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事例とデータベース

企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全

プロジェクト名称:
タイガの森フォーラム
活動場所:
ロシア沿海地方ビキン川流域の森林
活動主体名:
株式会社リコーパタゴニア日本支社国際環境NGO FoE Japan地球・人間環境フォーラム
  • 事例の分類:天然林保全

プロジェクトの概要

ロシア極東のハバロフスク地方南部から沿海地方には、絶滅危惧種である世界最大のトラ、アムールトラの最後の生息地と呼ばれる森林が残されています。中でも沿海地方北部のビキン川中・上流域の森林地帯(約115万ヘクタール)は、ウスリー・タイガと呼ばれる針広混交林で、ロシア極東地域において最も多様な動植物が生息する森林といわれています(注1)。さらに、ウスリー川からアムール川を通じて、オホーツク海の魚つき林(注2)の役目も果たしていることが最近の研究で明らかになっています。また、この森には、ウデヘに代表される先住民族が狩猟や漁労などで生計を立て、森林と密接な関係を維持しながら暮らしています。

ビキン川流域には針葉樹と広葉樹が混じるウスリー・タイガがほぼ手つかずの状態で残っている
ビキン川流域には針葉樹と広葉樹が混じるウスリー・タイガがほぼ手つかずの状態で残っている

WWFロシアが2007年に実施した調査によれば、ロシア極東全体でみると、20世紀半ばからの約50年の間に、およそ50パーセントの森林が木材伐採によってすでに失われています。このため、ビキン川流域の森林は最後に残されたウスリー・タイガとして、特に保全の重要性が高い場所となっています。

ロシア極東沿海地方に生息するアムールトラは野生では500頭程度しか残っていない
ロシア極東沿海地方に生息するアムールトラは野生では500頭程度しか残っていない

ロシア政府は2001年に同地を世界遺産への登録を試みましたが、ユネスコ世界遺産委員会は生物多様性上の価値は高く評価したものの、地方レベルの保全体制だけでは不安が残るとの理由で、ロシア政府に地元住民の参画を含む形での長期的保全体制の構築を勧告し、登録を保留しました。一方、この森林の豊かな森林資源に目を付けた企業や地方政府機関からの伐採権の取得に向けた動きが繰り返されており、その度に現地の先住民族やロシア内外の環境NGO・先住民族組織が反対の声を上げることによって、ロシア政府の判断で伐採・開発を免れるという事態が続いています。

ウスリー・タイガのイノシシなど生きものたちのえさとなるチョウセンゴヨウの実は、大きいと20センチを超えるものもある
ウスリー・タイガのイノシシなど生きものたちのえさとなるチョウセンゴヨウの実は、大きいと20センチを超えるものもある

このような中、伝統的な自然利用と森林保全の両立に取り組んでいる先住民族をはじめとする地元の人びとへの支援等を通じて、ビキン川流域の森林を保全することを目的に、日本の企業とNGO/NPOが立ち上げた協働プラットフォームが「タイガの森フォーラム」(以下、タイガフォーラム)です。

同プロジェクトでは、現地の先住民族やNGO等と連携しながら、同地の森林の適切な保全に向け、以下のような活動を行っています。

  • ウスリー・タイガの豊かさと重要性、またそこに暮らす人びとと森とのつながりについて、日本国内だけでなく世界に向けて情報を発信
  • 先住民族がタイガを守るために行っているレンジャー活動やエコツーリズムの取組を支援
  • 民芸品や非木材林産物等におけるフェアトレードなどを支援
  • ビキン川中・上流域の世界遺産登録活動を支援

川の水を飲みに来たアムールトラの足跡を、先住民族のガイドで見つけた日本からのツアー参加者
川の水を飲みに来たアムールトラの足跡を、先住民族のガイドで見つけた日本からのツアー参加者
写真提供タイガの森フォーラム

2009年12月から2010年にかけての主な活動としては、日・露・英の3カ国語で情報を発信するWEBサイトの立ち上げ、生物多様性条約第10回締約国会議(2010年、名古屋)でのサイドイベントの開催、展示会「タイガ・インスタレーション」の全国各地での開催などが挙げられます。

2011年には、日本からのエコ・ツアーの実施やはちみつなどのフェアトレード製品の日本国内での販売等を通じて現地住民を支援する活動を引き続き行うとともに、ウスリー・タイガの素晴らしさを映像で伝えるための映画『タイガからのメッセージ』(2011年完成予定)の製作も進めており、情報普及・啓発活動をさらに強化していく予定です。

