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活動レポート

里なびミニシンポジウム&研修会 報告7
里地里山調査・地元学で元気な里をつくる

日時 2008年3月16日(日) 集合9:00 解散16:30
場所 山形県最上郡戸沢村

 山形県最上郡戸沢村の角川(つのかわ)地区では、平成14年より、地元学の手法を使った里地里山調査を行っています。この調査をきっかけに、戸沢村教育委員会、小中学校、地域づくりを行う村民会議、土地改良区をはじめとする人々が、角川地区全体の地域資源を見つめ直し「角川里の自然環境学校」を開設しました。地区にある自然や生きもの、文化をまとめ、森林の活用や子ども達への環境教育などを行っています。現在は、全国から小中学生の体験宿泊などを受け入れ、里地里山での農業の体験学習やボランティア研修などを、地域の農林家が中心となって行っています。
 第7回目となる里なびミニシンポジウム&研修会では、角川地区での実践をふまえ、戸沢村の別の地区で里地里山調査手法の研修を行い、新たな地域づくりの可能性を考えました。

 ミニシンポジウムでは、角川地区に平成14年から入り、角川里の自然環境学校の事務局をつとめながら、様々な調査や企画、コーディネートをつとめている山形大学助教の出川真也さんが、これまでの取り組みについて講演を行いました。
 出川さんは、まず、里の再発見、再評価し、地域ビジョンをつくるために地元学手法でヨソモノの目を利用し、地元住民が自らの里の魅力を知ることからはじめたこと、子どもからお年寄りまですべての世代が参加することで計画作りができると言います。調査の後、里地里山の環境保全活動によって地域の魅力を増す取り組みをします。角川では、ビオトープの造成など生きものと自然活動の拠点をつくりました。また、山の保全活動なども行いました。さらに、子どもたちとともに有機農業に取り組み、生きものと農業と食についての関わりを深めます。これらの経験から、里の暮らしや仕事を子どもや外部の人に体験してもらう企画が自然体験学習として行われていきました。さらに、里作りを行う人達と交流する農家民泊と山村留学の交流も実施、リピーターも増えています。季節別、体験内容別に体験プログラムもつくっています。
 地区の自然や文化、生活を大切にしながら、それを生かすための工夫や、外部の人達を受け入れるための手法、持続させるための経済のしくみなどについての話を行い、「地区の人達が楽しくやること」「かならず経済的に負担にならないように取り組むこと」「あるものを生かすこと」などのキーワードが出されました。
 また、地元学を提唱した熊本県水俣市の吉本哲郎さんが特別ゲストとして、ミニシンポジウムに参加し、「地元学は学問ではなく、地元に学ぶことであり、調べた人だけがくわしくなる、地元の人のための手法」であることを強調しました。その上で、自然だけでなく、そこに出会う人にも焦点をあてることから学ぶことができると、冬の地元学へのヒントをいただきました。

 研修では、戸沢村の濁沢地区と名高地区に分かれて地元学を行い、地元の参加者と地元外の参加者が、出川氏をはじめ、角川里の自然環境学校スタッフなどの指導で、2時間ほど野外で調査実習を行いました。
 戸沢村では、雪解けの季節を迎えていますが、まだ、田んぼや山には積雪が多く残っています。生きものの姿もまだまだわずかです。それでも、多くの植物があり、植物などを利用した食や道具、生活の姿がありました。かつてこの地域では、沢水や井戸、川の水を集落や家、田に引き込み、活用していました。また、山の手入れを行い、生きものとの共生がはかられていました。その一端を調査ではかいま見ることができました。
 また、吉本氏の提唱で行った「出会った人に聞く」では、地域の人達が山を大切にしていること、山に行くことを楽しみにしていること、あるいは、野菜作りや、道具作りの達人、山仕事の達人、茅刈りの達人、川漁の達人に出会うことができ、角川地区とは違った地域の特徴や生活、自然のあり方が見えてきました。
 地域資源カードとカメラ、地図を持っての調査の後は、写真を打ち出し、地域資源カードを完成させ、それぞれにまとめて、参加者全員が発表を行うまでの実習を行いました。
 また、集まった地域資源カードや「出会った人に聞く」カード、あるいは、実習を通しての発見などはまとめられて、これから里地里山保全と地域づくりの計画を考えている地区の人達に渡してきました。

出川真也氏の講演
出川真也氏の講演
屋外調査風景
屋外調査風景
地域資源カードまとめ
地域資源カードまとめ
ひとりずつ発表
ひとりずつ発表
地図とカードで地域の宝さがし
地図とカードで地域の宝さがし

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