環境省自然環境・生物多様性風力発電施設と自然環境保全に関する研究会

風力発電施設と自然環境保全に関する研究会(第3回)議事録

1. 日時

平成19年5月29日(火)16:00~18:00

2. 場所

各省庁共用1028号会議室(経済産業省別館10階)

3. 出席者

大野 正人
(財団法人日本自然保護協会保護・研究部主任)
大村 昭一
(日本風力開発株式会社執行役員開発本部長)
岡安 直比
(財団法人世界自然保護基金ジャパン自然保護室長)
鹿野 敏
(鹿島建設株式会社環境本部新エネルギーグループグループ長)
古南 幸弘
(財団法人日本野鳥の会自然保護室長)
下村 彰男
(東京大学大学院教授)
長井 浩
(日本大学准教授)
中村 哲雄
(葛巻町長)
祓川 清
(株式会社ユーラスエナジージャパン代表取締役社長)
原科 幸彦
(東京工業大学教授)
松田 裕之
(横浜国立大学大学院教授)
由井 正敏
(岩手県立大学教授)
上田 隆之
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)
安藤 晴彦
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課長)
市川 類
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー等電気利用推進室長)
黒田 大三郎
(環境省大臣官房審議官)
神田 修二
(環境省自然環境局国立公園課長)
西山 理行
(環境省自然環境局野生生物課長補佐)星野一昭野生生物課長・代理

4.議事

【安藤新エネルギー課長】  第3回風力発電施設と自然環境保全に関する研究会を始めたいと思います。
 本日は、資源エネルギー庁新エネルギー対策課安藤が司会進行を担当します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、環境省黒田審議官、星野野生生物課長が所用のため欠席です。代理で野生生物課西山課長補佐が出席です。議事に先立ち、資料の確認をします。資料1から5まで、資料2は2-1、2-2、それと参考資料です。何かございましたら、事務局にお知らせください。
 第2回研究会の議事録(案)を参考資料としてお配りしていますが、既に委員の皆様方に1度ごらんいただいています。さらに修正等についてご意見がありましたら、6月1日までに事務局あてご連絡をお願いします。
 なお、議事録は、ホームページ上で公開しますので、傍聴席には配付しておりません。あらかじめご了承ください。
 それでは、議題2の(1)風力発電施設における自然公園の活用とバードストライク問題に関する提案について、日本大学准教授で、日本風力エネルギー協会理事の長井委員からご説明をお願いいたします。15分程度でお願いします。

【長井委員】  ご紹介にあずかりました日本大学の長井と申します。私自身は大学に勤めていますけれど日本風力エネルギー協会という設立1977年、本年創立30周年を迎える組織の理事を務めています。その立場と、大学という立場でお話をさせていただきます。
 日本風力エネルギー協会は、私ども大学教育研究関係者以外にも風車メーカー、導入コンサル胆と、風車愛好家という方々等で構成され、団体会員が90社、個人会員450名の任意団体です。シンポジウムと研究発表会、協会誌を年4回発行しています。その中でも岡安委員の所属団体、WWFジャパンでも鮎川さんが2003年の協会誌にバードストライクについて指摘されて、ただ残念ながら私どもは任意団体ですので、その知見を取り入れることができないで今日に至ったことは、反省をしてます。
 タイトルバックに使いました風力発電機ですが、手前の2基と奥の風車というのはよく見ていただくと、手前の2基は洋上風力発電で右側を向いていて、奥のほうは陸上に設置された風力発電で左側を向いている非常に狭いエリアの中でも風速というのは非常に変化していることが表れています。それから、風車導入のエリアと今回問題となっているバードストライクは、私自身も20年近く風力発電の導入推進のアドバイスをやっているのですが、実際、デンマーク等ではこの左下にあるような風車の周りに水鳥が飛んでいる、あるいはコペンハーゲンの洋上風力の周りでも飛んでいるというような、風車と鳥というのは共存できるような関係にあると思って、2003年までは来たというところです。
 きょうの発表内容ですけれども、短い時間ですけれども、2頁のスライドのテーマで発表させていただきたいと思います。
 まず、風力発電ですけれども、研究会の課題に対し意見を述べる前に確認の意味で、もう1回風力発電の意義ということを掲げさせていただきます。持続可能な再生エネルギーだということ、あるいは国産のエネルギー、CO2を排出しない電力であるということです。それから、今までですと、風車の風況観測で1年、関連する調査1年、建設で1年というような大体3年が計画から完成までの期間でしたけれど、昨今、風力発電自身のヨーロッパでの需要の拡大で、4年という長い時間がかかるようになっています。今回の影響評価等で時間をとるということになってくると、大規模な開発事業に関してはやむを得ないんですけれど、自治体等の小規模な事業に対しては担当者の異動とかの機構システムの中で長期間のプロジェクトを一人の担当者が完結できず、成り立たないという懸念があります。
  前回ですが風力発電の補助金というのが非常に問題ではないかという指摘がありましたが、私自身は経済性が悪いエネルギー、例えば風力あるいは太陽光、それからきょうも新聞にありました燃料電池とか、まだ未発達のものに対してはそれを推進、あるいは自立を図る助成背戸は必要と考えております。
 今後、温暖化に対して予想される問題というのは、スライドに掲げたようなペナルティーとか、2010年以降のCO2の削減要求ということ。それから、Wind Forth 12とか、Wind Forth 20という言葉はお聞きになったことがない方もいると思いますが、欧州では電力の12%、あるいは20%を2020年以降に風力発電で賄うというような、非常に大きな勢いで風力発電の導入目標に向かって進んでいるという状況です。
 2番目に、我が国と対外比較状況を資料説明をさせていただきます。
 風力発電導入には国土面積が設置条件に非常に影響しますので、日本、ドイツ、イタリアというのはほぼ37万km2程度の国土面積が同じところに、風力発電の導入量はドイツ、イタリア、日本の順です。日本は非常に少ないんですけれど、それはそれなりの理由があります。例えば系統電力の電圧相違とか、送電網の相違というところで、日本ではなかなか風力は電力品質の変動許容範囲が小さいため導入されてないという状況になっています。公園面積に対しても日本では今9.1%というような状況ですけれども、ドイツでは同じような面積に対して26.7%という国立公園の面積がある。特にシュレシュヒホルスタイン州というドイツ最大の風力発電のエリアでもほとんどが国立公園という中で、エリアの中にも風力発電を導入している場所があるということです。あともう1つは、これは2005年の資料ですけれども、日本では2010年300万kWに対して昨年の100万kWというようなことで、その導入目標の達成が危惧されているという状況であります。
 風力発電自身はすべてを電力で賄うということは、変動がありますので無理です。電力のCO2排出量削減の中では、風車自身はCO2の排出量が少ないという中の1つではあるので、必ずしも風力だけではCO2排出量の大幅な削減を達成できるものでもなく、ベストミックス、例えば火力発電の割合を低減させることによってCO2の排出量を下げ、必要であれば、原子力との組み合わせというのも必要かと私自身は考えております。
 先ほどから風況の適地とバードストライクの競合という話で、自然公園の活用を要望しているということを次からの資料で説明させていただきます。
 我が国の国立公園は全般的に見ますと、このような図中のグリーンのところにあり、内陸部のエリアに非常に多く、一方、国定公園等はこういう海岸線に多くて、実際に岬とか島嶼というようなところに多くの国定公園が存在しています。面積的に見ますと、国立公園・国定公園で全国土の9.1%を占めている。
 もう1つ、自然公園という範疇の中では、都道府県立公園が5.2%を占めております。実際には2003年の環境省の自然公園の活用という答申中で提言された中では都道府県立自然公園は含まれてないんです。自然公園の活用というのを考えておりますが、全員の一致する意見だと思うんですけれど、自然公園の中で特別保護区、第1種保護区については、風力発電は導入しないということはご承知のことかと思います。今回、問題になっていますのは、第2種、第3種、あるいは普通地域に対しての意見が相違というところが1つ問題になっているのかと思います。
 先ほどちょっとお話ししましたけれども、国立公園内の国土面積というのはこのような数字であるんですけれども、実は国立公園・国定公園の海岸線から1km沖合というところも、公園法では公園地域として包含されていることによって、実際にはそういう地域を含めますと、海上面積が算定されてないので、算定されると13.5%が公園法の適用範囲かというふうに考えております。13.5%と都道府県の自然公園に対しての風力発電導入に対する見解というのが都道府県によって異なりますので、5.2%を含めると18%弱が公園法の穀お専有面積というふうに私は考えております。
 実際に国立公園内に賦存適地は存在するかということで私どもで調べた結果がこのようなもので、前回も菅野委員のほうから出ています。この根拠になるものとしてはNEDOの風況マップLAWEPSという500m×500mメッシュの地上高50m高さの風速と、国立・国定公園のエリアの面積等の重ね合わせで平均風速6m/s以上、あるいは7m/s以上のところを求めたのがこの図であります。国土面積の約36%が年平均6m/s以上のエリアで、約13km2が年平均6m/s以上、風力発電の適地になっています。
 これが実際に重ね合わせをしたときの図であります。前回、鹿野委員のほうから説明がありました小国ウインドファームが阿蘇くじゅう国立公園の水色の部分の普通地域に存在し、このような地域に風力発電があります。そのバックグラウンドにあるのが、先ほど言いましたNEDOのLAWEPXという風況マップで、50m高さでの500m×500mメッシュごとに算定した平均風速結果です。風況の適地といいますのは、ここに示したような黄色から赤系統の着色が年平均が50m高さで、6m/s以上のエリアを示している。その他のブルーのところといいますのは、風況が弱いというふうに推定されているようなところです。ですので、風況の適地というのは、内陸では標高の高いところが風速が速いということで、このような重ね合わせになっているということが、今回の景観問題の問題の地点と思います。
 先ほどのような適地を重ね合わせをして、それから特別保護区、地域ごとの面積比を求めて、風速6m/s以上あるいは7m/s以上の風速を算出したものが、この表のような結果になっています。この表の一部が出ていますけれども、前回の表と数字が多少異なりますのは、前回は陸地部分だけの面積を算定しています。この表では陸地と先ほど言いました海上部分のエリアも算定しているということで、その面積比が多少異なっています。立地条件としましては、2万1,000?程度が国定公園・国立公園での風況エリアという平均風速6m/s以上のところにある。ただ、これすべてが使えるわけじゃなくて、ここから傾斜度が大きい、送電線が無いあるいは搬入に必要な道路が遠いなどの条件を満足しないエリアを除いていくと、どれだけ使えるかという事になると思います。
 次に、国立・国定公園というのは、先ほど言いましたように特別地域、あるいは第1種地域は保全される。第2種、第3種並びに普通地域ですけれども、それと同様に県立自然公園というのも先ほど言いましたように5%のエリアを占めています。ここについて管理は、国定公園と都道府県自然公園は都道府県の同一部署で管理をしています。国定公園の取り扱いは国からの指針がありますけれど、都道府県についてはその取り扱いに非常に差異があったり、あるいは担当官の判断というのが不明朗という見解であります。実際、都道府県自然公園につきましては第2種、第3種、あるいは普通地域で占められていて、各県の数件の、例えば静岡等ではホームページ等で利用についての指針が出ていますけれど、そういう導入の指針がない県が多くあります。この地帯も利用できるようになれば、先ほど言いました国立・国定公園の高い標高地での風力発電の利用が少し抑制されるのではないかなというふうに考えております。
 次の資料で具体的にはこの右側に示す千葉県房総半島のの九十九里浜ですけれども、このエリアが国定公園です。ここの部分は県立自然公園で、それから館山付近が国定公園となっています。ですから、九十九里浜全体の海岸が風力発電を建てることが難しいということで、風車建設はありません。実際に風車建設の事例等では、この海岸線から陸地へ1km入った内陸側のところでの導入が幾つかの事例として見られています。
 先ほどの国定公園の中の1つの地域ですけれど、銚子のところでは実際に水郷筑波国定公園というエリアのグリーンのところが、公園地域の中でも導入をしてもいいということです。けれども、そういうような制度がかかっている地域です。それに対して実際に風車が建っている地域は、この市街地を除いた畑地のところに約23基、それからこちらの茨城県側のところでは、特にそういうような公園地域等の規制はかかっていません。
 ただ、神栖市でのガイドラインということで、この道路沿いのところに風力発電を建てることが一部の地域だけは可能です風速があっても利用可能地というのはかなり制限をされてきているということです。このような地域を少しでも利用することによって、先ほどから言っていますように、国立・国定公園地域の標高の高い地域での進出を防ぐことによって、バードストライク等については多少緩和されるという意見です。ただ、この水辺の地域についても渡り鳥とか留鳥の飛来ルート、あるいはこういう鳥の飛翔高度というようなデータを蓄積していかないと、風力発電の導入基数が増えた場合、今後バードストライクという現象が起きるのではないかと懸念されているので、生態系の調査が必要です。
 このような海岸線の風力発電利用というのを、考えていただきたいことであり、実際に発電量の例をここで紹介させていただきます。
 これは沿岸地域の発電メリットということで、昨年度、新エネルギー大賞を受賞された件ですけれども、ここでは1基という非常に小規模な発電をしている例です。年間で約300万kWh、電力代替のCO2で年間1,000トンの削減をしている。設備利用率30%という高効率のところです。実際にこの場所では、過去2年間においてバードストライク等は1件も起きてないという事例です。実際には、この漁港の風力発電機付近をカメモが漁船の水揚げの往来に伴って飛来しているというエリアです。
 これは先ほど示しました風況マップLAWEPSと実際の国立公園の位置を示したものと、導入された風車との位置関係が示されています。保安林、自然公園など海岸線の適地の利用が今のところ緩和されたという制度でもなかなか難しいということで、山岳地への風力発電の進出が今のところ進んでいるのでで、海岸線の活用ということを再度積極的な利用を確認して進めることによって、山岳地への風力発電の導入は少し抑制され、バードストライクへの回避ができるということを考えております。
 次のスライドはバードストライクのデータの2つの例ですけれど、これは環境省さんのほうでイヌワシとクマタカの生態エリアマップを平成16年度に発表されています。ここに重なっているカラーの部分がイヌワシ、あるいはクマタカの生態エリアなんですけれども、10km×10kmメッシュという非常に大きなエリアでつくられているということで、実際には鳥の生態系ではイヌワシは5kmから10km、クマタカについても行動範囲が非常に狭い5kmという中では、地理情報としてメッシュのデータサイズとか、円形バッファーというような行動範囲をもう少し小さくすることが適正と考えます。エリアデータとしては調査範囲が広がってしまうので、生態の環境調査というものを国で推進して、地理情報システム(GIS)等での重ね合わせというのが今後必要ではないかと考えています。
  バードストライクの調査対象としては、その2種でいいのかという種の設定を研究会で確認していただきたいということもお願いします。
 デンマークの環境レポートですけれども、ウインドファームを回避行動の調査をしていて、建設前、建設後ということでこのような差異がありますが、活動エリアは広がっています。それから、レーダーによる渡り鳥の飛翔ルートの功績を着ろ下図で、鳥のウインドファームを回避する行動が鮮明に確認されています。
 これも5月に出た全米環境団体Asbornのレポートですけれども、鳥の生息にとっては風力発電よりも気候変動が深刻な状態である。風力発電の温暖化抑制効果を認めているということです。
 今、言いましたように、我が国の風力発電の導入量は諸外国に比べ突出してないということ。それから環境省公園課の配下にある2種、3種特別地域、普通地域というような場所の風力発電の導入のための再構築が必要ではないかということ。私も環境調査等は必要だと思いますけれど、小規模な事業開発に対しては各事業者がやるのではなくして、国等で基礎調査を実施していただいて、それを事業者あるいは関係者等へ事業内容並びに生態系の基礎調査結果に守秘義務をもって調査内容を開示するということで、個々の事業者が調査をするのではなくむだのない推進体制を構築していっていただきたい。
 最後に、日本風力エネルギー協会会員からの要望事項ということで質問などを添付させていただきました。どうも失礼しました。