プロジェクトの特徴

タイガフォーラムでは、森林を未来に残していくためには、現地のコミュニティが持続可能な形で自立し、自らの手で森林を保全していける状況をつくり出すことが重要だと認識しています。このため、現地コミュニティによる違法伐採、シカやイノシシなどの狩猟対象となる野生動物の密猟に対する監視パトロール、個体数把握のための足跡調査といった森林生態系の保全活動を支援するとともに、現地コミュニティの意見を尊重しつつ林産物などを活用した地元経済の活性化や現地コミュニティの自立支援にも力を注いでいる点が、本プロジェクトの特徴となっています。

ビキン川流域の森林はウデヘをはじめとする先住民族がイノシシやシカなどの狩猟地として昔から利用してきた
ビキン川流域の森林はウデヘをはじめとする先住民族がイノシシやシカなどの狩猟地として昔から利用してきた
写真提供タイガの森フォーラム

連携のポイント

このプロジェクトは現在、株式会社リコーパタゴニア日本支社国際環境NGO FoE Japan地球・人間環境フォーラムの4者が共同で実施しています。

2004年から、FoE Japanとリコーは、協働で「リコー・FoE Japan北限のトラ生息域 タイガ保全プロジェクト」を実施し、ロシアの先住民族等と連携しながら世界遺産登録に向けた活動を支援したり、ツーリズムや密猟抑制に取り組む住民組織を支援するなどの活動に取組み、一定の成果をあげていました。

しかし、ロシア国内だけでなく諸外国、そしてロシア産木材の輸入消費国である日本においても認知度が低いことから、より広く国際社会へメッセージを発することのできる主体が必要だと考え、自然保護の支援に積極的なパタゴニアと、企業や行政等との幅広いネットワークを持つ地球・人間環境フォーラムを加えた4者で連携体制を組むことになりました。

写真でタイガの森の素晴らしさや大切さを伝える展示会「タイガ・インスタレーション」を各地で実施
写真でタイガの森の素晴らしさや大切さを伝える展示会「タイガ・インスタレーション」を各地で実施
写真提供タイガの森フォーラム

このプロジェクトは、各組織からの委員(各1名)で構成される運営委員会を定期的に開き、プロジェクトの活動方針を決定、それぞれが立場や強みを活かした役割を担ってプロジェクトを実施しています。リコーやパタゴニア日本支社は、資金面でのサポートに加えて情報発信・普及と他の企業等への参加の働きかけを、ロシアでの現地活動はFoE Japanが、日本での事務局機能は地球・人間環境フォーラムが担当しています。

活動開始から1年を経た現在、NPO/NGOと企業の垣根を越えて複数の組織がそれぞれの強みを活かしながら協働していることをアピールするなど、さらに多くの企業や自治体、NPO/NGO等との連携を模索しています。

タイガの森フォーラムのサイト
http://taigaforum.jp/

注釈

  • 1)Josh Newell, The Russian Far East : a reference guide for conservation and development, 2004
  • 2)魚介類の生息・生育に好影響をもたらす森林。古くは、海面に森林の影が映ることなどにより魚が集まる効果(魚つき)に着目し、海岸斜面に存在する森林を魚つき林と言っていたが、近年では、海岸部に存在する森林ばかりでなく、生態系としての森と海のつながりという観点から森林の機能が再認識され、河川上流部の森林も広い意味で魚つき林と言われている。

パートナーシップによる森林保全の事例一覧

アグロフォレストリーコーヒーのフェアトレードで支えるエクアドルの森林保全
ナマケモノ倶楽部と株式会社ウィンドファーム
原材料調達地における森林保全活動
サラヤとボルネオ保全トラスト日本
原材料調達を通じた持続可能な森林利用の推進
積水ハウスとフェアウッド・パートナーズ
コミュニティ林から国際市場へ:日本とインドネシアをつなぐ
(有)テラスとフェアウッド・パートナーズ
NGOとの連携によるマングローブ植林プロジェクト
東京海上日動火災保険株式会社と(公財)オイスカ
パートナーシップによる持続可能な森林再生プロジェクト
トヨタ自動車とコンサベーション・インターナショナル
誰でも気軽に参加できる熱帯林の再生プロジェクト
バリュー・フロンティア(株)とバードライフ・アジア
組合員の寄付による森林再生
パルシステム生活協同組合連合会と公益財団法人プラン・ジャパン
パートナーシップによる森林生態系保全プロジェクト
リコーとNGO
企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全
リコー、パタゴニアとタイガの森フォーラム
コンセッション制度を利用した熱帯林の再生
バードライフ・コンソーシアムとシンガポール航空
地の利を活かした植林活動で多くの企業の参加を
フィリピン電力公社と、ハリボン財団、エコセーブ他
アカシアの植林地を熱帯林に再生
富士通株式会社と財団法人国際緑化推進センター
エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る
国際協力機構とUCC上島珈琲株式会社
生物多様性の回復を目指した植林活動
ヤマハ株式会社と関連現地法人

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