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大雪山国立公園の写真

公園の特長

北海道の真ん中に広がる大屋根 -カムイミンタラ 神々の遊ぶ庭-
指定:昭和9年12月4日
面積:226,764ha
北海道
大雪山国立公園は道中央部に位置し、北海道最高峰の旭岳(2,291m)を主峰とする大雪火山群を中心に、トムラウシ山から十勝岳連峰、石狩岳連峰などの壮大な山々や、北海道を代表する石狩川と十勝川の源流地域を含む「北海道の屋根」といわれる一帯が国立公園に指定されています。
これらの山岳は標高2,000m前後ですが、緯度が高いため本州の3,000m級に匹敵する高山環境を有しています。広大な高山帯は、エゾオヤマノエンドウやホソバウルップソウなど大雪山固有種をはじめとする高山植物で色鮮やかに彩られ、アイヌの人々に“カムイミンタラ—神々の遊ぶ庭”と称されたほどの美しい景観が登山者を迎えてくれます。また、氷河期の生き残りといわれるナキウサギやウスバキチョウ、然別湖固有種のミヤベイワナなど希少な生態系の宝庫です。

地形・景観

火山の写真

火山活動

大雪山国立公園は、お鉢カルデラを形成する大雪火山群、活火山の十勝岳を主峰とする十勝岳連峰、然別湖周辺の然別火山群及び日高系の古成層からなる石狩岳連峰の山々で形成されています。非火山性の石狩連峰を除き、比較的新しい時代の火山活動によって生まれました。活動中の火山は、旭岳(標高2,291m)、十勝岳(標高2,077m)と東大雪丸山火山(標高1,692m)の3山で、特に十勝岳は、近年も度々噴火を繰り返しています。
柱状節理の写真
柱状節理(天人峡)
層雲峡や天人峡の両岸の岩壁は、岩に規則的な割れ目ができ、多角形の柱が連続して立っているように見えます。これは、噴火で噴出した火砕流堆積物がゆっくりと岩石となり冷え固まる際に規則正しく割れが生じる柱状節理という現象と、これらの岩石を河川の流れによって削り取る浸食作用により生まれた風景です。
十勝三股の大樹海の写真
十勝三股の大樹海
また、火山活動の特徴的な地形としてカルデラ地形があり、お鉢平カルデラは今から約3万年前に成層火山が大爆発を起こして現在の形となっています。近年では、針広混交林の大樹海が広がる十勝三股の直径10km以上にわたる盆地が、およそ100万年前の火山の大爆発により形成されたカルデラ地形であることが明らかにされました。
永久凍土の写真
永久凍土
寒冷な気候条件にある大雪山の高山帯には、極圏に見られるような現象もあります。高根ヶ原には凍結によって泥炭が縞状に盛り上がった地形(パルサ)があるほか、土が凍結と融合を繰り返すあいだに、大きさによって網目状や線状に整列する構造土現象も見られます。そして永久凍土は、土壌や岩石が地下深くまで通年凍結しているもので、大雪山では主に標高2,000mの高山帯に存在していますが、東大雪地域の十勝三股、然別湖周辺など標高の低い場所でも見ることができます。然別湖周辺では、然別火山群の噴火で形成された岩塊斜面の地下に存在する永久凍土により夏でも冷気が吹き出る「風穴(ふうけつ)」という地形が多く見られます。この独特の地形と生態系が評価され、とかち鹿追ジオパークに認定されています。
このように、国立公園内の随所に興味深い地形が存在し、山麓に湧き出る豊富な温泉は訪れた人々を癒やし、大地に刻まれた地球の歴史に圧倒されます。