【安藤新エネルギー課長】  ありがとうございました。議論は後でまとめてさせていただきます。
 次は、議題2(2)の風力発電の立地プロセスに係る考察。原科委員から15分程度でお願いします。

【原科委員】  それでは、お話しいたします。20分から25分と聞いておりましたので、そういう準備をいたしました。
 お手元の資料の最初のページは粗筋みたいなのを書きましたけれども、あとスライドのコピーがございます。それから、本日追加しました随想とございますけれども、情報公開がいろいろ懸念されますので、このことに関することを法律の専門誌に書いております。
 それでは、早速お話しいたします。本日のお話は、環境省で風力発電事業、特に外国の例に関して調査していますが、それに関するアドバイスをしてまいりましたので、そのときの資料等を使わせていただきました。英国の事例、米国の事例をご紹介いたします。そして、課題の整理と提言ということで書いております。
 まず、諸外国ですが、風力発電事業開発の合意形成プロセスです。フローチャートはこんなぐあいになりますけれども、左側が事業者のプロセスということになります。真ん中に赤い破線がございますが、これは合意形成といいますか、参加の場です。一目でおわかりのように、最初は事業者の内部で検討を始めます。机上研究、デスクスタディといいますか、デスクワークですね。そして、予備的な調査に入るわけですが、そのぐらいの段階からイギリスでは既に情報公開しまして、地方計画庁とか法定協議機関との対話が始まります。それから、予備的な調査をやるときには、コミュニティに対して情報も提供しまして進めていくということで、大変早い段階から情報公開があるということを、まず申し上げます。
 そして立地点、これは案の選定ですね。案ができるというのは、最終決定していない段階でこういった住民との合意形成を進める。そのために必要な情報としては、環境影響評価が大変重要な役割を持っております。そして、計画申請をして、さらに多くの場合、合意形成の場として公開審問の手続きがとられます。あるいは公衆審問と訳してもいいかもしれませんが、そういうインスペクションというプロセスがあります。ここが大変大事なところで、このインスペクターというのはいずれの主体からも独立した一種の裁判官的な立場になりますけれども、そういうインスペクターが全体のプロセスを進行させて、そして結論を出す。こんな流れになります。
 そのときに、図の右にありますように、国全体での方針だとか、地域レベルの法定開発計画といったような公的計画との関係をしっかり見ていく。整合性をとるということですね。ということで、広域空間戦略というものと地方開発枠組の2つございます。
 広域空間戦略と申しますのは、Resional Spatial Strategyを訳したものですが、このリージョンというのは非常に広い範囲です。従来はカウンティの単位で考えておりましたが、今はそれらを統合して、イングランドで9つのリージョンに分かれますが、そういう意味では広域のリージョンになります。そういった方針がまず国レベルの計画方針、これはPlannign Policy Statementといいますけれども、それに基づいて広域空間戦略をつくります。さらに基礎自治体のレベルになります。ディストリクトとかバラというところですが、地方開発枠組、Local development Frameworksというものを決めます。こういったものがそれぞれ意思決定には大変重要な情報になってまいります。
 これをもう少し詳しく書いたのが、この図でございます。お手元の資料をごらんいただくとおわかりと思いますが、基本的にはこのようなプロセスです。イギリスでは基本的に環境アセスメントが行われるのですが、その場合に対応する主体が、大規模なものの場合には国のレベルということで、電力法に基づきまして国務大臣が関与する。これは5万キロワットを超えるものです。5万キロワット以下のものは、都市・農村計画法に基づきまして地方計画庁が計画認可をする。こんな格好になっております。
 図の下、左側が地方公共団体における計画決定です。右が国のほうです。真ん中の下のほうに公開審問手続きと書きましたが、計画インスペクターという人がこれを取り仕切るわけです。そこのところに結構矢印が入っておりますが、特に商業施設の場合には規模が比較的大きくなります。基本的には規模が大きいとか、紛争状況があるものは公開審問手続きに入りますので、アセスメントに加えて公開審問というのが標準的な形だとお考えいただいていいと思います。
 次のところは今のことを詳細に書きましたが、時間があまりありませんので、これは目で追っていただいて、中身は今申し上げたことでございます。
 それから、先ほどの図、最初の図の右のほうですが、そういう計画制度がしっかりできている国ですから、計画体系のことを簡単に申し上げます。
 このシステムは、今から3年前に土地収用法の制度が変わりまして、それに伴って計画制度が変わったのでございます。1つは、従来のカウンティというような単位でやっていた地域の計画を、さっき申し上げたリージョンという大きな単位、広域の単位でやるということになりました。それから、基礎自治体としてはローカルということになりますが、Local Development Frameworksということで対応します。
 3つの段階、国のレベルでは計画方針書(Planning Policy Statement)で方針を示します。特に再生可能エネルギー事業の場合には、そういった方針がしっかり出ております。それに基づいて地域ごとのResional Spatial Strategyをつくる。さらにこれを受けまして地方開発枠組を作ると。こんなふうになっております。
 では、国のもの、再生可能エネルギー方針書、これは方針声明書といったほうがいいかもしれませんが、ステートメント、文書で示しますので、方針書と訳しておりますけれども、計画方針書の22番に再生可能エネルギーというのがございます。これもここに書いてございますように、基本的には再生可能エネルギー開発事業は技術的に実行可能で、かつ環境、経済及び社会面の影響に十分対処し得る場合、国内立地は認められるべきだという考え方です。つまりエネルギー開発を推進しようというポリシーがございます。そういうことに基づいて空間戦略を考えるべきだと。そのポリシーを反映したものにしなければいけないです。それから、地方レベルでもこれを受けまして、審査基準をきちんと規定しなければいけない。このようなことで、これら3つの、方針から個別の計画まで一貫した形で考え方が連なっております。
 そんな考え方ですが、一方で環境への影響が大変重要だということで、自然環境保全の上ではイギリスは土地利用規制が大変厳しい国でございますので、これに関してはこういった従来からの考え方をきっちり適用しております。ここでは土地利用の指定を5つの分野に分けました。まず、国際的指定区域、ラムサール条約とかEU指定における保護地区など、次に国家の指定区域、国立公園とか特別自然美観地区、国定保護地です。そしてグリーンベルトがあり、緩衝地帯、地方指定区域と、以上の5つに分けておりますけれども、上の3つはいずれもこれは厳しく規制がかけられていまして、原則禁止でございます。
 しかし、原則禁止ですが、説明がきちっとできる、説明責任がきちんと果たせるような状況では例外もある。その説明責任と申しますのは負の影響があるが、それを明らかに上回るような環境、経済、社会上の便益がある場合には開発も可能です。これは、例外的だと考えてよろしいと思います。ですから、原則禁止なんですが、例外的に可能になっております。 原則禁止を貫くためにこの表の下の緩衝地帯とか、そういった考え方があります。上の3つの指定区域の周辺に緩衝地帯を設けまして、そこでは逆に再生可能エネルギープロジェクトの開発を避けるような政策をやっていけないと。むしろ推奨しなさいという考え方でございます。
 地方指定区域の場合にも、地方レベルの景観自然保護指定は、それ自体では再生可能エネルギー開発の計画認可を却下するようにすべきではないということで、下の2つの分類に関しましては逆に推進したいという考え方です。
 そういうことで、そういったルールがしっかりできております。そのルールに基づいた議論をしていくということになります。風力発電事業の計画の是非の議論の場はどんなふうに行われるか。私は、これの場合には公共空間での議論と申しまして、パブリック、公衆がみんなよく見えるような形、透明性の高い議論を行うということです。イギリスはそういう形でずっとやってまいりました。
 風力発電立地点の選定プロセス、これは基本的には事業者の内部でスタートいたしますけれども、始めて間もないころから情報公開が始まっております。そのときにこの事業者は、先ほどのように土地利用規制が厳しくなっておりますので、環境影響も考慮しまして、計画認可の得やすいプロジェクト立地点を優先して選んでおります。例えばある事業者の場合には、国により指定されている自然保護地区については、サイト候補の選定段階で考慮しまして、そういった地域は最初から除外する。そのようなプロセスが行われております。
 その後、複数の候補地点が残ります。1個の場合もありますけれども、それに関しましてまだ決まっておりませんから、これから選ぶということです。そのための住民同意プロセスに入ります。これは住民同意ということが大変重要な要件になっておりますので、これをきちっとやるわけですけれども、これは日本でも同じだと思います。
 そのときに大切なのは、1つは環境影響評価です。特にスコーピングの段階が大事でして、これできちんといろんな意見を反映する格好でアセスメントを進めていく。特に比較検討、代替案がきちっとしているかどうか検討するわけです。
 それからもう1つは、先ほどのパブリックインクワイアリーで公開審問会が実施されまして、これは合意形成につながる場でございますが、計画インスペクターがこれを取り仕切る。こんなふうになっております。
 具体例をここにご紹介したいと思いますが、イギリスの例です。イングランドですね。ウィンドファーム開発計画の事例です。これはScout Moorというところですが、地図をごらんのようにイングランドでも北のほうで、スコットランドに近いところです。ですから、農地としてはなかなか使いにくい面もありまして、ここも荒野に立地しております。したがいまして、生態系とか自然環境に対する影響評価というのはそれほど重要なものではないという、基本的にそんなところでございます。
