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事例とデータベース

アカシアの植林地を熱帯林に再生

プロジェクト名称:
富士通グループ・エコ・フォレストパークにおける熱帯林再生活動
活動場所:
マレーシア連邦サバ州キナルート地区
活動主体名:
富士通株式会社財団法人国際緑化推進センター(JIFPRO)サバ州森林開発公社(SAFODA)
  • 事例の分類:植林

プロジェクトの概要

東南アジア有数の熱帯林を有するマレーシアのボルネオ島では、森林伐採やプランテーションの増加により、森林の減少と劣化が進んでいます。世界的な課題である生物多様性の重要性に鑑みても、特に生物多様性の高い熱帯雨林の再生は喫緊の課題です。このため、富士通グループでは、財団法人国際緑化推進センター(JIFPRO)とマレーシア・サバ州森林開発公社(SAFODA)と契約を交わし、2002年からサバ州キナルート地区でSAFODAが管理するエコ・フォレストパークにおいて植林活動を始めました。

エコ・フォレストパークは、熱帯林再生の場と位置付けられた411ヘクタールの土地です。このうち富士通の活動対象地となっている150ヘクタールでは、アカシア植林地を、フタバガキ科を中心とした在来種の森林に変えていく計画です。植林作業は2006年までの5年間で終了し、その後はメンテナンス・フェーズとして、それまでに植林したエリアで苗木の生育状況の調査と枯死した場所への補植、生育を補助するための管理作業を継続しています。

在来種の苗を植樹
在来種の苗を植樹

これまでに植林活動を6回、2007年からのメンテナンス・フェーズではメンテナンス活動やエコツアーを6回実施してきました。エコツアーでは、社員とその家族、現地関連会社の社員等が参加し、植樹、管理作業、成長度合いの測定と生息する鳥獣の調査を実施しています。また、他にアブラヤシ農園や熱帯原生林の見学も行うことで、ボルネオの生態系の現状や生物多様性についての理解を深めています。

プロジェクトの特徴

このプロジェクトの特徴は、第一にアカシア植林地を活用した熱帯林再生であること、次に植林フェーズ終了後に、樹木の活着率、生育状況、生態系の回復状況の調査を行いながら、草刈り、アカシアの伐採等の森林管理を継続的に実施するメンテナンス・フェーズを設けて、熱帯林への回復を確実にしていこうとしている点です。

エコ・フォレストパークは、熱帯林の皆伐後に外来種のアカシア・マンギウムの単一植林が行われていた場所で、フタバガキ科の植林にあたっては、まずアカシアの伐採が必要です。しかしアカシアをすべて伐採するのは大変な労力が必要であり、またフタバガキ科の樹木は陰樹(幼樹は日陰で育つ)であるため、6-7メートル間隔で、アカシアを1メートル幅の列状に伐採し、そこにフタバガキ科の苗を植樹することとしました。これにより、樹高15-20メートルのアカシアの日陰でフタバガキ科の苗が育つと考えられ、8つのエリア(各10?20数ヘクタール)に400本程度の植樹ラインが作られました。2006年までに、当初予定していた150ヘクタールの植林を終え、富士通は新たな植林場所の検討も行っていましたが、フタバガキ科の苗の活着率が、45パーセント程度と低かったこと、また下草刈りを怠るとすぐに草に覆われてしまうため、植林地での継続的なメンテナンスが必須と判断しました。
このため、2009年にSAFODAとメンテナンス契約を締結し、以降はこれまでに植林したエリアのメンテナンスに加え、植林木の生育と生態系回復の状況を継続的に調査していくこととしました。
メンテナンスは、下草刈りやツル切りのほか、フタバガキ科が成長してきたところでは植樹ライン周辺のアカシアの環状剥皮(注1)による除伐を行います。

アカシアの樹皮を一本ずつ剥ぐ
アカシアの樹皮を一本ずつ剥ぐ

生態系回復の調査は、フタバガキ科の成長度合いを把握するための樹高、胸高直径の測定、およびラインセンサス(注2)による鳥獣観測を行っています。 現在、植林したフタバガキ科の樹木は、大きなものでは12メートルを超えていますが、まだ1メートル程度のものも見られます。樹高が低い間は、リスやシカなどの食害を受けやすく、管理が必要であるため、今後もメンテナンスを継続していく予定です。 また、現在の対象地はアカシアの下にフタバガキ科という2層ですが、フタバガキ科の成長に合わせてアカシアを伐採し、フタバガキの下に低層木として在来種の果樹を植林していくことも考えています。これにより、在来種の複層林化が図られ、また多くの生物が生息できるようになるため、より元来の熱帯林に近づけることができると考えられます。プロジェクト開始後すでに10年が経過し、対象地で当初は見られなかったミサゴ(猛禽類)が確認されるなど、生態系も少しずつ回復してきていると考えられます。

