アセス助っ人
万博検討会議について
(1) アセスの経過
愛知万博の直接の事業者は、財団法人2005年日本国際博覧会協会(略称「万博協会」)ですが、これを所管する通産省は、環境影響評価法を先取りするとして、その精神に則ったアセスを実施するため、10年4月に「実施計画書」(方法書に相当)を定めました。
平成8年11月の国際博覧会協会(BIE)の予備調査段階では図1のような構想でしたが、11年2月に公表された準備書での事業計画は図2の通り海上の森全体を会場予定地としていました。
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図1 会場構想図(平成8年11月)
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図2 会場計画第1案(準備書(平成11年2月)の配置計画より 転載許可済み)
その後、11年6月には会場予定地の北部でオオタカの営巣が確認され、会場計画は図3のように変更されました。
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図3 会場計画第2案(評価書(平成11年10月)より 転載許可済み)
そこでは、会場範囲の縮小に伴って、西約2kmにある青少年公園を新たに会場としています。11年10月に公表された評価書は図3に基づいております。青少年公園会場については、詳細なアセスが行われておらず、別冊で「環境保全の観点からの検証」
をしているだけで、アセスの観点から問題があります。
その後、国際博覧会協会(BIE)は、会場計画が住宅団地の開発を利用したものであり、これは環境保全の観点から許されないとの見解を示しました。実は、もともと海上の森地区の会場予定地は6000人の住宅団地の用地であり、これを造成した上、2005年に6ケ月だけ万博が借りるという形をとっていたのですが、これをBIEが認めないとしたのです。そこで、12年3月に住宅団地の計画を断念することになり、同時に海上の森を南北に通る道路計画も断念することになりました。
(2) 市民参加の実験としての検討会議
会場計画は大幅に変更されましたが、自然保護団体はなおも海上の森での開催に反対し、12年4月に、日本自然保護協会、日本野鳥の会、世界自然保護基金日本支部は通産省、愛知県、万博協会といわゆる6者合意を行って、市民参加による検討会議によって会場計画をつめることになりました。地元関係者(商工会、市民グル−プ)9名、自然保護団体9名、有識者6名、万博協会プロジェクトチ−ム4名の計28名の委員が選出され、 5月28日から週1回のハイスピ−ドの会議がはじまりました。そこでは
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投票で委員長を決めたこと
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50音順で席を決め、いろいろの立場の委員が隣り合うようはかったこと
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傍聴自由だけでなくインタ−ネットで中継放送するなど、情報公開・情報共有 の原則を基本にしたこと
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委員は平等の発言権を持ち、その際、自己主張のアピ−ルに終わらないこと、 相手の欠点探しをしないことを基本にして、共通のキ−ワ−ドを探すようつとめること
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事務局の作った案に賛否を述べるのでなく、委員が提案し、合意点をもとに試案を 作って事務局が次回までに具体化し、それをもとに次第につめていく作業を繰り返すこと、 つまり事務局は事務方に徹すること
は、市民参加の実験として貴重な経験といえます。その結果、合意を得た会場計画は図4の通りで、図2・3との違いをよく見て下さい。
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図4 検討会案(12年8月18日)
これと青少年公園会場を加えたアセスは今後改定評価書としてまとめられますが、その中で里山を保全するためのMITIGATIONが重要であり、そのためHEPを使用することを、検討会議は強調しています。
参照 ⇒ HEPの適用 生態系の定量的評価手法としてのHEP
検討会議は、平成12年12月21日の第13回で終了しました。12月15日には国際博覧会協会(BIE)で正式承認され、目的を終わったと考える委員が大勢を占めたからです。そして、海上の森地区会場の合意事項を監視する専門家会議(万博協会におく)、海上の森全体の保全・活用を検討する会議(県におく)、正式会場以外に市民が主体となって開催する広域分散万博のための会議、検討会議の提案をフォローアップする会議の計4つに発展的解消することに合意しました。これらの後継会議に青少年公園会場の名がないことも重大でしょう。