 しかし、この場合でも23カ月、2年ほどかかっております。このプロセスでごらんいただきますと、2002年の秋から机上調査が始まりましたけれども、11月には風況計測用マスト設置の計画認可を取得しております。この段階で実はコミュニティに対して情報提供しますから、始まってすぐに情報公開が始まったということになります。そして、いろいろな事前調査がありまして、この過程で規模が6万5,000キロワットより大きく、また地域住民の懸念も示されたということで、地方計画庁からの申し出によりインスペクションに入りました。2007年7月に計画申請して、8月には事前の準備が始まりました。ということで、これは5月に計画認可が出ていますから、大体9カ月ほどかけてこういったプロセスを踏んでおります。かなり丁寧なやり取りがあることがこれでおわかりいただけると思います。
 このときに計画認可の議論はどんなふうに行われたか。この場合には、貿易産業大臣が所管いたしました。国の関与ということでございます。そのときに1つは他の計画との整合ですね。地域レベル、地方レベルの計画目標と合致しているか。それから、エネルギー白書で設定された政府の目標と整合しているか。こういうマクロな観点からのチェック。もう1つ大事なことは立地の問題で、そのサイトを正当化する理由があるか。そのときほかのサイトが考慮されたか。また、ほかのサイトがなぜ採用されなかったか。そういうようなことで、立地の代替案に対する説明責任を果たすことになっております。それからもう1つは、個別的な環境影響。ここでは視覚影響でございます。景観の問題が大事だということを貿易産業大臣が示しております。
 そういった論点を踏まえて議論しまして、最終的な計画インスペクターの結論でございます。ここに書きましたように、この計画による環境影響にもたらされる損害というのは、地域景観が大きく変化するものの受け入れられ得るだろうと。あるいは影響を最小化するように、計画条件と計画義務を課すことによって緩和され得るという判断でございます。したがいまして、この開発計画は認めるようにという提言をいたしまして、認可されました。こんなことでございました。
 計画インスペクターはそのためにかなり詳細な個別の計画認可条件を示しておりまして、20項目にわたりますけれども、ここに示したようなものです。例示をしましたけれども、例えば一番右に書いてありますのは、この系統への電力供給開始時から25年でこの認可は失効いたしまして、その後、12カ月以内にすべての地表構造物等を取り除くということになります。それから、12カ月以上の長期間にわたって連続して運転が停止しているタービンがあった場合には、これは取り壊しなさいとか、家畜の当該敷地内へのアクセスに関してこれをきちんと確保するようにとか、アナグマの生息に関しても調査をしっかりやった上でないと開発に着手しないとか、建設作業は鳥類の巣ごもり期間を避けるように制限する。そのような色々な計画認可条件がございまして、これらの20項目があることによって許可が得られた、認可が出たということになります。
 そのために、この最初の段階で事業者は代替地をいろいろ比較検討するんですが、そのプロセスも当然透明性が必要なわけですけれども、その情報として、例えば環境情報を地図情報という形で整理したものを政府が提供しております。これがその一例でございますが、こういうようなことで土地利用のいろんな制約に関してきちっとした形で情報提供しておりますので、事業者の負担も随分軽減されていると私は思います。これがその例でございます。
 こういった評価の方法でございますが、もう1つアメリカの例を申し上げます。アメリカのほうは全体のプロセスといっても、評価方法に関して内務省の魚類・野生生物局によるガイドラインでございます。この許認可に関しましては、国有地以外の場合には連邦政府は関与いたしませんので、州政府とか地方自治体が行います。したがって、魚類・野生生物局は許認可を行う過程で、専門家として意見を求められることがあるということになります。ただ、連邦政府は州政府とか地方自治体から離れた立場なので第三者性が高く、むしろ意見を求められることがかなりあるということになります。
 そこで、2003年、今から4年前になりますが、「風力タービンによる野生生物への影響を回避し最小化する暫定ガイドライン」を公表いたしました。これがその例です。このガイドラインを先に急いでいきましょう。要するに相対比較して、そのサイトを評価しようということです。そのためには基準サイト(reference site)が必要です。それとの相対評価です。ランク付け評価を行うという考え方です。このとき大事なのは、評価は開発地の選定に利害関係を持たない連邦または州の機関に所属する専門家、そういったものを含めるという大変大事なポイントがあります。
 これがフローチャートですが、この上のほう、初期サイト(スクリーニング)、このような段階でランキングして、立地をするかどうか、先に進めるかどうか、そういったところに簡単な評価方法がありますよということです。
 3つのチェックリストがありまして、地域特性チェックリスト、野生生物チェックリスト、生態系チェックリストです。地域特性と野生生物への影響、それから生態系、このようなことになります。これは相対評価ですから、絶対評価ではないので、このランクが高いということはよくないというわけなんですけれども、だからといってそれだけで決めるわけではないということを特に注意しております。
 具体的なチェックリストの例を1つお示ししますが、非常に簡単な形ですね。このマトリックスの左側が鳥の種類です。それぞれの種類に対して3つの点で評価しましょうと。Bというのはブリーディング、繁殖地がどうなっているかどうかです。それから、マイグレーション、渡り鳥が来るか。ウィンタリング、越冬地であるか。そういった3点からチェックしまして、チェックが入ったらその数だけカウントしようと。縦に足せばポイントが出るという、非常に簡単ですね。ですから、大変ラフですけれども、そんなラフなことでも相対評価をすることによって、どちらの土地での立地がより適正かということが判断できる。そんな考え方でございます。
 もう15分たってしまいました。20分から25分と言われて準備したものですから、これは予定が狂いましたね。どうしましょうか。それでは、あとはこのメモを急いでいきます。ポイントだけ言います。
 まず、風力発電施設の立地促進というのは大変重要な課題だと思います。そのときに合わせて自然環境保全が大事ですので、環境影響評価をしっかりやるというのがポイントだと思います。それからもう1つは、環境影響評価というのはあくまでもコミュニケーション、情報提供の手段ですから、それに加えて合意形成プロセスを丁寧に行うことです。さらに、そういったことで事業者の負担を減らすためには基礎情報、特に環境情報の整備を行うべきだと。この3つだと思います。
 環境アセスの要件、これをお話しする予定でしたが、これは飛ばします。いつもこれは講義で話していますが合理的で公正な判断、そして、効率性が大事だということです。合意形成のためにはこれに加えてさらにジャスティス、公平とか公正とかいいますが、価値対立の調整が必要だということ。それから安定性、主体間の長期な関係です。これは立地する主体を常に考えるということです。そういうことをやった上で、必要があれば最後にこういうコンペンセーション(補償)という議論が出てくると思います。往々にしてこれが最初に出てくるので、ややこしくなるんですが、これは最後に出てくる問題だということを申し上げます。
 それから参加の5段階、「意味ある応答」というのはここに書いておりますからこれは飛ばします。
 それから、提案でございます。結局、丁寧な合意形成プロセスが結果的に円滑な立地をもたらしますので、そこでそういったプロセスを確保するために、私は環境社会配慮ガイドラインといったようなものをつくることが必要だと思います。そういったことをまず具体目標に挙げたいと思います。
 そこで、2つのことがあります。そのための手続きとしては、検討プロセスとか合意形成プロセスの整理ということと、それからよりよい環境影響評価実施のための支援、この2つがあると思います。
 まず、検討プロセス・合意形成プロセスの整理におきましては、1つは系統連係とか補助金の交付等の意思決定の手続きの見直しです。それをどの段階で情報公開できるかということで、できるだけ情報公開しないとこれは先へ進めませんので、そういったこと。もうひとつは、その上で環境影響評価のシステムとの連動です。ここではこういう上位の意思決定段階につながりますから、戦略的環境アセスメント(SEA)ということを視野に入れなければいけないと思っております。そういったものに対する新しい評価手法の整理が必要ですし、そしてアセスメントを踏まえた合意形成のプロセスを導入すること。こんなふうになります。
 このアセスメントを実施するための支援としましては、先ほど申し上げましたけれども、環境情報の整備ということ、これは国にぜひやっていただきたいと思います。それから、もう1つは第三者的な専門機関、これを何らかの形でつくっていただきたいと思います。これは極めて重要でございます。このことは先ほどご紹介したイギリスの例におきましても、アメリカの例におきましてもございました。こういった点がございます。
 あと、望ましい検討プロセスのイメージ、フローチャートを書きましたが、これは見ていただきましょう。先ほど申し上げたことで、左が合意形成プロセス、環境影響評価は不可欠です。事業者が行う検討のプロセスはこんなふうになりまして、評価手法は例えば決定手続きとの関係が大変重要でございますので、審査が始まって決定までの間の期間をしっかりとっていただいて、決定の前に合意形成が行われなければいけない。これは重要なポイントでございます。
 最後には『環境計画、政策研究の展開』という本の紹介です。これは実は今申し上げたことよりもっと詳しいことを調べたいという場合には、ぜひこの本を読んでいただきたいということです。「持続可能な社会づくりへの合意形成」というサブタイトルがついておりますが、1月に岩波書店から出版したものですけれども、社会の意思決定を合理的で公正なものにするためには、どうしたら良いか。今スキップしたところに関して詳しく書いております。これもお読みいただければありがたいと思います。
 それでは、これで終わります。駆け足ですが、終わります。

