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里なび

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活動レポート

里なび研修会 in 岐阜県大垣市
【里山資源の活用と里の暮らしの再生】

日時 平成24年11月24日(土)13:00~16:30
場所 上石津農村環境改善センター(岐阜県大垣市)

■概要
大垣市上石津町は、鈴鹿山系と養老山地に囲まれ、揖斐川の支流である牧田川に沿って4つの地区が点在する山里である。牧田川の集水域とほぼ一致し、面積のおよそ9割が山林となっている。
上石津町では豊かな自然資源を有効に活用しようと、太陽光・風力発電の調査や水力発電施設跡地の調査など自然エネルギーの活用に向けた検討が行われている。平成23年からは「木の駅プロジェクト」が始まり、「里山券」の発行とあわせて山林の手入れと木質エネルギーの活用、地域経済の活性化に向けた取り組みが始まった。また、登山道の開設や特産品づくりなど、地域資源を活用して元気な山里をつくろうと様々な人が活動を行っている。今後はこのような多様な活動を結びつけ、大垣市市街地住民と地域住民との交流も視野に入れつつ、交流を通じ資源と経済が循環する仕組みづくりが大きな鍵となっている。
本研修会では、地域にあるものを活かしながら、暮らしやすく活気ある地域を目指す一環として、先進的な取り組みから地域活性化のポイントを学んだ。

■講演
テーマ:「地域の自立を目指して~福島県鮫川村手づくりとお裾分けから始まる地域振興」
講演者:入江 彰昭(東京農業大学環境緑地学科 准教授)
配布資料:抜刷記事「地域力を誘引するランドスケープマネジメント」
説明資料: パワーポイント「地域の自立を目指して~福島県鮫川村手づくりとお裾分けから始まる地域振興」

1)里地里山の美しさについて-造園学研究から考えること-
環境緑地学科では庭や緑を扱う造園学を研究している。造園学を研究する者にとってレイチェル・カーソン「沈黙の春」や近年では木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」などで強調されている、人間だけでなく動物や植物も一緒に生きているという考えはとても共感できるものだ。造園学でも同じようなことが古くから言われてきた。造園学の世界最古のテキストといわれている橘俊綱の「作庭記」(平安時代後期)では、「生得の山水おもはへて・・・(自然本来の風景の姿を思い出して・・・)」、「本所離別といふ事(本所:自生地、離別:不調和の意。つまり深山のものを水辺に植えるな、水辺のものを野山に植えるな)」という記述がみられる。庭にしても里地里山にしても、その場所にちょうど適する「ぴったりの風景」を作り守っていくことがこれからの課題ではないか。藤原正彦氏の「国家の品格」では、品格ある国家の指標の一つとして「美しい田園」を挙げている。こうした意味で日本の田園はすべて公園であり、農家の暮らしがしっかりしていることがその美しさを作り出すものなのではないかと思う。

2)「開発による環境問題」から「放棄による環境問題」へ
これまで(20世紀まで)は、開発による環境問題がクローズアップされてきたが、これからは放棄による環境問題が深刻化することが予想される。これまで都市の中の緑をどう扱うか、都市の温暖化を緑でどう防げるかということを主に研究してきた。しかし、12年前から福島県鮫川村と交流する中で村の中にも環境問題があり、それは手を入れないことによって顕在化する問題なのだということを知った。
日本の農業にとって重要な地域である里地里山では今放棄地が増え国土保全が低下している。環境省の資料にもある通り絶滅の恐れがある種の多くが里地里山に生息している。また、村との付き合いの中で特に感じるのは、こうした生物多様性や国土保全以上に、引き継がれてきた自然と共生するための知恵や技術が継承されず、失われているということが深刻な問題なのである。

