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事例とデータベース

コンセッション制度を利用した熱帯林の再生

プロジェクト名称:
ハラパン熱帯林再生プロジェクト
活動場所:
インドネシア共和国スマトラ島ジャンビ州、南スマトラ州
実施主体:
バードライフ・コンソーシアム(バードライフ・インターナショナル)The Royal Society for the Protection of Birds(RSPB)ブルング・インドネシアハラパン・レインフォレスト、シンガポール航空など
  • 事例の分類:天然林保全

プロジェクトの概要

サイト内の動物のモニタリングに利用する監視塔
サイト内の動物のモニタリングに利用する監視塔

スマトラ島の南部は、鳥類が300種以上(注1)生息するなど、世界でも屈指の生物多様性が豊かな地域となっています。しかし、1970年代から木材利用を目的とした森林伐採が進行し、また近年では、パルプ用木材のための単一樹種の植林や、パームオイル生産のためのアブラヤシのプランテーション農園開発が進んでいます。このため、バードライフの資料によれば、20世紀初めには全島で1,600万ヘクタールあった森林は、1997年には220万ヘクタールまで減少していました(注2)

「ハラパン熱帯林再生プロジェクト」は、森林減少が進行するスマトラ島南部のハラパンにおいて、商業伐採跡地に生じた二次林10万ヘクタールを従来の生態系にまで回復させることを目的に、バードライフ・コンソーシアムが行っているプロジェクトです。この活動は、同国の伐採を行わない「生態系再生コンセッション(ERC:Ecosystem Restoration Concession) 制度を活用して行われており、ハラパンは2008年にERC第1号に指定されました。

ハラパンでは森林回復のための苗木を7ヵ所で管理している
ハラパンでは森林回復のための苗木を7ヵ所で管理している

バードライフ・コンソーシアムは、ERC制度の検討を含めた本プロジェクトの準備段階において、バードライフ・インターナショナル(以下、バードライフ)、イギリスに本部を置く自然保護団体「The Royal Society for the Protection of Birds(以下、RSPB) 、インドネシアにおけるバードライフのパートナー団体である「ブルング・インドネシア(Burung Indonesia)」の三つのNGOが設立した団体です。

本プロジェクトの現場における実務活動は、バードライフ・コンソーシアムが設立したNGO「ハラパン・レインフォレスト が担当しており、具体的には以下の事業を行っています。

  • コミュニティ開発事業:プロジェクト区域内の先住民族を対象に、移動学校の設立・運営、地方病院の医師による定期的な診察・治療の提供、アグロフォレストリー(注3)導入等による地域住民の経済的自立の確保
  • 森林保護事業:違法伐採などを監視するための森林パトロール
  • 森林回復事業:森林再生のための苗木づくり、植林、植林後の管理
  • 調査・保全事業:森林保全事業を行うための基礎情報となる絶滅危惧種の個体数のモニタリング等

プロジェクトの実施により、先住民族を中心とする地域住民は、植林活動や違法伐採監視のためのパトロール活動に対する報酬が得られるようになったことで、現金が必要な教育・医療サービスを受けられるようになりました。なお、生態系の回復状況の評価については、今後、モニタリングを継続していく予定です。

一方、プロジェクトの課題としては、アブラヤシ農園に隣接する北東部のコンセッション対象区域において、地域住民による木材利用のための違法伐採や、森林を伐採して耕作を行うなどの森林の不適切な利用が続いていることがあります。ハラパン・レインフォレストでは、持続可能な形で森林を利用しながら長い間この場所で暮らしてきた先住民族への対応とは区別し、同地における先住民族以外の地元住民による不適切な森林利用に対しては、パトロール隊員の訓練や、警察との協働による取り締まりを行っています。

もう一つの課題は、木材以外の森林資源が直ちに収入源になるわけではないということを、地域住民や地元政府が十分に理解していないことが挙げられます。そこで、ハラパン・レインフォレストでは、地域住民や地元政府とともに、従来自家用に採取してきた非木材生産物のうち、直ちに収入に結びつく可能性のあるドラゴン・ブラッド(医薬品、化粧品、染料として需要のある高価なラタンの実)や沈香、はちみつなどの商品化に向け、地元住民のキャパシティ・ビルディングを行うとともに、地元住民等に森林管理について中長期的な視野を持つことを促すセミナーなどを本プロジェクトに組み込む予定です。

本プロジェクトの運営には、プロジェクト開始当初からドイツ開発銀行やイギリス海外開発機関などが資金提供を行っていますが、2010年夏に企業として初めてシンガポール航空が3億ドルを提供しています。さらに、バードライフ・コンソーシアムが、炭素取引を想定したファンドの設立を計画しており、複数の国際企業と話し合いを進めています。

プロジェクトの特徴

本プロジェクトの特徴の一つは、インドネシア政府が策定した新たな法制度である、伐採を伴わないコンセッション制度であるERCを、熱帯林の生態系を回復するために活用している点です。