【安藤新エネルギー課長】  ありがとうございます。松田委員から3の風力発電の生態リスクと継続調査の重要性についてご説明をお願いします。

【松田委員】  すみません。15分で終わるには3分前に合図をいただき、つまり12分で合図をお願いします。
 私は例えばこの宗谷岬のウィンドファーム、こういうものの環境影響評価に少しかかわらせていただきましたが、私は先ほど議論にありますように、新エネルギーというものの開発は環境政策の最重要事項であると思っております。あともう1つ、私たちは絶滅リスクとかレッドデータブックの評価とか、そういうことにかかわっております。じゃ、どのぐらいそういう個体群に影響があるのかということをしっかり見ていきたいという立場から話をさせていただきます。
 とかく研究者は自分の研究分野が何よりもまして大事だというふうに言いがちです。論文ではそれは大いに結構なことだと思いますが、実際に社会に提言するときに、さまざまな問題のどれが一番大事かということは、もう少し客観的な目で見るということも研究者にとっては非常に重要なことであると思います。それを私はリスクトレードオフというふうに申しております。
 風力開発という技術は将来の投資であると思います。今、採算が合うとか合わないとかいうのではなくて、風力の利用というのは化石資源の枯渇に備えた国策なのである。それを今民間企業がやっているということです。もう1つは温暖化の対策です。これは喫緊の課題であるというのはすべての世論が認めていることである。その意味ではRPS法が定めた数値目標、これをどうやって達成するか。まず、これを出発点に置いて議論をすべきである。その上で、ほかの問題に対して配慮できる部分は配慮しましょうというふうにすればいいと思います。
 さらに、このRPS法の数値目標にとどまらず、例えば前回、岡安委員がおっしゃったことですが、日本において2020年までに自然エネルギー10%を導入するというような、より高い数値目標を掲げるということも重要でありますし、それに向けてそれがほんとうに可能かどうかということも我々は検討していく。それが重要であると思います。
 当然のことながら、自然環境への配慮というのも国策であります。これを全部民間企業に丸投げということでは、環境にやさしく、しかも風力もつくるというふうにはなかなか進まないという現状があります。現実に今、この風発事業は補助金で成り立っている。この補助金がなければ参入者は大幅に制限されます。そういう事態の中でこのRPS法の数値目標を達成するという意味では補助金を使う。その結果、情報が少ないですから、たまたまそこはよく当たると。例えば鳥が衝突するという場合が想定されます。そういうときに無理なく、例えば工夫ができる。そのために工夫するにはコストが要ります。そのコストを何らかの形で手当てする。
 それは1つには、例えば国がお金を出すということも1つの方法であります。もう1つは、例えば保険システムをつくる。例えば1基しか持っていない市民風車、これに当たったらコストが高過ぎます。例えばそういうところに保険制度などでリスクを分散させていく。そういうシステムをきちんとつくるということが大事であります。つまり民間企業に委託している以上、採算割れしない方策というのをちゃんと国策として担保すべきだということです。
 その実情を拝見しますと、これはあくまでも1つの試算ですけれども、売電価格が10円。13円ぐらいになれば、補助金なしでも何とかぎりぎり採算がとれるかなというような例えば試算があります。私の聞いたところでは、消費者に大手電力会社が売っている売電価格がキロワット20円であると。つまり、そういう意味では20円で売れれば、今でも採算がとれるわけです。
 これは1回目の会議でも出てきたことですが、鳥の事故死のうち風車はごくわずかであるということです。前回も申しましたが、例えばオジロワシが当たったというとき、なぜ風車に当たったときだけ記者発表するのか。これは私はおかしいと思います。そうでなくて、全部公平にやるというならこれは正しいと思いますが、これは先ほど原科先生がおっしゃったように、公平・公正さが非常に重要である。ですから、もし発表するのであればすべて発表していただきたい。これは強く申し入れます。
 次、鳥の衝突リスクですけれども、これはさらに低減することが可能であるというふうに思っております。これはアダプティブリスクマネジメント、これの典型的な例として出てきます。例えば情報が今少ないんですが、いろいろ当たってくるという情報があれば、どんな季節、どんな時刻、場所、天候で当たるかという情報がそろってまいります。今、非常に少ないわけですから、非常に少ない段階では個体群のリスクは少ないです。これが多くなってくると無視できなくなるかもしれません。その場合には、多くなればこういう情報がそろってくるわけです。そうしますと、ハイリスク部分の数を下げるという方法ができるようになります。
 そのために大事なことは、いつどんなところで当たっているかという衝突死のモニタリングです。ところが、実際には今これにほとんどお金がかけられていません。これは非常に残念なことです。これはもちろん海外ではそういうのはかなり調べられている例があるんですが、日本においてはそれに関して、例えば国の予算を出すとか、そういうふうになっていない。これは非常に残念なことです。
 もう1つは、成鳥が当たっているか、あるいはオスが当たっているか、メスが当たっているか、こういう情報がきちんと必要です。あるいは死後何日たったと見られるかというのが、前回いただいた解剖所見、剖見には書かれておりません。もしごく新鮮な個体ばかりであれば、これは氷山の一角だとか、そういうことがわかる。これは前回申しました。これはぜひ調べていただきたい。
 もう1つは、風発というのはそんな巨大な公共事業で、ほかの環境アセス法に対応するものと同列に見られるようなものなのかと。私はそうは思っておりません。確かにつくるときにその周辺を伐採します。しかし、私はそれが恒久改変で、一度失われたらもとに戻らない自然であるとは思っておりません。むしろそれはもっと巨大なほんとうの影響があるような事業はいっぱいあります。それと同じレベルに扱うというのには私は賛成できません。むしろ20年たてば回復する。そういう自然であるし、風車自身もそういう実験であるというふうにみなすことができる。
 これはデンマークのある事例の論文です。海上の風発です。鳥が風車を避けるというのが鮮やかな事例であります。1回目の祓川委員でしたか、佐多岬の事例もよくわかりましたが、これもよくわかります。これはデータで一つ一つのガン・カモ類の軌跡を見ているものですが、風車が建った後ではこのように避けておりますし、そのすき間を縫って、これが大体400メートルぐらいあるんですか、風車は大体半径50メートルぐらいだとしますと、その間をすり抜けていくという様子がよくわかります。ただし、50メートル以内に近づいているというのも、このレーダーの記録によれば0.6%程度あるということです。したがって、ゼロではありません。ただ、そのうちどれだけ当たっているかというのは、むしろこの海の上の風発ではわからないというようになっていくと思います。
 次は、これは環境省生物多様性センターが出しているノスリのデータです。このように今、生物多様性センターでは極めて多くのデータが公表されています。これは大変いいことだと思いますが、これだけ見ても絶滅リスクはわかりません。これと先ほど長井委員が示された15枚目をよくごらんいただきたいと思います。よく問題になっているのはイヌワシとかクマタカです。そこの生息数をよくごらんになってください。イヌワシの生息確認は635。この地図の10キロメッシュ上で635枚、クマタカは1,402枚です。これらは絶滅危惧種として保護され、これに対する風車の影響が懸念されております。
 このノスリ、これは絶滅危惧種ではありません。これを見ますと、生息確認というのはA、B、C、全部足し合わせればいいかもしれませんが、そうすると大体180ぐらいです。どちらが少ないかというのは一目瞭然であります。何を保護すべきかというのも生態学的には明らかだと思います。確かにクマタカを全部守れば、北海道はあれですが、内地の大半の森林を守ることができるでしょう。しかし、それがほんとうに風車という温暖化防止のエネルギー源の開発にとって、このクマタカのエリアを全部押さえろとか、そういう必要があるのかということはもう一度ご議論いただきたいと思います。
 実はこのノスリの生物多様性センターのデータとこのクマタカ、イヌワシのデータ、これは実は違います。生物多様性センターのほうには、こういうイヌワシ、クマタカのデータは発見できなかったんですが、こちらは1970年代と最近のを比較しております。生息地は増えていますが、これは発見効率といいますか、発見努力量も違いますので、一概に増えているとは言い切れません。しかし、これはメッシュがあるので、私は目を凝らしても見えませんけれども、多分ほんとうに目を凝らせば、前あったところがなくなっているというデータが少しはあるはずです。それは多分ほんとうになくなっているんだと思います。そういう地点が何地点あるかを見れば、ほんとうに絶滅リスクを計算することは可能です。それはこのクマタカ、イヌワシでも多分可能です。そういうような科学的な計算をすべきであるというのが私の意見です。
 例えば私は植物レッドリストに深くかかわっておりますが、100メッシュ以上あるものはなかなか絶滅危惧種に挙げられません。それで挙げられているのは、例えば減少率が過去10年で8割であるとか、要するに急激に減少しているものが絶滅危惧2類に挙げられております。
 次、景観の話ですけれども、1回目でしたか、景観の話を見て風車は小さくて、その隣にある煙突は大きいのに風車が規制されるというのを聞いて、私は素人目にちょっと納得できないという例がありましたが、景観というのはむしろ歴史的な産物であって、これはオランダの風車に例えると気を悪くされる方がいらっしゃるかもしれませんが、あれはいい風物詩であるというふうに思われる。今の風車というのは、例えばWWFジャパンの方はいつも温暖化対策に風車の絵を掲げて、キャンペーンを張っていらっしゃいます。私は決してあれは悪い風景と思われなくなる可能性があると思います。ただ、それはもうちょっと時間が必要です。その時間は十分にあると私は思います。20年の実験というのを私はいつも申し上げております。むしろそれをやることによって、温暖化対策の世論を鮮明に議論するいい機会になるのではないかというふうに思っております。
 もう1つは、たしか前回でしたか、アヴォイドマップというのが必要だというお話がありました。先ほどの原科委員の発言によれば、ランクが重要であるべき。アヴォイドでありません。ランキングする。原科委員の17枚目をよくごらんいただきたいんですが、そこに何と書いてあるか。この一番下ですが、評価の結果、ランクの高いサイトは一般に風力発電の開発に好ましくないが、ランクが高いからといって必ずしも対象から除外されるものではない。また、低いサイトでもちゃんと評価をする必要があるということです。これは非常に重要なことです。戦略評価というのは原科委員が言ったとおりのものだと思います。ですから、それはアヴォイドマップというものではないんだということです。
 むしろ私はポジティブマップというのをつくっていただきたいと思います。もちろんこれはポジティブであるから、全部つくっていいという意味ではありません。それはむしろ先ほど長井委員がおっしゃったように、10キロメッシュでアヴォイドするというんじゃなくて、むしろより細かい、できれば500メートル未満ぐらいの単位で見る。鳥の影響も、例えば営巣場所からの距離であるとか、非常にきめ細かいマップが必要です。風力に関しても今そうだということを長井委員はおっしゃいました。それが重要である。そういう総合的な戦略評価を行うということでないようなアヴォイドマップというのは、むしろ温暖化対策に反対する、あるいは化石燃料依存から脱皮しようとする運動に反対するという役目しか客観的には果たしていないと思います。
 前回、2004年ですか、環境省自然環境局がこういう基本的考え方をまとめられたというのをウェブ上で知ったんですが、むしろこういう資料はこの委員会でもぜひ配付していただきたいと思います。そうでないと前回の議論からさらに進んだ議論になりません。長井委員は特別保護地域や第1種地域はみんな守ることで合意しているとおっしゃいましたけれども、私は先ほどの原科委員のお話からすれば、決してそこは無条件に風発の立地から外すべきではないと思っております。
 例えばこれは長井委員自身のご論文から引用させていただきましたが、特別地域のほうは6メートル以上です。むしろ風から見ればいい立地が多いんです。ただ、それは前に決まったことであるというならば、それ以上蒸し返すことは私はいたしません。ただ、これはむしろアメリカなどの基準に比べて、イギリスの基準の7枚目を見れば、私は特別保護地域1種は全部無条件に除外するというふうにイギリスがやっているようには読めませんでしたけれども、少なくともアメリカに比べて、むしろ風発を推進するのに後ろ向きであるというふうに言えると思います。
 国立公園ですが、実はこれは日本やアメリカとか、ヨーロッパで考え方が大分違います。すみません。これは長井委員の9.1%が多分正確だと思いますが、国立・国定公園の面積を全国土で割る。海は含みません。アメリカは国立公園はどうかというと、大体3.4%とウェブ上では言われておりました。もちろんステートパークはまた別にあります。むしろ日本のほうがずっと多いんです。その国立公園をすべてアメリカのナショナルパーク並みに厚く保護すべきだというのは、現実問題としてできません。日本の国立・国定公園には民有地がいっぱいあります。それは無理なんです。それは考え方の違いなんです。 別に国立公園を多く押さえるのは結構なことだと思いますが、そこに風車を建てるのは原則禁止というのは、先ほどのRPS法の趣旨を守る上でほんとうに合理的なのか。むしろそれ以外のところで鳥に当たるリスクが高いところに建てざるを得ない。そういうリスクがむしろ深まってしまう。何のために守っているのかというふうになってしまうのではないかと思います。ちなみスイスは1カ所のみというのは有名な話です。むしろそういう国立公園という枠組み以外のもので、あの美しいアルプスの景観は守られているということです。
 急ぎますが、1つは透明性の高い環境保全策、これは原科委員がおっしゃったとおりですけれども、1つ申し上げたいことは今の抽選という制度です。これはほんとうに身もふたもない。普通、事業者というのは、原科委員は異議を唱えるかもしれませんが、水面下ではそれなりに合理的に立地選定をやる。この過程では費用効果もいろいろ見ている。ただ、それは透明性が全くない場合が多いです。その上で事業計画を公表してから環境影響評価をやっている。それで、操業を始めるというプロセスです。戦略評価は当然、計画段階から透明な評価を行う。
 ところが、そこに抽選というのが入りますと、通常の事業でやっているような立地選定でいいところを選んでいるという作業がすべて台無しになっているというのが私の意見です。これは通常の事業アセスよりも悪い。これはやめていただきたいと思います。
 発電システム、これも言うまでもていことですが、風力発電は超優良発電の候補です。ほかの事業に比べても、むしろCO2の排出の効率からいって効果があるというものであります。
 最後にインセンティブ、これをお話ししたいと思います。そういうRPS法を実現する。その中でも、私はもちろん低められるものなら鳥の衝突リスクを低めたいし、それは私、生態学者の仕事です。できるだけ実行可能な範囲で低めるように努力したいと思います。ただ、それにはインセンティブが必要です。それは国の事業者にできない、まず長期総合調査を行うべきである。先ほどのノスリのようなデータ、これもぜひクマタカ、イヌワシあるいはオジロワシ、そういうものについていただきたいし、そこの中でちゃんと詳細な地図、目を凝らさなきゃ見えないんじゃなくて、何メッシュ減ったかというようなデータもいただきたいと思います。今の段階では増減すら不明確である。
 鳥の絶滅リスク評価に使えるような全国調査、これは当然環境省がやるべきです。後でクマタカが一体どういう理由で絶滅危惧種に載ったか、IUCN基準に比べてどうだということをご意見いただきたいと思います。むしろそういうものも定量評価が可能であるということです。
 その意味では民間をやる気にさせる行政政策が必要だと。今のやり方ですと、事前に計画を公表したところだけが攻撃される。正直にリスクがあると言うとたたかれる。やっぱりリスクはゼロじゃないんですね。それはゼロではありません。さっきの洋上のデンマークの例でも0.6%、実際にレーダーの中に映っております。その全部が絶対当たらないという保証はありません。ただ、それはごくわずかであろうと思いますし、地球温暖化の対策、あるいはほかの事故死によって死ぬものに比べて公平に判断すべきだというのが私の意見であります。
 事故死調査、これも民間の事業者に自分でやれと言われても、それは多くやればやるほど発見率が出てきますので、これはたたかれるということになります。
 もう1つの問題は、今ですと例えば抽選に当たったと。そうすると、2年後に操業しなさいという制約がかかっている。これではよく調べてみたら、ちょっと影響がありそうなので、もう少し調べようというふうにならないんです。これは非常によくないということであります。
 それでもう1つは、私の提案としましては、むしろ事前に合意形成や努力した事業者が評価されるようなインセンティブのある行政施策を考えていただきたい。それで、合理的に評価する。事故死は共同で調査し、風発の事故死以外も公表する。先ほど申しました。操業2年で、アセスメントをやってみたら多少影響がありそうだというところでは、もう少しそこを期限を延長するということも許していただきたいという話であります。
 というわけで提案ですが、先ほども申しました。RPS法の数値目標を達成することが最優先事項である。そのためにはむしろポジティブマップをつくっていただきたい。これは先ほど原科委員が言われたランキングをきちんとやるということでももちろん構いません。
 鳥衝突対策の目的は地域個体群の存続です。この意味では大きな影響は実はそんなにない。少なくとも種レベルではないということは、多くの鳥学者が共通しています。ただ、1羽1羽は死んでもいいということを言うと、市民との合意形成ができない。それはそのとおりだと思います。しかし、それと問題を変えて、1羽でも当たったら地域個体群に重大な影響だというふうなことは言われないと思います。
 そのために必要なのは、個体の存続可能性解析ができるような有用なデータです。 先ほどのようなマップが30年前と比較してあれば十分可能です。継続調査によって個体群への影響がもし深刻であることが判明したときは回避対策を立てる。できれば保険だとか、政府がそこだけお金を出すとか、いろんな方法を考えていただければ、民間事業者だって損をしなければちゃんと素直に撤退すると思います。
 合意形成としては、省益を超えた広い視野に立った議論が必要です。まず風車ありき、そういうことではなくて、全体を通して合理的な議論が必要です。そのためには私は環境省地球環境局も含めた3者の連携をもって議論していただきたいということを望みます。国立公園内では戦略評価をやっていただきたいし、風発の実現のためにさまざまな環境保全措置をむしろ奨励するような予算措置を組んでいただきたいと思います。
 長くなりましたが、以上です。