3)福島県鮫川村における活動から-学生と共に守る里の風景-
 福島県鮫川村は、1ha程度の農家が9割で繁殖牛を中心とする畜産も盛んな地域である。山林に囲まれ林家も多い。林野率76%、全世帯の6割が林家で、木炭を年間124トン生産しており、これは福島県で2番目の生産量となっている。小規模副業農業であり、水田・畑・畜産・山林を組み合わせた農業が営まれている。
地域景観としては数多くの谷戸が奥まで続き小さな棚田状となっているのが特徴的だ。田んぼや山林を保全するため、学生たちと休耕田の周りを管理したり高齢者の農家のお手伝いをしたりしている。また、集落の高齢者を指導者に炭焼きをしたり、落ち葉はきをして牛のベッドにしたり、米づくりで得た藁で縄を作ったり、ジャガイモやそば作りなどにも取り組んでいる。その他にイノシシ狩り名人から話を聞き、里山の変化がイノシシの発生を増加させていることについて考えさせられたり、マムシ捕りの話など実に多様な方々から貴重な話をうかがっている。機会があって谷戸に住む地元の方の家の庭作りにも携わることもできた。こうした活動が評価され、田園自然再生コンクールではパートナーシップ賞を受賞した。

4)農林業がつなぐ田園の動植物たち
活動の中では、学生たちには何かを言葉として教えるのではなく、体験を通じて気付いてもらいたいと思っている。炭焼きと萌芽更新の関係、ホタルと水田の管理の関係など、気づいてもらうことが大事だ。現場で汗を流しながら気づくことでもっとも大きなことは、農林業を中心とした人々の営みが美しい里山を形成してきたということだ。農業の営みがなくなると四季折々の花々や生き物たちもいなくなってしまうのである。
また、畜産農家へのアンケート調査の結果、地元資源を利用した飼育方法が原則だが、20頭以上の比較的規模の大きな飼育になるとおがくずなどを地域外から資源を持ってきてしまうということが分かった。つまり里山の多様な資源を活かすためには小さな経済が大事であり、無駄のない循環型農業の営みをいかに安定させるかが鍵だ。

5)「トン産業」から「グラム産業」の農林業への転換を
 鮫川村は市町村合併しない選択をした村で、いち早く地域再生計画を策定し取り組みを進めてきた。その中で、地域の伝統的な農産物であり伝統食に欠かせない「豆」に着目をした里山大豆特産品開発プロジェクトがスタートした。このプロジェクトは「里山の食と農、自然をいかす地域再生計画」として、総務大臣認定第1号になっている。
 プロジェクトの中心の一つである「まめで達者なむらづくり」では、大豆を中心とした農産物や特産品開発に力を入れており、役場の若手職員を大学に派遣し技術を習得させ加工施設(手・豆・館)の運営を行ったり、高齢者の持つ豆づくりの知恵と技術に報いるという趣旨で、高齢者への補助や価格保証を村で負担するなどしている。こうした取り組みによって地域の高齢者が元気になり、副次的成果として老人医療費が減少したといった声も聞かれる。大豆の栽培実績も栽培者数や栽培面積などが年々増加してきている。
 加工直売所「手・豆・館」は従来1次産業しかなかった村に2次、3次産業を入れることで農業の6次産業化と地産地消を推進することを企図している。村民が買える価格・量に設定し、外から来訪する都会の人たちにはそのお裾分けをするという考え方のもとで運営している。年間3000万円の売り上げを目標にしていたが、実際には1年目4500万円から始まり4年目には売上1億を超えるようになった。年間10万人が利用しており、その約6割が村外の人で、リピーターが多い。規模が小さいながらも村内で採れたものや加工したものにこだわり、村内のもの以外は置かないというスタンスがリピーターが増える要因だと考えられる。こうして見てみると大量生産・大量消費の「トン産業」ではない、きめ細やかな「キログラム産業」あるいは「グラム産業」への転換を考えていくことが村の取り組みにとって大切ではないかと考えさせられる。

6)大学との交流と里地里山保全活動
 鮫川村では、東京農業大学をはじめ様々な大学がかかわりを深めている。例えば、東京農業大学は、村のバイオマスヴィレッジ構想の一環で、バイオマス資源を生かした館山公園の整備再生を協働で行っている。森林の伐採とバイオマス資源化、伐採地の里山林再生やビオトープ作り、散策道作りなど地元の小学校から森林組合まで多様な主体と共に取り組みを進めている。また、「手・豆・館」では、新たに喫茶店が設けられ、そのパン工房で東京農業大学の卒業生が働くなどつながりが深まっている。

