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事例とデータベース

住民とともに実現する持続可能な森林再生プロジェクト

プロジェクト名称:
マナスル森林再生 ー ヒマラヤに森をつくろうプロジェクト
活動場所:
ネパール連邦民主共和国 ガンダキ県サマ・ガオン
活動主体名:
NPO法人ピーク・エイド、Mountaineering Rescue Training Foundation of Nepal(MRFN)/コスモ石油エコカード基金(協力)、住友林業株式会社(技術協力)/ベハーム・ラジャ・ライ氏(技術協力)
  • 事例の分類:植林

プロジェクトの概要

アルピニストの野口健氏が代表を務める環境・国際協力NPOであるピーク・エイドは、ヒマラヤ山脈の一角を成す8,000メートル級のマナスル峰の麓にあるサマ・ガオンで2015年から森林再生プロジェクトに取り組んでいます。

産業がないサマ村(サマ・ガオン)では、森林資源は木材販売による貴重な現金収入源であると同時に、燃料用の薪としても活用されてきました。その結果、森林破壊の進行とともに、土砂崩れや下流域の洪水被害のリスクも増大しています。富士山8合目と同じ標高である3,400メートルという高地に位置する村で、数十年の時間をかけて持続的に森林を再生していくためには、そこに住む村人たちが主体的に関わり木々の成長を見守っていく必要があります。ピーク・エイドによる既に学校建設の支援実績があるサマ村で、自生種の苗木づくりから森林再生のプロジェクトがスタートしています。

マナスルは、1956年に日本の登山隊がはじめて登頂を成し遂げた山として、地域の人たちから「ジャパニーズマウンテン」として親しまれ、日本にとって縁の深い場所です。アルピニストの野口健氏は、初登頂50周年となる2006年にマナスル峰の清掃登山を行ったことをきっかけとして、麓のサマ村で「ヒマラヤに学校をつくろうプロジェクト」を開始しました。学校寮の建設、教育プログラムの向上や優れた教師の招聘等、学校建設・教育に関する支援活動に取り組んでいます。
活動の拠点となっているサマ村は、かつては鬱蒼とした原生林が広がる緑豊かな土地でしたが、村の人口増加や、生活のための無秩序な伐採等により森林が荒廃するとともに、それによる土砂崩れが発生して、住民の生活を脅かすようになってきました。そこで、自然環境改善と住民の環境意識向上を目指し、NPO法人ピーク・エイドを活動の母体として森林再生のプロジェクトが立ち上がりました。

住友林業株式会社(以下、住友林業)とアルピニスト野口健氏との出会いは、国連の定める国際森林年2011年に行われた、会長の矢野龍が行った新聞対談です。その後の交流の中で度々話題にのぼった「サマ村の森林を再生させたい」という野口氏の想いは、住友林業がかつて実現した「大造林計画」に重なりました。愛媛県別子銅山の開坑とともに銅山備林を担ってきた住友林業の歴史の中で、過伐採による森林荒廃が進み、一木一草生えない状態になってしまったことがあります。天地の恵みを受けて事業を行っているからには国土に報いるべきだとして、当時の別子支配人は1894年に「大造林計画」を樹立。多いときには年間200万本以上の植林を続け、現在の青々とした別子銅山を蘇らせた歴史があるのです。
住友林業は、「マナスル森林再生 ー ヒマラヤに森をつくろうプロジェクト」の趣旨に賛同し、森林再生が実際に可能なのか実地調査に協力。2015年から正式にスタートしたこのプロジェクトに、これまで国内外の森林の育成、管理で培ったノウハウや技術力を活かして技術支援を行っています。

残存する植生を地元スタッフと調査。後方の頂がマナスル(8,163m)
残存する植生を地元スタッフと調査
後方の頂がマナスル(8,163m)