【安藤新エネルギー課長】  ありがとうございました。 前回、研究会の質疑に関連して、2つ補足資料が出ています。鹿野委員と国立公園課から、それぞれコメントがありましたらお願いします。

【鹿野委員】  前回、岡安委員から質問があった経済損失ということで、設置例②ということでお配りしております。実はちょっとミスがあって、直して送ったんですが、最初送ったペーパーがきょう配られていて、今、ちょっと訂正を含めて言います。小国の場合であれば変更結果、1基から5基に変更したことによって51.32ギガワット/hということで、約840世帯分の消費電力が減少します。あと、3ページ目に書いてあります新出雲の場合ですけれども、ここはちょっと単位が何点か間違っていまして、最終的に変更結果が39基から26基で、32万と書いていますけれども、これは320.331ギガワット/hということで、5,200世帯分の消費電力が減少するということの数字でございます。よろしいでしょうか。
 以上です。

【安藤新エネルギー課長】  ありがとうございます。
 それでは、神田課長からお願いします。

【神田国立公園課長】  私どものほうからは、前回の研究会でご質問がありましたけれども、時間の都合と私どもの準備の都合でご説明できなかった諸外国の国立公園における風力発電施設の取り扱いについて、把握できた範囲内でご説明したいということで資料をお配りしております。
 それで、資料を見ていただくときに、何でこれなんだということについてなんですが、前提としてお話ししなきゃいけないのは、同じ国立公園と称しているものについてもご案内のとおり、国によって多く制度が異なっております。大きく分けまして、アメリカのように国立公園の区域を国が所有・管理して、公園専用地として、もしくは保護地域としている営造物型のものと、それから我が国のようにさまざまな土地利用を前提としつつ、そこに公園の指定目的の実現のための保全のための公用規制をかける地域性、ゾーニング性とも言っておりますけれども、2つございます。前者の営造物型のものは基本的には公園目的のためにある制度でございますので、あまり議論する余地がないのかなというふうに思います。
 そういう意味で我が国と同じような地域性を持つ公園、それでデータが余っているか、資料が入手できたイギリスを中心に資料をお配りしております。それと、イギリスの場合はちょっと数字が違っております。公園の数はイングランド、ウェールズで14と書いてございますが、実はこれは12でございます。14はスコットランドが入った数字でございます。国土面積で10%という数字でございます。先ほど来たびたび出てきております国立公園・国定公園の9%に似ている数値になってございます。
 それぞれの国立公園ごとにナショナルパークオーソリティがあって、そこが開発申請に関して審査をするという仕組みでございます。そのための基準として、デベロップメントプランがあり、その下の計画としてローカルプランがある。ローカルプランに掲げられております基準、最近はどうも風力発電施設という項をもって言うようでございますけれども、その辺を抜粋した資料をお配りしたということでございます。
 基本的にごらんいただければわかるとおり、かなり厳しめでございます。特に大規模な風力発電施設、商業目的、ウィンドファームについてはかなり厳しく、公園内の設置は原則認めない。先ほどちょっと原科先生のほうから言及があった、その辺につながっていると思いますけれども、公園区域内には適地がないことの証明を要するという記述があるものもございます。ただ、一方、小型風力につきましては、地域の電力需要に対応するものについては、アセスメントを行った上認めるという推進の立場をとっているということでございます。
 このように、イギリスの公園の例でございますけれども、風力発電施設については公園指定目的に大きく影響する可能性があるとの観点から慎重に対応し、計画段階から立地選定を含め、景観影響について十分なアセスメントを求めている。
 それから、できたらドイツの例もと思ったんですけれども、ちょっとデータが足りませんで、あれですけれども、先ほど長井先生のほうからちょっとご発表があった中で、ドイツの国立公園というのはいろいろ訳があるようでございまして、ドイツの国立公園というのはドイツの面積の0.5%しか占めておりませんで、おそらくこの数字はドイツの制度を訳す場合に景観保全区域と言っている地域のことを言っているのではないかなと思います。それぞれの地域についても規制をかけておりまして、その規制の内容が州によって異なるということがあるようでございまして、全容をご紹介することができておりません。 以上でございます。