もともと「推進派」と「環境派」とが海上の森の扱いを巡って合意するための会議とらえる委員が少なくなく、同床異夢が現れるにつれて幕引きが多数派になったものといえるでしょう。それに、委員の多くは、検討会議を「意思決定のプロセス」に参加するつもりでいたのに、事業者の本音は諮問会議もしくは「お墨付きをうるため」の旧態依然の考えをもち、「お墨付き」をもらったらもう結構の空気がありありでした。検討会議の進行中に、市民参加万博の企画を県がイベント屋に丸投げしていたことが明らかになったり、何の相談もなく海上の森会場でボーりングを始めたりしても、検討会議としてこれらを責める空気がなくなっていました。膨れる開催費が協会にとって重荷になったこともあるようです。そのうち、「情報公開」のシンボルとされたインターネット中継費が200万であり、市民参加が高くつくことも教訓になりました。
(3) 今後への教訓
[委員の選出方法]
28人の委員の選出が妥当だったかの問題があります。前に述べたように、万博検討会議は通産省、愛知県、万博協会、自然保護3団体の合意に基づいて設けられたものです。そして自然保護団体からの9人の委員選出は自然保護団体に任せられました。そのうち全国区の自然保護団体は3名を確保していますから、地元の委員」は実質6名になります。そして団体は20以上あります。何回かの会合がもたれましたが、当選確実のいわゆるメジャーはほとんど発言せず、当確スレスレの団体のアピールが強いのは当然です。2回、3回と続けるうちに欠席者が出てきて落ち着く所に落ち着くと言う方式が、意識的にか無意識的にかとられました。それでも最後には複数の団体への割り当てが一つということになりました。自然保護団体といっても、絶対保護から条件つき保護まで多様です。万博でいえば、万博のありなしに関わらず海上の森を守ろうとするものから、万博を引き金に会期後の手当てを期待するものまであります。結果として、委員がバックの団体の主張を代表していないとしてその団体が解任届けをだすといった異常なことがおこりました。
委員の発言が所属団体のしかも複数の団体の意見に縛られるとしたら、これは議員と政党との関係と同じで、直接民主主義の象徴とされる市民参加と議会に象徴される間接民主主義との矛盾を持ち込むことになってしまいます。個人的には、私はあくまで個人として責任をもつべきで、所属団体を説得する責任があると考えます。その他、これまで万博の企画運営に参加していた専門家が有識者として参加していることに異議を唱える意見がありました。「計画がリセットされた結果の万博検討会議なのだから、それを支援してきた委員もリセットではないか」というのです。現に、円卓会議といった名前で計画の見直しを行う会議なのに、それまで計画の企画に参加してきた人が入っていたりします。必要があれば参考人の形で質問に答えてもらえばいいのです。アセス審査会が中立であるべきなのは当然ですが、市民参加における専門家のあり方には、まだコンセンサスがないようです。東京から来る有識者の出席率が悪いのが目立ちましたが、地域の問題は地域に住む人が考えるのは当然でしょう。
[会場の構成と傍聴者の扱い]
何10人もの協会・県の担当者、それに何10人ものマスメディア関係者が委員席の後ろの二方を占め、結果として傍聴席の人数が限られ、委員一人について2名の他は別フロアでモニターをみることになりました。スジからいうと、事業者の半分と別フロアの傍聴者とを入れ替えた合えた方がいいとの声がありました。
[ライブ中継の問題点]
会議の進行はインターネットでライブ放映され、同時に別フロアの傍聴者のモニターTVに送られました。撮影用のカメラが1台しかないため、発言者しか映らないのは歯がゆい感じがしました。聞いている他の委員の表情にも伝達する意味があるのです。インターネットの動画も転送速度の不足から今ひとつ迫力にかけ、即時性に欠けてもビデオのコピー配付の方が経費的にもよかったかも知れません。なお、ローカルの有線放送局は後で深夜番組として各回4時間に及ぶ全経過を流しました。万博検討会議はインターネット時代のコミュニケーションとして貴重な実験であったことは間違いありません。これには経費の問題も含まれます。
[メーリングリストの功罪]
なお、メーリングリストの形での委員間の意見交換が盛んで、毎日20通にも達したことは会議を補完するものとして大きな意味を持ちましたが、それが外部の団体に転送されたり、外部の団体からのアピールが流れ込んだりして、インターネット時代の難しさを経験することにもなりました。
[情報の共有]
前にも述べたように、この検討会議は外部への「情報公開」と内部での「情報共有」との双方を重視しました。「情報共有」はこれまでの市民参加で余りいわれてないことですが、正規の会議の間にワーキンググループ会合といった任意参加の非公式の会議が開かれたことが問題になりました。非公式ということで事業者も気が楽になったのか、表に出ていない中間経過の情報が出たりして、出席しなかった委員から不公正の不満が出たのです。非公式会議の内容を必ず次の公式会議で公開することによって、「情報共有」を担保することにしました。メーリングリストが情報共有に役立ったことはいうまでもないでしょう。
[市民の評価]
新聞のアンケート調査では、検討会議について「評価する」が67%、「評価しない」が18%でしたが、「評価する」の内訳は「環境が守られたから」が47%に対して「合意形成が出来たから、協議の過程が公表されたから」は合わせて20%で、プロセスよりも結果を評価している点で、世間では「意思決定プロセスへの参加」はまだ少数派です。評価・不評価を含めて、その内訳が検討会議の中での委員の意見分布に似ていることは興味があります。委員の構成が市民のサンプルになっているからでしょうか。もっとも前に述べたように、委員の選出方法に問題がなかったとはいえません。
