニーズに適切に対応できるように、評価対象とする環境要素について検討することが課題である。

(4) 評価の実施

  • 内外の制度では、アメリカを除き事業者が評価書を作成することが一般的であり、この場合、作成主体以外の者による評価の審査等により、国民等からの信頼性を確保することが重要である。
  • 国内の制度では、事業者があらかじめ設定した環境保全目標に照らして事業者の見解を明らかにすることが評価の基本となっている。主要諸国の制度では、事業者がとり得る実行可能な範囲内で環境影響を最小化するものか否かという点に評価の力点が置かれており、これを判断する手法として、実行可能な代替案の比較検討を取り入れている場合が多い。
  • 代替案の検討については、環境以外の利害関係を含んだ議論の誘発や地域間の対立を生じ混乱を発生させるおそれがある等から実際問題として難しいという意見がある一方、複数の案が環境面を含めて検討されることが必要であり検討された案の内容等を準備書等に記載することが重要との指摘もある。
  • バックグラウンドの状況に係る国あるいは地方公共団体による情報提供の一層の充実や、予測結果の不確実性の程度や内容を明らかにすることが重要である。
  • 環境保全対策では回避や最小化を優先すべきであり、損なわれる環境を他の場所や方策で埋め合わせを行うという代償的措置を検討する場合には、その内容を適切に評価することが求められる。

(5) 住民の関与

  • 主要諸国においても、環境影響評価は主に環境を配慮した合理的な意思決定のための情報の交流を促進する手段としてとらえられており、個別の事業等に係る政府の意思決定そのものへの住民の参画は環境影響評価制度とは別の制度で取り扱われている。
  • 準備書作成前の段階での意見の提出機会を設けることは、作業の手戻りを防止し、効率的な予測評価を行うことが可能となる。ただし、際限のない調査等の要求によりかえって非効率になることを懸念する意見もある。
  • 意見の提出を求める者の範囲は、主要諸国では区域を明確に限定しない例がほとんどである。

(6) 評価の審査

  • 閣議アセスでは、環境庁長官が審査プロセスに参画しない場合があり、また、国の機関の審査は、評価書の内容の改善には反映せず、許認可等へ反映することとなっている。
  • 環境部局における意見形成に際して、第三者機関や専門家の関与を求めることは、手続の信頼性の確保に寄与するものと考えられる。

(7) 許認可等への反映方法

  • 現行の閣議アセスは、行政指導によって実施された環境影響評価の結果を、許認可等に反映させる形となっているが、許認可等を定める法令に環境保全の観点が含まれていない場合等には、許認可等への反映に限界があり、このことは行政手続法の制定により明確にされている。

(8) 評価後の手続

  • 閣議アセスでは事業着手後の手続について具体的に定められていないが、予測の不確実性に鑑み、予期し得なかった影響を検出し、必要に応じて対策を講ずるため、工事中や供用後の環境の状態、環境への負荷、事業やその環境保全対策の実施状況を調査する事後調査が、内外で広く行われている。事後調査は、評価書の内容について、事後的に検証できる、予測手法の改善等につながる等の効果が期待できる。一方、事後調査の目的、手法、期間の考え方等を明確にする必要がある。

(9) 国と地方との関係

  • 国の制度が行政指導で行われているため、地方の制度との調整に統一的なルールがなく、また、案件により複数の手続が重複して行われる場合もあり、国の制度と地方の制度の分担・調整のあり方について検討することが課題となっている。
  • この場合、地方分権推進法に示されている考え方や地方公共団体において独自の制度化がほぼ行き渡ったという状況の変化等を踏まえて検討することが必要となる。

(10) 環境影響評価を支える基盤の整備

  • 情報源情報、環境影響評価事例情報、事後調査結果、生物分布や生態の情報、予測に必要な原単位や排出量等の情報等の情報を国が中心となって組織的に収集、整備及び提供することが必要である。
  • 環境影響評価において、科学的かつ合理的な調査が的確に行われるとともに、その結果が国民等から信頼性されることも重要であり、調査等従事者の育成・確保、人材情報の提供、研修等の推進、環境影響評価の調査等に従事する者や組織に関する資格制度、調査等に従事した者の名前等を評価書に記載すること等の方策がある。
  • 調査・予測等の技術手法、環境保全対策の技術手法など、環境影響評価を支える技術手法のレビュー作業を継続的に行い、技術手法や知見の進展を環境影響評価制度の中に迅速に取り入れていくとともに、新しい関連技術手法の開発を図っていくことが必要である。

3 今後の検討の方向

  •  我が国において環境影響評価は、すでに多くの実績が積み重ねられる中で環境配慮が促進されるなど相応の機能を果たしており、環境の保全を図る上で重要な施策となっている。しかしながら、我が国の制度には、内外の制度をめぐる課題について分析整理を行った本調査研究において明らかにしたように、今後検討することが必要な課題が数多く存する状況にある

 このような状況を踏まえ、本研究会の成果を活用しつつ、法制化も含め、今後の環境影響評価制度のあり方について、具体的な検討が進められることを期待する。

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