【安藤新エネルギー課長】  ありがとうございます。
 それでは、ご議論に移ります。最初に祓川委員。

【祓川委員】  風力発電事業者の1社のユーラスエナジーというところから来ています祓川ですけれども、今、原科先生あるいは神田委員のほうからお話があったことなんですけれども、私どもは英国で十数年にわたって風力発電の事業展開をしてきております。結果として初期の開発以降、一切できていません。その主たる要因は電波の問題とか、防衛の問題とか、環境の問題とか、いろいろあるんですけれども、時間がかかって難しくて、結果として事業が簡単にできないというのが実態です。
 英国の例は、考え方としてはなかなかいいと思うんですけれども、戦略的なアセスとか、いろんな問題も含めて規制のためのアセスという考え方か、あるいは国立公園法であるのかということで、結果として風力の開発が難しい状況にあります。今、日本のおかれている状況からかんがみて、風力発電を伸ばすという意味でいけば、昨年でいきますと米国、インド、中国が非常に伸びている。一方、現在、世界の風力発電はドイツ、米国、スペインのじゅんです。そうすると、英国をサンプルに入れて、それをベースにお話をするというのはいかがなものかというふうに私は考えます。アセスプロセスというものをよく考えて、基本的に風車を受け入れるためのアセスとしての手続きを考えていくべきというふうに私は考えております。

【大村委員】  事業者側におります大村でございます。私のほうから2点ございまして、1点は、イギリスの事例が原科先生と環境省さんのほうから出ておりますけれども、確かに国土面積的には国立公園、自然公園の立地としては合っているかなと思うんですが、実際、イギリスと日本では、イギリスの場合は高緯度ですね。日本は中緯度です。イギリスの場合は北極から風が吹いて、非常に密度が高い風力発電によい風が吹くということも聞いております。ということは、風車にとって非常に立地条件が良いと言うことです。一方、日本の場合は非常に山岳地帯が多くて、なかなか平地も少ない、海岸線もなかなか利用ができないという風力発電のための立地条件が必ずしも良くない状況下にあります。その辺も考察して比較する必要があるんじゃないかなと思ったのが1点。  
 あともう1点は、先ほど松田先生のほうからバードストライクが非常に強調されて、ちょっとおかしいじゃないかというご意見があったんですが、これは私どもは賛同いたします。私は実はいろいろ開発関係をやっておりまして、過度にマスコミさんが書かれることによって、実際、風車の事故があるのは全体からするとほんとうに数%だと思います。ところが、地主さん方であったり、地元の方々はこのことを非常に心配されます。うちの風車は大丈夫なのかということもおっしゃいます。それで、私どもはそこでまた非常に説明に窮するところがあるんですが、こういう問題について、前回、私どもは懇話会のほうでも発表させていただきましたけれども、モニタリング、この辺のことについては、私ども業者としても国から費用を負担していただければ、十分対応は可能だと思いますので、その辺もよく考えていただければなと思っております。
 以上でございます。

【原科委員】  今、ちょっとご意見をいただきましたので、それにお答えする部分も含めて申し上げます。
 イギリスとの比較ということで、資料、調査は環境省がやったのをアドバイスしたんですが、私はこういう問題は計画プロセスとの関係が非常に重要だと思いまして、その意味では計画制度がかなりしっかりできているイギリスが1つのモデルになるかと思います。それから、国土条件が結構似ていますね。先ほど松田委員のご説明でアメリカの3.4%、これは国立公園の意味がまるで違うので、あれだけ厳しい規制をしているアメリカで3.4%というのはすごい数字だと思います。ですから、そういう意味ではあまり比較できないと思います。
 それから、スイスの場合は非常に少ないんですけれども、これは基本的に土地利用規制が非常に厳しい国です。私はスイス連邦工科大学に10年ほど前におりましたので、国土計画の専門家とよく議論しましたが、とにかく厳しいんです。土地利用規制のほうでしっかりやっているので、国立公園は非常に少なくても、基本的にはそういう制約がかかっております。だから、すばらしい自然環境を守られているんです。それは環境資産をつくるという考え方でスイスはやっております。そんなことを考えますと、イギリスが1つの比較検討対象になるかと思います。
 ただ、風力発電というのは、まさに再生可能エネルギーでございますので、基本的には推進することが大事だと思います。例えば化石燃料とか原子力、これはウランの枯渇が心配されます。今、ウランも取り合いになっているぐらいですから。ですから、そういう枯渇資源ではなくて、再生可能エネルギーを進めるということは非常にいい点だと思いますので、その意味ではそういった観点からこういうふうにしっかり目標を共有すべきだと思うんです。そのためにはきちんとした議論の場が必要だということなんです。
 そこで、先ほどスキップしたところで申し上げた公共空間における議論という考え方です。公共空間というのはパブリックアクセスができるパブリックスペース。ドイツの社会学者のハーバーマスは公共圏、パブリックスフィアーと言っていますけれども、これは社会全体なんですが、環境の場合には地域がかなり限定的になりますから、そうすると特定の地域というイメージを出すためにパブリックスペースという言い方をしております。そういうところで公開プロセスで議論していく。これは松田委員がおっしゃったことと全く同じ考え方だと思うんですけど。そういう意味ではSEAという考えは非常に大事なことで、それをぜひやっていただきたいと思います。
 そこで、最後のところで提案ということで、そういうプロセスを示すガイドラインをぜひつくっていただきたいという提案をしたわけでございます。そういうことでイギリスとの比較はそういう意味合いでございます。
 その上で、大村委員がおっしゃったように、風況が大分違うからというような点もみんなの議論の中でわかっていると思うんです。ポイント、大事なことは、環境影響評価は日本の場合には非常に限定的にしかやっていませんので、日本のやっている普通の環境影響評価を考えてはだめです。日本の環境影響評価は残念ながら非常におくれておりまして、アメリカでは連邦政府が関与する事業はすべて対象にしておりますから、年間3万件から5万件なんです。日本の国レベルのアセスメントは幾つかご存じですか。たった30件ですよ。アメリカは1,000倍から2,000倍やっておりますから、けたが違うんです。人口規模は日本の2倍ちょっとありますから、人口で割ったってすごい量でしょ。だから、その辺がまるで違うので、ですから我々が通常考えているアセスメント、大規模事業に対してしかやらないという考え方はまずぬぐい去る必要があります。
 来週、ソウルで国際影響評価学会の世界大会がありまして、これはIAIAといいます。そこの大会でいろいろ発表があります。今回はすごいです。700題ぐらい発表があるから、ものすごい大会です。たまたま私は来年度はそこの会長になります。30年で初めて日本人会長が生まれたんですけれども、これまでそんな可能性はなかったのです。日本のアセスはおくれていますから。でも、ようやく日本のアセスも少し進み出したという印象があるんでしょうね。会長に選んでくれました。
 そういうことがありまして、ところがお隣の韓国を見ますと、韓国は何とアセスを年間3,000件やっています。人口は日本の半分以下ですよ。日本の4割ぐらいですかね。4割弱かな。そういうところで3,000件ですよ。だから、日本のアセスはあまりにも大規模なものにしかやらないから、これは通常の日本の感覚ではだめなんです。ですから、環境影響評価、環境アセスメントを小規模なものに対してもやるというのは世界では今常識なので、それを考えてまずやっていただきたい。
 その意味では、そういうことでアセスメントの対象を広げるのは大変大事なことなんです。ただ、その議論の中で合理的で、公正な判断をしていただきたいと思います。私は、先ほど何度も松田委員がおっしゃったように、環境情報をしっかり整備することをぜひやっていただきたいし、それはむしろエネ庁も環境省も共同して戦線を張って、環境情報を集めようじゃないかと言ってもらいたいですよ。大した金じゃないです。数億円もあればある程度集まるでしょう。10億円、20億円という金は、国会予算からいったら微々たるものですよね。その程度の金で基本データはそろっていくんですから、ぜひこれは推進していただきたいです。それがありますと、そうすると電力事業者も随分これは助かります。
 実は事業者の中では、通常はかなり妥当な判断をしておられると思います。ただ、問題は、そのプロセスを情報公開しないので、みんなわからないんですよ。だから、祓川さん、自信があるのであれば、ぜひオープンにしていただければいいんですよ。そうすると、これは変わってきますよ。その場合に、個々の事業者が個別に集める情報では判断できないんだったら、これは事業者は気の毒ですよね。だから、基礎データに関してはパブリックの側で用意しておく。そういうものを使えば、基本的なスタートは切れるんだと。そうなっていけば随分変わると思うんです。だから、そういう方法で、公共としてはしっかり情報提供をする。
 もう1つは、イギリスの場合にはインスペクションの制度がありますから、ああいうインスペクターという制度があれば非常にいいんですけれども、日本はそこまでは無理ですね。でも、何とかして第三者性の高い機関を設けることです。そのことによって全体のプロセスがうまく進行すると思いますから、そんなことをぜひ私としては申し上げたいと思います。
 もっと言いたいことはたくさんございますけれども、だんだん時間が心配になってくると思いますので、この辺で1回切り上げます。またほかの件で申し上げます。

