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事例とデータベース

エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る

プロジェクト名称:
REDD+及び付加価値型森林コーヒー生産・販売を通じた持続的な森林管理支援プロジェクト
活動場所:
エチオピア連邦民主共和国
活動主体名:
独立行政法人国際協力機構(JICA)/UCC上島珈琲株式会社
  • 事例の分類:原材料調達

プロジェクトの概要

独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)は1974年に設立され、(当時は国際協力事業団)、人材育成・能力開発、政策・制度の改善等を通じて開発途上国が抱える様々な課題の解決を支援することを目的とした国際協力事業を行う組織です。現在、世界約150ヵ国に対して、環境、農業、保健医療、教育、産業等多岐にわたる分野で支援を行っています。

自然環境分野においては持続可能な森林管理を通じた気候変動対策、脆弱なコミュニティの生計向上のための持続的な自然資源利用、保護区やその周辺の緩衝地帯管理を通じた 生物多様性保全の3つの戦略課題に沿って協力を実施しています。これにより、2000年から15年の間に1,836万haの保全地域で、森林情報の整備、管理計画の立案や地域住民の生活改善等に取り組み、300万haで森林再生のための植林を実施しました。また、活動を通して63万人の行政官や住民の能力向上に貢献しました。

エチオピアにおける森林保全の代表的な協力としては、エチオピア南西部に位置するオロミア州ベレテ・ゲラ森林優先地域を対象にしたプロジェクトがあります。具体的にはベレテ・ゲラ参加型森林管理計画プロジェクトフェーズI(2003?2006年)、フェーズII(2006?2012年3月)、そしてこれらの成果を受け、「REDD+及び付加価値型森林コーヒー生産・販売を通じた持続的な森林管理支援プロジェクト(2014?2020年)」を実施しています。エチオピアは、農地の開拓等による森林の減少が著しく、かつて国土の約35パーセントをしめた森林が、現在ではわずか11.2パーセントにまで減少しています。残された森林の95パーセントがオロミア州に集中しており、特にベレテ・ゲラ森林優先地域は、15万ヘクタールという広大な森林を維持しています。この地域は、貴重な野生動植物の宝庫であり、またアラビカコーヒーの原産地ともいわれています。

ベレテ・ゲラ森林優先地域
ベレテ・ゲラ森林優先地域

ベレテ・ゲラ地域には44の村に約18,000世帯が居住し、農地の拡大や、木材や薪の採取のために森林が伐採されていたため、プロジェクトには森林保全と住民の生活向上を両立させるものであることが求められました。
そこでJICAでは、以下の2つの活動を実施しました。

  1. 参加型森林管理システムの構築と実践
  2. 生計向上支援活動

具体的には、1)では住民による森林管理組合(WaBuB)を集落ごとに設立し、組合が主体となって、森林管理のルール「WaBuB内規」を策定し、組合と行政が森林管理に関する契約を交わしました。これにより、森林優先地域内での住民の居住と利用権が確保され、その上で、住民と行政の森林管理に係る権利と義務を明確化しました。契約に従い、組合は森林の境界線の確定や違法伐採のパトロールなどを行っています。
2)では、対象地の森林内で天然のコーヒーの木が生育しているという特徴を活かして、森林コーヒー認証プログラムを導入し、森林を守りながらコーヒー豆の販売による収入を向上させる仕組みを構築しました。また、森林内への農地拡大を防ぐことを目的に、ファーマーフィールドスクール(農民対象の野外教室)を導入し、農業技術の改良と作物の多様化、既存農地内での生産性向上に取り組みました。

森の中でコーヒー豆を収穫
森の中でコーヒー豆を収穫

プロジェクトの特徴

また、プロジェクトでは、森林内に自生しているコーヒーにレインフォレスト・アライアンス国際認証という付加価値をつけてプレミア価格で販売することで、住民による持続的な森林保全を行うためのインセンティブを与えています。
従来から、住民はコーヒー豆の採取と販売を行っていましたが、仲買人への販売で得られる収入は僅かでした。プロジェクトでは、無農薬・無化学肥料である天然のコーヒーに着目し、レインフォレスト・アライアンスの認証を取得できるよう支援を行いました。
認証の取得後、UCC上島珈琲がこのコーヒーの輸入・販売を日本で行っています。天然のコーヒーは、分量が限られること、豊作と不作があることなど、商品としては扱いにくい面もありますが、UCCではプレミアムコーヒーとして商品化しています。また2011年度からUCCとJICAの協働で、UCCのコーヒー品質管理の専門家を現地に派遣し、品質改善の取り組みも実施されています。対象地には品質の高いコーヒー豆が存在していましたが、品質改善に関する指導が行われていなかったため、きちんとした選別が行われず、未熟な豆や不良豆が混ざっていたり、不適切な乾燥や保管がなされたりしていました。プロジェクトで生産者への研修を行い、これらの点を改善していくことで、日本の企業が商品として取り扱うことのできるレベルにまで、品質を上げる努力が続けられています。

コーヒー豆の乾燥作業
コーヒー豆の乾燥作業

プロジェクトはこのように、森林を伐採せずに生計向上を図るという仕組みの構築を目指して支援を行い、様々な成果を上げています。例えば、JICAのプロジェクト・インパクト調査によると、対象地の全集落でWaBuBが設立され、これらの地域においては森林減少が抑制されていることがリモートセンシングの分析により確認されています。地域住民の収入向上という面では、日本への認証コーヒー輸出においてプレミアム価格で販売されたことで得られた利益がWaBuBに還元されています。またプロジェクトで実施したファーマーフィールドスクールでは約8,000名の農民が1年間のプログラムを卒業しており、卒業生の世帯所得が年平均70ドル上昇するなどの成果をあげました。

