ページトップ
環境省自然環境・生物多様性里なび活動レポート > 研修会・シンポジウム報告

里なび

ここから本文

活動レポート

里なびミニシンポジウム&研修会 報告1
トキやコウノトリが再び舞い降りる地域づくり

日時 2008年1月27日(日) 集合8:20 解散12:00
場所 石川県珠洲市(能登半島里山里海自然学校)

 「里なびミニシンポジウム&研修会」の第1回目は、石川県珠洲市の里地里山保全再生計画をつくるための調査手法を学びました。
 能登半島は、新潟県佐渡市とならんで最後までトキが生息していた場所として知られています。また、兵庫県豊岡市でコウノトリが野生復帰されましたが、能登半島にも以前からコウノトリの飛来があり、いずれは豊岡から能登にコウノトリが飛んでくるのではないかと期待されています。
 能登でも、トキやコウノトリを通じて里地里山への関心が高まっており、金沢大学では、石川県珠洲市の旧小学校に「能登半島里山里海自然学校」を設置し、地域の里地里山の保全に向けた様々な調査、研究、学習プログラム等を行っています。本ミニシンポジウム&研修会の前日にも、金沢大学「里山プロジェクト」のシンポジウムが石川県輪島市の能登空港ターミナルビルで開催され、全国から鳥の研究者やコウノトリの野生復帰に携わった専門家、地域づくりやエコツーリズムの研究者らが集まり、能登の人たちに向けた情報提供が行われていました。

 ミニシンポジウムは、里山里海自然学校運営委員長の中村浩二教授が、自然学校の設立の目的や意義、地域や研究における役割を話し、「地域に研究拠点、活動拠点があることで、実践的な研究活動が行える」ことが生物多様性にとって大切であることを示しました。
 研修では、地元学を使って地域の自然環境調査、社会環境調査を行い、計画づくりに結びつける手法をワークショップとして行いました。
 参加者は、地域住民を含む能登からの参加者や活動団体のリーダー、里山里海自然学校のスタッフなど総勢60人ほどです。
 地元学とは「地元の人が、地元を学ぶ」ことであり、里地里山において生活や農林業などを持続的に行ってきた人の知恵や伝統、工夫を、「あたりまえ」と受け取るのではなく、あらためて大切なこととして調べ、発見し、記録し、そこから学ぶものです。
 その一連の作業では、研究者や、その土地において生活や仕事の営みをしていない保全活動への参加者らは、「外部者」でなので、地元の「あたりまえ」を発掘する外部の視点を提供する役割に徹します。
 このことをふまえ、里山里海自然学校が調査しているビオトープ水田を中心にその周辺の里山を参加者全員で歩きながら、地域の話を聞き、「あたりまえ」を発見しに行きました。
 晴れてはいましたが雪が積もり、時折雪の舞うなかの調査でしたが、参加者にはみなそれぞれの視点からの発見があり、里山里海自然学校に戻って地図の作成と地域資源カードの書き込みを行いました。
 その後、みんなの発見を共有化しとりまとめるワークショップを行いました。ワークショップでは、地域住民、外部からの参加者が各自の地域資源カードを読み、分類しました。
 今回は、調査手法の研修であるため、時間も短く、調査エリアも限られた場所でしたが、地域資源カードは100枚を超えていました。これらのカードは「生物(鳥)、生物(足跡)、生物(水生昆虫)、植物(木、果樹等)、林業(植林管理等)、農業(作物、資源活用)、神社・史跡、生活、不法投棄」の9つのカテゴリーに分類しました。
 それぞれに、担当を決めて整理し、カードの紹介と地域の特徴、気がついた点を発表、それに、地元の人、あるいは外部の人からのコメントを求め、特徴や地域の課題を出していきました。
 この作業を通して、地域の生物や自然環境、社会状況や暮らし方が明らかになり、同時に課題も浮かび上がりました。
 生物では、絶滅危惧I類で石川県の指定希少野生動物種として指定されているシャープゲンゴロウモドキが確認されるなど、調査したエリアが自然環境の保全の側面から大切な里地里山であることが明らかになりました。
 地域では、トキやコウノトリへの関心が高まっていますが、この研修会を通じて地域住民や参加者からは、「シャープゲンゴロウモドキをはじめとするたくさんの生物を保全することが必要」「そのためには、今の休耕田やため池、里山をどうやって保全するか考える必要がある」「以前は茅場を管理し、屋根を葺き、農業にも活用していたが、今は放置されている。こういうことを忘れてしまっていた」などの意見が出されました。
 また、地域住民からは、「調査すると聞いて、何もないところだから書くことはないだろうと思っていましたが、実際に歩いて外部の方の話を聞いたり、おとしよりの話を聞くと、自分たちの生活や、今の地域のことがはっきり見えてきました」「たとえば牛や羊を導入して、荒廃した藪の管理をするなど、農業と自然環境保全を結びつけることを考えていきたい」「学校教育でも地域学習が必要で、地元学の手法を使って子どもたちに自分たちの地域のことを学ばせることができる」といった具体的な提案も出され、能登半島里山里海自然学校の中村教授は、「今回の研修は、その手法だけでなく、たくさんの知恵が出てきて大いに参考になったと思います。地域の人たちと、拠点である自然学校と、それをとりまく多くの人たちと連携して、取り組んでいきましょう」と講評していました。

ミニシンポジウム風景(能登半島里山里海自然学校)
ミニシンポジウム風景(能登半島里山里海自然学校)
歩きながら「あたりまえ」を調べます
歩きながら「あたりまえ」を調べます
たも網ですくって、水生生物を探します
たも網ですくって、水生生物を探します
地域資源カードを全員で読み、地域の特徴をまとめます
地域資源カードを全員で読み、地域の特徴をまとめます

ページトップへ