【由井委員】  この研究会の一番最初に申し上げましたけれども、自然エネルギーをどこまで日本が持っていくかという、RPSを含めて当然考えなきゃいけないんですが、いろいろ問題点はあります。いろいろお聞きしてわかってきましたけれども、例えば端的に言って、最後の松田先生のアヴォイドマップとポジティブマップ、多分両方つくったとして、だれが調整するかですね。その前にほんとうのアヴォボイドマップをつくるのに何年かかるかということがあります。風況調査のほうは意外とというか、かなり簡単にできるのではないかと思うんですけれども、実際に生態系なり希少種を守るための地図というのが、あるいは小鳥も含めた渡り鳥を守るための地図というのは実現可能性があるかどうかということが、まず前提として横たわっているのではないかというふうに思います。
 それから現在、送電線とか、ガラス窓、ビルにもたくさん当たるという資料が何回も出てきますけれども、ほかに当たるから、こちらがいいというわけでもないと思うんです。全体を減らさなきゃいけないと思うんです。全体のリスクはどのぐらいかというのがあって、風力が少ないから、風力オーケーというんじゃなくて、もしかしたら風力の最後の1%が絶滅に至るパーセントかもしれない。その辺はよくわかりませんが。
 それはなぜそんなことを申し上げるかというと、いつも岩手県の例を出して申しわけないんですが、岩手県のイヌワシは30つがい北上高地にいますが、今年は1ひなしかひなが育たなかったんです。それは林が茂ってしまって、えさ場がないということです。わずか残されたえさ場に風車が建てば、最後のネジが落ちる。そういう関係になるので、単純パーセントでないリスク評価というのが多分必要ではないかというふうに考えます。
 それで、最終的に、最初に申し上げたように、ぎりぎりのときにどこが多少我慢するかということになるわけですけれども、ならざるを得ないと思います、きょうまでの論調を聞きますと。ただ、その前に省エネルギーというのは絶対まずやるべきで、それも先ほど言った国の国家政策なり国民の合意が必要だと思います。
 それは置いといて、それでちょっとイギリスの例でお聞きしたいんですが、イギリスは最初の長井先生の例で、2010年までに10%の自然エネルギー導入というふうに長井先生の資料2の4ページに書いてあります。そして、今度はイギリスでそれを国レベルで実施する場合のことですが、原科先生の資料3の11ページの3行目に地方レベルの計画の目標があるというふうに書いてあるんですけれども、国としての自然エネルギー10%を2010年までに達成するための地方レベルの計画というのは割当なのか、早い者勝ちということはないですけれども、インセンティブがあって、早くやったほうが得だというシステムになっているかですね。要するに住民合意といっても、どういう形で例えばイギリスの場合に10%を達成しようとしているかという、その辺、日本にも参考になりますので、もしおわかりだったら、私の質問の最後ですけれども、お聞きしたいんですが、わかりますでしょうか。

【原科委員】  今の件はちゃんと調べていませんのでわかりません。ただ、イギリスの考え方では、上から割当ということは普通やらないと思うんです。ここで出たのはイマージングという表現だったと思います。イマージングはLocal Development Frameworkとなりますから、そういう意味では地域の場合にはさっきのストラテジーですね。その段階ではある程度そういうものを反映する。ローカルの場合にはそういう点でかなり距離があると思います。ただ、イマージングということですから、その議論の中で国の目標がありますから、それをにらみながら積極的に進めたいという考え方は議論が生まれるということになります。これも国民の参加で議論するんです。
 ですから、議論した上で決めていくことで、そこでイギリスの場合は非常に個人主義というか、インディペンデントというのを非常に重視しますので、国の性質があると。それをにらみながらここの地域はどれだけ頑張りましょう。そんなことだと思います。具体的に個別なことまで取り調べることはできませんでしたので、わかりませんけれども、私の推測ではそんなところであります。

【祓川委員】  私どもは今現在、英国で事業を何とか推進すべくということでやっているんですけれども、州とかいろいろ場所によって、あるいはプロジェクトの規模によって違うかと思うんですが、日本ですと各種の許認可を入れて30ぐらいとれば、大体風力発電事業は着工できるという観点なんですが、私どもは今現在、英国で展開している事業はざくっと150の許可が要るということです。英国ではコストも時間もマンパワーも相当かかるというような状況にあるということで、そこが大きな違いかなというふうに思っております。

【松田委員】  私の資料の4枚目をちょっとごらんいただきたいんですが、風発がどのぐらいの採算があるか。これはもちろんあくまでテストケースですが、これを見ますと、損益として1基当たり1年間に例えば200万円というのが出ております。ここに環境保全費用は入れていません。環境アセスメントに大体幾らぐらいお金がかかるかは、多分、原科先生のほうがよくご存じだと思いますが、ダムとか、その辺の事業だととてつもないお金がかかります。もちろんそんな必要はないわけですが、今、補助金で成り立っているということをもう一度よく考えていただきたい。
 つまり補助金で成り立って、環境影響評価もやって、かつ採算がとれるということをやるというのは非常に厳しいことなので、それをもし変えて増やすのであれば、そういう意味での例えば補助金の制度、あるいは先ほど私が言いましたように、もしその場所は撤退するという場合の保険の制度とか、そういうのを整備しない限り民間に任せておいて、RPS法の数値目標を達成するのは極めて困難、あるいは国としてやる気がないとしか私には思えないです。

【下村委員】  お伺いしたい点が1つと、それからお話をしたい点が3つぐらいあります。
 1つは、主に長井先生ないしはエネ庁さんにお伺いをしたいんですけれども、長井先生のお話の中で国立・国定公園の風況が非常にいいという話がありましたけれども、国立・国定公園の外にも風況のいいエリアがあるわけですね。先ほど、全国で13万平方キロということでしたから、自然公園5~6万ぐらいですし、公園の全域が風況がいいわけではないでしょうから、7~8万以上の風況のよいエリアが公園外にあると思います。そこのエリアに関して、さっきポジティブマップという話がございましたけれども、建設の容易性とか、どのぐらい人がお住まいになっておられるかとかの情報をオーバーレイすれば、適地が抽出できるのではないかなと思うんですけれども、それがどの程度進められているのかということですね。今回は、国立・国定公園だけを出されていますが、公園外のエリアとの比較があって初めて、どちらがよいかという議論になると思います。そのあたりの作業をどの程度やられたり、あるいはやられるご予定なのかというのをぜひ教えていただきたいというのが質問です。
 それから、意見として簡単に申し上げますけれども、1つは、きょうは主に手続きの話が出てまいりまして、私はようやくこうした話になってきたなというふうに理解をしております。最初に、今回はともかく自然環境保全の公益性と風力推進の公益性のどちらが重要かという議論ではなくて、その両立をどういうふうに図っていくんだという議論だと伺って参加をしていますので、当然、おさまっていくところは手続きの話になると思うんです。手続きというのはアセスであり、計画であり、合意形成でありというところだと思います。
 そして、何度も話が出ているように、それは手間がかかって、費用がかかってということですから、それをどういうセクターがどういう形で費用負担して、あるいは少しでも早めるためにどういうデータを用意しなきゃいけないのか、あるいは既存のデータをどの程度活用できるのかという具体的な議論がアウトプットされるべきだと思います。きょうは少しずつそんなイメージが見えてきたかなということでうれしいなとは思うんですけれども、ぜひそこの議論を進めていただきたいというのが1つです。
 それから、あと2つは景観にかかわる問題で、これは最初から申し上げている話ですけれども、現在の風力発電の風車は景観的に影響がないわけはないですね。100メートル前後のものが新たに建設されるわけで、ヒューマンスケールを完全に逸脱しています。当然、影響があるということを前提に、それがどの程度許容されるか、あるいは受け入れられるかという話になっていくんだと思います。
 そのときに国立公園、いわゆる自然公園というエリアとそれ以外のエリアというのは、見ていくときの立脚点が違っているということが1点目です。自然公園というのは、少なくとも重要な美しい自然環境を守っていくということが現行の制度で決められているエリアなわけですから、現状に対してどのぐらい影響があるかということをちゃんと議論することは当然必要な手続きだと思います。しかしながら、それ以外のエリアというのは、今度はおそらく地域の方々が景観に対する価値観の変化も含めて、それをどのぐらい受け入れられるかという話しになります。前回、葛巻のお話があって、ああいう形で地域の方がちゃんとそれをむしろポジティブに受け入れられるという話であれば、それはそれにこしたことはないわけで、自然公園とそれ以外のエリアとでは少なくとも影響を評価する立脚点が違っているという点も認識して議論していただきたいと思います。
 先ほど松田先生から、わりとラディカルな表現で景観に対する価値観が変わってきているとお話しがありました。それは事実なんですが、変わってきているという言い方は正確ではなく、新しい価値観がまたつけ加わってきているというのが正しい言い方だと思います。両者の比率、ウエートは変わってきていると思うんです。ロマン主義を背景に19世紀の終わりごろに出てきた原生自然保護の考え方と、1世紀たった今とでは大分違ってきていて、今は文化的な景観、つまり人が関わっていく景観の重要性、あるいは景観は生活そのものの反映だという考え方が出てきていますので、そういう価値観の変化があるのは事実ですけれども、それはあくまでそういう価値にも配慮しましょうということです。大切なところはちゃんと守るという前提があってはじめて、新たな価値の議論ができるのだと思います。そして、失われる景観の経済価値というものも非常に大きいということが2点目の意見です。実際にそういう景観や環境の価値をはかる手法としてのCVMなどもご存じだと思いますけれども、環境の経済価値ということがしきりに、あるいは景観に関しても経済価値に配慮して保全管理していくべきということが言われております。
 ちょっとだけ余談をさせていただきますと、私は今、東京都の環境審議会に参加しておりますけれども、部会は経済政策部会というのに入っております。実際に温暖化の問題とか、緑の環境の質量の向上についての話もあるんですが、それをどういう形で経済政策にのせていくかという議論をしております。市場の問題も絡めますし、公共経済の問題もありますが、これからは、すべて市場に任せるということではないと思いますけれども、そういう景観や生物多様性の保全や形成の問題について、経済の仕組みにも配慮しながら進めていく必要があって、そういうことも考えると、景観の扱い方がまたちょっと違ってくるんだと思います。失われる景観の経済的価値についてもぜひご配慮いただいて、議論していただきたいというふうに考えております。
 以上です。

【長井委員】  今、13万5,000平米に対しての割合という、国立・国定公園だけじゃなくて、実際には、私の資料の14ページを見ていただくと、全般的には海岸線というのは色で見れば黄色という形になっていますので多いわけですけれども、例えば保安林というような、これは環境省さんのアイデアではないんですけれども、農水のほうでも保安林というところでの風力発電というのは、私が知っている限りではまだ1カ所だけです、一部海上では。2基の風車が建っている。
 ですから、全般的に言いますと、海岸線というのは公園、あるいは保安林等でのそういう制限がかかっているというところです。それがあるものですから。逆に、県立公園という自然公園の中で、今回、対象ではないんですけれども、そこもかなりの面積を占めている。そういうふうなデータがあれば、ぜひ私もやりたいと思うんですが、なかなかそういう地理情報の電子データがないものですから、その辺もできてないという状況です。

【安藤新エネルギー課長】  大野委員、岡安委員、古南委員の順にお願いします。

【大野委員】  すみません。時間をとっていただきましてありがとうございます。
 今までの話を受けても、1つは環境情報をもとにした全国的なアヴォイドマップ、ポジティブマップといった自然環境の都合から風力発電の慎重さをはかっていくものがまず必要だと思います。それは環境省が持っている情報である程度のところはいくと思います。地域のきめ細かいところは、可能であるならば、長野であのような事例があるわけですから、都道府県ごとに都道府県ならではの情報を集めてつくれるような地域版のセンシビティマップ、アヴォイドマップ、ポジティブマップ、どれでもいいんですけれども、それをつくれる仕組みがこの機会にできないかというのが1つあります。
 あと、松田委員のお話で、抽選ですべて台無しになっているというお話がありました。それは多分、補助金申請についても私は同じだと思いまして、補助金申請の審査のときに環境影響評価、環境保全対策がどれだけされているのかというのが審査されているのかどうかすらわからない状況です。この間、安藤課長のほうからNEDOのマニュアルはある。補助金申請は、それはそれで環境影響評価があるというふうにおっしゃっていました。公募資料の応募要綱にもNEDOのマニュアルを参考にして実施することと書いてありますので、この機会に原科委員から環境影響評価、立地選定の段階から含めたそういったガイドラインが必要だというお話がありましたので、ぜひこの研究会をきっかけにSEA的なところも含めたガイドラインをつくっていただきたいと思います。
 その2点です。

