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地の利を活かした植林活動で多くの企業の参加を

プロジェクト名称:
カリラヤ・ウォーターシェッド・リザベーション
活動場所:
フィリピン
実施主体:
フィリピン電力公社ハリボン財団エコセーブ、その他国内外の企業37社
  • 事例の分類:植林

プロジェクトの概要

フィリピンの首都マニラの南東約100キロメートルに位置するカリラヤ湖は、マニラを含むルソン地域に電力を供給するための水力発電用に作られた人工湖です。同湖の周辺は、1969年に森林保護区に指定され、さらに1975年の大統領令により、安定した発電量を維持するための良好な水量・水質を保つことを目的に、一定の森林整備が義務づけられています。1986年からカリラヤ湖を中心としたおよそ1ヘクタールの土地の所有者となったフィリピン電力公社(National Power Corporation、以下、NPC)は、これまで植林などの森林整備活動を行ってきました。

カリラヤ湖周辺は、二次林(注1)、湿地、草地、焼畑放牧地が入り混じっており、そこには11の集落も存在します。二次林は生態学的・生物学的な価値はそれほど高いとはいえませんが、地域コミュニティにとっては燃料用の木材の採取、炭焼き、農業のための有機物の供給など、生活に必要なものを得るための大切な場所となっています。このため、1980年代から、地域住民の一部は、自らの生活基盤である地域の森林保全に取り組んできており、2006年には環境団体「エコセーブ」を立ち上げ、本格的に植林活動を開始しました。

当初、エコセーブは、NPCとは別に活動を進めていましたが、NPCも森林整備活動への地域コミュニティの参加・協力を歓迎、2007年にはエコセーブとNPCの間で森林管理に関する合意が交わされ、2020年までNPCが森林整備を進めている1万ヘクタールの一部にあたる1,000ヘクタールについて、エコセーブが管理することとなりました。

本プロジェクトにおいて企業との連携の仲介役を果たしているのがハリボン財団です。1972年に設立されたフィリピンで最大の環境団体である同財団は、持続可能な開発への貢献を活動目的に掲げ、生物多様性、気候変動、海洋などに関する幅広い環境問題について調査・研究し、普及啓発活動も展開しています。同財団は国内外を問わず様々な企業とパートナーシップを構築しており、植林活動においても企業との連携の実績を持っています。カリラヤ地域でNPCとエコセーブという2団体が森林整備活動で具体的に連携することになったことから、同活動を支援するべく、本プロジェクト活動のパートナーとなるよう他の企業にも呼びかける役割を担うことになりました。

本プロジェクトでは、湖周辺の森林整備、環境の回復と保護、湖周辺の環境に影響を及ぼす人間活動の適切な管理を主な目的に、以下の活動を行っています。

  • (1)植林:NPCの森林専門家の指導により在来種を中心に植林
  • (2)森林保護:山火事や違法伐採防止のパトロール、保全上重要な場所の特定など
  • (3)地域住民の生活手段のための土地管理:約100ヘクタールについて、燃料用木材のための植林を実施。

これ以外にも、アグロフォレストリー(注2)として、約30ヘクタールでココナツ、柑橘類、ランプータン、ジャックフルーツなどの果樹を栽培しているほか、燃料用のための竹の植栽や燃料効率の高い炭の開発などもプロジェクトの一環として行っています。また、エコセーブでは、植林用に自主的に苗木も育てています。

参加企業は植林をする際に1本あたり10ペソをハリボン財団に寄付することになっており、集められた寄付金は苗木づくりや植林活動費としてハリボン財団からエコセーブに支払われています。

これまでに、25.27ヘクタールに65,166本の植林が行われました。プロジェクトへの参加企業も、37社(2011年2月末時点)にのぼり、その中には日系企業も数社含まれています。例えば、ホンダ・フィリピンは、2010年から3年間植林活動を行う予定で、初年度には5,000本を植栽しています。

なお、現地での活動を担当するエコセーブの責任者によると、プロジェクトに参加している地域住民の家庭では収入が増え、子どもが学校に通えるようになった等の副次的な効果も生まれているということです。

