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「重要里地里山」の選定

選定の目的

生物多様性保全に取り組むことが国家的・社会的課題とされる中、国土の生物多様性保全の観点から重要な地域を明らかにし、多様な主体による保全活用の取組が促進されることを目的としている。


選定の経緯・方法

  • 里地里山に関する研究者・大学教授等の有識者13名を構成員とした里地里山保全・活用検討会議(以下、「検討会議」という。)を設置し、選定方法・基準等を検討
  • 全国規模の既存調査データの活用及び地域情報(地方公共団体等への照会等)により候補地を抽出し、検討会議による評価・検討を実施
  • 地域特性を考慮するため、地域毎に分科会を開催し、生物多様性保全上重要な地域を選定

選定基準

下記の3つの選定基準によって里地里山の生物多様性の状況を評価した。ただし、既存情報の中で、「重要里地里山」として適当な地域をできる限り多く選出できるよう、複数の視点で重要性を判断し、「3つの基準のうち2つ以上の基準に該当」することを選定条件とした。

  • 基準1:多様で優れた二次的自然環境を有する
  • 基準2:里地里山に特有で多様な野生動植物が生息・生育する
  • 基準3:生態系ネットワークの形成に寄与する

また、上記の条件に満たない場合でも、動植物の生息生育状況、その他生物多様性保全の観点(保全の緊急性、モデル性(代表的・先進的)など)から、全国的な重要性がある地域については選定対象とした。

「重要里地里山」って、どんな里地里山?(各基準における評価のポイント)

基準1:多様で優れた二次的自然環境を有する〔評価のポイント〕
  • 従来のくらし・生業、新たな活動等、人の適切な関与がなければ劣化、消失のおそれがある身近な自然(手入れの行き届いた社叢林などの残存林、ため池・自然水路、二次草原(半自然草原)、氾濫原・谷津田等の低地・湿地など)がある。
  • 農地、ため池、二次林、草原などの環境がモザイク状に存在し、動的な土地利用が行われている。
基準2:里地里山に特有で多様な野生動植物が生息・生育する 〔評価のポイント〕
  • 対象地において、里地里山に特徴的な種(里地里山的環境を好む種、里地里山的環境に依存性の高い種、複数の異なる環境を必要とする種など)、あるいは希少種についての生息・生育情報がある。(種名、種数など)
  • 希少種、象徴種などの保全の取組によって、当該里地里山全体の保全、その他さまざまな種の保全につながっている。
基準3:生態系ネットワークの形成に寄与する 〔評価のポイント〕
  • 豊かな里地里山生態系のシンボルであるオオタカ・サシバが確認されている。(これらの里地里山を残していくことが、全国的な生態系ネットワークの形成において重要とされている。)
  • 渡り鳥の生息地・中継地点として、国際的に重要な地域である。
  • 生きものの視点から見たつながり、生態系の視点(森・里・川・海等)から見たつながりを確保している。

※本選定では、自然性の高い環境であっても、地域の認識をもとに「地域住民にとって身近な自然」「手をかけて守り続けている自然」であると判断した場合には、選定の対象とした。

【注記】

北海道の選定の観点について

北海道地方については、原生的な自然環境の割合が高いことが特徴であり、本州以南とは土地利用の歴史的経緯が全く異なる。そのため、北海道地方で対象とする里地里山的環境は、上記の選定条件を満たすことに加え、以下の4つの視点に合致するものを選定することとした。なお、道内において、現在も自然と人との関わりがみられる地域は多々あるが、原生的な自然環境を守るため、あるいは将来的に本来の原生的な自然環境の状態に戻すために人の手が入っている地域などは本選定の対象外となっている。

〔4つの視点〕
  • 自然の営みに人の営みが加わって維持されてきた地域
  • 里地里山的環境を活かした生態系ネットワークへの配慮
  • アイヌ文化の継承
  • 開拓史以降の新しい形の自然と人との共生

活用方法

我が国における重要里地里山を選定したことで、多様な主体による保全活用の実行性を高める取組の促進・拡大に活用していきます。


今後の課題

今回の選定は、現在の知見と情報を可能な限り集約し、把握できた情報を基に、全国的視野で客観的な評価を行い選定されたものです。今回選定された里地里山以外でも、それぞれの地域で重要な里地里山があり、今後、都道府県レベルでの里地里山の抽出など地域的な取組が期待されます。

環境省では今後も継続的に情報収集・更新を行い、適宜、選定地の見直しを行う予定です。