【岡安委員】  きょうの議論の中では風車建設のためのガイドライン策定が必要である、それから環境影響評価を行う必要があるというところは大体皆さん一致していると思いますので、私はあえてそれを強調することはいたしません。ちょっときょうの議論の中には出てこなかったところですけれども、私どもが強調したいのは、風車を含む自然エネルギーというのは、日本のこれから将来のエネルギー政策の中で分散型のエネルギーであるということをもう一度思い出していただきたいと思います。これから日本は地方を活性化していくという1つの政府の目標があり、その中で自然エネルギーというのは地場産業として拡大していく非常に大きなポテンシャルがあります。今からでも遅くはないと思いますので、市場開拓を、補助金を抽選で使うのではなくて、補助金を使って技術開拓を促す、日本ならではの技術というものをどんどん進めていくということが必要なのではないかと思います。
 第1回目に古南さんのほうから一番最後に、例えばバードストライクが非常に少ない風車の事例なんかのご紹介があったときに、安藤課長のほうからなかなかこの形の風車は日本では使いにくいんだと具体的なお話が出ているということは、そこに技術革新の余地があるということですから、本質的に右上がりの自然エネルギーの促進ということを考えたときに、日本人の得意なところですから、自然保護に効果の高い風車の技術開発、市場開拓というところにもうちょっと目を向けた形での地場産業の開拓という視点もあってもいいのじゃないかと思います。
 それに付随しまして、きょう前回の私の質問のお答えとして、かなり詳しい資料を鹿野委員のほうからご用意いただきましたけれども、これを見て非常におもしろいなと思います。前回たしか由井委員からだったと思いますけれども、損失も1つの環境コストとしてきちんと風車を建てる場合のコストに計上するべきだというお話がありましたけれども、一方でこのようにある程度の稼働率の低下があるためにCO2の削減量が減少しているというのは、一般の方に対するコミュニケーションの1つのツールとして非常に有効なんです。気候変動防止と自然保護、どちらをどのようなバランスで選ぶかという点で、地場産業として風車を利用していく現場の方が、自分たちの使う電力に対して責任を持つという視点を持っていただくためには、こういう形でコストとベネフィット両方をきちんと提示して、公開していただくということが非常に重要になってくるし、地元の方のご理解も進むのではないかと思います。そういう意味でこの資料は非常におもしろかったので、事業者の皆様にはこれからどんどん公開していただきたいなと思っております。
 以上です。

【古南委員】  ガイドラインのお話が原科先生から出ましたけれども、私も立地選択の段階から手順を整備していくということ、それから基礎的な環境情報を整備していくということ、これは繰り返しになりますけれども、非常に重要なことと思います。
 それで、イヌワシ、クマタカ、ノスリの情報マップなども今ご紹介にありましたけれども、この手の調査はまだやらないといけないこともまた変わるとは思っているんですけれども、予算規模としてはおそらく、これは生物多様性センターのほうで把握されていると思いますけれども、この手の調査をやる予算と1つのウィンドファームをつくる予算を比べると、それほどたくさんの予算がかかるわけではないということを考えると、国策として風力発電をつくっていくときに、非常に危険性のあるところをできれば除外していくといった情報を公開していくためにも、これは公的な予算できちっとマップをつくっていく。私もアヴォイドマップでもポジティブマップでもどっちでもいいと思っているんですけれども、そういうセンシティブなところを明らかにしていく、情報公開をしていくということ、これは事業者さんのためにもなると思いますし、全体的に推進することにもなると思いますので、ぜひこの研究会の成果として次に進めていっていただきたいなというふうに思います。
 それから、手順の中で環境影響評価のことが出ておりました。祓川委員からはイギリスは難しいんだよって、実感として今お聞きして、ああ、そうなんだなと思ったんですけれども、長井先生の資料を見ると、イギリスの導入量は日本の大体3倍弱ぐらいはあるわけです、現在でも。ということを考えると、イギリスの事業者さんもそれなりに努力されているということもあると思うんです。
 日本でこの研究会をやっている間に、つい先日も4月に根室のCEF昆布盛ウィンドファームでオジロワシの死亡が確認されてしまいましたけれども、2004年以来9番目ですね、オジロワシの死亡が。昆布盛ウィンドファームはこれで2回目だと思うんですけれども、事故が。特定の昆布盛とか、苫前の2カ所とか、事故が頻発しているようなところもございますので、事後調査も重要と思いますし、環境影響評価をしっかりやって、危ない場合には避けていくというものも個別には必要だと思います。
 費用負担に関しては、先ほど松田先生がご提案になった部分は私も賛成するところが多くて、全部事業者さんだけに負担していただくというのもちょっといかがなものかなというふうに思っております。
 以上です。

【原科委員】  ちょうど今、イギリスの実態に対するお話が少しありましたが、厳しいといっても3倍も導入しているということでございました。それに関係するデータをちょっと申し上げます。
 先ほどの調査の報告書の一部ですけれども、2004年で計画認可は59件申請がありまして、認可が得られたのは36件、つまり、6割強ですね。ですから、みんなだめではないんです。大多数は合格と。それから、2005年はもっと増えまして84件の申請で、合格60件です。これは7割以上です。ということで、6割から7割、3分の2程度は大丈夫。だから、外れるのは3分の1、これを外れ過ぎと考えるか。その辺は基準の取り方ですから、高い低いは言いにくいんですけれども、全部がアウトではないということですね。3分の2多数というのは通常、社会では多いと考えますから、そういう意味ではこういったプロセスを経てもきちんとやれるということだと思います。その結果、導入が3倍になるんだと思うんです。
 ですから、こういう説明責任を果たすことが大変大事なプロセスですので、ぜひこのガイドラインをつくっていただいて、その結果、適正な立地が進むと思うんです。それから、こういう自然エネルギーに関する国民の理解も深まると思います。また、環境配慮もその結果として随分進むんだと思います。ということで、ぜひこのガイドラインをつくっていただきたいということを、ここでもう1つ申し上げておきます。
 そのときにどうしても情報公開は必要ですので、それはいつも懸念されることになりますので、これについて書いたのを1枚配らせていただきました。『判例地方自治』という法律の専門誌ですけれども、もう大分前です、8年前になりますが、「随想」というコーナーで意思形成過程の情報公開、これに対する懸念がよく示されますので、実はそうじゃないんだということです。
 3つのポイント、無用な混乱が生じるとか、自由な意見の表明が阻害されるとか、土地の買い占めが生じるというようなことをよく言われますけれども、そういったことはよく論理的に物を考えていただくと、そんなことはない。実は大分我々は勘違いしているんだと書きました。このことは私だけの意見でありませんで、法律の専門家の方も同じように何人も言っておられるので、まず間違いないと思います。だからこそ欧米の通常、環境先進国と言われる国では、環境情報の公開とか計画情報の公開が日本よりずっと進んでいるわけです。日本も随分とそういう意味では変わってきましたけれども、もっとそれを進めていただきたいと思います。あくまでも説明責任をしっかり果たせば、これは社会的合意は進んでいくと思います。

【松田委員】  55秒で合図ください。
 まず、マップですけれども、長井委員はRPS法の数値目標に達成できるかどうかというのを視野に入れたマップをつくっていただいたと私は思っています。ほかの環境省のほうからはそういうマップが出ておりません。とにかくアヴォイドとか、ランク付けでも何でもいいですから、そのときにそれを達成するかどうか見積もり、展望を持ったマップが必要であるということです。
 もう1つは、原科委員からは日本の環境影響評価は2けたおくれていると。それを全部やるべきだというのは、私は風発だけにやれとは申しません。だけども、公園内ではそれをやるというコンセンサスは今ほとんどできております。むしろこれは積極的に生かすべきであると思います。海上、海の上では、先ほど長井委員の最初のあれにもありましたけれども、漁礁等を含めて、つまり魚が寄ってくる、それで鳥も寄ってくる。そういうものも含めた形のものを開発するということをぜひ取り組んでいただきたい。
 もう1つ、風発は分散エネルギーだとおっしゃいました。ですから、蓄電の技術、これも踏まえた上でやっていけばかなり変わると思います。
 それからもう1つ、何度も言うようですが、単に風発だけじゃなくて、ほかの要因で死んだ場合のオジロワシとか、そういうものは記者発表していただきたいと思います。

【祓川委員】  すいません。先ほど長井先生のほうから保安林が2例というお話だったんですけれども、風力発電の事業者といたしましては、基本的に風のいいところに建てたいということですと、長い歴史の中で国有地、国有林に建てさせてほしい、保安林に建てさせてほしいと。あるいは自然公園の中に建てさせていただきたいというのが3大地域になっておりまして、国有林に関しましては林野庁のご配慮で5ヘクタールがオーケーになり、5ヘクタール以上については経済特区等によって設置可能という状況になっておりまして、保安林につきましてもかなり進んでおりまして、解除ということじゃなくて、作業許可等によっても保安林の中に風車が設置できるような状況になってきているということで、2大地域についてはほぼ開放の道に進んでいる中で自然公園だけが閉ざされているという状況にあります。国立・国定公園を含む規制緩和を事業者としては強く希望するということでございます。

【安藤新エネルギー課長】  ありがとうございます。活発なご議論をいただきました。資料5という論点整理の骨子の案があります。次回、論点整理メモという形にして、委員の皆様方にお渡しをし、第4回研究会で重点的にご議論いただきたいと思っております。
 1として基本的な考え方。2では野生生物保護と風力発電施設の問題。ここに3つほどの論点を書いています。3.では景観保全と風力発電施設、特に自然公園とのかかわりということです。それ以外のところでも合意形成プロセスの考え方、あるいは立地の検討に係る考え方がこれまでご議論になっています。
 環境省の皆さん、そういうことでよろしいでしょうか。
 最後に、今後の日程についての確認いたします。次回は6月12日14時からの開催です。場所その他詳細は、後日事務局からお知らせいたします。これで議論を終わりますが、特にご発言はありますか。原科委員。

【原科委員】  いつも時間が足りないので、議長も大変だと思いますので、次回は最終回になるんですね。

【安藤新エネルギー課長】  とりあえずです。

【原科委員】  ですから、次回2時スタートなので、ちょっと長めに時間をとっていただいたほうがいいかと思います、2時~5時ぐらいで。そうすると、フラストレーションも何とか解消すると思います。よろしくお願いします。

【安藤新エネルギー課長】  会場その他の都合等で調整をしてみたいと思います。大野委員。

【大野委員】  論点整理のメモ案というのがいつぐらいに出るかだけ教えいただきたい。各委員に事前に届けられるという話でしたけれども、大体。

【安藤新エネルギー課長】  環境省の皆さんともご相談しておりませんので、極力早くということで、ご理解いただければと思います。この骨子案についても何かコメントなどがありましたら、事務局にお知らせ下さい。極力早めにということで事務局として努力してまいります。
 本日の研究会はここで終了とさせていただきます。本日、長時間ありがとうございました。

── 了 ──