プロジェクトの特徴

このプロジェクトの最大の特徴は、地理的なアクセスの良さや、苗木や植林地がすでに用意されているためすぐに作業ができることなどの条件があらかじめ整っていることから、企業にとって参加しやすいという点です。一方、受け入れ側においても、参加する企業の数と寄付の増加によって、植林後の長期的な管理活動が可能になり、苗木の生存率が25パーセントから80パーセントにまで改善するなどの効果が得られています。このように双方にメリットを生み出すことができた背景には、外部の複数の企業から寄付を集め、プロジェクト全体への調整機能を持つ、ハリボン財団のような仲介者の存在が重要な役割を果たしてきたことがあります。

カリラヤのような条件が整っているプロジェクトでは、企業側にとっては社会貢献における森林保全活動の初歩的な活動として、短期間の参加を希望することが多いようですが、企業の支援が途絶えると活動が継続できなくなる可能性があるとハリボン財団は考えています。このため、企業に対しては、例えば植林の時期や対象地の選定に際しては配慮が必要なこと、また、植林以外の活動も支援には含まれることなど、現場の事情やニーズを十分説明し、森林保全活動へのできるだけ長い期間での参加を求めています。

連携のポイント

本プロジェクトは、土地の所有者・管理者であるNPC、その土地で森林管理や地域活動を担う実施団体のエコセーブ、森林保全への貢献を希望する企業と現地をつなぐ仲介団体のハリボン財団という4者の役割分担が成立しています。このしっかりした連携体制と、プロジェクト対象地の首都圏からのアクセスの良さによって、フィリピン国内だけでなく国外からも、多くの企業が参加しています。

もともとこの3者は、カリラヤ湖周辺で個別に植林や森林整備活動を行っていましたが、植林に十分な予算が確保できなかったNPCとエコセーブ、企業による寄付が増えてきたことを受けて企業が参加しやすい形の活動を模索していたハリボン財団の3者が、「お互いに必要な存在だと考え、協力するようになった」と、ハリボン財団の担当者は連携のきっかけを振り返っています。

フィリピンの首都マニラから車で数時間の距離にあるカリラヤ湖。電力発電用の人工湖だが、観光地としても人気がある。
フィリピンの首都マニラから車で数時間の距離にあるカリラヤ湖。電力発電用の人工湖だが、観光地としても人気がある。

注釈

  • 1)伐採や風水害、山火事などにより森林が破壊された跡に、土中に残った種子や植物体の生長などにより成立した森林。
  • 2)樹木を植栽し、樹間で家畜・農作物を飼育・栽培する農林業のこと。農林複合経営、混農林業、森林農業とも言われる。

パートナーシップによる森林保全の事例一覧

アグロフォレストリーコーヒーのフェアトレードで支えるエクアドルの森林保全
ナマケモノ倶楽部と株式会社ウィンドファーム
原材料調達地における森林保全活動
サラヤとボルネオ保全トラスト日本
原材料調達を通じた持続可能な森林利用の推進
積水ハウスとフェアウッド・パートナーズ
コミュニティ林から国際市場へ:日本とインドネシアをつなぐ
(有)テラスとフェアウッド・パートナーズ
NGOとの連携によるマングローブ植林プロジェクト
東京海上日動火災保険株式会社と(公財)オイスカ
パートナーシップによる持続可能な森林再生プロジェクト
トヨタ自動車とコンサベーション・インターナショナル
誰でも気軽に参加できる熱帯林の再生プロジェクト
バリュー・フロンティア(株)とバードライフ・アジア
組合員の寄付による森林再生
パルシステム生活協同組合連合会と公益財団法人プラン・ジャパン
パートナーシップによる森林生態系保全プロジェクト
リコーとNGO
企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全
リコー、パタゴニアとタイガの森フォーラム
コンセッション制度を利用した熱帯林の再生
バードライフ・コンソーシアムとシンガポール航空
地の利を活かした植林活動で多くの企業の参加を
フィリピン電力公社と、ハリボン財団、エコセーブ他
アカシアの植林地を熱帯林に再生
富士通株式会社と財団法人国際緑化推進センター
エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る
国際協力機構とUCC上島珈琲株式会社
生物多様性の回復を目指した植林活動
ヤマハ株式会社と関連現地法人

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