自然環境・生物多様性

ジュゴンと藻場の広域的調査手法検討会(第1回)議事要旨

開催日時

平成13年11月2日(金)14:00~16:00

開催場所

霞山会館「まつ」の間(東京都千代田区霞ヶ関3-2-4 霞山ビル9階)

議題

ジュゴンと藻場の広域的調査(素案)について

議事経過

 環境省自然環境局野生生物課長による開会の挨拶の後、事務局より出席者紹介、検討会の進め方等について説明を行った。その中で、会議は原則非公開とし、議事要旨を速やかに事務局でとりまとめ環境省ホームページに掲載すること、特に座長は置かないことが了承された。
 その後、事務局より本検討会の配布資料に沿ってジュゴンと藻場の広域的調査の素案に関し(1)調査目的、(2)調査範囲、(3)調査項目、(4)調査手法について説明がなされ、引き続き調査項目ごとに委員による検討が行われた。
(注 □:環境省及び事務局((財)自然環境研究センター)発言 ○:委員発言)

(I)海草藻場の調査について

  • □まず沖縄本島から調査を始め、予算の状況にもよるが、可能であれば慶良間、八重山等へ範囲を広げたい。調査はできるだけ早く着手したい。調査期間はまだわからないが、1年で終わりということにはならない。
  • ○海草の生育は季節により消長があり、調査は同じ季節にやらないと結果を比較できない。浅場では4月頃にはカモメノリなどの海藻が増える可能性が高いので、秋が(調査時期として)良いだろう。
  • ○どのあたりの深さまで(海草が)生えているかを調べて欲しい。また、空中写真では海草以外の部分を間違って海草とする場合があるので注意が必要。
  • ○ヒメウミヒルモ(トゲウミヒルモ)は浅い所で水深5m、深い所で20m程度の場所に生えている。(深場は)空中写真では見えないので、直接見るしかない。
  • ○海草の調査は良いこと。海草藻場調査に重点を置いて予算を使うべき。住民からの情報提供も使うと良い。また、藻場の調査と並行して、海砂利の採取による影響や漁業(特に養殖業)との関係も調べるべき。マンタ法は海中の視界の善し悪しが影響するので要注意。
  • ○北限の生息域という意味合いを明らかにするためにも一般的な気温だけではなく、深度別の水温、水面上の気温についても調べておくべき。マンタ法よりもグラスボトムボートを調査用に用いてはどうか。
  • ○10月に開催された哺乳類学会の報告ではジュゴンの胃の内容物としてウミヒルモが多かったとされているが、ウミヒルモは他の海草が生えていない場所に生えるので、可能な限り調べておくべき。また底質の組成を調べ赤土の流入との関係などもモニタリングすべき。
  • ○海草だけでなく硫化水素の発生による海草への影響も調べるべき。
  • ○海草の調査方法としてはデジタルビデオカメラを船から吊り下げて船上のモニターで確認する方法も考えられる。また、沖縄の海草はオーストラリアとは異なり、パッチ状に生えているので、トランセクト上に単純にコドラートを設けるのではなく、パッチの広さに応じてコドラートの大きさや数を変える必要がある。
  • ○ジュゴンの生息に関しては、それほど餌は鍵になっていないかもしれない(ジュゴンは餌の不足で生息頭数が制約されているのではない。しかし、餌場の保存は必要ないという意味ではない)。藻場の分布だけを知るという意味では、現存量ではなく、もっとラフに分布面積の消長を調査するだけでも良いのではないか。
  • ○ジュゴンの死体を見るとどれも太っている。ジュゴンは状況に応じていろんな種の海草を食べていると思われる。今いる個体にとって餌が足りないということはないのではないか。
  • ○食草のひとつとして(資料には)「ウミショウブ」とあるが、これは沖縄本島ではなく八重山で見られる種。たぶん固くて食べないのではないか(ウミショウブの類は地下茎は硬いので食べないが、葉だけを食べるという報告がある)。
  • ○現地でジュゴン調査を行っているNGOからの情報をまず最初に集めるべき。食跡を調べている人達もいる。
  • ○食跡はジュゴンがいたことを確認する意味で重要。航空機による確認調査よりも良い方法と言える場合もある。
  • ○深場の海草藻場の状況はよくわかっていない。とにかく調査をやってみて、その上で必要があれば更に検討してはどうか。
  • ○ジュゴンがよく見つかっている東海岸の水深60~90mのところなどは、深場の海草藻場調査の候補地と考えられる。

(II)ジュゴンの行動調査、(III)ジュゴンの食性調査、(IV)ジュゴンの遺伝学的特性調査について

  • ○ジュゴンにとってストレスが少ない調査手法を考えるべき。
  • ○これまで見つかっていないところで個体を発見し、保護につなげるなら意味はあるが、生息数が少ない現状では、船や飛行機を使った調査にあまり重点を置くべきではない(航空機で生息頭数を調査しようとしても膨大な費用がかかる割には、得られる精度は低い)。
  • ○気球や飛行船を活用する手法を開発してもいい。
  • ○文献には間違いも認められるので注意が必要。例えばアザラシなどをジュゴンと誤って報告している例がある。
  • ○(DNA分析は)骨標本の状態にもよるが、鯨類では直径1ミリのドリルで得られる粉があれば調べることは可能。死んだ個体に関しては徹底的に調べて、いろいろな情報を得るべき。
  • □外国も含めサンプル入手先の情報等についてご協力をお願いしたい。
  • ○新城(あらぐすく)にはジュゴンのオガン(聖地)があり、相当量のジュゴンの骨がある。ただし、この活用は、地元の了解が必要だろう。

その他の意見等

  • ○定置網にかかった個体は、一旦収容し、飼育下で十分な知見を得た後に、海に放しても良いのではないか。
  • ○環境から切り離して、水族館に入れることは家畜を作るようなもので、自然保護の最終目標ではありえない。飼育による研究も否定するものではないが、それを沖縄でやるべきではない。
  • ○本調査を行う際、併せて漁業活動がいつ、どこで行われているのかも記録しておけば、今後の保護に役立つはずである。
  • ○ジュゴンを保護するため、漁業関係者との話し合いを水産庁、環境省などの関係省庁や沖縄県が一緒になって進めるべき。

今後の方向

  • □検討会での意見を踏まえ、調査手法等の再検討を行う。
  • □次回検討会は、12月又は1月。