エコツアーでの調査風景
エコツアーでの調査風景

今後の課題としては、まだ低い苗木の活着率を、専門家の協力を得て高めていくこと、生物多様性豊かな熱帯林の再生を実現するため、生態系回復の指標種となる動植物を決め、調査や保護活動に取り組んでいくこと、さらにエコ・フォレストパークの観光資源としての発展にも寄与していくことがあります。また、内外に向けての発信を行い、活動とその成果に関する理解を広げていくことも課題です。

連携のポイント

このプロジェクトは、当初、国際緑化推進センター(JIFPRO)の紹介により、富士通とSAFODA、JIFPRO、国際協力機構(JICA)の連携で始まりました。JICA職員がSAFODAへ出向していたため、2005年まではJICAが調整役として現地側に加わっていました。
JIFPROは海外における緑化活動の豊富な経験を持っているため、当初から現地視察などに同行して技術的な面での提案等を行います。SAFODAは、本来は林業の振興のためアカシア等を植林していましたが、エコ・フォレストパークは熱帯林を再生して市民の憩いの場にすると位置付け、現場での調査・作業・報告、また日本からのエコツアー実施時の受け入れを担っています。富士通からは、150ヘクタールの管理のための費用提供と、年1回のエコツアーでの調査や植林・メンテナンス活動への参加のほか、担当者が事前に現地に赴き準備・調整、作業現場確認等を行っています。

富士通では、熱帯林再生に全社的に取り組むため、社内でもさまざまな形で植林とメンテナンスをサポートする取り組みが行われています。グループ社員延べ約1000名が植林活動にボランティアとして参加したほか、活動資金として、富士通グループ社員への寄付の呼び掛け、社内での飲料販売の売り上げの一部や、主催するゴルフトーナメント富士通レディースにおいて、選手の成績に応じた金額を富士通から植林・育成活動に寄付する仕組みなどを作っています。

エコツアー参加者とSAFODAスタッフ
エコツアー参加者とSAFODAスタッフ

森林に関わる活動を本業としない日本企業が現地で森林保全活動を継続的に行うためには、現地の活動主体となるパートナーと、森林保全の専門的知識と経験を有するパートナーは必須でした。また、富士通では、この活動を通じてSAFODA側にも変化が出てきたと感じています。植林活動は、苗木の良さ、植え方、水はけなど様々な条件と、管理の仕方で活着率に大きな差が出ます。このため現場での作業を、どれだけ丁寧に手をかけて実施できるかが極めて重要です。当初、SAFODA側は、資金不足もあり、富士通の提案を受けてから活動する傾向がありましたが、近年では、主体的な取り組みが増え、近隣のアブラヤシ農園から得られる有機肥料を与える実験を行うなど、より積極的に熱帯林再生に取り組むようになってきました。継続的な活動とコミュニケーション、日本側からの働きかけによって、パートナーシップそのものも発展していると考えられます。

(2012年3月)

注釈

  • 1)樹木の樹皮を輪状にはぎ取ることで、水分や栄養分の移動を妨げ、樹木の生育状態を管理する方法。ここでは、アカシアを枯死させることを目的にしている。
  • 2)あらかじめ設定されたルート沿いに、動植物の出現種数、個体数等を記録する調査方法。

パートナーシップによる森林保全の事例一覧

アグロフォレストリーコーヒーのフェアトレードで支えるエクアドルの森林保全
ナマケモノ倶楽部と株式会社ウィンドファーム
原材料調達地における森林保全活動
サラヤとボルネオ保全トラスト日本
原材料調達を通じた持続可能な森林利用の推進
積水ハウスとフェアウッド・パートナーズ
コミュニティ林から国際市場へ:日本とインドネシアをつなぐ
(有)テラスとフェアウッド・パートナーズ
NGOとの連携によるマングローブ植林プロジェクト
東京海上日動火災保険株式会社と(公財)オイスカ
パートナーシップによる持続可能な森林再生プロジェクト
トヨタ自動車とコンサベーション・インターナショナル
誰でも気軽に参加できる熱帯林の再生プロジェクト
バリュー・フロンティア(株)とバードライフ・アジア
組合員の寄付による森林再生
パルシステム生活協同組合連合会と公益財団法人プラン・ジャパン
パートナーシップによる森林生態系保全プロジェクト
リコーとNGO
企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全
リコー、パタゴニアとタイガの森フォーラム
コンセッション制度を利用した熱帯林の再生
バードライフ・コンソーシアムとシンガポール航空
地の利を活かした植林活動で多くの企業の参加を
フィリピン電力公社と、ハリボン財団、エコセーブ他
アカシアの植林地を熱帯林に再生
富士通株式会社と財団法人国際緑化推進センター
エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る
国際協力機構とUCC上島珈琲株式会社
生物多様性の回復を目指した植林活動
ヤマハ株式会社と関連現地法人

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