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活動レポート

里なびミニシンポジウム&研修会 報告3
石見銀山 世界遺産を守る森づくり
竹林の健康診断ワークショップ

日時 2008年2月11日(月・祝)集合9:00 解散15:00
場所 島根県大田市(島根中央地域職業訓練センター)

 「里なびミニシンポジウム&研修会」の第3回目は、島根県大田市で、タケのテングス病についての実態報告と竹林の健康診断方法の研修を行いました。
 島根県大田市では、平成19年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」が世界遺産として登録されました。石見銀山で生産された銀は、16世紀から東アジアひいてはヨーロッパまでに貿易されていました。石見銀山エリアで採掘から精錬までが行われ、銀山山中に隣接する地域では精錬と生活の場が1000カ所以上も残ってます。銀山の精錬のためには膨大な木材燃料が必要であり、そのために森林資源の管理が長く行われ、適切に管理されてきました。今も豊かな山林を残しています。
 しかし、石見銀山周辺の中国地方各地で最近になって「テングス病」による竹林の枯死が確認されるようになりました。石見銀山周辺でも竹林の進入と適正管理の必要性は課題になっていますが、さらにテングス病による竹林の枯死によっては今後、景観に大きな影響を与える可能性もあります。
 そこで、島根県大田市のNPO法人緑と水の連絡会議事務局長の和田譲二さんと里地ネットワークの竹田純一を中心に、里地里山と竹林管理の意義についてのミニシンポジウムを行い、その後、石見銀山でテングス病の見分け方と実態調査の手法についての研修会を実施しました。

 ミニシンポジウムでは、まず、NPO法人緑と水の連絡会議の紹介が行われました。緑と水の連絡会議は、1992年に草原や里山など二次的な自然の保全の重要性を訴えるために設立され、これまでに地元の三瓶山で行われた和牛放牧による草原の再生や農業の生業による動植物の保全の重要性、生物多様性の確保などの取り組みを行ってきた活動団体です。
 その後、全国的な里地里山の状況やタケがかつては農家の裏庭など生活に近い場所で有効活用されていましたが、経済状況の変化などによりタケが活用されなくなり、その結果タケの管理ができないために竹林が拡大していることなどの講義が行われました。
 NPO法人緑と水の連絡会議事務局長の和田譲二さんからは、タケのテングス病がほとんど知られていないこと、病気が進むと竹林が白骨化した状態となって景観を大きく損ねること、テングス病が進行しているタケでは枝先が房状となって新しい葉がつけられず光合成もできないため、遠景からも美しくないことなどの説明があり、すでにテングス病が広がっている地域はみられても、竹林が完全に枯死した後、どのくらいの期間で落葉広葉樹からの森林としての遷移が起きるのかが不明であり、枯死した竹林の影響も分からない状態であることなどの報告がなされました。
 この問題について調査している、広島大学博士課程の鈴木重雄さんからは、タケ類のテングス病についての説明がありました。タケ類のテングス病は糸状菌の一種に感染して発生する病気で、感染したタケの枝先はほうき状になってしまい天狗の巣のように見えることから「テングス病」の名が付いたそうです。病状が進行すると最終的には立ち枯れてしまい、台風の風や大雪によって倒れ、立っているときよりも後始末が大変な状態になります。
 テングス病の見分け方は、近づいて葉の状態を見分けるか、立っているタケの枝先が通常の枝先の姿とは異なり、塊状や房状になっていることから分かります。
 これらの講義や報告をふまえ、研修会を行うこととなりました。

 研修会では、三瓶自然館の学芸員・井上雅仁さんから石見銀山の森林の現状についての説明がありました。石見銀山遺跡の「柵内」地区は、90%以上が森林に覆われていますが、そのうち竹林が4分の1ほどを占めています。かつての集落跡からの竹林が植林地などに拡大しており、管理されない状態で荒れているところが多数あるようです。
 広島大学の鈴木さんからモウソウチク、マダケ、ハチクの見分け方とタケのテングス病の進行状況を診断するためのマッピング案が出され、それを元に、3班に分かれて実際に調査を行いました。調査では、タケの種類の見分け方、テングス病の見分け方、マッピングの手法、今後、市民参加型の調査を行う上での調査手法についての検討を視点に参加者が研修を行うという形ですすめられました。
 快晴のなか、2つの班は、竹林のそばからテングス病の進行状況をチェックして確認する作業を行い、ひとつの班は、遠景から確認する作業を行いました。
 広島大学の鈴木さんからも話がありましたが、モウソウチクはテングス病にあまり感染しないようであり、マダケ、ハチクは、その多くが感染していました。感染の進行状況の見分け方などは、熟練度合いにより差があり、また、マダケとハチクの見分け方も人によって差があることなども明らかになりました。
 研修をふまえて、意見交換が行われ、NPO法人緑と水の連絡会議からテングス病の存在について市民に知ってもらうことと、タケの管理を行うための市民参加型の調査や保全活動などができるように検討していく場をつくっていくことなどが今後の取り組みとして提案されました。
 タケのテングス病については、全国的にも知られておらず、今回のミニシンポジウム&研修会を通じて、多くの参加者が、各地でのテングス病の状況について調査をしたいと語っていました。

シンポジウム
シンポジウム
広島大学の鈴木さん タケのテングス病の研究はまだまだこれからです
広島大学の鈴木さん
タケのテングス病の研究はまだまだこれからです
テングス病の病変例
テングス病の病変例
テングス病の病変例2
テングス病の病変例2
雪の中での調査
雪の中での調査

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