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活動レポート

里なびミニシンポジウム&研修会 報告2
森のようちえんごっこを支える森づくり
里山、竹林の適正管理技術を学びましょう!

日時 2008年2月9日(土) 集合9:00 解散15:00
場所 熊本県菊池市(きくちふるさと水源交流館)

 「里なびミニシンポジウム&研修会」の第2回目は熊本県菊池市において、里地里山の課題となっている竹林の進入拡大への対策について、竹の生態や方策、活用方法を学びました。
 熊本県菊池市の「きくちふるさと水源交流館」は、平成12年に廃校となった菊池東中学校(水源中学校)の木造校舎を、地元の人達が地域の拠点として活用したいと改築した施設で、地元の農家らを中心にNPO法人きらり水源村を立ち上げて活動しています。
 これまでにも、海外や国内の学生らを受け入れて里山の保全活動や親子の農業体験、子ども達の自然体験などを行ってきました。きくちふるさと水源交流館では、現在敷地の裏山にある竹林を整備して「森のようちえんごっこ」をキーワードに里地里山保全と交流のしくみ作りを準備しています。
 この地域に限らず、九州では竹林が管理されなくなった里山、畑などに進入し、里地里山の生物多様性が劣化する原因のひとつとなっています。この地域でも、「家の周囲が竹林に覆われてしまい、日差しが少なくなった」といった状況もあるようです。

 今回のミニシンポジウムでは、九州大学助教の朝廣和夫さんがスライドを使って里地里山の管理の重要性や竹林管理の技法について講義を行いました。
 最初に里地里山を放置した場合、生物多様性が失われ、本来持っていた農業や林業などの生産性を失ってしまい、さらに水害などの原因や、水源としての涵養能力を失うことになるなどの課題や実例が紹介されました。
 また、海外の事例として、イギリスでは、森林の保全に多くの市民が関われるしくみをつくっていることや、間伐する際に、切る山の反対の山から望遠鏡で間伐する木を決め、それを伐採者にトランシーバーで指示していることが紹介されました。これは、森をひとつのキャンパスと見立てて、景観に重点を置いた森づくりという考え方を持つからです。また、管理した森は民有地であっても「散歩道」としての案内板を設置するなどして人が通りやすくし、人が森を通ることで森の大切さを知り、身近なものとするための「しかけ」があることを解説しました。この事例から、里地里山の保全や活用に際して、均一な管理ではなく、一部に広場をつくるなど「人や生きものが集う場所」を意図的につくることが必要であることを学びとれます。
 竹林の問題については、竹の種類、竹林の根が年間2~6メートル伸張し、竹林は年間2メートルほど拡大していくことが紹介されました。
 竹林の管理について、モウソウチクの事例では、管理するために全伐を考え、動力式刈り払い機で竹林エリアのすべての植物を刈り払いした場合と、モウソウチクのみを選んで下草を含む他の植物は残すように選別したモウソウチクを全伐した場合の比較調査を行ったところ、モウソウチクだけを切り払い、他の植物を残すことで生長の早い落葉広葉樹が育ち、モウソウチクの再生を抑えることが分かりました。全伐後は、春に根から伸びてきた夏場にモウソウチクのみを刈り取ることで管理は楽になっていくようです。
 また、竹林は、地下茎の母竹林との関係が重要で、元の竹林を残しながら進入した竹林を管理する場合、母竹林からの外周をできるだけせまくすることがその後の竹林管理作業を楽にするために必要なことが紹介されました。
 竹林の管理は継続的な取り組みが必要です。管理作業を行う際に、竹林を伐採したあとの里山をどのような植物層にしていくのか、どのように里山を活用するのかなどの「計画づくり」を関係者で行っておくことも必要です。

 研修会は、実際にきくちふるさと水源交流館の裏山の竹林でワークショップを行う予定でしたが、あいにくの雪となったため、室内で計画づくり手法の研修を行うこととなりました。
 まず、里地ネットワーク事務局長の竹田純一が、里地里山保全管理に向けたワークショップと計画作り手法について説明し、参加者全員から竹林との関わりや実際に抱えている課題、技術などを聞き取りました。参加者には、地元で竹林の進入に困っている農家、竹林管理を長年行い、毎年タケノコを生産して出荷している農家、他地区の竹細工職人、他地区で竹林の保全活動を行っている人、学生ワークキャンプなどを計画している大学生などの参加者からいくつもの課題や竹林活用についての希望などが出されました。
 環境省里地里山保全再生モデル事業から誕生した熊本県氷川町立神地区の立神里山保全隊からの参加者は、タケを切り出す際に問題となる処理について、チッパーを導入し粉砕上にすることで管理がたいへん楽になり、なおかつチップを活用した抑草や景観整備などができること、タケチップはそのほかの資材としても活用が可能であることなどを紹介し、関心を呼んでいました。
 地元の有機農業生産者からは、タケを細かくして微生物で処理することによって土作りに活用可能なことを紹介し、これからの資材活用のひとつとして検討されました。
 その後、ミニシンポジウム講師の九州大学助教の朝廣和夫さんと、NPO法人きらり水源村の事務局長・小林和彦さんが計画づくりのワークショップをリードしていきました。
 そのなかでは、土作り、タケノコの活用、タケ炭やタケ水の活用、竹細工教室などの利用方法が提案されました。特に、地元の農家が「竹林は火をつけて燃やしたいぐらいだ」との発言から、祭りやきくちふるさと水源交流館に集まる子ども達に夏のキャンプファイヤーなど切り出したタケを燃やすイベントを行うなどのアイデアも出されました。
 このほか、菊池市や熊本県などの助成事業や補助事業などを活用して取り組みを行うための意見交換なども行われ、具体的な竹林管理に向けての計画づくりが進みました。

 今回の研修会はここまでですが、NPO法人きらり水源村や地元の林研グループなどが、今回のワークショップを通じ、今後の竹林管理についてとりまとめ計画にしていくとのことです。

木造校舎を利用した交流館で開催しました
木造校舎を利用した交流館で開催しました
ミニシンポジウムではスライドを使って紹介
ミニシンポジウムではスライドを使って紹介
九州大学 朝廣助教
九州大学 朝廣助教
ワークショップは、車座でホワイトボードと模造紙を使ってまとめていきます
ワークショップは、
車座でホワイトボードと模造紙を使ってまとめていきます

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