フィールドスクールの参加者
フィールドスクールの参加者

対象地域の拡大とより包括的かつ持続的な森林管理

2017年からプロジェクトではベレテ・ゲラ地域で構築した森林コーヒーを活用した住民参加型森林管理の仕組みを他地域(イルバボール県、ケレム・ウェラガ県)へ普及しています。また、ベレテ・ゲラ地域における森林管理体制をより包括的かつ持続的なものとするため、世界銀行がオロミア州を対象として2017年から開始したREDD+(注1)事業と連携した取り組みを進めるとともに、森林コーヒーの非生育地域に対する生計向上活動支援を実施しています。

連携のポイント

プロジェクトでは、森林保全の効果を上げ、持続可能にしていくために以下の点を工夫しています。

1)対象地の拡大

ベレテ・ゲラ参加型森林管理計画プロジェクトフェーズ1ではパイロットプロジェクト地域として2集落を選定して活動を行いました。しかし対象地における森林減少率は年2パーセントと高く、森林保全は喫緊の課題であったため、フェーズ2では、森林内に存在する124集落と15万ヘクタールの全てを対象としました。更に、2014年から2020年に実施しているプロジェクトでは、ベレテ・ゲラ地域で構築した仕組みを他地域(イルバボール県、ケレムウェラガ県)へと普及しています。

2)地元関係者との連携

プロジェクトのカウンターパートはオロミア森林公社ですが、広大な対象地での活動を円滑に進めるために、オロミア森林公社、オロミア州農業局とJICAの3者での覚書を交わし、農業普及員のプロジェクトへの参画を促しました。 プロジェクト対象地の農業普及員は果樹やスパイス等を使った生計向上活動の指導を実施しています。さらに各集落で指導員的な役割を担うような、農民ファシリテーターの育成を行いました。

農民ファシリテーターの活動
農民ファシリテーターの活動

3)民間企業との連携

住民が、認証森林コーヒーの販売によって、プレミアム価格を得るため、またJICAの支援が終了した後も自立的に収入が得られ、参加型森林管理が継続されていくためには、企業との連携が必須です。そこでJICAでは、日本向けの輸出入を行う商社、さらに日本での販売を担う販売業者との連携により、認証の取得、生産・品質の管理、マーケティング、輸出までのバリュー・チェーン全体を現行プロジェクトで支援しています。

JICAでは、現場での支援活動の成果を、プロジェクト終了後も長期的に持続させていく上で、企業との連携は一つの有効なアプローチであると考えています。

(2017年3月更新)

注釈

  • 1)REDD+は、2020年から開始される気候変動対策に寄与する森林保全の世界的な枠組みで、現存する森林の減少および劣化を食い止める活動(例えば、地域住民の生計向上活動等)に対してインセンティブを与えるものです。

パートナーシップによる森林保全活動の事例一覧

世界的な自然保護団体と組んだ熱帯林再生プログラム
伊藤忠商事株式会社と(公財)WWFジャパン
住民自身による持続可能な森づくり?「ふるさと」のイメージを共有して
花王株式会社と(公財)オイスカ
地元住民からの提案も後押ししたマングローブ林再生
トヨタ車体株式会社と(公社)日本環境教育フォーラム
住民とともに実現する持続可能な森林再生プロジェクト
NPO法人ピーク・エイドと住友林業株式会社
アグロフォレストリーコーヒーのフェアトレードで支えるエクアドルの森林保全
ナマケモノ倶楽部と株式会社ウィンドファーム
原材料調達地における森林保全活動
サラヤ株式会社と(特非)ボルネオ保全トラスト・ジャパン
原材料調達を通じた持続可能な森林利用の推進
積水ハウス株式会社と(一社)フェアウッド・パートナーズ
コミュニティ林から国際市場へ:日本とインドネシアをつなぐ
(有)テラスと(一社)フェアウッド・パートナーズ
NGOとの連携によるマングローブ植林プロジェクト
東京海上日動火災保険株式会社と(公財)オイスカ
パートナーシップによる持続可能な森林再生プロジェクト
トヨタ自動車株式会社と(一社)コンサベーション・インターナショナル
誰でも気軽に参加できる熱帯林の再生プロジェクト
Value Frontier株式会社と(一社)バードライフ・インターナショナル東京
組合員の寄付による森林再生
パルシステム生活協同組合連合会と(公財)プラン・インターナショナル・ジャパン
パートナーシップによる森林生態系保全プロジェクト
株式会社リコーとNGO
企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全
株式会社リコー、パタゴニア日本支社とタイガの森フォーラム
コンセッション制度を利用した熱帯林の再生
バードライフ・コンソーシアムとシンガポール航空
ベトナム山岳地域の森林を守り育てる(焼き畑から森林保全・再生へ)
独立行政法人国際協力機構(JICA)と住友林業株式会社、アスクル株式会社
インドネシアにおける森林の回復と地域住民の生計向上の両立
株式会社ブリヂストンと学校法人早稲田大学
アカシアの植林地を熱帯林に再生
富士通株式会社と(公財)国際緑化推進センター(JIFPRO)
エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る
独立行政法人国際協力機構(JICA)とUCC上島珈琲株式会社
生物多様性の回復を目指した植林活動
ヤマハ株式会社と関連現地法人

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