7)活動から気付くこと-快適な農村環境計画に向けて-
 里山は農林業の営みによって創造、維持されてきた景観だ。だからこそ里地里山環境の保全のためには農林漁業の営みを中心とした地域づくりが必要だ。また、里山を文化として認識することも大切である。美しい里山景観を保全し文化(人間の生きざまや営み)を持続させるには知恵と技、そして村外(都市住民)の風が必要だ。そのためにも、農村環境計画は、遠足・観光から短期滞在型、長期滞在型、そして定住化に至るまで、快適なライフステージ作りを念頭に、1時間から一生まで多様なタイムスパンで検討する必要もあるだろう。
 各地域がその独自の資源や文化を磨いていくことで美しい景観が生まれ、そこに人々が集まり、村が元気になっていくものだと思う。私たちも含め各地の事例が少しでも取り組みを進めようとする地域の参考になればと願っている。

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■事例報告

(1)「参加と交流で育む豊かな郷土づくり~下呂市竹原地区における取り組み~」
報告者:河原良昭(野尻花の里済美隊 隊長)
配布資料: 地図「いやしの里竹原」、広報紙「竹原農地・水・環境保全かわら版」
説明資料: パワーポイント「農地・水保全管理支払い交付金事業-野尻花の里済美隊-」

1)取り組みの経緯・概要と会名への想い
 下呂温泉に隣接した人口700人余りの野尻地区で、農地・水・環境保全向上対策事業に取り組んでいる。会名にある「花の里」とは、平成10年度路から野尻区事業として行っていた「野尻花の里公園化事業」のことで、本団体結成と同時に引き継いでいる。また、「済美隊」というのは「美徳を成し遂げるため、子孫が父祖の立派な業績を受け継ぐこと」という意味を持っている。これが私たちの里地里山活動の精神である。
 活動目標として1.野尻区花の里公園化事業の具現化(都市と農村のかけはし) 、2.三世代交流事業の推進で社会教育活動と福祉活動を展開、3.川の生き物調査や虫追い行事等を通じた環境教育の充実と農村文化の伝承、4.「ふれあい農園」活動による生産活動の体験と農家・非農家の交流促進、5.「青空公民館」での情報交流による資源の発掘とアイディアの交換、6.広報活動(農地の持つ多面的機能等の普及啓発) を掲げている。休耕田の利活用、獣害対策なども行いながら取り組みを進めている。
 推進体制としては、役員を中心に構成員それぞれが持つノウハウを有効活用し、その能力を発揮することで会の活動を発展させている。

2)休耕畑の利活用
 休耕畑を利用してふれあい農園を運営している。トウモロコシを中心に、キャベツやハクサイ、ダイコンなどの秋野菜も栽培しており、農家も非農家も施肥や耕し方など農業について学ぶ場となっている。平成24年度はトウモロコシが2600本も収穫があり、福祉活動とも連携して、独居老人や高齢者等へもプレゼントすることができた。トウモロコシの茎は牛の餌になっており、翌年は牛舎から肥料としてもらうという仕組みになっている。

3)農村の伝統行事の継続
 農村文化も大切な自分たちの資源だと捉えており、これを子ども・孫に伝えるため、虫追い行事をはじめとした様々な行事活動に取り組んでいる。端午の節句の料理としてヨシ巻き団子づくり講習会を実施したり、手づくりの郷土かるたを作成し、郷土学習や高齢者との交流に利用したりしている。その他、芝居小屋、どんど焼き、餅つき大会などを行っている。

4)生き物学習による環境教育
 実際に虫や魚などを見せて触らせることで子どもたちに生き物について学んでもらっている。下水道整備やクリーン活動などの成果もあり、イワナ、ヨシノボリ、アジメドジョウなど清流の生き物が増えてきている。

5)地域の環境整備
 花を植えることを本会結成以前から続けている。地区ごとにどこにどんな花を植えるか検討し、計画的に植栽を行っている。2年目から15年目に至る長期のスパンで土地の所有者と相談しながら、個人で行うところ、会で行うところなど役割を明確にしながら取り組んでいる。フラワーロード作りや法面へのシバザクラの植栽を行ったり、休憩施設として野尻花の里ギャラリーでの花の作品展を行うなどの活動等を実施している。

6)獣害対策
 野尻地区においても獣害の被害は年々深刻なものとなっている。会の有志が「野尻鹿猪猿隊(かいえんたい)」という組織を結成し、トラップワナを中心にイノシシやシカを3年間で100頭捕獲するなど、獣害低減のための取り組みを地道に進めている。