プロジェクトの特徴/連携のポイント

高木が生育できなくなる高度を森林限界と言い、気温、湿度、降雨量、風などの気候条件が影響すると言われています。森林限界は、日本の中部では標高2,500m程度ですが、北海道では500?1,000m前後。低緯度ほど森林限界の標高は高くなるので、ネパールやペルーでは4,000m付近まで植物が生育しています。標高3,400メートルという厳しい環境は、植物の成長が速い熱帯や温帯での森林再生に比べると相当の時間と労力が必要ですが、サマ村は湿度も高く、森林再生は十分可能だと考えています。
ピーク・エイドは2015年4月のネパール大震災の支援を最優先に行ったため、プロジェクトの本格始動は遅れましたが、初年度である2015年に、種子の採取から苗木生産を開始しました。
このプロジェクトは多くの組織や人物がそれぞれの強みを活かして協力することで成り立っています。コスモ石油エコカード基金の協力を得、ピーク・エイドの代表野口氏の情熱と人的ネットワークがすべてをつなぎます。カラマツ近縁種、ウラジロモミ、マツなどの樹種選定、苗木生産の計画は、ネパール国内の国立公園、森林の保護・再生を行ってきたベハーム・ラジャ・ライ氏が指導。ヒマラヤ街道で30年以上植栽に関わってきたプロジェクトメンバーがサマ村で日々活動しています。また、ネパール大震災以降、海外からの寄付や社会貢献活動には申請・許可が必要になったため、現地の社会貢献団体であるMountaineering Rescue Training Foundation of Nepal (MRFN)を通じて申請を行い、無事に活動許可を得ています。

カラマツの一種の育苗状況
カラマツの一種の育苗状況

住友林業は育苗や育林に詳しい技術者を現地派遣しました。現在、約3,000個の苗床(ポリポット)が管理されていますが、植栽に適した30cmの苗木を育てるのには2年ほどかかります。その間、早期緑地化に寄与するカンバ類の植林を進めることで良い土壌を作り、侵食を防ぐことや、植林予定地のマッピングを行うなど、技術的側面から具体的なノウハウをアドバイスしています。
このプロジェクトの成功に何より大切なのは、村人が主体的に関わっていくこと。今後はMRFNと協力し、学校の子供たちにも活動に参加してもらいます。今の子供たちが親の世代になり、その子供たちが学校に通う頃には、村の周辺の景色も変わっているはずです。「マナスル森林再生 ー ヒマラヤに森をつくろうプロジェクト」は、多くの組織がゆるやかに連携しながら、持続的なプロジェクトを目指していきます。

新設した苗畑。家畜による食害を防ぐため、石積みによる壁で囲んだ。
新設した苗畑。家畜による食害を防ぐため、石積みによる壁で囲んだ。

(2017年3月)

パートナーシップによる森林保全活動の事例一覧

世界的な自然保護団体と組んだ熱帯林再生プログラム
伊藤忠商事株式会社と(公財)WWFジャパン
住民自身による持続可能な森づくり?「ふるさと」のイメージを共有して
花王株式会社と(公財)オイスカ
地元住民からの提案も後押ししたマングローブ林再生
トヨタ車体株式会社と(公社)日本環境教育フォーラム
住民とともに実現する持続可能な森林再生プロジェクト
NPO法人ピーク・エイドと住友林業株式会社
アグロフォレストリーコーヒーのフェアトレードで支えるエクアドルの森林保全
ナマケモノ倶楽部と株式会社ウィンドファーム
原材料調達地における森林保全活動
サラヤ株式会社と(特非)ボルネオ保全トラスト・ジャパン
原材料調達を通じた持続可能な森林利用の推進
積水ハウス株式会社と(一社)フェアウッド・パートナーズ
コミュニティ林から国際市場へ:日本とインドネシアをつなぐ
(有)テラスと(一社)フェアウッド・パートナーズ
NGOとの連携によるマングローブ植林プロジェクト
東京海上日動火災保険株式会社と(公財)オイスカ
パートナーシップによる持続可能な森林再生プロジェクト
トヨタ自動車株式会社と(一社)コンサベーション・インターナショナル
誰でも気軽に参加できる熱帯林の再生プロジェクト
Value Frontier株式会社と(一社)バードライフ・インターナショナル東京
組合員の寄付による森林再生
パルシステム生活協同組合連合会と(公財)プラン・インターナショナル・ジャパン
パートナーシップによる森林生態系保全プロジェクト
株式会社リコーとNGO
企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全
株式会社リコー、パタゴニア日本支社とタイガの森フォーラム
コンセッション制度を利用した熱帯林の再生
バードライフ・コンソーシアムとシンガポール航空
ベトナム山岳地域の森林を守り育てる(焼き畑から森林保全・再生へ)
独立行政法人国際協力機構(JICA)と住友林業株式会社、アスクル株式会社
インドネシアにおける森林の回復と地域住民の生計向上の両立
株式会社ブリヂストンと学校法人早稲田大学
アカシアの植林地を熱帯林に再生
富士通株式会社と(公財)国際緑化推進センター(JIFPRO)
エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る
独立行政法人国際協力機構(JICA)とUCC上島珈琲株式会社
生物多様性の回復を目指した植林活動
ヤマハ株式会社と関連現地法人

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