植物

大雪山国立公園の山々の多くは標高2,000m前後ですが、緯度が高いため本州の3,000m級に匹敵する厳しい高山環境を有しており、地形や過酷な気象条件により多様な植生が形成されています。広大な面積を有する山麓部には、エゾマツ・トドマツを主体とした針葉樹と広葉樹の広大な樹林帯がみられますが、標高が高くなるに従い、針葉樹林、ダケカンバ林と様相が変化し、さらに森林限界、ハイマツ帯へと推移し、山頂部付近の高山植物群落には日本の高山植物の4割に相当する約250種が確認されています。
高山植物群落の写真

高山植物群落

沼ノ原からトムラウシ山の写真

沼ノ原からトムラウシ山

高山植物群落には希少種も多く、エゾオヤマノエンドウ、ホソバウルップソウなどの大雪山固有種や、リシリリンドウのような分布の限られた種類も見られます。山頂部では、真夏でも大きな雪渓・雪田が残り、多彩な高山植物が華麗なお花畑をつくり出しています。
高原の湿地帯には高層湿原が広がっており、湿原特有の植物やわい性化したアカエゾマツなどがみられます。
チングルマなどの群落の写真

チングルマなどの群落

見事なまでの森林景観や高山植物の花々で彩られた姿は、まさにアイヌの人々が「カムイミンタラ=神々の遊ぶ庭」と呼ぶにふさわしい美しさを呈しています。

動物

ヒグマの写真

ヒグマ

エゾシカの写真

エゾシカ

多様な環境をもつ大雪山は、その広大な規模に比例するように生物多様性に富んでいます。広大な大雪山の森林には、ヒグマをはじめ、エゾシカ、キタキツネ、エゾオコジョ、エゾリスなどのほ乳類や、国の天然記念物のシマフクロウ、クマゲラなど多くの鳥類が棲息し、幻の鳥ミユビゲラも確認されています。魚類ではサケ科のオショロコマが生息しており、然別湖だけに生息する亜種はミヤベイワナと呼ばれています。高山帯では、ギンザンマシコやホシガラスなどの繁殖が確認されています。
大雪山と限られた地域でしか見られない動物も多く、北海道の寒冷な岩場に生息地が限られるエゾナキウサギや、大雪山にしか生息しない高山蝶ウスバキチョウ、アサヒヒョウモンなどは、氷河期に大陸から渡ってきた後、温暖化により寒冷な高山だけに残された「遺存種」と呼ばれる動物です。
エゾナキウサギの写真

エゾナキウサギ

希少な動植物が生息している大雪山は、高山帯が広く国の特別天然記念物の指定を受けるほか、十勝川源流域を含む一帯が原生自然環境保全地域にも指定されています。

文化

層雲峡温泉峡谷火まつりの写真

層雲峡温泉峡谷火まつり
【写真提供:層雲峡観光協会】

アイヌ文化の伝承
毎年夏になると、層雲峡温泉では「層雲峡温泉峡谷火まつり」が開催されています。この峡谷火まつりでは、アイヌの伝統的な儀式であるフクロウ神事、音色に合わせて舞うアイヌ民族舞踊など、古くから北海道の先住民であるアイヌの人々の間で伝えられ引き継がれてきたアイヌ文化に触れることができます。峡谷に響き渡る火まつり太鼓や花火も見どころです。
タウシュベツ川橋梁の写真

タウシュベツ川橋梁

開拓時代の遺産
上士幌町の市街地からぬかびら源泉郷、十勝三股の山岳森林地帯を南北に貫く国道273号に並行して、昭和62年に廃線になった旧国鉄士幌線のコンクリート造りのアーチ橋が多く残されています。これらの高架橋は、今は東大雪の開拓の歴史を伝える近代産業遺産として、その姿を見せています。中でもタウシュベツ川に架かるタウシュベツ川橋梁はダム湖である糠平湖の水かさが増える6月頃から10月頃にかけて湖底に沈んでいきます。水かさが減る1月頃から凍結した湖面に再び姿を現すため「幻の橋」といわれています。これらの橋は、「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」として平成13年10月に北海道遺産に選定されました。