7)広報・PR活動
「竹原農地・水・環境保全会かわら版」の発行(年4回)、「竹原見どころマップ」の作成発行(年1回リニューアル)などにより、広報発信や普及啓発に努めている。マップなどは近隣の観光地である下呂温泉の旅館や観光案内所などにも置いてもらっており、これを見て多くの観光客が訪れるようになった。

8)取り組みの広域展開と今後の展望
 こうした地域活動は野尻地区の隣接の地域も含めて広域的に取り組まれている。地域の魅力を再発見するとともに、情報を共有し教育や福祉活動と連携しながら、地域の自然や文化を活用した活動を進めている。近年では保全活動の他、修学旅行の受け入れや特産品開発も進んでいる。私自身も間伐材を用いた「合格祈願バット」を製作するなど微力ながら地域資源の活用と若い人たちへ向けたメッセージの発信に努めているところだ。今後も地域の活動が発展するようがんばっていきたい。

(2)「山林資源をいかした地域づくり」
報告者:森 大顕(NPO法人地域再生機構)
配布資料:パンフレット「つながる・つなげる木の駅と薪ボイラーの導入支援」、パンフレット「里山を暮らしに活かそう」
説明資料:パワーポイント「山村資源をいかした地域づくり-木の駅と薪がつなげる人の輪!」

 山林資源を活かした地域づくりについて、上石津地域で行っている木の駅の取り組みや薪を地域資源として捉え直し、エネルギー源として活用する構想などを含めてお話ししてみたい。

1)上石津町の課題
 NPO法人地域再生機構では、大垣市の事業とつながりながら、温泉、水力など様々なプロジェクトにかかわりを持たせていただいている。地域再生機構では、特に後で触れる木の駅事業で出てきた材をどのように使い、どのように地域で回し、お金を回せるかといったことについて全国に広める活動をしている。
 上石津町において地域再生機構が特に問題だと認識しているのは、この地域の将来の人口予測だ。25年後には人口が半減し、高齢化率が45%にまで上昇すると計算されている。このような状況にある地域では、現在外に依存しているエネルギーを、地域内のエネルギー循環として自分たちで作り出していくという取り組みに可能性があるのではないかと考えている。例えば名古屋大学が行った愛知県豊根村の調査では、1400人の人口で年間使われるエネルギーは5億円だと計算されている。つまり5億円規模のエネルギー関連の仕事を地域内で作りだすことが理論上可能であることを意味する。人口維持上、雇用面から検討すべき重要な視点を含んでいるのではないかと思う。

2)地域材の活用を誘導した上石津町の動き
地元の間伐材等を自伐林家を中心に搬出し、地域通貨の仕組みを組み合わせて支える木の駅プロジェクトは、町全体で基盤となる取り組みがあってこそ始めることができるものである。
上石津町では、大垣市との合併の際、「里山を暮らしに活かそう」というパンフレットを全町に配布している。この中で、外部に依存する工場誘致に取り組むだけではなく、地域面積の9割に及ぶ山林と農地を地域の資源として認識し直し、この上に生活を考え世代をつなぎ、経済としても回る仕組みを再生していくことが大事ではないかという考えが表明されている。
こうした考えのもとで、地域材を使うことが始まり、地域材を利用した建物やペレットストーブの導入などが取り組まれるようになった。また、かつて上石津町は大垣市の市街地の住民が使う薪と炭の供給源となっており、このことが町に現金収入をもたらしていた。したがって、大垣市街の人にどうやって木を使ってもらうかということを示す意図もあった。
大垣市との合併によって、市街地と上石津町と連携して、地域材を使うことがますます重要となっている。生活の中で、木を取り戻すためには、行政、企業、市民の3つの力が重要だが、その市民の力として、木の駅プロジェクトが始まった。

3)木の駅プロジェクトとその展開
上石津町における木の駅プロジェクトでは、地域の方が伐採した搬出木材を「木の駅」と名付けた土場に運ぶことで地域通貨「里山券」と交換する。この里山券は地域の商店で利用でき、商店はその券を換金する。これによって森林活動と地域経済を回していくという仕組みだ。この全体を管理運営するのが市民による実行委員会であり、取り組みの構築過程で様々な人が集うようになり、地域の熱意が高まりを見せるようになった。取り組みが始まると20台近く軽トラが集まり材が搬出されるようになっている。自分の山を整備することで、お小遣い稼ぎにもなるという気軽な感覚と、これまでつながりのなかったところにつながりができ評価されるという楽しみが、取り組みを活性化させているようだ。近頃では他県からも視察が来るようにもなっている。