ブルング・インドネシアによれば、インドネシアでは天然林の約半分に当たる「生産林に区分された森林(企業等にコンセッション<伐採権>が与えられている森林)の多くが、従来のコンセッション制度の中では持続可能な森林管理がなされていないため、森林減少・劣化が進み、持続的な木材生産が不可能な状態になっています。

しかし、このように消失・劣化した天然林は、実は様々な生物種にとって非常に貴重な生息地であることが多いため、ブルング・インドネシアは、インドネシア林業省と共同で、減少・劣化が進んだ生産林をもとの森林に再生させる制度の検討を重ねてきました。その結果、ERCが制度化されることになりました。

なお、ERC制度は、新しい森林保護・保全の制度として、インドネシアと同様に従来のコンセッション制度だけでは持続可能な森林管理に限界を抱えるフィリピン等の他の途上国においても活用できるのではないかと、ブルング・インドネシアでは考えています。

もう一つの特徴は、本プロジェクトにおいて、炭素取引によるビジネスを想定したファンドの設立が検討されていることです。この取り組みが成功すれば、森林保全プロジェクトが、企業側にとってこれまで主流となっていた慈善事業への寄付という形だけではなく、投資事業という位置づけによっても、今後、参画の対象となる可能性があります。

連携のポイント

バードライフ・コンソーシアムにおいて、バードライフとRSPBは、このプロジェクトやファンドの設立・運営、専門知識や海外企業とのネットワークの提供などの役割を担っており、ブルング・インドネシアは、ERCの指定に関する中央政府との調整やプロジェクトの自立性確保のための計画策定などを担当しています。この3団体が役割を分担し、現場の活動を担うハラパン・レインフォレストを支えています。

これらの団体が、それぞれの得意分野で役割分担をした上で、互いにその役割を尊重した信頼関係を築くために連絡・相談を十分にとり、本音で話し合うことが、事業を継続していく上でのポイントだと、バードライフやブルング・インドネシアの担当者は指摘しています。

シンガポール航空は、それまで環境保全を目的とした寄付行為は行ったことがありませんでしたが、スマトラの森林火災による煙害によりシンガポール空港での発着が影響を受けたこと、活動地が自社の本拠地と地理的に近く、自らプロジェクトの確認ができることの二つの理由から、本プロジェクトへの参加を決めました。企業にとっては「地理的条件」と「本業との関連性」の2点がプロジェクトと合致するかどうかが、長期的なNGOとの連携を考える際のポイントになると、バードライフでは分析しています。

本プロジェクトにおいて、企業の参加は今のところシンガポール航空のみであり、企業との連携は始まったばかりです。インドネシア政府とのコンセッション契約は、約100年と長期に及ぶため、企業に対して、本プロジェクトが長期の投資に値するということを明確にアピールできれば、今後、企業との連携の可能性は大きく広がると同団体では考えています。

注釈

  • 1)コンセッションとは、東南アジア等においては、国家や州政府が民間企業に与える国有林や州有林の伐採権(井上真他、森林の百科、2003)を指すが、ERCにおいては伐採を伴わない森林の使用権となっている。
  • 2)バードライフ・インターナショナル資料( The Harapan Rainforest Initiative,Sumatra,2008)より。
  • 3)樹木を植栽し、樹間で家畜・農作物を飼育・栽培する農林業のこと。農林複合経営、混農林業、森林農業とも言われる。

パートナーシップによる森林保全の事例一覧

アグロフォレストリーコーヒーのフェアトレードで支えるエクアドルの森林保全
ナマケモノ倶楽部と株式会社ウィンドファーム
原材料調達地における森林保全活動
サラヤとボルネオ保全トラスト日本
原材料調達を通じた持続可能な森林利用の推進
積水ハウスとフェアウッド・パートナーズ
コミュニティ林から国際市場へ:日本とインドネシアをつなぐ
(有)テラスとフェアウッド・パートナーズ
NGOとの連携によるマングローブ植林プロジェクト
東京海上日動火災保険株式会社と(公財)オイスカ
パートナーシップによる持続可能な森林再生プロジェクト
トヨタ自動車とコンサベーション・インターナショナル
誰でも気軽に参加できる熱帯林の再生プロジェクト
バリュー・フロンティア(株)とバードライフ・アジア
組合員の寄付による森林再生
パルシステム生活協同組合連合会と公益財団法人プラン・ジャパン
パートナーシップによる森林生態系保全プロジェクト
リコーとNGO
企業とNGO/NPOの協働プラットフォームで天然林を保全
リコー、パタゴニアとタイガの森フォーラム
コンセッション制度を利用した熱帯林の再生
バードライフ・コンソーシアムとシンガポール航空
地の利を活かした植林活動で多くの企業の参加を
フィリピン電力公社と、ハリボン財団、エコセーブ他
アカシアの植林地を熱帯林に再生
富士通株式会社と財団法人国際緑化推進センター
エチオピアの天然林を住民参加と認証コーヒーで守る
国際協力機構とUCC上島珈琲株式会社
生物多様性の回復を目指した植林活動
ヤマハ株式会社と関連現地法人

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