4)薪ボイラーについて
 材が出てくると今度は、それをどのように有効に生かしていくかということが課題となる。その際、薪ボイラーが有効なツールの一つではないかと考えている。薪作りは誰でも始められるもので、しかも地域全体で取り組めるものだと思う。確かに薪にはめんどくさいと思われる工程があることは事実だが、逆にこのことは雇用が生まれるポテンシャルがあるということではないだろうか。
 薪ボイラーには燃焼効率のよいものから頑丈で扱いやすい焼却炉式のものまで様々出ている。既に薪ボイラーの導入事例が全国各地にある他、薪販売についても宅配システムなどの新たなアイディアを取り入れた事業も見られる。地域再生機構では、薪をテーマに「薪割りカフェ」と称して、本来は重労働である薪割りを楽しみながら、クッキングカフェを楽しむ等、様々な試みを行い好評を得ることができた。
薪は、人や物をつなぎ、都市と山村をつなぐなどの新たな交流と地域づくりに期待の持てる資源だと考えており、今後も海外の優良事例なども調査しながら取り組みを発展させていきたい。

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■ディスカッション
テーマ:「里山資源の活用と里の暮らしの再生」
コーディネーター:竹田純一(里地ネットワーク事務局長)
パネリスト:入江彰昭、河原良昭、森大顕

はじめにコーディネーターより、各パネラーの取り組みにおいて里山資源をどうとらえているのかという問いかけがなされた。
入江氏からは、福島県鮫川村における豆を資源として捉えなおす視点は、昔から地元の食生活の基本であったことを背景にして、地域づくりと健康とをリンクさせたかったという思いから出てきたとの説明があった。そして、豆という農産物が味噌、豆腐、黄粉をはじめ様々な食品へと加工できる素材であるということが活動発展の大きなカギとなったとの説明があった。また、地域の高齢者を活動に参画させるうえでも有効な資源であり、副次的効果として高齢者医療費の削減につながったとの話があった。
 河原氏からは、農村の活動では非農家の参画を促すことがポイントだが、花は理解しやすく評価も受けやすいものであり、大変有効な資源だったとの説明があった。花の植栽の取り組みは、美しい豊かな農村づくりのシンボルイメージとなっている。あらためて観光施設を作らなくても近隣の観光地下呂温泉にPRすることで、観光客や修学旅行生が訪れるようになり、地域の農産物の販売促進にもつながっているとの話があった。
 森氏からは、かつて使われていた薪という資源を新たな視点から捉えなおすことで、地域外も含めた様々な人や物とのつながりを作り出すことが可能であり、そこから新たなビジネスも生まれるのではないかとの話があった。
フロアーからは、人口の減少や獣害などの地域課題と里地里山活動がどのようにつながるかといった質問が出され、各パネラーより各地の取り組み事例が参考として紹介された。
 最後に入江氏より、里地里山には気づかれないまま埋もれている資源がまだまだたくさんあるのではないか。ないものねだりではなく、地域の里地里山の特徴とは何なのかということを見つけ、認識し、外部の力を借りながら取り組んでいくことが今後ますます大切ではないかとの提案があった。

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■まとめ
 里地里山の資源活用のためには、地域内の取り組み基盤に根差した推進体制を作りだすと共に、外部の多様な主体とのつながりを通じて、資源と経済が循環する仕組みを作ることが大切である。
 上石津町は、人口の減少や獣害の被害等、ディスカッションで住民からも提起された課題を抱えている。一方で木の駅プロジェクトをはじめとして、小水力や温泉など地域の様々な資源を活用して里地里山の保全と地域の活性化を促進させようとする取り組みも始まっている。また合併を機に新たな広域的活動への展開も模索され始めている。
 本研修会では、どのような地域資源に着眼するか、参画する住民のすそ野の広がりをどう作りだすか、外部との交流をどのように進めるかといった保全活用活動を進めるためのポイントについて、先進地の取り組み事例を参照にしながら具体的に議論を進めることができた。

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